簡単な事だ。
街外れの大きな屋敷の傍に、魔将が現れた。それはこれまでに何度か戦った事のあるオークで、片手で捻れる様な相手だった。実際にタケルは、その日グリンが言っていたように魔晶石を砕かずして倒したのだ。従って、その魔晶石も宝石として金に換えることが出来たし、何よりもその屋敷の主人から多額の礼金を手に入れることが出来た。5人が宿に泊まるにも、アルティマ大陸への渡航資金にも十分な金だ。
「これで、当分困る事は無いだろ」
タケルは、満足気に呟く。きっと、みんなも喜んでくれるに違いない。その中に一人の少女の微笑を思い浮かべながら、借りた厩へのすっかり日の落ちた帰路を急ぐ。
「でも、何で怒ってたんだ…あいつ」
その方向には彼も疎かった。
どうせ忘れているだろう、以前もあんな風に揉めた事があったが、その後に大事に至ったのだから、大人しく待っているはずだ。
「な〜に、ニヤニヤ笑ってるんだよ」
「!」
振り返るとそこには、ジト目で怪しむグリンが居り、タケルは彼の存在をすっかり忘れていた。
「別に、ニヤついていない」
「ケッ、イイ身分だぜ」
一方グリンはというと、手に入れた金はタケルよりも大幅に少なかった。
「どうやって、稼いで来たんだ?」
「うるせえ」
「フニャ〜〜〜〜〜!」
ミッフィーだ、こちらに向けて手を振っている。
「どうしたんだ、アイツ」
「ありゃ、宿屋な事には間違いねエが…」
暗闇の通りの中、一際明るい建物の前に居た。2階は宿のようだが、1階は何やら喧騒が聞こえる。酒場のようである。
「『冒険者の店』か?」
『冒険者の店』とは名の通り、冒険者・旅人に対し宿、仕事の斡旋・情報の提供など諸々の役目を担う。大抵1階は酒場で、2階は宿といった造りが多かった。
「イヤ、それにしちゃ雰囲気が違わねェか?」
店の看板には「Beautiful Caldron」とあった。
「どう言う意味だこれは?」
「……」
グリンは嫌な予感がしたのだろう。青い顔をしている。
「『麗しき…釜』」
そのままだ。
「あ、タケルさん、グリンさん。びっくりですよ!」
タケルとグリンはその声の主を見た。そして、その格好にああ…確かに吃驚した。
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