其の12 聖夜
シーンA
 今日は、「クリスマスイブ」です。
 でも、センター試験まで1ヶ月を切った我々受験生にとっては、…縁遠い話であります。

 時刻は夕方5時。高校に残っている私は、クラス委員長とかいうお役目で友達に勉強を教えています。日もすっかり暮れ、寒くなってきました。今晩はこの冬一番の寒さだって。

 こんなふうな寒い去年の冬。父さんが、交通事故にあって死んだ。突然だった。家に残ったのは母さんと私。父さんが死んだ後の保険がおりて、まあまあな生活はしてるけど。それもいつまでも続くもんじゃないし…。母さんは夜、パートに働きに出てる。大学に行って、安定した収入のある社会人になって、母さんに不自由はさせたくない。だから、勉強してきた。勉強は嫌いじゃないし。それに、家に帰っても誰も居ないからみんなが居る学校が好き。

 家では、適当に勉強してから本を読む。お気に入りはファンタジー小説。現実にはありえない、剣と魔法…。読んでる時だけ、私は主人公になる。そして私の傍らには、私を守ってくれる王子様…な〜んてね。今時の高校生が考える事じゃないんだろうけど、誰かのために剣を振るって魔法で戦う王子様に憧れる。
 現実も大事だけど、でもやっぱり現実逃避している時が一番楽しいんだよね。

 はぁ、一区切り付いた事だし。頭を使うと疲れます。するとついつい買っちゃうんだなぁ、缶しるこ。
 うちの高校の自販機には、冬だけ入るんです。

「あ、当たった」

 もう1本出てきちゃったよ。おっと…

「はい、落としたよ」
「あ…」

 拾ってくれたんだ。どっかで見た顔だなぁ、カッコいい人だよね〜。同じ学年の…えっと名前…何ていうんだっけ。やば…「生徒会長」としか分からん。

「ありがと、でもいいよ。それあげる、生徒会長」
「え?」
「今日は寒いからね〜。甘い物飲んだら、あったまるし疲れも取れるよ〜」
「…ありがとう」

 うん、当たりが出たという幸運を人に分けてあげるのはいい事だもんね〜。

 彼も笑った。笑った顔もイケメンだ。喜んでくれたのかなぁ?



「雪だ…」

 彼が見上げた暗い空。
 本当。道理で寒いわけだわ。窓の外が白くなってる。

「ホワイトクリスマスってヤツだね〜」


 ホワイトクリスマスかぁ。これまた縁遠い言葉だなぁ。寒いけど…でも、雪は嫌いじゃない。綺麗だし。
 さてと、もうひと頑張りしていきますか〜。

 これはあの事件が起きる、およそ4ヶ月前。

 その時、私は…同じ日本で1人の少女が神隠しに会うなどという事件を、知る由もなかったのです。

To be continued…
LEGEND =Dream=