結婚式の会場は教会ではなく、急遽指定された岩礁に用意された。岩礁までの岩場に絨毯が敷かれる。司祭の正装を身に纏ったオーフェが、聖書を片手に立っており、その直ぐ脇に、教会から運び込まれた小さなパイプオルガンが置かれ、マルスがその前に座っている。対岸には、レイン一行と小奇麗な格好をした村人達が控えていた。
そして、マルスが音楽を奏でだす。
入場してくるのは、新婦…ヨシュア。
「似合ってるな…意外に…」
「!」
「いッ!」
ボソリと呟くグリンの足を、ミッフィーは思いっきり踏んづけた。
<静かにせいや!>
新婦はタケルと腕を組んでいるのだが、彼よりやや背の高いヨシュアなだけにバランスが合わない。新婦を新郎の脇へと導くと、タケルは大きく溜息をついて木製の長椅子に腰掛けた。
<はあ、緊張するもんだな>
横に座るシュスフィーナが、彼に耳打ちをしながら折畳んだ彼のマントを手渡す。
<まだまだ、これからが本番なんだからね。タケル!>
気を取り直したタケルは、マントの奥に潜ませた剣に手をかけた。魔将の気配はない。賛美歌が歌われる。
歌い終え一息ついた後、ガルシアンは横目でヨシュアに小声で話しかけた。
<『海の魔女』はまだか…>
<……>
<ヨシュア?>
ヨシュアは、瞳を閉ざし、眉を顰める。ガルシアンは知らないのか、または気付いていないのか、このまま式次第に従って進行されれば必然に起こる儀式を。
「汝、ディアス・クルト。あなたは健やかなる時も病める時も、妻、レオナ・マカラを永遠に愛する事を誓いますか?」
「誓います」
オーフェの問いかけに、ガルシアンは静かに答える。
「汝、レオナ・マカラ。あなたは健やかなる時も病める時も、夫、ディアス・クルトを永遠に愛する事を誓いますか?」
「…誓います」
ヨシュアも答えた。落ち着きなく、ヨシュアは眉をピクつかせた。
やはり、魔将の気配はない。
「夫婦の証。指輪の交換を」
2人の前に白い布に包まれた指輪が置かれる。
「ククククッッッッ…」
「!」
「いッ!」
忍び笑いをするグリンの足を、ミッフィーは思いっきり踏んづけた。
<アホ、これからって時に!>
「??」
そのグリンとミッフィーの様子に気付いたタケルは、頭を捻る。
(これから…?)
タケルの横では、シュスフィーナが目を輝かせて新郎新婦を見つめていた。ちょうど、指輪の交換が終わったところだ。
「花嫁は白い綺麗なウエディングドレスを着るの。バージンロードの先には愛する花婿が居てね。二人でラシューヌ神に夫婦の誓いを立てるの。キラキラ光る結婚指輪を交換してね、そして誓いのキス…キャッ!」
「あッ!…」
「シ〜〜〜〜!」
昼間のシュスフィーナの言葉を思い出し、声を上げたタケルの口を、彼女は塞ぐ。
「それでは、誓いのキスを」
オーフェは、新郎新婦に微笑みかけた。
「…やめ…!!!!」
ヨシュアが『止める』と言いかけたその時、ガルシアンはヨシュアのヴェールを捲った。そこに真剣なガルシアンの顔がある。
<ガ、ガルシアン!>
彼の唇が、ヨシュアのそれに近づく。ヨシュアは堪らず固く目を瞑った。 |