第11話 命賭す者
シーンC
○街の城壁の外・山中



ダルシアンが飛び降りた崖の上。
夕日が差す。
ダルシアンの墓碑には彼の大剣が刺してある。
墓碑の前に両腕に一杯のアルニカの花を持ち、只1人立つマーハ。
マーハ 「……」
マーハは腰を下ろし、アルニカの花束を墓碑に捧げる。
ヨシュア 「……」
その後ろからそっと近付いてくるヨシュア。
マーハ 「彼方が好きだって言ってくれた花だ…」
ヨシュア 「……」
マーハ 「(墓碑に)死んでは何も残らない…そう言ったじゃないか…」
ヨシュア 「でも、貴方が残りました」
マーハ 「人1人の命を救えずに、世界を救うことなんて出来るはずが無い。そう思ってた…。でも、結局私はダルスを助ける事が出来なかった!」
ヨシュア 「……」
マーハ 「答えて、ヨシュア。ルラは一体なんだと言うの?守られるばかりで、力は無い、世界を救うと伝承で歌われながらも、多くの人間の命を奪い、その命を踏み台にしてのうのうと生き長らえている、己の命を自分の意思で捨てようとした事のある人間だと言うのに。それでも…それでも…ルラはその使命を全うしなければならないものなの?」
ヨシュア 「……」
マーハ 「本当は今だって信じられない。これは夢なんじゃないか?…死ぬ間際の夢を見ているんじゃないかって…」
顔を俯けたまま上げる事の出来ないマーハ。
マーハ 「わたしは『ルラ』と呼ばれるような価値のある人間じゃない…」
ヨシュア 「ルラとは貴方です」
マーハ 「……」
ヨシュア 「貴方が貴方らしくある事…それが、貴方がルラと呼ばれる理由です」
マーハ 「わたしが、わたしらしくある事…」
ヨシュア 「自分を偽る必要は無いのですよ。ルラを演じる事は無いのです」
マーハ 「……」
ヨシュア 「私もレインの名に束縛される事は無いと思っていますからね。もしレインであると言う事で、私自身で無くなると言うのなら…私はいつだってレインを降ります」
その場を静かに離れるヨシュア。
やや後ろで間を置き立っていたタケルとすれ違う。
タケル 「……」
ヨシュア 「……」
一瞬視線の合う二人。
マーハへゆっくりと近付くタケル。
マーハ 「!」
その足音に気付き立ち上がりタケルへと向きかえるマーハ。
マーハのぎこちない笑顔。
マーハ 「ロッドは北を示した。きっと北に向かえばガルシアンの方からわたし達に会いに来る。そんな気がするんだ。でも、きっと…殺すつもりで向かってくると思うの。だから、どうにかして説得しなくちゃいけない。それに、魔王の動きも気になるね。最後のレインだ…いよいよ本気で…」
タケル 「もういい!」
ビクッ…と体を震わせるマーハ。
タケル 「すまなかった…」
マーハ 「何で謝るの?」
タケル 「俺が、お前にルラである事を強要していたんだ」
マーハ 「…なに言ってるの?わたしがタケルに謝られる理由なんて無い。むしろ憎まれて当然じゃない?私がこの世界に来たせいで、タケルは全てを亡くしたんだよ!」
涙目のマーハ。
タケル 「俺は『ルラに必要なのは力だ』そう信じてきた…でも、あの日スサノオに言われたんだ」
マーハ 「……」
タケル 「ヒミコもナギもみんな分かってた。分かってないのは俺だけだったんだ。ルラに必要なものなんてない。ルラはお前自身なんだから…あいつも言ってただろ…」
マーハ 「……」
タケル 「もう強がらなくていい」
マーハ 「…あの村でナギとみんなに誓ったのに…もう泣かないって…」
マーハの瞳からはらはらと流れる涙
マーハ 「…彼が好きだったんだ…でも救えなかッ…」
涙で最後は言葉にならない。
マーハ 「!!」
タケルの胸に顔を埋めるマーハ。
タケル、そっとマーハを抱きしめてやる。
マーハ、すがりつく様にして声を殺しながらさらに泣く。

To be continued…
LEGEND