第9話 不死なる賢者
シーンB
○ 賢者の塔・一室
深夜。
塔のバルコニーから月明かりが差し込んでいる。
横になっているグリン、オーフェ、ミッフィー。
タケルの姿は無い。
グリン 「……」
その気配に目を覚ますグリン。
オーフェ、ミッフィーは寝息を立ててぐっすりと寝ている。
狭く張り出したバルコニーに出るグリン。
そこではタケルが無心に剣を振るっている。
タケル 「……」
グリンに気付くタケルは剣を振るう手を止める。
グリン 「オマエとマーハってよく似てるよな。そうやって、思いつめるトコとかさ〜…」
タケル 「体を動かすと落ち着くんだ…」
グリン 「オマエも夢とかで魘されてるワケ?」
タケル 「もう…最近は見ていない…」
顔を背けるタケル。
グリン 「でもよ、今は夜だ…、そういう時は体を休めるのが一番だぜ。んじゃねえと、イザと言う時にマズるからな…」
タケル 「!」
顔を上げ目を見張るタケル。
一瞬、グリンの姿がナギとダブる。
が、目を凝らすとグリン。
再び顔を背け、手にしている剣に目をやる。
タケル 「俺にはこれぐらいしかとりえが無い…」
グリン 「…んな、オマエさ。島から出た事がネエって言っただろ?」
タケル 「ああ…」
グリン 「どんな生活してたんだ?」
タケル 「…別に。普通に暮らしていた。あいつが来るまでは…。考えたくないが…もう、何も残っちゃいないんだろうな…」
遠い目で外を見るタケル。
夜の海。

タケルと並ぶ様にバルコニーの塀に近付くグリン。
グリン 「気にしてたぜ…」
タケル 「マーハか…。一体何なんだろうな…」
グリン 「……」
タケル 「空から…本当に星みたいに降ってきたんだ…。最初は死んだような目をした奴だった…」
グリン 「は〜ん」
2人の表情。
タケル 「…。お前って、案外いい奴だよな」
グリン 「はあ〜?」
驚いてタケルを見るグリン。
タケル 「ミッフィーがあの力を隠してたことも責めないし、皆が子供扱いしてる中でお前だけは『ガキだ、ガキだ』って言いながら、一人前のレインとして扱ってた…」
グリン 「んな、バ…バカヤロ〜!!」
思わず、大きな声を上げるグリン。
その声にオーフェとミッフィーが目を覚ます。
ミッフィー 「フニュ…な、なんやねん…?」
オーフェ 「…て、敵ですか〜…?」
目を擦りまだ眠たそうな2人。
グリン 「おう、オレ様は寝るぞ!…まだ塔は半分残ってるんだからな!!」
少々顔を赤らめ戻るグリン。
タケル 「…フ」
僅かに微笑むタケル。

○同 内部
攻防を繰り広げる一行。
数多くのウィル・オー・ウィスプとゴーレム。
ミッフィー 「キリがない!」
タケル 「無駄に体力は消耗するな!」
オーフェ 「ハアハア…とは言っても…クッ!」
オーフェの両手から放たれる稲妻。
タケル 「突破するぞ!」
声に合わせ、モンスターの群れの中に突っ込む4人。
階段を駆け上がる。
息は上がっている。
ミッフィー 「フニュ〜…もうどのくらい登ってんねん?」
オーフェ 「さ、…さあ。30までは数えていましたよね…?」
グリン 「変だと思わネエか?」
タケル 「え?」
一行階段を上りきる。
モンスターの姿は無い。
グリン 「コイツ等は魔将じゃねえ…邪悪な気配みたいなモンを感じねえ…。片方は精霊だし、別の奴は魔術で作られたものかもな…」
タケル 「試されてるのか?」
グリン 「多分」

インサート
壁に潜む人影。
ヨシュア 「…よく出来ました」
微笑む。

グリン 「そこにインだろ?」
グリンの視線に合わせ壁に目をやる一行。
壁影から出てきたのはヨシュアである。
ヨシュア 「ばれてしまいましたか…」
タケル 「どういうつもりだ?」
ヨシュア 「これは師匠の趣向です。私はあなた方をここに導いたまでです」
ミッフィー 「なんやて?」
ヨシュア 「その扉の奥で師匠は御待ちしていますよ」
他4人 「!!」
ヨシュアの視線の奥に視線を移す4人。
そこに1体の石像。
ヨシュア 「最もその『ガーゴイル』を倒してからでしょうが…」
石像が動き出す。
オーフェ 「う、動いた!」
一行に襲い掛かるガーゴイル。
タケル 「いくぞ、グリン!」
グリン 「おうよ!」
斬りかかる2人。
しかし、2人の一撃はむなしく弾かれ、傷すらつかない。
タケル 「何!」
グリン 「硬てえ!!」
オーフェ 「2人共下がってください!」
ミッフィー 「オーフェ!」
オーフェ 「はい!」
詠唱を始めるオーフェとミッフィー。
オーフェ 「主ラシューヌ神イリス。その御力をもって悪を塵に還せ…」
ミッフィー 「聖獣『ミッフィー』の名に於いて命ずる…」
オーフェ 「『ライトニング』!」
ミッフィー 「『ウンディーネ』!」
水により一段と炸裂する電撃。
オーフェ&ミッフィー 「!!」
蒸気と共に姿をあらわすガーゴイル…無傷である。
オーフェ 「無傷!?」
ミッフィー 「なんてタフなんや!」
タケル 「くそ!何か方法があるはずだ!!」
攻防を繰り広げる一行。
それを冷めた目で見るヨシュア。
ヨシュア 「やれやれ、すっかり期待されていない様ですね…」
瞳を閉じるヨシュア。
ヨシュア(M) 「どうしましょうか…師匠?」
?(マホメト) 「……」
返事は無い様。
やや呆れたような表情のヨシュア。
ヨシュア(M 「仕方ありませんね…」
瞳を開くヨシュア。
片手を翳す。
ヨシュア 「(小声)『エンチャント・ウェポン』」
丁度その時斬りかかるタケルとグリン。
各々の武器の異変に気付く。
タケル&グリン 「!!」
そのまま、ガーゴイルを斬りつける2人。
パキーンッ!…ガーゴイルは音を立てて崩れ去る。
各々の武器を見るタケル&グリン。
ヨシュアへと目を移す。
ヨシュア 「……」
とぼけるヨシュア。
ヨシュア 「師匠が御待ちかねですよ」
顔を見合わせる4人。
やはり一様に溜息をつく。
?(マホメト) 「フォッフォッフォッフォ…」
塔に響く老人の楽しそうな笑い声。
一行 「!!」
正面の扉が独りでに開く。