第10話 郷愁
シーンB
○ シエナの街・広場
晩。
準備された野外舞台の前に集まった人々。
開幕の時を今か今かと待っている。
マホメト 「これはなかなか。たいそうな人手じゃのう…」
フォウリー 「だって、すごく宣伝したの!『炎の魔術師』と『不死なる大賢者』夢の大競演!ってね!!」
ヨシュア 「『不死なる大賢者』って…お話したのですか?」
マホメト 「だって、ワシも目立ちたかったんじゃ!」
ヨシュア 「……」
呆れたように頭を抱える。
フォウリー 「今までにない大入りよ!頑張ってね!!」
観衆の方へと飛んで行くフォウリー。
マホメト 「うむうむ」
満足そうなマホメト。
ヨシュア 「しかし…」
ヨシュア、フォウリーを見て。
ヨシュア 「フェアリーですか。初めて見ましたよ。絶滅の危機に瀕し、もうシャヌーンの大森林にしか生息していないと聞いていましたが…」
ティキ 「フォウリーはの…」
テントから出てくるティキ。
ティキ 「見世物小屋に捕まっていた所をサンドラが助けたんじゃ。セイクレッドもそうだったの?」
大きな荷物を馬車から出しているセイクレッド。
セイクレッド 「ガウ。…サンドラはセイの恩人」
マホメト 「(ティキに)おぬしは…ええと…」
ティキ 「ティキですじゃ、マホメト老。ワシは言わばスカウトでしての。手先が器用なんで、主に裏方をしておりますじゃ」
舞台で前座を行っているシルクレスト&クルエの方を見る。
ティキ 「あの男…シルクレストは、サンドラの舞に人目で惚れてのう…隣のクルエはヤツの幼馴染で最初は無理矢理ついてきおったが、今じゃ本気で踊り子を目指しておる…。皆、サンドラに惹かれて集まったんじゃよ」
マホメト 「あの座長には何やら人を惹きつける魅力のような物があるのやもしれんのう…」
ヨシュア 「……」
何やら考えに耽るヨシュア。
少し間を置き、舞台を見て。
ヨシュア 「…時間ですよ。行きましょう」

○舞台上
ワアアアアァァァァ…という大歓声。
ヨシュアの炎とマホメトによる雪の結晶のイリュージョン。
舞台裏にタケル、グリン、ミッフィーとシルクレスト、クルエ。
シルクレスト 「んでだ、あんた達はどうするんだ?」
タケル 「さあ…」
シルクレスト 「さあ…じゃねえだろ?」
タケル 「俺だって聞きたいところだ!」
グリン 「まあまあ…、このオレ様に任せておけって!」
ジト目のタケル。
タケル 「それが、一番不安なんだよ…」
舞台壇上。
グリン 「どもども〜!」
舞台の上に登場するタケルとグリン。
グリン 「世紀の大道芸人グリンっす〜!」
タケル 「……」
ジト目でタケルを睨むグリン。
タケル恥ずかしそうに小声で。
タケル 「タケルです…」
グリン 「今回はちょっとしたこれを使った、小技を披露しちゃいま〜す!」
と、どこから取り出したのかナイフを観衆に見せる。
グリン 「ミッフィー、カマ〜ン!」
と、呼ばれ舞台に上がるバニー姿のミッフィー。
シクシク顔。
数十本のナイフを持って来る。
ミッフィー 「(小声)なして、ウチがこないな格好…」
ナイフを机の上に置く。
一方、扉大の板にタケルの両手両足をを縛るグリン。
タケルはグリンにのみ聞こえるような声で。
タケル 「なあ、グリン。俺、凄く嫌な予感がするんだが…」
グリン 「たははは。んまあ、オレ様も初めてなんだが心配ねえって!」
タケル 「イッ…」
舞台の方を振り返るグリン。
グリン 「まずは一刀目!」
タケルの方に投げられるナイフ。
タケル 「イイッ!」
タケルは頭を振ってそれを避ける。
冷汗のタケル。
グリン 「いんや〜、ちっと手が滑っちまった!」
ドッ!…と笑う観衆。
タケル(M) 「コイツ…マジか!」
グリン 「んじゃ続けて2、3、4、5、6、7、8、9、10、11、12、たくさん!」
タケル 「うああああ!!」
次々に投げられるナイフ。
避けきれないタケル、両手両足を無理矢理引き千切りそれを避ける。
寸ででかわし切るタケル。
ワアアアアァァァァ!…歓声と拍手。
タケル 「ゼエゼエ…」
グリン 「いや〜、バカ力ですね〜」
その観衆に応えるグリン。
タケル 「ほお〜、じゃあ、次はお前の番だな…」
グリンの背後からタケル。
その目は殺気に満ちている。
グリン 「オイオイ…」
タケル 「お前というヤツは〜、この三白眼!」
グリン 「んだ〜、冗談が通じねえヤツだな!このチビ!!」
舞台上で色々と物を投げ合う2人。
爆笑の渦、もはやコントである。
その様子を始めは呆れたように見ていたミッフィーだが。
ミッフィー 「ええかげんにせんかい!!」

○ 舞台袖
その様子を見ていたシルクレストとクルエ。
シルクレスト 「あっちゃ〜」
頭を抱える。
クルエ 「んまあ、ウケてるからいいんじゃないの?」
サンドラ 「さてと…」
着がえのテントから出てくるサンドラ。
続いてマーハとオーフェ。
サンドラ 「行ってらっしゃい」
マーハとオーフェは揃いの衣装。
舞台下手から袖に出てきたタケル達3人。
舞台から聞こえる歓声に振り向く。