第5話 船旅
シーンA
○地図
タケル(M) 「ロッドの光は南東を示した。メンフィスより南東は海峡をはさみ、ファンジーム大陸プルシャプラの街がある。つまり陸路は完全に絶たれる訳だ。幸いな事に海に魔将が出るとはいえ、日に一度の交易船が行き来しているので、それに乗る事になった。そう…問題は…」

マーハ 「タケル、大丈夫?」

○船室
マーハが入って来る。
地図を顔に被せ横になっていたタケル。
地図を外す。
真っ青なタケルの顔。
タケル(M) 「海…なんだ」

○【サブタイトル】



○同 部屋
グリンとオーフェも船室に戻っている。
グリン 「船酔いだ〜?情けねえ〜」
ざまあ見ろとばかりに大笑いするグリン。
タケル 「う、うるさい…」
船酔いの為いつもの調子に言い返せないタケル。
マーハ 「グリンもいい加減にしなよ」
オーフェ 「そうです、グリンさん。誰にだって得手不得手があるんですから」
グリン 「これから世界を旅するレインともあろう者が船酔いだと〜。ダハハハ、いい気味だぜ…」
マーハ 「グリン!!」
グリン 「ヘイヘイ。オレ様1人悪者か?っま、いいや。オレ様もこんな腰抜けにかまってる暇はねえんだ。行くぞ、オーフェ!」
オーフェ 「は、はい?」
グリン 「ば〜か、決まってるだろ、ナンパだよナンパ!長い旅これ位の楽しみがなくちゃな!!」
オーフェ 「わッ、ちょっとグリンさん?待ってくださいよ〜!」
グリンに引き摺られて行くオーフェ。
タケル 「ったく何なんだ、あいつは…」
マーハ 「ほら、この船って若い女の人が大勢乗ってるから…(苦笑)」
タケルは呆れた表情。
マーハ 「少し外の空気でも吸えば楽になるかもよ」
タケル 「おかしいだろ?」
マーハ 「え?」
マーハは最初何の事だか気付かない。
暫く間を置き船酔いの事だと気付いて。
マーハ 「そんな事無いよ。只、ちょっと意外かな…」
タケル 「…ずっと夢見てた。いつかナギと2人であの村を出て世界中を旅してやるんだって…。あんな形で村を出ることになるなんてな…」
マーハ 「……」
俯くマーハ。
タケル 「誤解するなよ。俺はお前を恨んじゃいない…」
マーハ 「わたしなんかの為に命をかけてくれた人達が居る。だから今は死ねない」

フラッシュバック
ビルの屋上のマーハ

マーハ 「そんな気がする」
タケル 「お前、村に来る前に何をしていたんだ?」
マーハ 「分からない」
タケル 「記憶喪失なのか?」
マーハ 「そういう訳じゃないけど、よく覚えていないんだ…。もしかしたら思い出したくないのかもしれないね…」
マーハは後ろを向いて水をグラスに注いだりしている。

インサート・第1話
マーハ 「ルラなんて知らない。わたしはマーハ。他には何も知らない」
無表情。
マーハ 「行こう、タケル!」
その表情。

タケル(M) 「あの時から変わった。ただの女だったこいつがルラとしてここに居る。いや、俺達なのか…変えたのは…
そこへ急に大きな爆発音。
船に何かのあたった音。
注いでいたグラスが落ち船が大きく傾く。
マーハ 「何!?」
甲板から聞こえる悲鳴。
周囲は騒がしくなる。
タケル 「一体何が起きたんだ?」
船客(ガヤ) 「海賊だ〜!!」
マーハ 「海賊?」
船室へ海賊が2人押し入ってくる。
海賊A 「何でえ、ガキ2人か…」
タケル 「マーハ、何なんだこいつ等は?」
ベッドから置きあがるタケル。
マーハもロッドを構える。
柄部分から現れる刃。
マーハ 「海賊らしいよ」
海賊B 「おうよ、命が惜しかったら金目のものを…」
言い終える前にタケルは海賊Bの鳩尾を打つ。
倒れる海賊B。
海賊A 「んにゃろう!」
マーハ 「タケル!相手は人間だ!!」
マーハが制止したその時には既に海賊Aも倒れている。
タケル 「でも、悪い奴らなんだろ?」
マーハ 「それはまあ、良いか悪いかって言われたら…」
僅かに微笑むタケル。
タケル 「だったら良い気分転換になるな」
オーフェ 「マーハさん!タケルさん!!」
オーフェが船室に呼びに来る。
既にのされている海賊を見て。
オーフェ 「あ…。(我に返り)た、大変なんです!」

○商船甲板
グリンはたった1人で大勢の海賊と戦っている。
他の船客は冒険者らしい格好のものも居るが、ただ逃げ回るのみ。
そこへタケル、マーハとオーフェが駆け付ける。
同じ様海賊を倒し始めるタケルとマーハ。
オーフェはオロオロと慣れない手つきでメイスを振るっている。
グリン 「何してやがったんだ!おっせ〜ぞ、テメエら!!」
戦いながらニヤリと笑うタケル。
戦いながらの4人の会話。
タケル 「手助けが必要か?」
グリン 「うるせえ、見りゃ分かるだろ!」
マーハ 「こういう人達が居る内はまだ平和なのかもね」
グリン 「全くだぜ、他にやる事あるだろうが!」
タケル 「盗賊のお前には言われたくないけどな」
グリン 「うるせえ!」
タケル 「分担しよう。オーフェは他の客の避難を!マーハは右、グリンは左、俺は正面!!」
マーハ&グリン 「分かった!」

○海賊船甲板
双眼鏡を手に様子を伺う海賊船長らしき男とその部下。
海賊船長(シーザー) 「何だ、事の運びが悪いな」
部下(ジェナード) 「それが妙な3人組にてこずっているそうだ」
シーザー 「ほお〜…」
双眼鏡を外すシーザー。
シーザー 「久しぶりに、楽しめそうだ…」
その表情はどこか面白そうである。
シーザー 「ジェナード、お前はあれの用意をしてな」
腰の曲刃を抜く。

○商船甲板
マーハは強烈な殺気を覚え振り返る。
マーハに襲いかかるシーザー。
マーハ 「クッ!」
マーハ(M) 「この人、強い!!」
鍔迫り合いの2人。
シーザー 「銀の髪とは珍しいな」
マーハ 「よく言われる(苦笑)…あなたがこの海賊の頭か?」
シーザー 「だとしたら?」
マーハ 「なぜこんな事をする!?」
シーザー 「この交易船には若い女と積荷が乗っている」
マーハ 「女と積荷を一緒にするな!」
シーザー 「一緒になんぞしてないさ。積荷は売るが、女は楽しむ」
マーハ 「(驚)!」
パッと飛びのくシーザー。
直傍に居たオーフェを羽交い締めに。
後ろでも他の海賊達が女性客を人質に取っている。
オーフェ 「ああ…す、すみません。マーハさん」
マーハ 「タケル!グリン!!」
その大きな声に気付くタケルとグリン。
状況に気付き戦う手を止める。
押さえ込まれる2人。

シーザーの前に引きずり出される。
マーハ 「…」
ロッドを甲板に放るマーハ。
タケル 「クソッ!」
グリン、人質にされているオーフェに気付く。
バカにしたようなグリンの笑い。
グリン 「(シーザーに)ダハハハ(笑)、そいつ、男だぜ!」
シーザー 「分かってるさ!」
シーザーはオーフェを乱暴に離す。
オーフェもまた、海賊に囲まれる。
マーハににじみ寄るシーザー。
シーザーはマーハの顎に指をあてがい顔を強引に向けさせる。
囁く様に。
シーザー 「女は楽しむ。お前も例外じゃない」
マーハ 「な!?」
グリン&オーフェ 「?」
グリンとオーフェには聞こえない。
タケル 「!!」
突然立つタケル。
無言で海賊を振り払い、マーハに迫るシーザーの手を引き離す。
ジェナード 「この!!」
ジェナードに取り押さえられるタケル。
シーザー 「ほお〜…」
タケル 「こいつに手を出すな!俺が相手だ!!」
マーハ 「タケル…」
シーザー 「お前が相手?…ぷっははは(笑)冗談じゃない、俺にそんな趣味は無いさ」
タケル 「……」
シーザーを睨みつけるタケル。
シーザー 「ジェナード!そのガキを放してやれ」
ジェナード 「まさか、シーザー。こんな子供相手にか?」
シーザー 「こんなガキ等に手間取ったのはお前等だろう?」
放されるタケル。
タケル 「クッ」
シーザー 「剣を持たせてやれ」
タケル 「どういうつもりだ?」
シーザー 「この俺とサシで勝負だ。船の未来をかけてな…」
グリン 「あんだって?!」
オーフェ 「タケルさん!!」
タケル 「……」
シーザー 「ただの勝負じゃつまらねえ。場所はあの上だ…」
シーザーの親指はマストを示す。
その場に流れる船客達の絶望的な声。
船客(ガヤ) 「無茶だ…、おしまいだ…」
シーザー 「これは賭けだ。お前が勝てばこの船は見逃してやる。俺が勝てば船の積荷も、女も…そうだな…」
マーハの手首を掴み無理矢理引き寄せるシーザー。
シーザー 「こいつも貰う」
マーハ 「痛ッ、この…放せ!」
ジェナード 「忠告しとく。シーザーは『帆上の決闘』で負けた事は無い」
タケル 「……」
シーザーはマーハをジェナードの方へ押しやる。

シーザー 「さあ、どっちにする。とは言え道は1つしか無いだろ?」

マントを外し、マストを登り始めるシーザー。
タケルも上を見上げ意を決したようにロープに手をかける。
心配になったか、グリン駆け付ける。
グリン 「あの足場だったらオレ様の方が有利だ!オレ様に代われ!!」
タケル 「(グリンに)有利なだけで得意なわけじゃないんだろ?得手不得手があるんだ…」
グリン 「何ワケわかんねえ事言ってやがる!テメエ、ついさっきまでげえげえいってただろうが!!」
マーハ 「グリン!大丈夫だよ、タケルは!!」
グリン 「(タケルに)冗談じゃねえ、やいチビ!テメエ、この群衆の前でそんなにイイカッコしてえのか!?」
グリンを無視し登り始めるタケル。
マーハ 「タケル!」
タケルはマーハの呼びかけに振り返る。
マーハ 「気を付けてね」
タケル 「…」
微笑んだ様。 

○【アイキャッチ】