其の2 探し物
シーンA
 マーハを失ってから、一週間経つ。

 その状況に慣れたかといえば嘘になるが、最も心配されていたタケルは持ち直した。いや、気丈に振舞っているだけなのかもしれない。
 だが、タケルには近しき者たちが居る。グリン、オーフェ、そしてミッフィー。付き合いが長いからか、そして年が近いからなのか、あの4人は仲が良い。
(そして、私には師匠が居る)
 ヨシュアとマホメト。師弟の間柄である2人の関係もまた長い。思い越せば、ヨシュアが4つの頃だろうか。彼に救われたのは?
 タロットカードを無意識に広げる。
「気が散じている…」
 占っても、それが具体的に結果となって生まれない。ヨシュア自身、その原因は分かっていた。
 最後のレイン「ガルシアン」。彼に近しき者は誰なのだ?
 要であるマーハはもう居ない。



 その日の朝、いつになく早く起きたヨシュアは宿の1階で、1人で朝食をとっていた。
「おはようございます」
「あ…早いな」
 2階から降りてきたガルシアンの顔色は優れなかった。これまで寝ていたとは思えない。昨日の旅姿のままで、ヨシュアの向かいに座った。
「寝ていないのですか?」
「あ…、ああ…考え事をしていてな」
「……」
 それ以上会話が続かない。ガルシアンは黙って運ばれてきたスープに口をつけた。それでも時々スプーンが止まる。
「一体何を?」
 溜まらず、ヨシュアは尋ねた。
「あ…、ああ……これまでの事を…、魔王・四天王として自分のしてきた事だ」
 そう、彼はついこの間まで敵であった。直接関わる事はなかったにしても、魔王軍とレイン。タケルは生まれ育った村を滅ぼされ、グリンは仲間を殺され、ミッフィーも一度は捉えられた身。自分もユーリカを失っている。

(己を責めているのか)

 だとすれば、真面目過ぎる。
「貴方がレインである限り、こちらは無条件で必要としています。反対に魔王は貴方を、利用した。貴方は加害者であるが被害者でもある。過ぎた事など忘れるべきです」
「ならば、レインである証とは何だ?」
 突然、問い返してきた。そんな事、当然…
「レインボーストーンでしょう。この石がある限り、私は仕方なくレインです」
 ヨシュアは自分の胸にある紅い石を指差した。本当の事を言うと、ヨシュアは正直レインとか仲間とかいった馴れ合いに慣れていない。
 少しの沈黙の後、ガルシアンは小さく微笑んだ。自虐的に。

「『レインは死ねばまた生まれる』…石もまたそうか…?」

 小さく呟いて、ガルシアンは席を立った。