第19話 復活の血族
シーンA
○キャンプ・深夜
焚き火を前に、見張り当番のマルスが座っている。
他のレインとシュスフィーナは深い眠りについている。
マルス 「……」
右手の手袋を外す。
その手を見つめるマルス。
マルス 「……」
そして左手で、フードを止めている大きな藍色の石に触れる。
マルス 「もう、間に合わない…」

○ 【サブタイトル】





○メンフィスの街
以前の様な賑わいはなく、閑散としている。
行き交う人は斑である。
オーフェ 「これが、あのメンフィスなんですか…」
シュスフィーナ 「カジノがあるっていう位、賑やかな街じゃなかったの?」
ヨシュア 「この時勢ですからね…」
ガルシアン 「ああ、北に近いほど…、デストニアに近いほど魔将の出現率は高い」
シュスフィーナ 「ええ〜、楽しみにしてたのに〜!」
ガルシアン 「とにかく宿を探したほうが良さそうだな」
シュスフィーナ 「行きましょ、タケル!」
タケル 「……」
シュスフィーナ 「タケル?」
タケルはぼんやりとしているのか、反応が鈍い。
タケル 「ああ、悪い…」
シュスフィーナ 「もう、早く!」
シュスフィーナはタケルの腕を引っ張り、先へ歩く。
そのタケルの様子を見てグリン。
グリン 「ありゃ〜、そうとう気にしてるな」
ミッフィー 「何が?」
グリン 「アクスタインが…先代のブルーストーンのレインが生きてたことさ…」
オーフェ 「自分が『レイン』であるか疑っているんですね…」
グリン 「あいつはレインだ。間違いない。マーハが…マーハが選んだんだからな…」
ヨシュア 「師匠の時とは態度が随分違いますね?」
グリン 「マーハに頼まれてんだよ…『あいつを頼む』ってな」
マルス 「……」
ミッフィー 「とにかく、賢者の塔に行けばジッちゃんに会えるんやろ?」
マルス 「……」
頷くマルス。
ミッフィー 「そしたら、全部分かることや」
街の人(ガヤ) 「魔将だ〜〜〜!」
その声に振り返る、一行。
屋根を越えるほどの巨人、魔将・オーガー。
家屋を破壊する。
街に響く人々の悲鳴。
ミッフィー 「助けな!」
ヨシュア 「これは急いだ方が良さそうですね」
と、同時、レインの横をすり抜けていく半透明のタケル。
グリン 「なッ!」
タケル 「えッ!」
先を歩いていたタケルもその幻影に驚く。
シュスフィーナ 「何なの今の!」
次に通り抜けていくグリンの幻影、オーフェの幻影。
オーフェ 「うわぁッ!」
ガルシアン 「あちらから来るな!」
その方向から走ってくる、ミッフィーの幻影。
幻影は次々と、オーガーに戦いを挑む。
ヨシュア 「一体誰がこんな真似を?」
その方向に走る、一行。
途中、ヨシュアの幻影とすれ違う。
タケル 「悪事を働いてるわけじゃなさそうだが」
その大通りの向こう。
街の人(ガヤ) 「頼みます〜、大先生!」
民衆を庇うように立つ女の子。
カタリム 「まあ、任せて下さい!」
右手に持った、ペン。
気合のポーズ。
カタリム 「ペンは剣より強しってね!」
空中にガルシアンの姿を描く。
地に立つガルシアンの幻影は振り返り、やはりオーガーに向かい戦いを挑む。
グリン 「あいつがやってんのか!」
カタリム 「よし、これが最後です!」
空中に描かれたのはマーハの姿。
一行 「!」
マーハの幻影は一行の横をすり抜ける。
タケル 「!」
グリン 「マーハ!」
シュスフィーナ 「今の人が…」
一行の横をすり抜け、オーガーへと走るマーハ。
その姿を目で追う一行。
マーハは星のロッドを翳す。
シュスフィーナ 「マーハ…さん?」
オーガー 「グアアアアァァァァ!」
オーガーは消滅する。
同時、レインとマーハの幻影も消滅。
カタリム 「ハッハッハッ〜、どんなモンですか!」
街の人(ガヤ) 「おい、アレ…」
民衆の何人かが、歩いてくるレインに気付く。
一方民衆の方を向いているカタリムは気付かない。
街の人(ガヤ) 「なあ、カタリム…後ろ?」
カタリム 「へ?」
後ろを振り返ると、レイン達が立っている。
カタリム 「あれ、まだピクトが消えないの?」
一番前に立つタケルの、頬を抓る。
タケル 「い、痛!」
カタリム 「モ、モノホン〜〜〜!!」
驚き5メートルくらい壁に後ずさりするカタリム。
カタリム 「大変申し訳ございません!肖像権みたいなモンてあるんでしょうか!!」
青い顔で、小さくなるカタリム。

○ 同街 宿の一室
主人に茶を出されるカタリムと一行。
カタリム 「始めまして、カタリムって言います。旅の絵描きをしながら、生計を立ててました…」
机の上に1本のペンを出す。
カタリム 「これを見つけたんです。『マギウスのペン』っていって、描いた物を幻…私はピクトって呼んでるんですけど、それを出すことが出来るんですよ」
グリン 「で、世界で名高いレイン様を描いてた訳だ」
カタリム 「だって、強いし…」
ミッフィー 「えらいもんやな…」
ミッフィーはマギウスのペンに触れる。
カタリム 「そうそう。これは私にしか使えません。そう、私のような天才画家にしか〜…なんちゃって…!」
オーフェ 「でも、直接あなたとはお会いしたことはない筈ですが」
カタリム 「世界各地を転々と歩いてたから、レインと接触した人の話を聞いて想像で描きました。フフフッ見てください、これが私の最高傑作!」
と、袋からポスターのように巻いた布を取り出し机の上に広げる。
ミッフィー 「うわぁ…」





その布に描かれている、レイン(7人)とマーハの姿。
ガルシアン 「これは、よく描けているな」
マルス 「……」
カタリム 「でも、ちょっと失敗。マーハ様は銀色の髪だって聞いてたのに、金色だったなんて…」
と、シュスフィーナの方を見るカタリム。
その言葉に、怒るシュスフィーナ。
シュスフィーナ 「わたしはマーハじゃないわ!」
部屋を飛び出すシュスフィーナ。
タケル 「フィーナ!」
シュスフィーナを追い、部屋を出る。
カタリム 「私、なんかまずい事言いました?」
グリン 「ああ、非常にまずい事を言った」
カタリム 「ええッ!」
オーフェ 「彼女にマーハをダブらせては…可哀想です…」
ミッフィー 「シュスフィーナとマーハは、顔はよう似とるけど、中身はぜんぜん違うやんか」
ガルシアン 「でも、タケルはどうだ?」
マルス 「……」
ヨシュア 「忘れるべきなんですよ…」
グリン 「忘れるなんて、そんな事出来る訳ねえだろ!」
声を荒げ、椅子から立ち上がるグリン。
窓から空を見上げるヨシュア。
暗雲、そしてポツポツと降り出す雨。




ヨシュア 「マーハはもう、居ないんです」

一行 「……」

○ 同街・広場
噴水の前で顔を伏せるシュスフィーナ。
水面に映る顔。
雨の雫が水面を揺らす。
シュスフィーナ 「あんなに似てたなんて…」
走ってくるタケル。
タケル 「良かった、ここに居たんだな」
シュスフィーナ 「わたし、マーハの代わりだったの?」
タケル 「フィーナ…」
シュスフィーナ 「だから、あんなに優しくしてくれたのね」
タケル 「違う…」
シュスフィーナ 「違うわけない!」
タケルの方を振り返るシュスフィーナ。
泣いている。
降り始める雨。
シュスフィーナ 「もう、やめようよ。こんなに辛い事。タケルもレインじゃないかもしれないんでしょ?」
タケル 「!」
シュスフィーナはタケルに抱きつく。
シュスフィーナ 「どこかに行こ…」
タケル 「フィーナ…」
シュスフィーナ 「2人で旅しよう。約束したじゃない」
タケル 「それはまだ、出来ない…」
シュスフィーナ 「じゃあ、これだけは約束して…」
シュスフィーナは顔を上げる。
涙に濡れた瞳、熱くタケルを見つめる。
タケルは魅入られた様に動かない。
シュスフィーナ 「マーハの事は忘れて…」
タケル 「……」
髪に隠れたタケルの表情は分からない。
シュスフィーナの顔がタケルの顔に近付き…キス。
マルス 「!」
建物の影に潜む、マルス。
その光景を見た後、壁に背を打つ。
マルス(M) 「…もう、だめかもしれない…」
哀しみに満ち、瞳を閉じる。

○ 【アイキャッチ】