第4話 天使と道化師
シーンC
○GW本拠地・研究室
3つのポッドに入っているのは、目を閉じるジュウジュ、ペンソとシルクレスト。
3人揃いのボディースーツに、インカム。
体の各所にセンサーのような物が付けられている。
実験室のコントロールルームに居るのは、ジェナード、リップ、クルエ、ダイス。
ダイス 「レインか〜、グリン兄ちゃんに早く会いたいな〜」
クルエ 「あ、そっか。ダイスはレインにあった事ないんだったわね」
ダイス 「そおそお」
クルエ 「あたし達もその時は知らなかったのよ。サンドラは気付いてたみたいだったけど。教えてくれなかったの」
リップ 「『オウル』を探しているなら、きっとレインはグリークを尋ねに来るわ。グリークはオウルについて何か知ってるみたいだったし」
ジェナード 「おいおい、おしゃべりはその位にしろ。結果はどうだ?」
リップ 「ご、ごめんなさい!
ホープリズム算出出来ました。ホープ1・93.4%、ホープ2・40.8%、ホープ3・67.1%」
ジェナード 「よし、データ解析はこんなものでいいだろう」
その声に、クルエはコンピューターのマイクスイッチを入れて伝える。
クルエ 「終わったわよ〜、3人とも。シルクレスト、あんたの負け!」
実験室に響くクルエの陽気な声。
ポットが扉が開き、面白くなさそうな顔のシルクレストがコントロールルームに向かって怒鳴る。
シルクレスト 「いちいち言うな!」
ジュウジュ 「まあ、オレ様がトップだな」
ペンソ 「でも、一体何の為の検査なんだろ?」

コントロールルーム。
ジェナード 「エルフの身体的特徴は耳に出るが、やはり純粋なエルフほど同調性が高いか…」
呟くジェナードの袖を引っ張るダイス。
ダイス 「なあなあ、じゃあ俺にもテストさせてよ」
ジェナード 「だめだ。お前はまだ幼いからな。精神が未熟すぎる。崩壊を起こしかねん」
ダイス 「ちぇ…よく分かんないけどさ。ダメって事だろ?」
ジェナード 「そういう事だ」
クルエ 「それを言うなら、(リップに)あたし達もエルフよね?」
リップ 「そうね。ねぇ、ジェナード。一体何を調べてるの?」
ジェナード 「ティキとシーザーに頼まれたメンバー・3人だ。それもエルフに限られたな」
ダイス 「エルフのあんちゃん3人?」
ジェナード 「そうだ、テストパイロットはジュウジュになるだろう」
?(ジュウジュ) 「で、どうしてオレ達より先に海賊のお前等がそいつを知ってるんだ?」
コントロールルームに入ってくる、ジュウジュ、シルクレストとペンソ。
ジュウジュとシルクレストの表情に怒りが見える。
シルクレスト 「確かに気に入らねえな。新参のクセに俺達に指図しやがって」
その台詞にクルエは小さく呟く。
クルエ 「あんたが気に入らないのはシーザーがサンドラに絡むからでしょ」
聞こえたシルクレストは真っ赤になってクルエに反論する。
シルクレスト 「か、関係ねえだろ!」
ジュウジュ 「……」
ジュウジュはジェナードを睨む。
リップ 「お兄ちゃん…」
気まずい雰囲気を和ますかのように、ペンソはジェナードに尋ねる。
ペンソ 「とにかくさ、その『テストパイロット』って何なんだ?」
ジェナード 「ティキかシーザーに直接聞いてみるといい。俺も詳しい事情は知らんからな」
笑って肩を竦めるジェナード。
ジュウジュ 「ティキはともかく、グリークが認めたんだろうとオレはテメエらみたいな賊を仲間とは思わねえ。
シーザーの野郎が、ここグリーンウッドで上に立つ事も絶対に許さねえからな!」
シルクレスト 「シーザーの命令なんか聞かねえぞ!」
ペンソ 「ちょ、ちょっと2人ともどうしたんだよ!」
怒ってコントロールルームを出て行く2人を追いかけるペンソ。
ダイス 「あのさ、リップ姉ちゃん。俺達も『盗賊』じゃないっけ?」
クルエ 「あらホント。『賊』だわ…ってゴメンなさい、リップ」
リップ 「んもう…」
嘆息するリップ。
面白そうに微笑むジェナード。
ジェナード(M) 「これは荒れるぞ、どうするシーザー?」

○虹の神殿
神殿の一室。
目の前にある3日ぶりの食事に呆然となるセイロンとアッサム。
その横で、焦点の合わないダジリンは虚空を見据える。
アッサム 「『賊』の類だったらどないすんねん…人が良すぎるわ、あのねえちゃん」
セイロン 「似たようなもんだと思うけど。あたし達…『詐欺師』じゃない?」
アッサム 「そうや、わい等…『詐欺師』だったわ…。まあ金儲け出来れば、何でもええねん」
セイロン 「ねぇ、ダジリン? って相変わらず、イっちゃってるわね」
セイロンはダジリンの眼前で掌を振る。
が、やはり惚けた顔のダジリン。
?(フレディン) 「いいえ…皆様は詐欺師ではないですよ」
ダジリン 「!」
新たに食事を運んでくるフレディン。
彼女の言葉にダジリンは嬉々として反応する。
ダジリン 「そうです。お、俺達は世界を救う旅をしていて…」
フレディン 「なぜなら私は騙されていませんから」
にっこりと微笑むフレディン。
その裏のない微笑みに、セイロンとアッサムは青くなる。
アッサム 「このねえちゃん」
フレディン 「どちらかと言えば…『道化師』の方が意味合いに近いのでは?」
ダジリン 「道化師?」
フレディン 「はい。ちなみに『道化』とは、人を笑わせるおかしなしぐさや言葉。滑稽という意味ですよ」
やはり、にっこりと微笑むフレディン。
セイロン 「天然毒だわ…」
フレディン 「あ…そうでした。すっかり自分の名を申すのを忘れてしまって、フレディンと言います。見ての通りの、天人です」
辻褄の合わない台詞に、セイロンとアッサムの顔は固まる。
セイロン&アッサム(M) 「しかもボケまで入ってる!」
フレディン 「あの…皆様もお名前を教えてくださいませんか?」
ダジリン 「よくぞこの名を聞いてくれた〜、俺様はダジリン!」
セイロン 「セイロン!」
アッサム 「アッサム!」
ダジリン 「三人合わせて…」
フレディン 「フフフフ…」
それまでと違い、声に出して笑うフレディン。
ダジリンの台詞が止まる。
ダジリン 「……」
セイロン 「ちょ〜っと、ダジリン。まだ途中じゃないの!」
フレディン 「フフフフ…おかしな方々ですね〜」
アッサム 「何もそこまで笑わんでも。いっそしらけてもろた方が、幾分いいわ…」
ダジリン 「フレディンちゃん?」
フレディン 「久しぶりに笑えました。フィーナもここを去ってしまったから。この神殿でこんなに楽しむ事が出来るなんて…」
ダジリン 「この神殿にはフレディンちゃんしか居ないのか?」
その問いに、フレディンの表情が曇る。
フレディン 「……」
フレディンは食事を机の上に置くと、振り返り部屋を出て行く。
ダジリン 「フ、フレディンちゃん!」
フレディンを追いかけるダジリン。
セイロン 「あ〜ん、ダジリンったら〜!」
アッサム 「ちょう待ていな〜!」
ダジリンを追いかけるセイロンとアッサムの2人。

○同・Asteriskの間
広間中央、床に描かれた六星の魔方陣。
中央床面に古代神聖語で文字が書かれている。
魔方陣外に立つフレディン。
床を見てダジリン。
ダジリン 「こりゃあ…」
フレディン 「これは神の奇跡『Rainbow Bridge』を成す魔方陣。先代ブルーストーンのレイン・アクスタインが、現代のレインに遺したものです。そう、この神殿そのものも…」
ダジリン 「レインは出てっちまったんだろ…」
フレディン 「はい。あの方はもう、ここには居ない。だからこの神殿も…もう何の役割を果たさないのです」
ダジリン 「そのアクスなんとかも、レインもここには戻らないんだろ?」
フレディン 「ええ、ここはもう訪れる必要のない場所ですから」
ダジリン 「じゃあ、待ってても意味ねえじゃんかよ」
そこへ、ダジリンに追いつく、セイロンとアッサム。
フレディンとダジリンの会話の真剣な様子に気付き立ち止まる。
フレディン 「お待ちしているわけでないのです。私はただ…ここであの方の無事をお祈りしています」
ダジリン 「何に?神にか??
フレディンちゃんの望みはそんなもんで叶うのか?」
フレディン 「私の望み?」
ダジリン 「そうだぁ、祈って叶えられるもんなのか?」
フレディン 「私は…
この翼が獅子のものならば、あの方と共に歩めるのに」
ダジリン 「レインに逢いたいんだろ。レインの力になりたいんだろ。だったらこんな森に居てもしょうがないぜ」
セイロン 「そうよ、神様が叶えてくれるもんなら今頃、あたし達は大英雄よね」
アッサム 「せやなあ。って天人さんに『神様』の話すんのも妙やな」
フレディン 「ダジリンさん、皆様?」
ダジリン 「俺達と一緒に行こうぜ、フレディンちゃん!」
ダジリンの誘い。
フレディンは、只呆然とその場に立つ。
フレディン 「私は…。御迷惑と思われないでしょうか…」
ハラハラと流れる涙。
フレディンは両手で顔を覆う。
フレディン 「あの方は…イリス様を望んでいるのに…」
俯いて静かに泣くフレディンに、言葉を失う一行。

○同・入り口
翌日朝。
旅支度を終え、神殿前のダジリン、セイロンとアッサムの3人。
ダジリンは神殿2階を見上げる。
ダジリン 「……」
こそこそと囁き声のセイロンとアッサム。
そんな哀愁漂うダジリンの様子を伺いながら。
セイロン 「ふられたわね」
アッサム 「まあ、相手がレインじゃなぁ。勝ち目がないわなぁ…」
ダジリン 「フレディンちゃ〜ん…」

○同・2階
階下の3人を見送るフレディン。
フレディン 「…転生されたオウシェン様を人間に預けたのは…私が御傍に居てはならないと思ったから」

フラッシュバック
幼い少女のフレディンがエルボーラとティーンに、赤子のオーフェを託す。

フレディン 「覚醒前の、何も記憶のないあの方のお世話をする事は浅ましいと思ったから…。でも違うのですね…」

フラッシュバック。
パウル・サンクチュアリ。
ルシファー 「フレディン、お前は何を望む?」

フレディン 「滅びたかったのではない。私は…ただオウシェン様の…いえ、オーフェ様の傍に居たかった。
けれど、恐ろしかったのです。再び、イリス様に心惹かれるあの方を目にする事が…」

○同・入り口
意を決したダジリン。
真顔になり森に響く大声でフレディンに叫ぶ。
ダジリン 「レインと共に旅した勇者!
時に彼らの危機を救い…」
つられて見得を切るセイロンとアッサム。
セイロン 「時に彼らに知恵を授け…」
アッサム 「時に凶悪な魔将を撃退する!!」
ダジリン 「その名もダジリン!」
セイロン 「セイロン!」
アッサム 「アッサム!」
3人 「三人合わせて我ら偽レイントリオ、
望みはヒロイック・サーガの栄光!」
御決まりの見得。
ダジリン 「俺達は絶対に望みを叶えるんだ!
だからフレディンちゃんも一緒に行こう、行けば必ず逢える!!」
アッサム 「根拠のない自信やけど〜!」
そこへアッサムの頭を殴るセイロンのツッコミ。
セイロン 「ど〜してあんたは、こういう肝心なトコロでボケるのよ!」
ダジリン 「望みは神様が叶えるもんじゃないだろ〜、自分でどうにかして叶えるもんじゃないのかよぉ〜!!」

○同・2階
階下の3人を見送るフレディン。
ダジリンの言葉にハッとなる。
フレディン 「神は…オーフェ様もイリス様も…。この望みを叶えてくれるはずがない。
そうですね…そうですね…この想いは届かないかもしれないけれど、傍に居る事は出来る!」
瞳が潤むフレディン。
その場から駆け出す。

○同・入り口
一頻り言いたい事を叫んで、すっきりした表情のダジリン。
セイロン 「ちょっとだけカッコよかったわよ、ダジリン」
ダジリン 「フフフ、フレディンちゃんの惚れてるレイン・アクスなんとかも前のレインだって言うしな。どうせヨボヨボの爺さんだろ。
ヤツに会えば、俺様の魅力に気付くはず!」
溜息をつくセイロン。
セイロン 「…やっぱダメだわ」
アッサム 「そうかいなぁ〜。アクスなんとかなんやろか?
えらい勘違いしてるような気がすんねんけど…」
神殿から、慌てた様子で旅支度を済ませて出てくるフレディン。
偽レイン一行はにこやかに迎える。