其の7 結婚しよう
シーンD
 結婚式の会場は教会ではなく、急遽指定された岩礁に用意された。岩礁までの岩場に絨毯が敷かれる。司祭の正装を身に纏ったオーフェが、聖書を片手に立っており、その直ぐ脇に、教会から運び込まれた小さなパイプオルガンが置かれ、マルスがその前に座っている。対岸には、レイン一行と小奇麗な格好をした村人達が控えていた。
 そして、マルスが音楽を奏でだす。
 入場してくるのは、新婦…ヨシュア。
「似合ってるな…意外に…」
「!」

「いッ!」

 ボソリと呟くグリンの足を、ミッフィーは思いっきり踏んづけた。
<静かにせいや!>
 新婦はタケルと腕を組んでいるのだが、彼よりやや背の高いヨシュアなだけにバランスが合わない。新婦を新郎の脇へと導くと、タケルは大きく溜息をついて木製の長椅子に腰掛けた。
<はあ、緊張するもんだな>
 横に座るシュスフィーナが、彼に耳打ちをしながら折畳んだ彼のマントを手渡す。
<まだまだ、これからが本番なんだからね。タケル!>
 気を取り直したタケルは、マントの奥に潜ませた剣に手をかけた。魔将の気配はない。賛美歌が歌われる。
 歌い終え一息ついた後、ガルシアンは横目でヨシュアに小声で話しかけた。
<『海の魔女』はまだか…>
<……>
<ヨシュア?>
 ヨシュアは、瞳を閉ざし、眉を顰める。ガルシアンは知らないのか、または気付いていないのか、このまま式次第に従って進行されれば必然に起こる儀式を。
「汝、ディアス・クルト。あなたは健やかなる時も病める時も、妻、レオナ・マカラを永遠に愛する事を誓いますか?」
「誓います」
 オーフェの問いかけに、ガルシアンは静かに答える。
「汝、レオナ・マカラ。あなたは健やかなる時も病める時も、夫、ディアス・クルトを永遠に愛する事を誓いますか?」
「…誓います」
 ヨシュアも答えた。落ち着きなく、ヨシュアは眉をピクつかせた。
 やはり、魔将の気配はない。
「夫婦の証。指輪の交換を」
 2人の前に白い布に包まれた指輪が置かれる。
「ククククッッッッ…」
「!」

「いッ!」

 忍び笑いをするグリンの足を、ミッフィーは思いっきり踏んづけた。
<アホ、これからって時に!>
「??」
 そのグリンとミッフィーの様子に気付いたタケルは、頭を捻る。
(これから…?)
 タケルの横では、シュスフィーナが目を輝かせて新郎新婦を見つめていた。ちょうど、指輪の交換が終わったところだ。



「花嫁は白い綺麗なウエディングドレスを着るの。バージンロードの先には愛する花婿が居てね。二人でラシューヌ神に夫婦の誓いを立てるの。キラキラ光る結婚指輪を交換してね、そして誓いのキス…キャッ!」



「あッ!…」

「シ〜〜〜〜!」
 昼間のシュスフィーナの言葉を思い出し、声を上げたタケルの口を、彼女は塞ぐ。
「それでは、誓いのキスを」
 オーフェは、新郎新婦に微笑みかけた。

「…やめ…!!!!」

 ヨシュアが『止める』と言いかけたその時、ガルシアンはヨシュアのヴェールを捲った。そこに真剣なガルシアンの顔がある。
<ガ、ガルシアン!>
 彼の唇が、ヨシュアのそれに近づく。ヨシュアは堪らず固く目を瞑った。