第5話 空翔る少年
シーンC
○デストニア・ヤスリブ
見張り台の上空。
蝙蝠の翼を広げ少年の姿で、空を飛び丘を偵察するスティックはバグズの群れに気付く。
スティック 「来やがった!」
ヘパイストス 「!」
スティックの声を合図に警鐘を鳴らす。
町中に響く警鐘(SE)。
スティック 「べらんめぇ、よりによって空からお出ましかよ!」
見張り台下にてミスリルの剣(紫風)を構えるベドゥイン。
同じように、各々の武器を構えるヤスリブ住人の魔族達。
ベドゥイン 「飛行型の魔将か?」
スティック 「いや、違げえ。気配みてえなもんが…全くねえ。なんかイーグルに似てるぞ」
ヘパイストス 「イーグルじゃと!」
スティックは眼下を見下ろす。
味方はベドゥインの率いる十数人の魔族のみ。
スティック 「まじい…」
ベドゥイン 「昨夜のうちに、町の者に事情はすべて話した。ここに残ったのは志を同じくする者だけだ」
スティック 「で、これだけかよ…魔族っつうのは、そこまで落ちぶれたもんなのか!」
魔族A 「仕方ない、みなヴァティスが怖いのさ」
魔族B 「家族がある者は尚更だ。一家を守らなければならん」
スティック 「家族か…」
ヘパイストス 「来るぞ!」
上空からのバグズ・羽蟻型。
口から粘液のようなものを次々と吐き出し、それは町の各所で被爆する。
響く爆発音(SE)。
ガヤ(魔族) 「うわああああぁぁぁぁッ!」
ガヤ(魔族) 「ぎゃああああッッッッ!」
地に降り立つバグズ2匹。
残る3匹は、逃げ惑う魔族を嘲笑うかのように、上空を旋回する。
ベドゥイン 「はあああっ!」
砲弾を横に避けつつ、紫風を構え駆けるベドゥイン。
大きく跳ね、バグズを一刀に切伏せる。
ヘパイストス 「流石じゃ!」
バチバチと火花を上げた後、爆発するバグズ。
ベドゥイン 「硬いな。お前の武器でなければ、傷一つ付けられなかったぞ」
ヘパイストス 「そう言って貰えると、武器屋冥利に尽きる」
ベドゥイン 「しかし、飛行型とは厄介だな」
スティック 「アブねえ、ベドゥイン!」
ベドゥイン 「!」
地に降りているもう一匹のバグズが、粘液弾をベドゥインに狙いを定める。
?(イヴン) 「!」
それは放たれる事なく、鋭い針金のような糸がバグズを貫く。
爆発炎上する、もう一匹のバグズ。
ベドゥイン 「今のは…」
?(イヴン) 「……」
建物の陰に潜むイヴン。
自分がしてしまった事が、信じられないよう顔。
スティック 「ベドゥイン、ぼっとしてんな!」
ベドゥイン 「!」
上空にはまだ3匹のバグズ。
スティックは槍を構え、上空を飛ぶ。
ヘパイストス 「今、空中戦が可能なのはアイツだけだが…無茶じゃ!」

スティック 「俺様は魔族でも獣人でもねえ半端モンだし、家族も居ねえ。でもなあ、おかげさんでこうやってテメエらと戦える羽がある。この空で好き勝手はさせねえ!」
槍をバグズに向けるスティック。
しかしバグズ3匹に包囲される。
スティック 「てりゃああああ〜〜〜〜…」
掛け声と共に、正面のバグズへ突撃する直前。
?(ジュウジュ) 「そっから降下しろ、スティ〜〜〜〜ック!」



スティック 「あぁぁ〜〜…っていい所に…!」
勢いあまって躓くスティック。
そこへ飛来してくる、イーグル1。
コクピットから上半身を出しバズーカを構えるのはシーザー。
スティック 「でぇぇぇ〜〜俺様ごとふっ飛ばすつもりか〜〜〜〜!」
泣き笑いで叫び、急降下するスティック。
シーザー 「いっちょう、暴れるぞジュウジュ!」
ジュウジュ 「オレに指図するな、エロ親父!」
カチリと引き金を引くシーザー。
砲弾はバグズ1匹に命中する。
飛来するイーグルに、驚くベドゥインを始めとする魔族達。
ベドゥイン 「あれは…」

同じように建物の影から、イーグルを見上げるイヴン。
イヴン 「あれもバグズなの…いや違う。人間が乗ってる!」

シーザー 「ハッハッハ、いい気味だ」
ジュウジュ 「うるせえ、うるせえ、うるせえ〜、頭の上で大声出すな〜、気が散るだろ〜が!」
上空を旋回するイーグル1。
自分の周りを飛ぶイーグルに、目を輝かせるスティック。
スティック 「すげえ〜…」

ベドゥイン 「人が空で戦うとは…」
魔族達は見えてきた勝機に一様、明るくなる。

イーグルから響く、ジュウジュの声。
ジュウジュの声 「片方任せていいか?」
スティック 「ったりめえよ!」
自分に近いバグズに対峙するスティック。
シーザー 「じゃあ俺達はもう1匹を遠方へ誘導するぞ」
ジュウジュ 「だから、オレ様に命令するなって言ってるだろ!」
反論しながらも、1匹のバグズの粘液弾を避けながら、離れた場所へ誘導するイーグル1。
一方、スティックもまた粘液弾を回避し、攻撃の機会を伺う。
スティック(M) 「素早さなら向こうが上か。獣化すれば払い落とすくれえ出来るかも知んねえが、向こうの攻撃は100%受ける。さ〜て、ど〜すっか…」
迷うスティックに、地上のベドゥインが叫ぶ。
ベドゥイン 「わしが動きを止める、スティック! 上空からヤツを討て!!」
ヘパイストス 「ここからの打撃なんぞ届かんぞ!」
ベドゥインは紫風を天に掲げる。
ベドゥイン 「これがミスリルを頼んだ理由だ…」
詠唱を始めるベドゥイン。
ベドゥイン 「六元の紫…大気揺れる風よ。我が意思により、天裂く嵐となれ…『ウィンダート』!」
ヘパイストス 「発動媒体か!」

同じように建物の影から、イーグルを見上げるイヴン。
イヴン 「古代語魔法!」

紫風から立ち昇る竜巻が、バグズを包む。
竜巻に飲み込まれ、回るバグズに対し、高度を上げるスティック。
スティック 「今度こそくたばりやがれぇぇぇぇ〜〜〜〜!」
槍を構え急降下するスティック。
バグズを包む竜巻は消滅し、スティックの槍はバグズの頸部を貫く。
バチバチと火花を上げるバグズ。
スティック 「…!」
槍を刺したまま、バグズから離れるスティック。
バグズは爆発する。
同時にスティックの背後からも聞こえる爆発音(SE)。
スティック 「!」
上空のスティックと地上のベドゥイン、ヘパイストスと魔族達が振り向く先には、同じように最後のバグズを撃墜したイーグルがこちらに向かって飛行する。
スティック 「やっぱ、すげえや!」