第2話 流浪の民
シーンB
○ジプシーテント内
サンドラは座っていた椅子から立つ。
サンドラ 「ライムランド全土にわたる情報網を持つ裏社会の首領…貴女が直々においでになるなんて…」
グリーク 「……」
お互いに値踏みするように対峙する。
グリークを睨むサンドラ。
サンドラ 「こんなちっぽけなジプシーに何の御用かしら?」
一方のグリークは余裕の笑みを浮かべる。
グリーク 「ティキという旅芸人が居るだろう。彼に逢いに来たんだ」
サンドラ 「彼は…ティキは芸人ではないわ。うちの大道具係よ」
グリーク 「その彼の身柄を預かる」
サンドラ 「あら、引き抜きは困るわ」
サンドラは机にあるダガーを手元でくるりと回し、構える。
サンドラ 「一座の人間に危害を加える相手は誰であろうと…」
グリーク 「おやおややる気かい、麗しの舞姫?」
と、そこへテント外から声。
?(ティキ) 「当事者を抜いて何の話じゃ?」
サンドラ&グリーク 「!」
テント内に入ってくるのは、ティキと頭に乗ったフォウリー、そしてセイクレッドである。
フォウリーとセイクレッドは敵対心剥き出しでグリークを睨む。
グリーク 「ふふふ、多勢に無勢だね」
ティキ 「サンドラも他の衆も落ち着け…。グリークと言ったな?」
ティキのその声に、サンドラはダガーを下ろす。
ティキ 「わしに何の用じゃい?」
するとそれまで笑みを浮かべていたグリークは、真剣な表情。
グリーク 「フォレスタ、ベナレス、ダヴァン…そして…『ドギ』と言えば分かるかい?」
ティキ 「!」
他団員 「?」
ティキの顔は凍りつく。
その豹変に気付くサンドラ、フォウリーとセイクレッド。
グリーク 「話を聞いてくれるかね?」
ティキ 「分かった、場所を変えよう」

○ダマスクスの街・裏通り
先を歩くのはグリークとティキ。
その後ろ一定の間隔を空けてフォウリーとセイクレッドが下手な尾行をしている。
ティキ 「あいつら…2人きりにせいと言ったのに…」
グリーク 「ふふふ、慕われてるね〜」
小さく笑うグリークは立ち止まる。
つられてティキは歩みを止める。

少し離れた所で、歩いてくるシルクレストとクルエ。
2人は前方で見知らぬ人間と話しているティキに気付く。
シルクレスト 「あれ、ティキじゃん。誰と話してるんだ?」
そのグリークとティキの様子にクルエは悟る。
クルエ 「隠れるのよ、おバカ!」
クルエはシルクレストの首根っこを掴んで建物の陰に潜む。
シルクレスト 「(小声で)な〜んで、コソコソしなくちゃいけないんだ?」
クルエ 「(小声で)あの2人、怪しい関係だわ…」
シルクレスト 「はあ、恋人かなんかか?」
クルエ 「あんた、バカァ〜!
ティキの昔の事を知ってる人間よ!!」
シルクレスト 「…確かに、あいつ自分の過去を何も話さないもんなぁ〜」

グリーク 「まあ、別れを言う手間が省けるだろ?」
ティキ 「わしをどうするつもりじゃ?」
グリーク 「500年もの間よく、隠れ通せたもんだ。さっきの光景、見せてもらったよ。
流石は『ドギ』…コンピニア三博士と呼ばれるだけある」
?(サンドラ) 「!」
やはり、違う場所で立ち聞きしているサンドラ、驚愕。
ティキ 「あれは舞台照明じゃ。あんな風に使いたくはなかった。
コンピニアの技術は、人の幸せが元にある。決して破壊を目的とした道具ではない」
グリーク 「武器でないと?」
ティキ 「さよう」
グリーク 「しかしそれが『人の幸せ』を作り出すものだとしても?」
ティキ 「何を言う?」
グリークはおもむろに何かを投げる。
それを受け取るティキ。
ティキ 「これは!」
その手の中には三角錐の飾り。
ティキ 「ダヴァンか!」
グリーク 「底が蓋になってる」
言われてティキは底面の蓋を開けると、小さく折畳まれた紙が出てくる。
広げ始めるティキ。
グリーク 「あたしにはそこに何が書いてあるかは分からない。
だがあんたなら分かるはずだ。ダヴァンと同じ三博士のお前さんなら!」
見開き紙を見て、その意味を知ったティキは愕然となる。
ティキ 「これは…ダヴァン。よもやこんなものを!」
グリーク 「分かったんだね?」
ティキ 「ここにあるのは失われたシステム…Hの着想…。それをFに組み込むとは…」
グリーク 「『システムH』?」
ティキ 「グリーク…おぬしはこれを『人の幸せを作り出すもの』と言ったな?」
グリーク 「ああ」
ティキ 「馬鹿げている!
これは武器を超えた『巨大兵器』じゃ。こんなもの…コンピニアの、あの終末を繰り返すつもりか!!」

フラッシュバック・第17話
炎上するシャヌーン大陸。

グリーク 「必要な時が来たんだ!」
一際大きなグリークの声に、ティキの興奮は鎮まる。
グリーク 「このまま魔王の支配に甘んじるつもりかい。冗談じゃない!
あたしは…グリーンウッドの連中は皆、レインの復活を信じている。そのレインの為にもこれが必要なんだ!!」
グリークの言葉に、壁陰のサンドラは思わず呟く。
サンドラ 「レインの復活…」
グリーク 「魔王を倒す、だから『人の幸せを作り出す道具』になる!」
ティキ 「!」
グリーク、ティキ。
その表情。

壁陰に隠れるサンドラ、シルクレスト、クルエ、フォウリーとセイクレッド。
それぞれの表情。
ティキ 「なるほど…」
グリーク 「夕刻、街の西門で待つ。
逃げる事は許さない。掻っ攫ってでも、引き摺って連れて行くからね。
出来れば平和的に事が進む事を願っている」
そう言って周囲を見回すグリーク。
ビクリとして、シルクレスト、クルエ、フォウリーとセイクレッドは体を小さくする。
ティキ、決意の表情。
ティキ 「…わしは逃げも隠れもせん。おぬしの志、あい分かった。
わしの力、その志に預けよう」
グリーク 「……」
グリークはその場を去って行く。
サンドラ 「……」
去って行く彼女の背中を見送るサンドラ。
サンドラ(M) 「あたしの他にも…レインを信じる人間が居た…」
ティキ 「隠れておらんで出て来なさい」
他団員 「!」
見透かされていた事に観念し、三方から現われるサンドラ、シルクレスト、クルエ、フォウリーとセイクレッド。
ティキ 「すまんな。今まで黙っておって…。ここでお別れじゃ…」
ティキは寂しそうに微笑む。
他団員、それぞれの表情。
他団員 「……」

○ダマスクスの街・夕刻
荷物を背負うティキは、テントから出てくる。
テントを見上げるティキ。
ティキ 「見送りなしか。仕方あるまい、関わらん方が身の為じゃからな」
トボトボと…西へ歩いて行く。