第6話 月の髪の乙女
シーンA
○ プルシャプラの街
夜。
街の中を必死に走る少女(サルサ)。
何者かに追われている様。
少女(サルサ) 「はあッ、はあッ……」
しかし走りついた先は行き止まりである。
サルサ 「!」
しまったという表情で後ろを振り返るサルサ。
追ってきた猫背の大男。
顔は白骨!
襲いかかる魔将スケルトン。
サルサ 「きゃあああ〜!!」
その時、スケルトンの後ろからタケル、マーハとグリンの3人が斬り付ける。
サルサ 「あ…」
後ろから息を切らしたオーフェがようやく追いつく。
オーフェ 「はあ、はあ…だ、大丈夫でしたか…?」
マーハ 「平気、今終わったよ」
マーハの倒したスケルトンが未練がましく顔を上げる。
オーフェ(?)に対し。
スケルトン 「ツ…月ノ…髪…」
言い残し風化するスケルトン。
サルサ 「!!」
驚き、オーフェを見る。
マーハ&オーフェ 「?」
一方それに気付かないタケルとグリン。
タケル 「なッ、言った通り魔将だっただろ?」
マーハ 「…驚いたな、夜とは言え街中に魔将が現れるなんて…」
ドサクサにサルサの手を取るグリン。
グリン 「おぜうさん、お怪我はありませんでしたか?」
サルサ 「あなた方は…もしかしてルラ様とレイン様?!」
驚く、タケル、マーハとグリン。
サルサ 「有難うございます。わたしは、サルサと言います。こう見えても猿の獣人なんですよ」
にっこりと微笑むサルサ。
そして長い猿の尻尾が揺れる。
その光景を遠い目で見つめるオーフェ。
オーフェ(M) 「父さん、母さん、僕は非力です。たった一人の女性も救えない。本当に…僕はレインなのでしょうか?」

○【サブタイトル】



○ダヴァンの館
一行はくつろぎ、サルサはお茶を4人に出す。
ダヴァン 「私がここの主、ダヴァンと言う者です。この度は、サルサを救っていただき誠に有難うございます。」
サルサの手を握りながらグリン。
その真剣な表情。
グリン 「当然の事をしたまでですよ。」
マーハ 「…あなたは、私達が…ルラとレインがやってくる事を知っていた。もしかして、何か知っているんじゃないのか?」
タケル 「俺達は他のレインを探している。どんな些細な事でもかまわないんだ!」
ダヴァン 「……」
しばし沈黙。
ダヴァン 「オレンジストーンのレイン『ミッフィー』の居場所を知っています。」
一行 「!!」
マーハ 「それは本当ですか?」
ダヴァン 「ただ、彼女はアルカード城に出かけたまま帰ってこないのです。」
タケル 「『アルカード城』…」
ダヴァン 「ここ最近になって、毎日のように舞踏会が開かれているのです。城主ヴァイアは花嫁を選びの舞踏会とは言っていますが…」
グリン 「そっかぁ、だから妙に船にもこの街にも女がたくさん居る訳だ。」
タケル 「だが、それについては良くない噂を聞いた。」
ダヴァン 「…はい。女性が城に行ったまま帰ってこないのです。たった1人も。」
グリン 「遊び呆けてるんじゃないのかぁ?」
マーハ 「それにしても1人も帰ってこないっていうのは変だな。まさか、サルサとミッフィーはそれを調べに行って…?」
ダヴァン 「…はい。只、舞踏会に獣人の女性は出席できないのです」
サルサ 「それが見つかってしまって…。でも、ヴァイアは『月の髪の乙女』を探しているのは確かなんです。その女性を手に入れる為に舞踏会を開いている事も…」
マーハ 「『月の髪の乙女』?」
マーハとサルサはちらりとオーフェを見る。
オーフェ 「……」
グリン 「オレンジストーンのレイン…ミッフィーって言ったっけ?…(ダヴァンに)女か?」
ヴァン 「は?…はい」
グリン 「をををッ!俄然燃えるぜ!!なあッ、マーハ!このパーティに何が足りないか分かるか?」
マーハ 「え、・・さあ?」
グリン 「女の子だよ!紅一点だよ!ヒロインだよ!!く〜ッ、待ってたんだよ!サルサちゃんじゃないのが残念だけどよ〜」
タケルとマーハは顔を見合わせる。
その複雑な表情。
タケル 「とにかく、助けに行かなきゃならないな」
マーハ 「でも一体どうやって?」
グリン 「決まってんだろ、そんなの殴り込みだろ!」
ダヴァン 「敵の本拠地にですか!?危険過ぎます!」
グリン 「んじゃ、忍び込むってか?俺様一人ならまだしも、素人連れてなんて無駄だぜ」
サルサ 「あの〜」
話に割って入るサルサ。
悪戯を企んでいるような微笑。
サルサ 「わたしにアイデアがあります。『月色』の髪…舞踏会ではオーフェ様のような見事な金髪の女性は居ませんでしたもの…。」
ダヴァン 「まさか、サルサ?」
サルサはにっこりと微笑む。
サルサ 「とりあえず、こちらにいらして下さい」
オーフェ 「え?!」
オーフェの手を取り館の一室に連れて行こうとするサルサ。
ダヴァンはやれやれといった表情で部屋の扉を開ける。
グリン 「お、なんだなんだ?」
サルサ 「さあ、他の皆さんも…」
サルサに付いて行こうとするマーハを止めるタケル。
タケル 「悪いな、先に行っていてくれ」
他の皆は部屋に入っていく。
マーハ 「何、タケル?」
タケル 「お前はここに残れ」
マーハ 「!(驚)どう言う事?」
タケル 「今回のターゲットは…その…とにかくだな、お前はここに居た方がいい」
マーハ 「それって、わたしが女だからって事?」
タケル 「……」
マーハ 「女だから足手まとい?」
タケル 「違う」
マーハ 「まだ、認めてくれないんだ…わたしの事」
タケル 「だから違う!…サルサはあの城から逃げてきたんだ。…まだ追っ手が来るかもしれない…だから、お前はここで2人を守るんだ…」
マーハ 「……」
納得のいかないような表情のマーハ。
突然大きなグリンの悲鳴。
グリン 「ど〜いうこった、こりゃ〜!!??」
部屋からドレスを着たグリンが飛び出して(逃げ出して)来る。
驚き声の出ないタケルとマーハ。
タケル 「お、お前なんて格好してるんだ…」
部屋の中からサルサの声。
サルサ 「ダメですよ、グリン様。まだお化粧が終わってません!」
グリン 「じょ、じょ、冗談じゃねえ!!」
その様子を見る2人。
マーハはサルサのアイデアが分かった様。
マーハ なるほど…」
タケルを見て、悪戯っぽくマーハ。
マーハ 「じゃ、頑張ってきてね」
そっけないマーハ。

○馬車の中
タケル、グリンとオーフェの3人、それぞれ女装。
グリン 「なあ、この格好どうよ?」
オーフェ 「はあ…」
グリン 「第一印象、最悪だよなあ〜。トホホ…」
オーフェ 「あの、僕はどうでしょう?」
グリン 「は?」
オーフェ 「『月の髪の乙女』に見えますよね?」
心配そうに自分の装いを確認するオーフェ。
グリン 「あ、ああ…。ハハハ…バッチリだぜ…」
笑顔は引きつっている。
オーフェ 「僕は頑張って囮の役を引き受けます!」
やる気満々のオーフェ。
オーフェ 「いけない!一人称は『わたし』ですよね!!あとは仕草も女性らしくしなくては…。あの、タケルさんはどう思います?」
タケルは呼ばれた事に気付かず、苛々しながら窓の外を見ている。
オーフェ 「タケルさん?」
呼ばれた事に気付いたタケル。
やや、苛苛している様。
タケル 「あ、ああ。何だよ?」
オーフェ 「…何かあったんですか?」
茶化すようにグリン。
グリン 「そういや、マーハの様子も変だったよな〜ぁ。喧嘩でもしたか〜?」
タケル 「別に」
グリン 「お前等が喧嘩なんてめずらしいな〜ぁ?」
タケル 「……」
オーフェ 「あ、見えてきましたよ!」
月夜に浮かび上がるアルカード城。



マーハ 「アルカード城か…」
○ダヴァンの館
マーハは拗ねた様に机に向かっている。
紙上に走書きされるカタカナで『アルカード』の文字。
サルサ 「きっと、タケル様なりにマーハ様の身を案じての事だと思いますよ。女性であるのなら尚更です」
マーハに茶を勧めるサルサ。
ダヴァンは羊皮紙上の文字に気付く。
ダヴァン 「なんて書いてあるのですか?」
マーハ 「『アルカード』って書いてあるんです」
サルサ 「見た事も無い文字ですね。右から読むんですか?」
少し笑うマーハ。
マーハ 「左からです。右から読んだら…」
ふと気付くマーハ。
マーハ 「ダヴァンさん、これなら読める?」
マーハは羊皮紙にアルファベットで『alucard』と書きなぐる。
ダヴァン 「これは共通語ではない…おそらく古代神聖語でしょうか。ええと…『アルカード』…ですか?」
マーハ 「逆に読んで見て!」
ダヴァンとサルサは驚いて顔を見合わせる。
サルサ 「ドラキュラ?」
ヴァン 「別名『ヴァンパイア』!では、伯爵の正体は…成る程、辻褄が合う。なぜ女性ばかり集めているのかも」
サルサ 「でも、だとしたら…助けに行かれたレインの方々は…」
そうサルサが言いかけたとき、窓ガラスが激しく割れる大きな音。
同時、マーハはロッドを構える。
魔将ワー・ウルフの侵入。
マーハ 「ダヴァンさん、サルサは隠れていて!」
ワー・ウルフ 「フフフ…身ツケタゾ…。月ノ髪ノ乙女!」
マーハ 「な!」
ワー・ウルフ 「月の髪ノ乙女…ソノ生キ血!あるかーどニハ、渡サン…!!」
襲いかかるワー・ウルフ。
マーハは巧みに避ける。
マーハ 「どう言う事なんだ!」
ダヴァン 「マーハさん!離れてください!!」
マーハは素早く離れた所へ銃声。
ワー・ウルフ 「グアアアア!」
灰と化すワー・ウルフ。
銃を撃ったのはダヴァンである。
ダヴァン 「まさか、これが役に立つなんて…」
信じられないといった風に銃を見る。
マーハ 「今、魔将がわたしの事を…」
サルサ 「は、はい。『月の髪の乙女』って…」
ダヴァン 「もしや、大きな勘違いをしていたのかもしれません」
マーハ 「どう言う事?」
ダヴァン 「『月色』の髪とは金色ではなく銀色の事を指しているのでは?」
サルサ 「じゃあ、わたし…」
サルサ、顔は蒼白。
そして、非常に言い難そうに。
サルサ 「取り返しのつかない事を!どうしよう…みすみすレイン様を城に送りこんでしまっ…」
暫く間。
マーハ 「(優しく)大丈夫だよ。敵の正体が分かったんだ。対処方法も作戦も立てられる!」
マーハ、その表情。