第11話 命賭す者
シーンA
○街の城壁の外・山中
1人、薬草を摘んでいるマーハ。
マーハ 「よし!これだけあればイイよね」
満足げに立ちあがる。
切り立った崖の上に立っている男、その顔に表情は無い。
マーハの上にその男の影が落ちる。
顔を上げ男に気付くマーハ。
マーハ 「あの人?」

フラッシュバック
ビル屋上のマーハ。

マーハ 「いけない!」
男は虚空を見つめている。
ふと、崖から歩み進める。
体が空を仰け反ったその時。
マーハ 「だめええええェェェェッ!」
後ろから抱くマーハ。
男(ダルス) 「!」
一瞬驚いたような男の表情。
マーハ 「きゃ、わああああぁぁぁぁッ!」
マーハは男の体重を支えきれず、二人共崖から転落する。
マーハ 「……」
男(ダルス) 「……」
折れた木の枝の上に折り重なる様にして気を失っている二人。

○【サブタイトル】




○エディンバラの街・通り
通りに立つタケル。
通りには人影は無い。
タケル(M) 「ロッドの光は東を示した。俺達は、シエナからさらに東の山中にあるエディンバラという街に来ている。シエナに比べると本当に小さな街だ」
通りの向こうからグリンとミッフィー。
タケル 「どうだった?」
ミッフィー 「手がかり無しや」
タケル(M) 「ロッドはこの街で光を失った。つまり、最後のレインがこの街にいるという事だ」
グリン 「シエナもそうだったが、こんだけ探してんのに全くそれらしい情報もねえし…ありゃ、マーハは?」
タケル 「オーフェと一緒に薬草を探しに出てる」
グリン 「もう、この街から出て行っちまったのかも知れねえな…」
タケル 「……」
通りの向こうからヨシュアとマホメト。
ミッフィー 「そっちはどうや?」
二人とも首を横に振る。
ヨシュア 「どうも、こうも…本当にこんな田舎町にいるのでしょうかね?」
タケル 「ロッドが示したんだ。間違いない」
マホメト 「それよりものう…気になる事があるんじゃ」
タケル 「この街か?」
マホメト 「うむ。真昼だというのにこの静けさ…。人もおる様じゃが、皆一様に死人のような顔をしとる」
グリン 「昔ハサラ砂漠で、これと似たような街に入った事があるが、あん時ゃ本当に死人だったぜ」
マホメト 「いんや、相応の自意識を持っておる様じゃし、生気も感じる」
グリン 「んじゃ、何だってんだ?」
ヨシュア 「それがわからないから迷っているのでしょう?」
グリン 「ぐ…」
ジト目でヨシュアを睨むグリン。
タケル 「とにかく、もう少し粘って見よう」

○街の城壁の外・山中
岩陰で倒れる男を介抱するマーハ。
水に濡れた布で男の血を拭っている。
男(ダルス) 「……」
目を覚ます男。
マーハ 「気がついた?良かった…木がクッションになって助かったんだ」
男(ダルス) 「!」
マーハの顔を見て自分の置かれた状況に気付き体を起こそうとするが、痛みの為上がらない。
マーハ 「無理はしない方がいい。頭を打っているんだから…」
男(ダルス) 「……」
マーハ 「水、飲む?」
自分の水袋を差し出すマーハ。
男はそれを奪うように手に取り、口につける。
オーフェ 「マーハさぁん!」
遠くからマーハを呼ぶオーフェの声。
マーハ 「いけない。連れがいるんだ。それ置いていくね。あと…」
マーハ、薬草を半分男の傍に置く。
マーハ 「これ、あげる。アルニカっていって、傷によく効くんだって」
その場を立ち去ろうをするマーハを男は見ようともしない。
最後にその男に振り返るマーハ。
マーハ 「また来る。名前だけ教えて?」
男、表情も無く感情もない言葉で。
ダルス 「ダル…ス…」
始めて聞く男の言葉に、微笑むマーハ。
マーハ 「分かった、ダルス。またね」

○エディンバラの街・宿屋
夕食を囲むマーハ、ヨシュアを除く一行。
ぼんやりとした目つきの主人が、一行に食事を運んでくる。
レイン達 「……」
食事を運び終えると、会話も無く立ち去ろうとする主人。
マホメト 「のう、ご主人?」
マホメトの声に振り返る主人。
マホメト 「街の中央にある大きな屋敷には一体誰が住んでおるんじゃ?」
主人 「…御領主様です…」
それだけ答えると、部屋を出て行く主人。
タケル 「やっぱり様子がおかしいな」
マホメト 「うむ、あの主人はおろか町全体に漂う魔力のようなものを感じおる…」
タケル 「こうなればその領主とやらに直接訪ねてみるか…」
マホメト 「確かに…何か知っているかもしれん。あるいはその張本人か…」
食事を頬張るグリンとミッフィー、オーフェ。
グリン 「でもよう、魔将にしたってそれなら、何度でも襲うチャンスはあった筈だぜ」
ミッフィー 「せやね、ご飯に毒かて入れられるしな〜ぁ。まあ、毒も効かんような胃袋もっとる、エルフも居るし、分からんけど」
グリン 「んだと〜!」
ミッフィー 「ウチはほんまの事言うたまでや」
グリン 「そおいうオマエこそ、きっちり二杯目じゃねえか!」
ミッフィー 「ウチは育ち盛りなんや!」
マホメト 「そう言えばマーハはどうしたんじゃ?」
オーフェ 「ええ、てっきりヨシュアさんと一緒だと思ったのですが?」
マホメト 「いや、ヨシュアは何やら調べたい事があるというて夕方に出て行ったきりじゃよ」
オーフェ 「マーハさんも…すぐに戻るからと…」
一行 「……」
顔を見合わせる5人。

○街の城壁の外・山中
岩陰に体を休めているダルス。
ダルス 「!」
近付いてくる人影に身構えるダルス。
人影はマーハである。
マーハ 「怪我は大丈夫?」
顔を背けるダルス。
ダルス 「……」
マーハ 「あ、食べ物を少し持ってきたんだ。本当はこっそり持ってきたんだけどね」
籠からパンやら食事を出すマーハ。
しかしダルスは口にしようとしない。
ダルス 「……」
マーハ 「別に怪しいものじゃないよ。それに、美味しいと思うけど…」
と、ダルスの目の前で一口パンを口にするマーハ。
ダルス 「何故だ…」
マーハ 「え?」
ダルス 「何故俺を助けた?」
突然語り出すダルスにやや、気後れするマーハ。
マーハ 「危ないと思ったら体が動いてた。目の前で人が危険な目に会っていたら、誰だって助けるでしょう?」
ダルス 「俺は魔族だ」
魔族に特有の尖った耳が夕日の光に照らされる。
マーハ 「別に。関係無いもの」
ダルス 「……」
マーハ 「魔族だからって、差別をする事はないと思う」
ダルス 「……」
マーハ 「そうだよ、魔族だからって、髪が銀色だって…関係ない…同じ様に生きてるじゃない」
段々と我を忘れて行くマーハ。
その様子に魅入るダルス。
マーハ 「同じ様に大気を吸って吐いて、美味しい物を食べて寝て、今日あった事を話して、喜んで怒って悲しんで楽しんで、人を愛するようになって…皆生きてるじゃない!」
ダルス 「!」
ダルスの右手を握り胸に抱くマーハ。

マーハ 「死んじゃだめだよ!死んでは何も残らない!!」

ダルス 「…お前は」
マーハは小さく恐怖に震えている。
ヨシュア 「……」
その様子を木の枝の上から隠れて見ているヨシュア。
その表情。

○ エディンバラの街・宿屋前
深夜。
宿屋まで一人で帰ってくるマーハ。
入り口前には怒ったようなタケルが立っている。
マーハ 「あ、タケル…起きてたんだ」
タケル 「お前、今まで何してたんだ?」
マーハ 「うん、ちょっと、レインを探しにね…」
タケル 「今、どんな時間だか分かってるのか?」
マーハ 「…ごめん」
タケル 「お前一人の体じゃないんだぞ!お前に何かあったら、レインは…」
マーハ 「分かってる!」
怒っているタケルを真剣な眼差しで見つめ返すマーハ。
タケル 「……」
タケルは一瞬言葉に詰まる。
マーハ 「わたしが死んだらもう、レインは集わないものね」
タケル 「分かってるんだったら、もう少し考えて行動しろよ…」
マーハ 「……」

○領主の館・領主の部屋
朝日の差し込む窓のすぐ傍で腰掛けているダルス。
額と左肩に巻かれた包帯。
右手を見つめている。
手にはアルニカの小さな白い花が1輪。
ダルス 「……」
とその部屋に入ってくる、鉄仮面、プレートアーマーの男。
鉄仮面の男(ガルシアン) 「その傷はどうしたのだ?」
ダルス 「……」
鉄仮面の男(ガルシアン) 「一体昨晩何があったのだ、兄者?」
振り返るダルス。
ダルス 「…ガルシアンか…」
ガルシアン 「!」
ダルス 「花を探しに行っていた」
ガルシアン 「花を?」
?(バアル) 「これはこれは、随分と余裕なものですな?」
ダルス、ガルシアンが振り返ると魔将の老人バアル。
ガルシアン 「バアル!…ルシファーか、小癪な真似を」
バアル 「それはそれは。ルシファー様の御心遣いと心得て頂きたいものですな」
ガルシアン 「フン、大方我等の手柄を狙い来たのだろうが…」
ダルス 「よせ、ガルス」
ガルシアン 「!」
バアル 「おやおや、ダルシアン様。お言葉を取り戻されたようですな?」
ダルス(ダルシアン 「……」
ガルシアン 「席を外せ、バアル!」
バアル 「作戦決行の際には、是非お声がけ下され。街の人間共の準備は出来ておりますぞ。ヒヒヒヒッ…」
部屋を出て行くバアル。
扉は硬く閉ざされる。
ダルシアン 「心配をかけたな、ガルス…」
ガルシアン 「何があったのだ?」
ダルシアン 「言っただろう、花を探しに言っていたと…」
ガルシアン 「(ダルシアンの手にある花を見て)アルニカの花。その薬草が?」

ダルシアン 「白い…花が俺の傷を癒した」

意を決したようにガルシアンを見るダルシアン。
ダルシアン 「ガルス…」
ガルシアン 「……」
ダルシアン 「お前は一度城に戻れ…」
ガルシアン 「な、何故だ兄者?共にルラを討つのではなかったのか?」
ダルシアン 「ルラ1人。俺1人で十分だ」
ガルシアン 「だが、兄者…」
ダルシアン 「ガルス…この俺に何かあっても、父の様に俺を恨んでくれるな」
ガルシアン 「何を言う!何故今時になって裏切り者の父の名など…」
ダルシアン 「…城に戻れ、ガルス…」
ガルシアン 「兄者…」

○【アイキャッチ】