其の1 お金がない
シーンE
「う〜〜〜〜」

 アルティマ大陸に向かう交易船の甲板で、マーハは眉を顰めた。最悪だ。
 正直、マーハにとって昨日の記憶は途中でぷっつりと消えている。例えるなら今瞳を閉じると、彼方に広がる青い海が暗闇になる様に、『麗しき釜』で黄金色の酒を一口飲んだ…あの時から消えている。靄がかった部分すらない。
 気が付けば朝で、昨日のドレスのまま額に大きなタンコブを作っていた。ズキズキとする痛み。それだけでなくて、気持ちも悪い。これはタケルの様な船酔いとは違う…二日酔いだった。
「少しは反省したか」
 隣の縁では、やはり青い顔をして顔をもたげているタケルが居た。青い顔をしながらも、マーハのコブを見て、僅かに笑う。
 そもそも、今日の朝にコブの治療をしようとしたオーフェの魔法を制したのはタケルだった。
 「少しは痛い目を見たほうがいい」…そう彼は静かに言った。

「いじわる」

「何か言ったか?」
「何でもない」
 クルリと後ろを振り返る。するとそこに、ワインボトルを持ったグリンが居た。
「な、マーハ。一杯飲まないか?」
「い!」
「な゛!」
「絶対に嫌だ!!」
 導火線に火がついて、ボンッと弾けた。グリンとタケルを睨む。

(もう二度とお酒なんて飲まない!!)

To be continued…
LEGEND