第10話 郷愁
シーンA
○賢者の塔頂上・マホメトの部屋
ヨシュア、マホメトとマーハを囲む一行。
マーハ 「あなた方を、レッドストーン及びインディゴストーンのレインとします」
無表情のヨシュアと満足げなマホメトを始めとする一行。
マーハ 「……」
そのヨシュアの表情に気付いたマーハはやや、不安そうである。
間を置き、瞳を閉じるマーハ。
マーハ 「rasyuhnu marha rula iris…」
ロッドの柄にあるホワイトストーンより放たれる紫色の光。
光は南東の方角を示す。
一行 「!」
光の先に目を遣る一行。
光は窓の外、雲の彼方。
マホメト 「この方角だと、南東じゃのう…」
オーフェ 「ここから南東ですと…」
手元から地図を出し広げるオーフェ。
オーフェ 「大きな街では『シエナ』があります」
タケル 「よし…後1人だな!」
盛り上がる一行。
その様子を静観するヨシュアに目を遣るマーハ。
マーハ 「あの…」
ヨシュア 「……」
マホメト 「どうしたのじゃ?」
憂鬱そうに振り返るヨシュア。
マホメトはマーハの顔を覗き込む。
マーハ 「色々とありがとう。それと、よろしくお願いします!」
マホメト 「フォッフォッフォッ…何を言い出すかと思えば…」
シュア 「……」
顔を背けるヨシュア。
既に部屋を出て行こうとしているタケル達の方を見る。
ヨシュア 「私は師匠に言われたから付いていくまでです。それに恨まれるような事はしましたが、感謝されるような事はしていません」
マホメト 「これ、ヨシュア!」
ヨシュア 「私は…他人の心には土足で踏み込む一方で、自分の心の内を明かさない人間を最も軽蔑していますから…」
顔が凍りつくマーハ。
ヨシュアはタケル達の後を追い部屋を出て行く。
マーハ 「……」
マホメト 「気にするでないよ…」
呆然とするマーハ。

○【サブタイトル】



○山道
シエナの街へと続く道。
山越えをする一台の馬車。
馬車の中からは楽しそうな話し声が聞こえる。
行者は無言。
幌から顔を出す美女、サンドラ。
サンドラ 「セイ…代わろうか?」
セイと呼ばれた獣人(虎の尻尾)の行者は顔を横に振る。
セイクレッド 「セイ…平気…」
幌の中にはハーフエルフの男性(シルクレスト)。
エルフの女性(クルエ)。
ドワーフの男(ティキ)は熱心に細工された木箱をいじっている。





シルクレスト 「最近じゃこの辺りも物騒になってるしな」
クルエ 「あッ(シルクレストに)、…この前の商売敵…なんて言ったけ…」
シルクレスト 「いきなり何だよ、クルエ…『ドラゴン・フレイム』だろ?」
クルエ 「そうそう聞いたんだけど、あのブリストルの大火事…何でもあのサーカス団が絡んでるって…」
シルクレスト 「そんなの、良くある話じゃねえのか?」
クルエ 「それだけじゃないのよ〜。何でもその現場で魔将が目撃されてるのよ!」
シルクレスト 「んじゃ、魔将に襲われたんだ?気の毒にな〜」
クルエ 「シルクレスト〜。あんた、ほんとにニブいわね〜、その逆よ!あいつら…」
恐い顔をしてシルクレストに迫るクルエ。
クルエ 「魔将だったのよ〜!!」
シルクレスト 「んな、嘘だろ〜?」
その様子に呆れ顔のサンドラ。
サンドラ 「んもう、シルクレストもクルエも…相変わらずねえ…」
フォウリー 「サンドラッ!!」
幌の上から飛び降りてくる妖精(フォウリー)。
その声は恐怖に満ちている!
サンドラ 「どうしたの、フォウリー?」
フォウリー 「何か来る!」
未だに言い争っているシルクレストとクルエ。
シルクレスト 「バッカで〜…大体、なんでそんな回りクドイ真似する必要があるんだよ!」
クルエ 「だって、あの火事の後…忽然と姿を消したのよ〜!」
サンドラ 「2人共静かにおし!」
その緊迫した声に黙る2人。
ヒヒ〜ン!…と馬が悲鳴を上げる。
セイクレッド 「クッ!」
馬を抑えようとするセイクレッド。
だが、暴れは止まらない!
サンドラ 「きゃあ!」
馬車は横転しそうになる。
フォウリー 「ティキ!逃げなきゃ〜ぁ!」
ティキの髪を引っ張るフォウリー。
ティキ 「……」
その様子に一行に気付かず、木箱から手を離そうとしない。
シルクレスト 「こんの、バカ!」
ティキを引きずるシルクレスト。
幌から出ると馬車は横転する。
空から飛来した魔将ハーピィー、馬車を踏み潰す。
胴体は禿鷹、胸から上は人間の女性。
さらに2匹飛来する。
ティキ 「ああ〜ワシの大発明が〜!」
シルクレスト 「んなこと言ってる場合じゃねえだろ!」
フォウリー 「イヤ〜ン!」
サンドラの頭の影に隠れ怯えるフォウリー。
クルエ 「何なのよぉ〜!」
サンドラ 「魔将…こんな所にまで!!」
馬を太い鉤爪でつかむハーピィー。
ヒヒ〜ン!…と馬が悲鳴を上げる。
セイクレッド 「!!ガルルルルゥゥゥゥ!」
唸り声を上げるセイクレッド。
サンドラ 「おやめ!あたし達がかなう相手じゃないよ!!」
セイクレッド 「グルルルゥゥゥ…」
残る2体のハーピィーがサンドラ達に迫ってくる。
サンドラ 「…(全員に)あたしが奴等の気を引くから、あんた達はお逃げ!!」
シルクレスト 「な、何言ってんだよ!」
と、その時。
マホメト 「『コールドブレイズ』!」
ヨシュア 「『ファイアーボール』!」
2体のハーピィーに向けて放たれる氷と炎の玉。
ギャンッ!…悲鳴を上げて衝撃により跳ね飛ばされる2体の魔将。
サンドラ 「エッ!」
グリン 「どりゃあ〜!」
タケル 「はああああッ!」
馬を掴むハーピィーに斬りかかる2人。
命中、風化するハーピィー、落下する馬。
ミッフィー 「『ドライアード』!」
エルフの女性の姿をした樹木の精霊が落下する馬を受け止める。
ミッフィー 「動物はもっと、いたわり〜いな!」
グリン 「ヘイヘイ…」
シルクレスト 「すっげ〜」
クルエ 「カッコイイ〜」
オーフェ 「けがをされてますね?」
サンドラの前に現れるオーフェとマーハ。
オーフェはサンドラの肘の擦り傷に手を翳す。
オーフェ 『キュア』…」
光と共に傷がふさがる様を、目を見開いて凝視するシルクレスト達。
フォウリー 「うっわ〜!」
サンドラは傷よりもオーフェの奥に居るマーハに目を遣る。
マーハ 「大丈夫ですか?」
微笑むマーハ。
サンドラ 「あんた達…」
3体のハーピィーを倒し終わったタケル達。
タケル 「片付いたぞ」
グリン 「お姉さん方…ご無事で何よりです」
サンドラの前に跪くグリン。
ミッフィー 「アホや…」
マーハ 「すみません。多分…わたし達と間違えられたんだと思う」
ヨシュア 「(小声)余計な事を…」
マホメト 「(怒)これッ!」
オーフェ 「(小声)ヨシュアさん!」
サンドラ 「……」
半壊した馬車を見るサンドラ。
何か思いついたように静かに笑って。
サンドラ 「そうね、じゃあ…ちょっと手伝ってもらおうかしら…」
立ち上がり、マーハに右手を差し出すサンドラ。
サンドラ 「あたしの名前はサンドラ。この子達と一緒に旅芸人をして暮らしているの」

○シエナの街
何とか動いている馬車で広場の中央に止まる。
後について歩くレイン達一行。
馬を慣れた手つきで繋ぐセイクレッド。
サンドラ 「セイクレッド、舞台の準備はお願いね」
セイクレッド 「分かった…」
サンドラ 「さてと…」
レイン達一行に向かうサンドラ。
また、その様子を見ているシルクレスト。
サンドラ 「今夜この街で一公演しようと思ってね。それで、あなた達で何演目か芸をしてちょうだい」
一行 「ええ〜ッ!」
驚く一行。
シルクレスト 「(呟)また悪い癖が出たな…」
ヨシュア 「冗談でしょう、もうやっていられませんよ」
マホメト 「確かに…見世物をするのは気が引けるのう…」
ヨシュア 「……」
タケル 「俺達にそんな暇は…」
グリン 「…でも、目立つの悪くネエか…」
オーフェ 「不味いでしょう!僕達は…」
タケル&グリン 「!」
指を立ててシ〜ッ!…と秘密だと言う動作。
奥から出てきたクルエ、ヨシュアの姿を目に留める。
クルエ 「ねえねえ、彼方ってもしかして『ドラゴン・フレイム』の炎の魔術師『ヨシュア』じゃない?」
ヨシュア 「!」
ギクッ!…と苦い顔をするヨシュア。
クルエ 「見たわよ、あの炎のイリュージョン!!キレイだったわ〜、あそこまで行くともう芸術の領域よね〜。あ〜あ、あたし達も、あれくらい魔法が使えたらな〜…」
思い浮かべうっとりとするクルエ。
その様子にやや、呆れたようなシルクレスト。
シルクレスト 「…あいつ、商売敵だとか言って見に行ってやがったな…」
クルエ 「ねえ、引き受けてくれるんでしょう?」
クルエはヨシュアの顔を覗き込む。
ヨシュア 「さあ、何の事でしょう?」
ミッフィー 「そやそや、ヨシュアの十八番やないか!」
ヨシュア 「!」
マホメト 「なるほど…」
流し目を送るマホメト。
その視線が痛いヨシュア。
マホメト 「色々楽しそうな事をしていたようじゃな〜?」
ヨシュア 「……」
マーハ 「ヨシュアはともかく、わたし達にそんな事は出来ないし、せっかくの舞台を台無しにしてしまうかも…」
サンドラ 「大丈夫。いいのよ、何でも。時間を稼ぐ程度で構わないわ。あたし達も、色々準備していたんだけど…あれではね…」
今にも崩れそうな馬車に目を遣るサンドラ。
その馬車の中から泣きそうな顔をしたティキとそれを慰めるフォウリーが現れる。
ティキ 「ああ〜〜〜!ワシの大発明『手品マシーン』が〜〜〜!!」
フォウリー 「いいじゃない、命が助かったんだから〜ぁ!」
レイン達 「……」
サンドラ、レイン達を見る。
サンドラ 「助かるんだけどね〜」
レイン達 「……」
サンドラ 「まあ、夜までに適当な演目を考えておいて。必ずみ・ん・な舞台に出るのよ!」
悪戯っぽくウインクするサンドラ。
レイン達 「……」
互いに顔を見合わせている。
諦めたように一様に溜息をつく一行。

○同街 広場
黙々と公演準備の作業をするセイクレッド、クルエ、フォウリー、ティキ。
指示を与えるサンドラ。
そのサンドラの傍にシルクレスト。
一方、やや離れた位置にヨシュア、マホメトを除くレイン達が何やら相談をしている。
シルクレスト 「(サンドラに)うちは今あるもので舞台を作る…出稽古が基本じゃなかったんだ?」

サンドラ 「あたしはこうやってねぇ、人を解かりたいの」

シルクレスト 「『ヨシュア』ってヤツ以外はド素人だぜ?」
サンドラ 「あら、あなた達もつい最近までそうだったじゃない?」
シルクレスト 「そりゃそうだけどよ…」
サンドラ 「通りすがりの他人に舞台へ上がられるのがイヤなんでしょ?」
シルクレスト 「う…」
サンドラ 「あなたも一人前に芸人の自覚を持ったわけね」
仕事の手を止めたクルエ、話をしているシルクレストを見つける。
クルエ 「こ〜ら、シルクレスト!サボるんじゃない!!」
シルクレスト 「わ〜ったよ!ったく〜」
その様子を微笑ましげに見る、サンドラ。
サンドラ 「さてと、伝承にあるあの皆様方の御手並み拝見といきましょうか…」
楽しそうに微笑むサンドラ。

一方ヨシュア、マホメトを除いたレイン達。
タケル 「ハア〜(溜息)どうするか?」
グリン 「どうするも何もしょうがねえだろ?…一回きりでいいんだ。覚悟決めるしかネエよ」
ミッフィー 「ヨシュア達はどうしたん?」
オーフェ 「ヨシュアさんと老師にはレインを探しに出ていってもらっています」
ミッフィー 「そか、あの2人は出しモン、決まっとるんや…」
マーハ 「……」

インサート・マーハの回想
賢者の塔頂上・マホメトの部屋
ヨシュア 「私は…他人の心には土足で踏み込む一方で、自分の心の内を明かさない人間を最も軽蔑していますから…」
回想終了

マーハ(M) 「わたしの心…わたしの記憶にあるわたしの心…」

フラッシュバック
ビル屋上のマーハ。
その体がガクリと仰け反る。

マーハ(M) 「!!」
オーフェ 「マーハさん?…マーハさん?」
マーハ 「え?」
ようやく呼ばれた事に気付いたマーハ。
マーハ 「あ、何?」
タケル 「何だ、聞いてなかったのか?」
マーハ 「ごめん」
グリン 「んなぁ、マーハは今夜何するつもりなんだ?」
マーハ 「今夜?」
ミッフィー 「そおそお、舞台の出し物や」
マーハ 「う〜ん、歌でも歌おうかな…」
タケル 「歌か…」
オーフェ 「あ、じゃあマーハさん!僕が楽器で伴奏しますよ!!」
思いついたように言い出すオーフェ。
マーハの手をしっかりと握る。
グリン 「そっか〜、んじゃオレ達も…」
ジト目のオーフェ。
オーフェ 「皆さん、演奏できるんですか?」
グリン 「う…」
黙るタケル、グリン、ミッフィー。
オーフェ 「じゃあ、これから…適当に言って竪琴でも拝借してきますんで、一緒に練習しましょう!」
マーハ 「え、あ、うん」
マーハの手を掴みサンドラの居るテントのほうへ走って行く。
その様子を呆然と眺めるタケル達3人。
グリン 「珍しく強引だな…アイツ…」
タケル 「……」
ミッフィー 「さてと、どうするんよ…ウチ等…」
タケル 「ミッフィーには精霊がいるじゃないか?」
ミッフィー 「精霊たちはウチの友達みたいなもんや。見世物にしとうない…」
タケル 「そうか…」
しばらく黙る3人。
グリン 「よし!このオレ様にいいアイデアがある!!」

○【アイキャッチ】