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「!」
イーグル・デッキが静寂に包まれた。そして、大きく手の叩く音がその間を割った。
「勝負あったな、タケル!」
「シーザー!」
ようやく状況が理解できたのだろう、タケルはその場に入って来たシーザーとサンドラの姿を認めて怒声を上げる。
「お前の仕業か!」
「俺はなにもしていないぞ!」
「そうだよ、片腕で私と勝負したタケルが悪いんだ。油断は禁物だね」
クスクスと嬉しそうに笑うマーハは、木刀を降ろす。
「認めないぞ、こんな勝負!」
「勝負は勝負じゃない。マーハの勝ちだわ」
「だよね」
「くっそ〜!」
「どうだ、タケル。少しは吹っ切れたか?」
「!」
シーザーは転がっている木刀を拾ってマーハに手渡した。
「さっきの勝負だが、あの頃のお前らを見てるようで懐かしかった」
「え?」
「タケル、お前は楽しそうに剣を振るっていたぞ」
「そうね、少なくともあの頃はこんな風に迷う事はなかったんじゃないかしら」
「それは…」
図星を指されたタケルは、床にあった宝剣を鞘に収めた。
「あの頃…か。最近はよく昔の事を思い出すよ。平和にあの村で暮らしていた頃の事や、マーハやグリン達と始めて逢った時の事」
「タケルも?」
「ああ…」
タケルは頷いて一呼吸置いた後にマーハと、そして自分達を気遣ってくれた二人を見つめた。
「昔が懐かしいんだ。ただがむしゃらに、旅をしていたあの頃が。戻りたいなんて思っちゃならない。過去にばかり囚われてはいけない。先を見据えて、俺達は戦わなきゃならないのに…」
「違うよ、タケル。あの頃に戻ろう」
「マーハ、お前…何を言って…」
「あの時、私達は迷う事はなかった。ただ『世界を救う』って事だけを考えてた。『世界を救う』だなんて簡単に言うけれど、でも単純な事なんだ。結果が『平和な世界』それだけなんだから。だから何も迷う事なんてない」
「考えすぎなんだよ、お前達は」
シーザーはタケルとマーハの間に立って、2人の頭をグシャグシャと撫でた。
「お互いの気持ちに素直になれ。そうすりゃあ、考えなくとも自然に答えが出るさ。良い結果を導く、お前たちの答えがな」
「俺達の答えか…」
「明日の事もある、いい加減に休んでおけよ」
最後にそう言って、シーザーはサンドラと共にイーグル・デッキを後にした。取り残された、2人は互いを見つめて言葉を捜す。
最初に口を開いたのはタケルだった。
「あいつらには心配かけたな」
その心遣いが嬉しかったんだろう。
「そうだね」
同じ様にマーハも笑う。
「だけど、一回でもタケルに勝てたから嬉しかったな」
「あれは勝負の内には入らない!」
タケルとマーハの小さな笑い声がデッキに響いた。2人の永遠の別れまで、もう間もない大切な時。
それは、タケルとある少女が出会う4年前の話である。
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