山道を進む中も、時折小さな地鳴りがする。瞳の赴くまま、ミッフィーは山頂を目指す。
(この気配!)
誰か居る!
すぐ手前の崖。そこから見下ろす一人の影。
「覆面男!」
「……」
その人影は微動だにしない。そして、構える仕草すら見せず、殺気を感じなかった。
「あんさん一体…」
そう言いかけた刹那、一陣の風が吹き、異様な臭いが鼻を突く。
「くっさ〜〜〜〜〜!」
ミッフィーは慌てて鼻を抓んだ。
「……」
一方、その男は崖から飛び、静かにミッフィーに背を向けて立つ。異臭源はこの覆面男ではないようだ。
<何故ここに?>
音の無い言葉が、直接頭に響いてくる。それはミッフィーにとって、初めての感覚だった。
「だんやど?」
この状況でも、鼻を抓むミッフィーの言葉は聞き取りにくい。
<……>
男はマントの中から、布をミッフィーに差し出した。それは、彼の下顔面を覆う布と同じ生地。これを使えというのか?
(けっこうエエ奴やん)
彼の雰囲気に呑まれ、その布で口と鼻を覆う。
「おおきに、覆面男」
<マルス…>
「それ、名前なんやね?」
<……>
覆面男・マルスはこくりと頷いた。ミッフィーの中で『エエ奴』に分類された、彼は最早敵ではないらしい。
「そおそお、うちはな、大地の精霊『ベヒモス』を探しに来たんや。そいで、なしてマルスはこないなトコに居るん?」
<村の長が、病に倒れたと聞いた。その難病に効く、薬草を取りに>
「はあ?」
村の長…フレシアはピンピンしていたじゃないか?
「なあ、マルス。それって…」
言いかけた時。
ズシン!
大きく地が揺れる。それに伴い、布越しでも感じる異臭。
ズシン!
ズシン!!
どこかで嗅いだ臭いではないか?
「フニャッ!」
<そう…>
山道の向こうから現れたのは、精霊『ベヒモス』。但し、その背には…。
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