「何も今日すぐに出て行く必要もないだろう?」
願書を返しに来たエイセルに、ジークは呆れて言った。エイセルの背には、愛用のミスリルの大剣、そして小さな袋を背負っている。旅の荷である事は、一目で分かった。
「卒業式まで待てばいいのに」
「決心が揺らぐ」
「証書だけでももらっていけば、この先役に立つかもしれないぞ?」
「その為にこの学校にいたわけじゃないさ」
エイセルは軽く笑って医務室を見回した。もう何度通ったか分からないこの部屋は、居心地が良かったのだと思う。時に呪いに悩み、時に些細な日常を語り笑い合い、愚痴をこぼしたりもした。ジークとアリスタ、エイセルの4人で戦いに赴いた事もあった。今となってはその全てが懐かしく思い起こされる。
「ここともお別れか。ここで色々学んだ。魔法だけじゃねえ、世界と…俺と人の心、歴史と現実…自分の生き方」
「寂しくなるな」
ジークは握手を求め右手を差し伸べた。エイセルはその手を握り返す。
「世話になったな。あと2年、レニーの事を頼むよ」
「……」
静かに2人の手は離れ、少し驚いたように間があった後にジークは含んで笑った。
「外を見てごらん?」
「何?」
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