第13話 星墜つ刻
シーンC
○ ヘパイストスの鍛冶場・入り口
扉の前で待つグリン。
顔には引っかき傷。
そこへ暗い表情のマーハが帰ってくる。
グリン 「いよう!」
マーハ 「グリン、どうしたんだ?その引っかき傷…」
グリン 「ハハハッ(苦笑)や〜、ちょっとな。どうだ、さっぱりしてきたか?」
マーハ 「……」
グリン 「って、顔じゃあなさそうだな?」
マーハ 「グリン…わたしは…」
グリン 「あいつとケンカでもしたか?」
マーハ 「え(驚)?タケルから聞いたの?」
グリン 「いんや。伊達に長く付き合ってるわけじゃねえだろ?オレ達…」
マーハ 「グリン…」
グリン 「んまあ、あらかたの想像はつくさ。あいつはさ、お前がそばに居てくれりゃあいいんだよ…」
マーハ 「わたしが?」
グリン 「お前が居れば、あいつは自分で居られるんだ」
マーハ 「……」
グリン 「とにかく、年寄り共はこのオレ様に任せとけ、『うん』と言わせてやらあ!マーハは心配しなくてもイイぜ。…それに只、毎晩剣を振ってた訳じゃねえだろ?」
ウインクをして見せるグリン。
マーハ 「グリン…ありがとう」
マーハ、目を潤ませ感謝の言葉。
グリン 「よせやい!」
照れるグリン。
そして小さく、呟く。

グリン 「オレだって…そうかもな」

マーハ 「え?」
聞こえていないマーハ。
グリン 「いや、何でもねえよ」
マーハ 「グリン…お願いがあるの…」
グリン 「おう?」
マーハ 「わたしに何かあった時…タケルをお願いね」
グリン 「な、何バカな事言ってやがるんだ!?」
マーハ 「タケルはあの時全てを無くしてしまったから…私が居なくなった時、彼は独りぼっちになってしまう…そんな時、わたしの次にタケルに近いのは、グリンだから」
グリン 「もう、よせよ。物騒な事言うもんじゃねえ」
辛辣な顔から、朗らかな表情に戻るマーハ。
マーハ 「わたし、タケルと話してくるよ!」
グリン 「おう!」
家に入っていくマーハを見送るグリン。
グリン 「(独り言)あ〜あ、らしくねえよな。オレ様…」
トホホ…と苦笑い。

○ 同 一室
憮然としたタケル。
ベッドに大の字になっている。
コンコン…とノックの音。
ガバッ…と慌ててベッドから起き上がるタケル。
マホメト 「タケル…入るぞ」
タケル 「なんだ、マホメトか…」
マホメト 「フォッフォッフォッ…」
笑って部屋に入ってくるマホメト。
マホメト 「マーハでなくて残念かの?」
タケル 「ち、違う!」
タケル、拗ねた様。
マホメト 「タケルよ…マーハの気持ち、分かってやってはくれんか?」
タケル 「マホメト…あんた、マーハとガルシアンが戦っている時に『ロッドを使うことは…ホワイトストーンの力を使うことはならない』…って言ったよな」
マホメト 「うむ」
タケル 「どういう意味だ?」
マホメト 「端的に言えば…ホワイトストーンの力を使うことにより、今回の様な事態が起こり得ると言う事じゃ」
タケル 「今回のような事態?」
マホメト 「マーハは視力を失っておった…。一時的にじゃがな」
タケル 「何だって…」
マホメト 「これ以上、マーハの身を危険に晒すつもりか?」
タケル 「……」
マホメト 「それは、お主の我侭ではないのか?」
タケル 「……」

○ 同 玄関
グリンと同じ様な引っかき傷のオーフェ。
ミッフィーに責められている。
ミッフィー 「ま〜さか、オーフェまでこないなコトするとは思わんかったで!」
オーフェ 「ですから、僕はグリンさんに無理矢理ですね…」
ミッフィー 「聞く耳もたん!」
オーフェ 「(独り言、呟)酷いです…グリンさん…逃げ足、速いんですから…」
ミッフィー 「一緒に居ったんなら同罪や!」
オーフェ 「ううッ、信じてくださいよ〜」
シクシク目のオーフェ。
ふと家を出て行こうとするマーハに気付く。
オーフェ 「あれ、マーハさん?」
ミッフィー 「こないに遅く、どこに行くんよ?」
マーハ 「あ、二人共…ちょっと、タケルと話してくる」
オーフェ&ミッフィー 「?」
家を出て暗い森の中に入っていくマーハ。
その奥に、振り返りもせず只、早足で歩いていくタケル。
その表情は分からない。

○ 同 一室
ヨシュアの部屋。
ヨシュア、その横にガルシアン。
ヨシュアは神妙な顔でタロットカードを指定の位置に置く。
セブンス・プラネッツ展開法。
ヨシュア 「……」
ガルシアン 「占いか?」
ヨシュア 「ええ、迷いが生じた時に…でも、所詮は占いですよ」
1枚目に塔。
そのカードにヨシュアの顔は曇る。
ガルシアン 「何か?」
ヨシュア 「いえ…」
2枚目に逆位置の月。
ヨシュア 「逆位置の月…」
ガルシアン 「月…マーハか?」
3枚目に正義。4枚目に逆位置の運命の輪。5枚目に逆位置の恋人。6枚目に逆位置の吊るされた男。
ヨシュア 「……」
表情が険しくなっているヨシュア。
最後の1枚を捲る。
死。
ヨシュア 「いけない!」
ガバッ…と起ち上がるヨシュア。

○ 森の中
夜。
早足で先を行くタケルに追いかけるマーハ。
暗い森の中、浅い水溜りのような泉でタケルは立ち止まる。
つられてマーハも立ち止まる。
タケルはマーハの方を振り返らない。
マーハ 「タケル…話があるんだ…」
タケル 「……」
マーハ 「わたしもみんなに付いて行くよ。足手まといにならない様に努力する。時間は無いけど、もっと一生懸命、剣の稽古をするよ…だから…」
タケル 「クククク…(笑)」
マーハ 「タケル?」
タケル 「ハハハハハハハハッ(笑)そいつは無理だな、『導きの星』ルラ=マーハ!」
マーハ 「!(驚)」
タケルはマーハの方に振り返り、幻術は解ける。
四天王・ルシファー。
ルシファー 「お前はここで死ね、『ディヴィザム』!」
マーハ 「!」
マーハに迫る黒いカマイタチ!

○ ヘパイストスの鍛冶場・玄関
玄関には依然、オーフェとミッフィー。
今までに無い慌てぶりのヨシュアが駆け込んで来る。
その後ろから、追って来るガルシアン。
ミッフィー 「何や2人共。エライ顔して?」
ヨシュア 「マーハは…マーハを見かけませんでしたか!」
オーフェ 「マーハさんなら…タケルさんを追って、ついさっき出て行かれましたが…」
ガルシアン 「何だって!」
と、騒ぎを聞きつけたのかタケル、グリン、マホメトが部屋から出てくる。
タケル 「一体…何の騒ぎなんだ?」
タケルが部屋に居た事に驚く、他レイン達。
グリン 「な、タケル。何でテメエここに居るんだ!?」
タケル 「何のことだ?」
ヨシュア 「師匠!」
マホメト 「いかん、罠か!!」
置かれた状況に気付き青ざめるマホメト。
ヘパイストス 「ヒイイイイィッ〜!」
外から逃げるように飛びこんでくるヘパイストス。
息も切れ切れ、顔は恐怖。
ヘパイストス 「ハアハア…大変だあッ、老師。ウチの周りは魔将だらけだ!」
ガルシアン 「囲まれたか!」
一行、構える。

○サクリファイスの泉
マーハ 「クハッ!」
木に撃ち付けられるマーハ。
暗黒魔法の直撃を受け、傷だらけ。
ルシファー 「これで逢うのは4度目になるか?マーハ…」
マーハ 「ルシファー!」
身体を庇い起ち上がるマーハ。
ルシファー 「過去3回、よくぞ生き長らえたものだ。奇跡を起こす娘か…」
マーハ 「律儀に数えたものね…。でも…」
持っていたロッドを構えるマーハ。
鞘は出るが以前のような輝きは無い。
マーハ 「そう簡単には逝かない。相打ちになろうとも、あなたを討つ!」
ルシファー 「死を覚悟したか…。お前は自分の存在価値に気付いてはおらん様だな…ならば好都合…」
マーハ 「わたしの…存在価値?」
ルシファー 「お前は救世主レインの…奇跡の要!」
マーハ 「か…なめ…だって?」
腰から自分の剣を抜くルシファー。
その切っ先をマーハに向ける。
ルシファー 「奇跡はこれで終わりだ…」
マーハ 「……」
お互いに牽制する間合い。
マーハ 「ハアアアアッ!」
マーハ、ルシファーに斬りかかる。
ルシファー 「フ…」
剣で受けるルシファー。
ルシファー 「非力な…」
マーハ 「クッ…」
ルシファーは剣で受けたままマーハのロッドを打ち返す。
マーハ 「なッ!」
ルシファー 「『ディヴィザム』!」
マーハ 「きゃあああッ!」
再び吹っ飛ばされるマーハ。
木に撃ち付けられる。
マーハ 「ツッ…」
ルシファー 「お前のような娘に、この私がここまで翻弄されようとはな…マーハ」
マーハに近付いてくるルシファー。
マーハ 「まだだ…まだだあッ!…」
気力を振り絞り、起ち上がる傷だらけのマーハ。
ルシファー 「死ねいぃ!」

○ 森の中
走るレイン達。
タケル(M) 「間に合ってくれ!」

インサート
マーハとルシファー、鍔迫り合い。

タケル(M) 「間に合ってくれ!」

インサート
ルシファーの剣がマーハの腕を翳める。
苦痛に歪むマーハの顔。

タケル(M) 「間に合ってくれ!」

インサート
続け様のルシファーの攻撃に、マーハは何とかロッドで受ける。
折れるロッドの刃!

タケル(M) 「間に合ってくれ!」
マーハ(M) 「みんな…」
レイン達の脳裏に響く、マーハの声。
マーハ(M) 「みんなと逢えて…」
レイン達の眼前。
マーハとルシファー。

スローモーション。
マーハの身体を貫くルシファーの剣。
マーハ(M) 「本当に良かった…」
マーハから剣を抜くルシファー。
マーハの身体は仰け反り、そのまま前のめりに倒れる。
タケルを除くレイン達 「〜!!」
タケルを除くレイン達の絶叫。
マーハに向かい駆け出して行くレイン達。
だが、声はミュート。
タケル 「……」
放心状態のタケルはその場を動けない。
ルシファー 「ククククッ…ハハハハハハハハッ…ついに、ついにこの手でルラを仕留めたぞ!クハハハハハハハハッ(笑)…」
高らかに笑うルシファー。
静寂の森林を木霊する。
タケル 「う…あ…」
放心状態のタケル。
その足元に、水に混じりマーハの血が流れてくる。
タケルはそれに気付く。
タケル 「ウアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアッッッッッッッッ!!!!(絶叫)」





ルシファー 「!」
笑うルシファーに対し剣を構え走るタケル。
タケル、自分の剣を我武者羅に振るう!
ルシファー 「なッ!」
タケル 「はあっ、くっ、うわああああっ!!」
気合とも叫びともとれるタケルの声と共に次々に繰り出される剣。
ルシファー 「クッ!」
防戦一方のルシファーは堪り兼ねず、宙に飛ぶ。
ルシファー 「チイイイイッ!」
タケル 「!」
を両手に持ち垂直に大きく振りかぶった後、泉に突き刺すタケル。
ルシファー 「何!」
その突きに呼応したかの様に、鋭い水流がルシファーを襲う!
ルシファーの左目を切り裂く水流!
ルシファー 「グハアッ、目が…目が…!!」
さらに高く跳ぶルシファー。
ルシファー 「おのれ…レイン共…覚えておれ!」
姿を消すルシファー。
タケル 「ハアハアハアハアハア…」
タケル、大きく肩を揺らし息を切らす。
ミッフィー 「イヤやああああッ!」
ミッフィーの絶叫にレイン達の方に振り返るタケル。
タケル 「……」
呆然としてレイン達に近付いて行く。
ミッフィー 「フニュアアアア(泣)」
涙でグチョグチョのミッフィー。
オーフェ 「傷を癒せ『キュア』…『キュアライト』!ハアハア…『キュアライト』!」
依然、変化の無い状況。
グリン 「…もう…よせよ」
グリンは無言でオーフェの手を制する。
グリン、その表情。
涙を流すオーフェ。
オーフェ 「そんな…そんな!」
ガルシアン 「なんて事だ…」
マホメト 「……」
ヨシュア 「……」
ヨシュア、無言で血に汚れたマーハの顔を拭う。
その表情。
タケル 「マーハ…?」
タケルの為に場所を空けるレイン達。
マーハの前でタケルはがくりと膝を落とす。
潤むタケルの瞳。
タケル 「マーハ…?」
静かにマーハの頬に手で触れるタケル。
タケルの頬を流れる一筋の涙。
タケル 「マーハ…!」

インサート
ホワイトストーンの上に落ちるタケルの涙。

その時、マーハの右手に握られていたロッドの柄からホワイトストーンが離れる。
柔らかい白い光を放ち宙に浮かぶホワイトストーン。
レイン達 「!」
マーハの身体がやや宙に浮かんだ後、白い光りに包まれる。
光りの粒子となって空へ消えて行く。
その光りを見送るレイン達…
マホメト 「(呟)イリス…」

○ ヘパイストスの鍛冶場・食堂
昼。
ぼんやりとオーフェが只1人座っている。
そこへ、目を晴らしたミッフィーが入ってくる。
オーフェ 「おはようございます…」
ミッフィー 「フニュ、おはよ…」
オーフェ 「あまり、寝ていないようですね?」
ミッフィー 「…他のみんなは?」
オーフェ 「タケルさん以外は…」
ミッフィー 「そか…タケルが一番辛いやろな…」
2人、その表情。

○ 同 一室
ヨシュアとガルシアン。
ヨシュア 「師匠と私は…こうなる事を恐れていました」
ガルシアン 「……」
ヨシュア 「ルラの奇跡も、レインの結束も…彼女が生きていればこそだった…。彼女を失った時の代償は大きい…特にタケルは…」
ガルシアン 「フフフ…」
ヨシュア 「え?」
ガルシアン 「口では色々言っていたようだが、お前もレインなのだな…」
ヨシュア 「…そうですね」
ヨシュア、ガルシアンの寂しげな苦笑。

○ サクリファイスの泉
泉の中央にマーハの墓碑。
墓碑にはホワイトストーンを失い、刃の折れたロッドが刺さっている。
そこに独り立つグリン。
ロッドを静かに見つめている。
後方より、マホメト。
マホメト 「グリンよ。お主にしかできん事じゃ」
グリン 「わ〜ってるよ。マーハに頼まれたんだ…。あいつにとっちゃあ…マーハが…全てだった…」
マホメト 「……」
グリン 「でもよぉ、マホメト…夕方まで待ってくれねえか…。オレだって…、オレにも時間をくれ…」
マホメト 「…すまんな…」
静かにその場を離れるマホメト。
独り残されたグリン、俯く。
震える、グリンの身体。
グリン 「(呟)…マーハ…」
表情は分からないが、泉に落ちる一滴の涙。

○ヘパイストスの鍛冶場・廊下
夕方。
ある部屋の扉の前にミッフィー、オーフェ、ヘパイストス。
ヘパイストス 「タケルさん、タケルさん!…起きてるんですか?」
ドンドン!…とノックするヘパイストス。
オーフェ 「タケルさん!…今は大切な時なんです、せめて何か食べてください!体を壊してしまっては…元も子もないでしょう!」
ミッフィー 「んなあ、タケル!顔だけでも見せてや!」
そこへズカズカとグリンがやって来る。
その後ろにマホメト。
その騒ぎを聞きつけたのか、ヨシュアとガルシアンも現れる。
グリン 「お前ら…そこどけ…」
オーフェ 「な、グリンさん?」
ミッフィー 「何や、今頃…」
グリン 「おう、ヘパイストス…修理代はジジイに請求してくれ!」
マホメト 「すまんのう、ヘパイストス…」
ヘパイストス 「へ?」
ドゴッ!…とドアを蹴破るグリン。
ガルシアン 「やれやれ…」
ヨシュア 「乱暴ですねえ…」
グリン 「!」
部屋の隅のほうにうずくまるタケル。
生気の無い顔。
グリンはそのまま大股でタケルに近付いて行く。
グリン、タケルの襟を乱暴に掴み、無理矢理立たせる。
タケル 「(呟)ナギ…すまない…俺は…」
グリン 「!」
タケルを殴る。
殴り飛ばされるタケル。
タケル 「!」
オーフェ 「グリンさん!」
ミッフィー 「あのなあ、アホエルフ!ボカスカ殴ればイイっちゅうもんやないで!」
怒るオーフェ、ミッフィー。
が、それをマホメトが制する。
オーフェ&ミッフィー 「マホメト(さん)…」
マホメト 「……」
グリンは半身を起こしたタケルに近付き、再び襟を掴み立たせる。
グリン 「このオレ様をよく見ろ、タケル!」
タケル 「!」
グリン 「よく見ろ、タケル!」
タケル 「…グリン?」
グリン 「テメエ1人が哀しいわけじゃねえ、辛いわけじゃねえ、悔しいわけじゃねえ。でもよ、…それでどうなるってんだ!マーハはそれを望んじゃいない!!」
タケル 「……」
グリン 「違うか…?」
タケル 「…マーハは…もう居ない…」
グリン 「そいつは違うぜ、タケル!」
タケル 「……」
グリンは襟を放し、タケルの胸を指す。
タケル 「?」
グリン 「テメエ…」
そして、自分の胸を親指で指すグリン。
グリン 「オレ様、それにここに居るヤツラみんなに、マーハはオレ達に残してくれただろ?」
やや間。
レイン達、それぞれの表情。
タケル 「…グリン…」
グリン 「おう?」
タケル 「お返しだ!」
先ほどと同じ様にタケルが逆にグリンを殴る。
グリン 「いって〜、こんのバカ力、本気で殴りやがった!」
タケル 「…フ…」
微笑むタケル、座り込んでいるグリンに手を貸す。
グリン 「へへへッ!」
タケルの手を借り立ち上がるグリン。
他レイン達 「……」
他レインはその様子を見て安堵の微笑み。

To be continued…
LEGEND