其の7 結婚しよう
シーンA
 以前の陸路と違い、シャヌーン大陸の西海岸を南下していた一行は、アモンという小さな村に立ち寄った。アマルナでマルスを加え総勢8名。漁師ばかりの住む村に宿は一軒しかないが、8人宿泊するには充分で、一行は久しぶりに柔らかなベッドの上で身体を休める事が出来そうだ。
 その村では至る所に、花輪が玄関に掛けてあった。白いリボンで束ねてあるその飾りは、この地方では『結婚』祝いを意味する。村全体に漂う、華やかな雰囲気にシュスフィーナは心躍らせながらタケルの腕をしっかりと組んで歩いていた。
「いいな〜、結婚式か〜」
「なんだ、羨ましいのか?」
「当たり前じゃない」
 シュスフィーナはタケルの顔を覗き込む。
「『結婚』は女の子の永遠の憧れなのよ!」
「そうか…」

「そうなの!」

 彼女はじっと彼を見上げる。
「どうしたんだ、フィーナ?」
「んもう、タケルッたらハッキリしないんだから」
「はぁ?」
 タケルはシュスフィーナが何を求めているのか見当もつかずに、村の風景を見渡した。
「そう言えば、結婚式って何をするんだ?」
「え!」
 恋する相手の信じられない一言に、シュスフィーナは愕然となる。
「本当に何も知らないんだから、タケルは。わたしも世間知らずだけど、まだわたしの方が知ってるじゃない」
「そうだな…」
「花嫁は白い綺麗なウエディングドレスを着るの。バージンロードの先には愛する花婿が居てね。二人でラシューヌ神に夫婦の誓いを立てるの。キラキラ光る結婚指輪を交換してね、そして誓いのキス…キャッ!」
 シュスフィーナは赤らめた顔を、両手で隠した。生まれてこの方、実際に結婚式と言うものを見た事のないタケルには実感がわかない。が、とりあえず女性にとっては幸せなものなのだろう。
「でも結婚前には、あんなに悲壮になるものなのか?」
「え?」
 シュスフィーナはタケルの視線の先を追った。そこは教会。俯いて、中に入る男女。
「ふうん、只のマリッジブルーじゃなさそうね」
 シュスフィーナは教会へと駆ける。

 その男女は、薄暗い礼拝堂の中、神像の前で静かに祈りを捧げていた。女の固く閉じた瞳から涙がこぼれる。
「すまない、すまないレオナ…」
 男は立ち上がり、レオナと呼ばれた女を抱きしめた。彼女は男にすがり付き、嗚咽を漏らす。
「僕が…僕が結婚しようなんて言わなければこんな事には…」
「ディアス…いいの。あなたに愛していると言われただけでわたしは幸せだったから」
「だからって、君が海の魔女への生贄になってしまうなんて!」

「『海の魔女』?」
「!」
 礼拝堂の後方の机からシュスフィーナは思わず顔を出した。つられて、タケルも立ち上がる。男女、ディアスとレオナはビクリとして声の方を振り向いた。
「あなた方は?」
「ごめんなさい、盗み聞きしちゃった。良かったら詳しい話を聞かせて貰えない?」