第19話 復活の血族
シーンC
○同街 港埠頭
落雷。
荒れる海、闇の中海鳴りが響く。
ルシファーに対峙するマーハ。
ルシファー 「神と契約でも交わしたか?己が真の名を呼べば、その封印石が解かれると…」
マーハ 「……」
ルシファー 「だが、皮肉なものだ。その封印を解いたのはこの私だったのだから…」
マーハ 「黙れ…」
ルシファー 「お前を想わなかった事はないぞ。一時たりとも、忘れはしない。あの時、お前の命を奪えたとの確信はなかった。最期にお前の亡骸を、抱くことすら許されなかったのだから」
マーハ 「!」
マーハは後ずさりするが、ルシファーはにじり寄る。
ルシファー 「お前をこの手で殺め、その全てを手に入れる。再びこの、快感を味わえようとは!」
マーハ 「来るな…」
ルシファー 「その月の髪、恐怖と苦痛に満ちた顔、か細い体、ルラの奇跡、復活の血一滴たりとも、レインにもアクスタインにも渡さん…私の物だ…」
マーハ 「来るな!」
その狂気に恐怖を覚え、右手を構えるマーハ。
ルシファー 「むやみにその血を使ってもいいのか?私と戦うほどの血を使えば、アクスタインの復活はどうする??」
マーハ 「!」
ルシファー 「奴の居所が知れた今、アクスタインの復活に血が必要なのだろう?」
マーハ 「……」
マーハは構えを解き、背から剣を抜く。
ルシファー 「そんな物で、この私に勝てると思っているのか?」
マーハ 「ハアアアアァァァァ!」
ルシファーは懐から剣を抜く。
交わる剣と剣。
ルシファー 「お前はもう、レインにとって不要な存在でしかないのだよ」
マーハ 「わたしはもう、不要な存在…」
その言葉に明らかに動揺する、マーハ。
ルシファー 「魔界神ヴァティス、我に力を…『イビルデルタ』!」
マーハ 「しまった!」

○ 同街・宿の一室
落雷。
窓に打ち付けられる風と雨。
それを見上げる、タケルとシュスフィーナ。
それぞれに寛ぐ、レイン一行。
シュスフィーナ 「今夜は嵐ね…」
タケル 「何か、嫌な予感がする…」
タケルの手を硬く握るシュスフィーナ。
グリン 「……」
その2人を静かに見る、グリン。
オーフェ 「はあ、すごい雨ですよ」
ぐっしょり濡れているオーフェ。
ミッフィー 「どしたんや、オーフェ。その格好?」
オーフェ 「カタリムさんを夕食にお誘いしたんですが、何か思いついたらしくマルスさんを探しに外へ行かれてしまって…」
ガルシアン 「以前にも、こんな状況がなかったか?」
一行 「……」
グリン 「!」
外へと飛び出す、グリン。
ヨシュア 「我々も2人を探しましょう!」

○同街 港埠頭
三角の黒い電流がマーハの体を捉えている。
ルシファー 「他愛もない…」
マーハ 「つッ、卑怯者!」
ルシファー 「『ディヴィザム』!」
マーハ 「!」
怯え目を閉じるマーハ。
黒いカマイタチは、マーハの服を切り裂く。
鳩尾の部分に露わになる肌。
ルシファー 「あの時の傷は、痕も残さず癒えたか…。わたしのこの眼はどうしたものか知っているか?」
ルシファーは近付き、その肌を擦る。
マーハ 「やッ!」
震えるマーハ。
ルシファー 「お前のレインにつけられた物だよ。この傷が癒える事は無い。お前を失ったレインの私に対する怒りが込められたものだからな。だが、今はどうだ?」
その手はマーハの体を優しく撫でながら頤へ。
マーハ 「つッ!」
マーハは顔を背ける。

ルシファー 「レインはお前を忘れてしまった…」

マーハ 「!」
大きく目を見開く。(図星なのか?)
マーハ 「違う!」
ーハの眼前にルシファーの狂喜に微笑む顔。
もう片方の手が、マーハの顔を撫で、銀の髪に触れる。
ルシファー 「私はお前を忘れた事は無かった。一秒たりとも。簡単には死なせはしない。ゆっくりと…最後の吐息が漏れるまで私が側に居よう。今度はどの様に死にたい?」
静かにルシファーはマーハを抱きしめる。
マーハ 「嫌!」
僅かに身をよじるマーハ。
ルシファー 「お前は私の物だ…」
ルシファーはマーハの首筋に噛み付く。
落雷。
マーハ 「!!」





マーハは大きく目を見開く、焦点は合わない。
腕を伝い流れるマーハの血。
ルシファーは顔を上げ、マーハの血に濡れた口元を舐める。
陶酔したその表情。
と、その背後から斬りかかるタケル。
ルシファー 「何!」
避けるルシファー。
魔法はきれ、マーハの体が大地に倒れる。
マーハを庇うように立つタケル。
タケル 「……」
うっすらと目を開けるマーハ。
マーハ 「タケル…」
その後ろから、カタリム。
風打つ雨に耐え立つ。
カタリム 「マーハ様!」
マーハの体を抱きかかえるカタリム。
2人を庇うのはタケルのピクトである。
ルシファー 「おのれ〜、小物が邪魔を…。残念だな。しかしその傷ではもう、生きてはおれまい…さらばだ、マーハ…」
姿を消すルシファー。
同時、タケルのピクトはマーハの方を振り返る。
マーハ 「タケル…」
安堵のマーハ。
微笑むタケル。
タケルのピクトは消滅する。
カタリム 「マーハ様。もう大丈夫です…もう、もう大丈夫ですから…しっかりして下さい」
マーハ 「カタリム…気付いてくれたんだね…逢った事もないのに…」
泣きそうなカタリム。
カタリム 「絵描きだから気付きます!マーハ様とマルスさんの目は同じだったんだもん!!」
マーハ 「そう…」
マーハはよろけながら立つ。
カタリム 「待って、マーハ様。今止血を!」
荒れる海に向かい立つ、マーハ。
血は流れる。
胸のホワイトストーンが光る。
マーハ 「泡になるんだ、わたしは…」
カタリム 「マーハ様!」
マーハ 「どうかこの事をみんなには…『マルスは先に塔に向かっている』とだけ伝えてほしい…」
白い光に包まれ、マーハの体が宙に浮く。
タケル 「カタリム〜〜〜!」
駆けて来る一行。
白い光、そしてカタリム以外の人影に気付く。
タケル 「あれは!」
グリン 「まさか!!」
光は消え…落雷。
カタリム 「ううううッッッッ…」
座り込み、泣きじゃくるカタリム。
カタリムの元にたどり着いた一行。
タケルはカタリムの肩を大きく揺らす。
タケル 「カタリム、何が…何があったんだ!」
顔を上げるカタリム。
打ちしきる雨。
カタリム 「マーハ様が…、マーハ様が…!」
その言葉に驚く一行。
落雷。