其の5 木漏れ日の中
シーンA
エディンバラに向かう旅路。山中でレイン一行はキャンプを張った。
 野宿も既に手馴れたもので、タケルは川釣、グリンは狩猟、マーハとオーフェ、ミッフィーは野草摘みに薪拾い、ヨシュアはキャンプの設営をし、マホメトは樫の杖に乗り周囲の警戒をする。これは自然に決められた役割だ。


(ちっくしょ〜、後もう少しだったのにな〜〜〜〜)
 グリンは先ほどテティと呼ばれる兎に似た小動物を逃してしまい、獲物はそれきりで、不作。すっかり諦めのついてしまった彼は…サボっている。
(どうせ、食貯めはあるんだし。明日にゃ、エディンバラに着くんだろ)
 と言うわけで、勝手に理由も作ってしまっている。夕陽が沈む頃にキャンプに戻ればいい案配。ちょうど飯も出来上がっている頃だろう。などと思いながら、木の上でうつらうつらとした頃だった。

 ゆらりと、体が揺れた。その瞬間!

 ドサッ!

「わッ!」

 シーフであって、バランス感覚の優れる彼の不覚。
「いったあ〜〜〜〜!」
「つ〜〜〜〜!」
 高い木の上から落ちたにしては、痛みは少ない。しかし、この柔らかい感触は何だろう。
(クッション?)
 完全に寝惚けている。

「重い、重いッたら、グリン!」

「ん?」
 そこでようやく今の状況に気がついた。自分の体の所在に。すぐ目の前に、彼女の苦しげな顔がある。
「マ、マーハ!」
 瞬時に起き上がるが、あまりの事に腰が抜けて半ば這いずる様にして体を離した。マーハもまた体を起こす。
「だ、大丈夫か、マーハ?」
「頭打った…」
 先程の感触が、脳裏を過ぎって紅潮してしまう。言葉も覚束ない。

「もう…どうして空から降ってくるんだ」
「ちょっと、休憩してたんだよ」
「休憩って、収獲はあったの?」
「なし!」
「ねえ、グリン」
 マーハはにっこりと微笑んで。
「働かざる者食うべからずって諺、あるんだけど」
 …サボっているのがばれてしまったらしい。
「マーハこそ。一人で何してんだよ」
「それは、さっきあっちに『トエル』の実を見つけたから…」
「『一人で』って意味だ」
「あ…」
 マーハは周囲を見回した。どうやら、オーフェ、ミッフィーの2人と逸れてしまったらしい。
(あいつら、あんだけ目を離すなって言っただろ〜が)


 マーハは夢中になると、周りが見えなくなってしまう。出会った頃からそうだった。そんな彼女に当初から、振り回されてしまっている。しかしそれは、彼だけではなく、身近にもう一人居るけれども。
 ルラとは絶対無二の存在。故に、敵の第一標的になる。レインの元へ導くのは、彼女しか居ない。レインは死しても生まれるが、ルラは違う。
 もっとも、レインの死…マーハがそれを許さないのをグリンは知っていた。


(いまいち、そおいう所は自覚に欠けてんだよな)
 グリンは小さく笑って息をつく。
「ごめん、グリン」
「?」
 力なくマーハは非を詫びる。
 いつもと様子が違う。それはグリンの直感だった。
「さ〜てと、『トエル』の実があるって言ったよな?」
「…う、うん」
「おっし、案内しろよ。このオレ様に任せとけって!」