第6話 月の髪の乙女
シーンB
○アルカード城
城が流れる管弦楽団によるワルツ。
ワルツに合わせ踊る多くの女性と城の紳士達。
その表情はいずれも楽しそうである。
一方踊れない3人は広間の隅に居る。
近付いてくる1人の紳士。
紳士 「(オーフェに)良かったら1曲、いかがですか?」
オーフェ 「い、いえ…僕、いやっわたしは、結構です!ほ、本当にすみません!!」
紳士 「そうですか…」
去っていく紳士。
声をひそめ。
グリン 「何やってんだよ、さっきから!」
オーフェ 「ですから、僕はダンスなんて出来ません!」
グリン 「んなモン、はったりだ!はったり!!テメエが目立たなきゃ、ヴァイア伯爵も見つからねえだろ〜が!」
オーフェ 「でも…」
タケル 「おかしくないか?」
グリン&オーフェ 「?」
タケル 「オーフェでなくても金髪の女は居る。なのに、ヴァイア伯らしき人物が一向に現れない」
グリン 「まぎれてるって事があるだろ〜が」
タケル 「それにしてもだ。オーフェが居ても城側は何の動揺も無い」
グリン 「…ま〜確かに。でもよ、ミッフィーちゃんを助けるのも、ここの女の子達を守るのも立派な使命なワケだ。」
自信満々のグリン。
タケルは呆れた表情。
タケル 「頼むから、その格好でナンパだけはしないでくれ…」
オーフェ 「男だって事、分かってしまったのでしょうか?」
タケル&グリン 「……」
そこへ、広間の扉が開く。
遅れて入ってきた1人の白いドレスの女性。
その髪は見事な長い銀髪である(他のレインと同じ様ロング)。
不思議な魅力を持つ女性の登場に場内は一瞬静まる。
タケル 「(驚)!あのバカ…」
その女性が誰なのか気付くタケル。
オーフェ 「綺麗な方ですね…」
グリン 「あの子だ、あの子に決めた!」
見とれるグリンとオーフェ。
女性は物怖じせず、3人に真っ直ぐ近付いてくる。
再び流れるワルツ。
グリン 「おぜうさん。俺と一曲いかがです?」
にっこり笑う女性。
マーハ 「グリン、その格好でナンパだけはやめてよね」
グリン&オーフェ 「(驚)!」
グリン 「マーハ!?」
オーフェ 「マーハさん!?」
タケル 「バカ!何で来たんだ!!」
マーハは周りを確認する。
4人に向けられている紳士達の視線。
声を潜めるマーハ。
マーハ 「話がある。館で襲われた。『月の髪』は銀色の髪を指していたらしい」
オーフェ 「そんな!」
タケル 「……」
そんな会話は一切耳に入らないグリン。
グリン 「なんてこった、又よりにもよってコイツを〜?オレ様の感はどうしちまったんだ〜!!」
マーハ 「そして、ヴァイア伯の正体も分かった。彼はヴァンパイア…ドラキュラだ」
オーフェ 「吸血鬼ですか!」
タケル 「……」
そんな会話は一切耳に入らないグリン。
グリン 「そうか、騙されたんだな!こいつの…」
タケル 「バ、バカ…」
マーハ 「!!」
グリンはマーハの胸を掴む。
グリン 「妙に、リアルな…」
マーハはグリンをグーで殴る。
グリン 「っつ〜!!」
マーハ 「〜とにかく、ダヴァン達は安全な所に避難させた。(タケルに)これでいいだろう?」
苦々しそうな顔をするタケル。
タケル 「あのなあ…。どうなっても知らないぞ!」
グリン 「しっかし、相手がヴァンパイアだったら、好都合かもな」
タケル 「好都合?」
グリン 「アンデットであるヴァンパイアは聖なる力に弱い。つまりだ…」
グリンはオーフェを見る。
オーフェ 「!!」
つられてタケル、マーハの2人も。
グリン 「ラシューヌ神に遣える神官のみが許される神聖魔法ってのがあったよな」
マーハ 「そうなんだ。オーフェの力が必要なんだ」
ケル 「魔法か…」
オーフェ 「僕は…」
すまなそうに。
オーフェ 「薬の事なら分かりますが、魔法は…知りません」
マーハ 「オーフェ…」
グリン 「じょ、冗談だろ?」
そこへ、ファンファーレが鳴り響く。
階段をゆっくりと降りてくる、貴族の紳士。
ヴァイア伯爵。
グリン 「出てきやがった!」
マーハ 「行ってくる。みんなはここに居て」
タケル 「おいッ、マーハ…」
オーフェ 「マーハさん!!」
追いかけてくるオーフェ。
オーフェ 「すみません、マーハさん!僕が囮であれば、あなたをこんな危険な目に合わす事は無かったのに…」
マーハ 「どうしてあやまるの?」
オーフェ 「ましてや、神聖魔法も使えない!僕は役立たずです」
安心させる様に微笑むマーハ。
マーハ 「でもね、メンフィスで毒に魘されていた時に、助けてくれたのはオーフェだよ」
オーフェ 「あれは『ウパスの樹皮』を持っていたから…」
マーハ 「オーフェが持っていたんだ」
オーフェ 「……」
マーハ 「ねえ、オーフェ。確かに今回の事は危険な事だったし、タケルにも反対された。出来る事をしているだけだよ」
オーフェ 「……」

マーハ 神様を信じるのと同じ様に自分を信じてごらん。そうすれば、魔法は使える。本当は使い方、知っているんでしょう?」

オーフェ 「……」
静まる広間にヴァイアの声。
ヴァイア 「皆さん、よくぞ我が城に来て下さいました。今晩は御ゆるりとお楽しみ下さい。私の花嫁となるべき女性がいらした記念すべき日です!」
自然に退く客達。
ヴァイアはマーハに歩み寄る。
膝を折り優雅にマーハの手の甲にキス。
ヴァイア 「一曲、踊って頂けますかな?」
マーハ 「わたし、ダンスの嗜みはありません」
ヴァイア 「大丈夫、私がリードしますよ」
踊る2人。
周りの客はウットリとした表情でそれを見守る。
最前列で見守るオーフェ、奥よりタケル、その表情。
ヴァイア 「あなたを私の妻として迎え入れたい。…余興はここまでにしましょう」
マーハ 「!!」
オーフェ 「マーハさん!!」
タケル 「何!」
駆け寄るオーフェ!
突如広間の床に開く落とし穴!
落ちるマーハとオーフェ。
落とし穴は閉じる。
タケル 「くそッ!マーハ!!」
ヴァイア 「もう、この舞踏会も終演です」
見上げるとヴァイアは宙に浮いている。
背に蝙蝠の羽。
ヴァイア 「さて皆さん、後は好きにしなさい」
フッと消えるヴァイア。
同時に会場に居た多くの紳士達が魔将スケルトンやゾンビ(皆アンデット)に姿を変える。
場内の女性達混乱。
ケル 「(グリンに)どうする!?」
グリン 「人命救助が先決だろお!!」
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