「やっぱ、女性クルーの多い戦艦っていったら、これっきゃねえだろぉ〜!」
ある晩、ダジリンはイーグルデッキにセイロン、アッサムを呼び出した。そうして右手に掲げるポスターを、床に広げる。薄暗いデッキの中、セイロンのランプが文字を照らし出した。
その時だ。射出口のシャッターの隙間から、一陣の風がポスターを吹流し…。
「ひゃ!」
あろう事か、彼女の顔に飛んで行った。
「いいいい〜〜〜〜!」
「もう、アッサム。ちゃんと閉めときなさいよ!」
「ワイやないて!」
「何なんだ、これは?」
彼女…マーハは目をぱちくりさせながら、顔から剥がしたポスターを覗き込む。
「ミス・レオハルト・コンテスト?」
「だああああ〜〜〜〜!」
ダジリンは血相を変え、マーハの手からポスターを奪った。
「何もないっすよ、何もないっすよ。マーハさま〜〜〜〜!」
「……」
いや、それのどこが何もないんだか。ダジリンは脅えて、ポスターを抱え込んでしまっている。
(う〜〜〜ん)
そのポスターに、レオハルトに搭乗している女性の名が羅列してあったのを確かに見た。
レオハルト…コンピニア三博士の1人・ドギであるティキと、今は亡きグリンの母・グリークが造り出した、レインの旗艦・飛空艇。戦いを目的とした船であるのに比して、クルーの内に占める女性の割合は多い。それゆえの楽しみか。
マーハはしばらく考えた後。
「うん、見なかった事にする」
そう言い残し、その場を後にした。
実は、羅列されていた女性の中に自分が含まれていなかったのだ。彼らに自分の素性が知れているのに関わらず。名前がないという事実で、少しだけ複雑な気分になっていた。
(まあ、わたしは関係ないって事だよね)
と、楽観的に考えて部屋に戻る。あまり、こういった範囲の物事は深く考えない性質らしい。
「そう言えば、何でマーハ様がノミネートされていないのよ?」
その名簿を見たセイロンが、鏡で化粧を直しながらダジリンに尋ねた。
「本命やないか?」
「馬鹿野郎、お前ら、メンフィスのあれを忘れたのか!」
「!」
「!」
メンフィスでの恐怖。
カジノでグリンにのされた彼らは、連れであるマーハを拉致し、グリンを誘き出した。しかし、逆にグリンとタケルにコテンパンにのされた。
その時の、あの怒髪天…タケル。そして三白眼…グリンを思い起こす。
「マーハ様に何かあれば、あのガキ等が黙っちゃいねえ」
「!」
「!」
体に植えつけられた恐怖が目覚め、セイロンとアッサムは身震いした。
「そ、そうね、その通りね」
「せ、せやな、神様をランク付けするなんておこがましいわいな」
だが、レインをガキ呼ばわりしているのには気付いていないらしい。
「それじゃあ、わしの出番だな」
「いいいい〜〜〜〜!」
頭を寄せ集めた3人のすぐ耳元で。その声の主は、ヘパイストスだった。
「じいさん、いつの間に!」
「馬鹿もん、お前らの目付け役のこのわしが、気付かんとでも思ったか!」
「んじゃ、『出番』ってどういう事よ?」
「企画・運営がお前らに務まるか!…幸いマーハ様のお許しも出た事だしな。ここは、盛り上げねばならんだろうて!」
「あれは、『許可』ってゆうんやろか?」
そんな疑問を他所に、『ミス・レオハルト・コンテスト』は公的に、開催する事になってしまったのである。 |