第8話 紅き魔術師
シーンC
○ ブリストルの街・宿の一室
夜。
窓際にタケル。
椅子に腰掛けているグリン。
ベッドに腰掛けているオーフェ。
オーフェ 「遅いですね〜、2人共…」
グリン 「んまぁ〜、そろそろじゃねえか?」
タケル 「……」
タケルは窓の外に恍惚の表情で歩いているミッフィーを見つける。
タケル 「!」
その様子に気付き、宿を飛び出すタケル
グリン&オーフェ 「!」
後を追うグリン&オーフェ。
ミッフィーの肩をつかみその顔を覗き込むタケル。
タケル 「ミッフィー、何があったんだ?」
ミッフィー 「……」
ミッフィー、その表情に変わりは無い。
タケル 「マーハはどうしたんだ?」
ミッフィーに近付くオーフェは鼻を押さえる。
オーフェ 「『グレムリンズ』!」
グリン 「あんだって!」
タケル 「何だ、そいつは?」
オーフェ 「記憶を失わせて、正常な判断が出来なくなる毒薬です。おそらく、煙の形でミッフィーさんに嗅がせたものだと思います。微量ですから、今解毒します…」
ルーンを唱えようとするオーフェ。
が、その時。
グリン 「!!」
パンッ!…とミッフィーの頬を打つグリン。
タケル 「!!ッ…やりすぎだ!グリン!!」
グリン 「コイツだってな、まだガキだがレインなんだぜ!ルラを守る…そんくれえの自覚が無くてどおすんだ!!」
ミッフィー 「……」
正気に戻った様なミッフィー。
自らバンダナを取る。
額に露わになる第三の瞳!
グリン 「な!!」
ミッフィー 「確かに、今回のはウチが悪い…でもなあ!」
バリッ!…とグリンの頬を引っかくミッフィー。
高く空を跳ぶと、屋根の上に乗りどこかへと走り去る。
グリン 「いって〜ぇ!!」
グリンの頬に大きな引っ掻き傷。
オーフェ 「今、おでこに目がありましたよね…喋りましたし…?」
グリン 「アイツは…聖獣だ…」

フラッシュバック・第7話
ミッフィーとウンディーネとの邂逅
その様子を岩陰から伺うグリン。

タケル 「サーカスに向かったに違いない…俺達も急ごう!」
頷くグリン&オーフェ。
○サーカス『ドラゴン・フレイム』テント前
ユーリカとヨシュア2人きり。
ユーリカの手には2個の水晶球が握られている。
ユーリカ 「最高よ〜ぉ。ヨシュアッ!」
ヨシュアの首に抱きつくユーリカ。
ユーリカ 「あたしの目に狂いは無かったわ。これでウィザーズ様にもお褒めの言葉を頂ける 〜!」
ヨシュア 「……」
ユーリカは片方の水晶球をヨシュアの手に握らせる。
水晶球の中には膝を抱えて眠るマーハの姿が見える。
ユーリカ 「フフフ…」
妖艶な笑みを浮かべるユーリカはおもむろに自分の手にしていた水晶球を地面に落とす。
パリーン!…と砕ける水晶球。
ユーリカ 「さぁ、ヨシュア…割ってしまうの…」
ヨシュアの腕に甘えるように抱きつくユーリカ。
ユーリカ 「そうすれば、全てが終わるわ…」
ヨシュア 「……」
ヨシュアは自分の手にある水晶球を見つめる。
その仮面。
ヨシュア 「!!」
瞬時に横切る影。
気付くとヨシュアの手に在ったマーハの水晶球は無くなっている。
ユーリカ 「何!」
ミッフィー 「あかん、あかん。危機一髪や…」
声がする方に顔を上げるユーリカ&ヨシュア。
テントの頂上に立つ小さな人影…ミッフィーである。
その手にはマーハの水晶球が握られている。
ミッフィー 「たいした真似してくれたわな〜色男」
ヨシュア 「……」
ユーリカ 「ふうん、レインね…まだ子供じゃないの〜?」
ブチッ!…と切れたようなミッフィー。
ミッフィー 「ちっちゃいからて、舐めたらあかんで」
開いた右手で印を切るミッフィー。
ミッフィー 「聖獣『ミッフィー』の名に於いて命ずる…出でよ『サラマンダー』!」
第三の瞳から現れる巨大な炎のトカゲ。
口から吐き出される炎のブレス。
ユーリカ 「キャッ!」
ヨシュア 「『ウォール』…」
ミッフィー 「!!」
ヨシュアとユーリカの前に立ちふさがる炎の壁。
ブレスはその壁に吸い込まれる。
炎はテントに燃え移り始める。
紅く照りかえる、ミッフィー、ヨシュア、ユーリカ。
その表情。
ミッフィー 「詠唱も無しに…そいだけ、高レベルっちゅう事か。ほんま、たいした魔術師や…」
ユーリカ 「フフフ…殺しておしまい、ヨシュア!」
ヨシュアから離れるユーリカ。
ヨシュア 「『ファイアボール』…」
ヨシュアの手から放たれる、無数の炎の玉。
爆発と襲撃!

○ブリストルの街・表通り
サーカス『ドラゴン・フレイム』テントがある広場の方角の空が赤く燃えている。
街の人々も慌しい。
息を切らし、広場へ向かい走るタケル、グリン、オーフェ。
(ガヤ) 「火事だ〜」
(ガヤ) 「早く、放水しろ〜」
タケル 「もう始まってるみたいだな」
オーフェ 「ハアハア…ミッ、ミッフィーさん1人で、大丈夫でしょうか?」
グリン 「ほんとに聖獣なら…『召喚魔法』の使い手だ」
タケル 「聖獣?」
グリン 「ああ、コンピニア戦争の『聖獣狩り』で絶滅したはずの、獣人の突然変異種だ」
オーフェ 「話に聞いたことは在りましたが…じっ、実在したなんて…」

○サーカス『ドラゴン・フレイム』テント広場
ミッフィーが現れたテント頂上で、2人の戦いを傍観するユーリカ。
ユーリカ 「精霊を召喚しうる力を持つ聖獣。それに対する、炎の魔術師…フフフ、イイ勝負ね」
攻防を繰り広げる、ミッフィーとヨシュア。
ミッフィーのその顔に僅かながら疲労の表情。
物陰に潜むミッフィー。
ミッフィー(M) 「フニュ〜、変や、あの男。最初あの女がおった時には、防御魔法を使っとたのに、あれから一度も唱えへん」
ヨシュアもまたボロボロの状態。
ミッフィー(M) 「まるで、自分の体はどうでもええような…?」
テントの頂上に目をやるミッフィー。
そこには、2人の戦いを楽しそうに眺めるユーリカの姿が在る。
ユーリカ 「…フフフ、そうよ、殺し合いなさい。思う存分に…あはははっ」
微笑むユーリカ。
ミッフィー 「!!」

インサート
サーカス『ドラゴン・フレイム』公演
マーハ 「何だか恐い仮面…まるで血の涙を流しているみたい…」

ミッフィー(M) 「あの男…まさか!」
ミッフィーを探すヨシュア。
その仮面。
ミッフィー(M) 「さて、炎に炎じゃ埒があかへん…。もう1匹…体、もつかいなぁ…?」
左腕に抱えた水晶を見る。
ミッフィー 「迷ってる暇はあらへんな…」
印を切るミッフィー。
ミッフィー 「聖獣『ミッフィー』の名に於いて命ずる…出でよ『ウンディーネ』!」
第三の瞳より現れる、ウンディーネ。
ヨシュア 「!!」
ユーリカ 「…フフフ」
微笑むユーリカ。
ヨシュア 「『ファイアボール』…」
ミッフィーの姿を認めたヨシュアは手から無数の炎の玉を放つ。
ミッフィー 「『ウンディーネ』!」
ウンディーネにより張られる水流の幕。
ミッフィー 「今や!『サラマンダー』!!」
ユーリカへと襲い掛かるサラマンダー。
大きく跳び避けるユーリカと一瞬、気をとられるヨシュア。
同時、ヨシュアの前に黒い影!
ヨシュア 「!!」
ユーリカ 「な、何ですって!!」
パキンッ…大きな音を立てて仮面が割れ、地面に落ちる。
その下に、驚いたようなヨシュアの表情。
ミッフィー 「目ぇ〜覚ましたか、色男?」
ヨシュア 「……」
ヨシュアは静かに地面に落ちた仮面に視線を落とす。
無表情。
ユーリカ 「おのれ〜。魔界神ヴァティス、我に力を…」
ミッフィー 「暗黒魔法…あかん!逃げるんや色男!!」
ヨシュア 「……」
ユーリカ 「『ディヴィザム』!」
同時。
オーフェ 「『プロテクティブ・サークル』!」
追いついたオーフェ達3人、ユーリカの魔法を打ち消す。
タケル 「ミッフィー、大丈夫か!?」
ミッフィー 「あ…」
ミッフィーに安堵の表情。
そのままヘタヘタと座り込む。
そのミッフィーを支えるグリン。
グリン 「へ〜、頑張ったみたいじゃねえか〜?」
ミッフィー 「やかまし!」
グリン 「お〜こわ!」
オーフェ 「聖獣のみが修得可能な『召喚魔法』…凄いですね、ミッフィーさん!」
タケル 「(ユーリカを睨み)マーハをどこにやった!」
ユーリカ 「そこにいるわよ」
ユーリカが目をやる先に、ミッフィーに抱かれた水晶球。
タケル、グリン、オーフェは起こった事態に気付く。
タケル 「なっ!」
ユーリカ 「あはははっ、もうどうする事も出来ないわよ!」
ユーリカが両手を広げると燃え盛る炎の中から無数の仮面が現れる。
魔将デスマスク。
ユーリカ(デスマスク) 「我は四天王『ウィザーズ』様が僕『デスマスク』!レインども、貴様らに死の苦しみを味合わせてやろう!!」
身構えるタケル、グリン、オーフェ、ミッフィー。
しかし、その4人の前にヨシュアが立つ。
タケル 「何だ、あんた?」
ヨシュア 「デスマスク、1つ聞きたい事があります」
デスマスク 「……」
ヨシュア 「なぜ私に近付いたのですか?」
デスマスク 「知れた事…レッドストーンのレインである貴様を利用する為だ!」
ミッフィー 「やっぱりな…」
タケル、グリン、オーフェはヨシュアに目を見張る。
ヨシュア 「私を利用する…その為にユーリカを殺したと?」
デスマスク 「あはははっ、それがどうした?聞きたいことはそれだけか?」
ヨシュア 「それだけです」
ふと、右手を前に翳す。
ヨシュア 「『エクスプロード』」
その一言で、一行の回りに巻き起こる、先程とは比べ物にならない爆炎の嵐。
炎が広場全体を包み込む。
デスマスク 「グアアアアァァァァ!!」
炎に消えていくデスマスクの悲鳴。
その一点を見つめるヨシュア。
無表情。
グリン 「すげえ…」
燃え尽きていき、炎は徐々に小さくなる。

○ ブリストルの街・宿の一室
朝。
マーハの水晶球を囲んでヨシュアを含めた一行。
ヨシュアを除く他4人 「何だって〜!」
驚きの声。
ヨシュア 「ですから、解呪の方法は知りません」
グリン 「ですからじゃねえだろ!」
ミッフィー 「アンさん程の魔術師が知らんはずないんとちゃうか?」
ヨシュア 「…私は自分の古代魔法に絶対の自信を持っています。ですから、それを打消す手段など無いと言うわけです」
グリン 「こ、コイツ…」
思わず身を乗り出すグリン。
タケル 「落ち着けって…グリン。オーフェ、どうにかならないのか?」
オーフェ 「解毒ならともかく、これは…」
タケル 「くっそ〜!」
ヨシュア 「方法が、無い訳では無いのですが…」
他4人 「!!」
ヨシュア 「私の師匠ならば、出来るでしょう…」
タケル 「師匠…?」
ヨシュア 「インディゴストーンのレイン=マホメトです」
オーフェ 「不死なる大賢者マホメトですか!?」
タケル 「インディゴストーンのレインだって!」
ミッフィー 「なるほ、たいした師匠やないか!」
ヨシュア 「師匠の居る『賢者の塔』へはここの港から、北にしばらく行った島にありますよ。せいぜい頑張って来て下さい」
他4人 「はぁ?」
一瞬言葉を無くす他4人。
ミッフィー 「なんや、付いて来てくれるんとちゃうんか?」
ヨシュア 「なぜあなた達と?」
オーフェ 「なぜって同じレインじゃないですか?」
ヨシュア 「どうして私が?」
グリン 「どうしてじゃねえだろ!」

ヨシュア 「私はこの通り1人で十分です。私には群れる必要などありませんよ」

静かにカップに口をつけるヨシュア。
タケル 「……」
呆然とするタケルを始めとする4人。

To be continued…
LEGEND