第5話 空翔る少年
シーンD
○デストニア・ヤスリブ
地上。
紫風を鞘に収めるベドゥイン。
ベドゥイン 「先程わしを救ったのはお前だろう…。出てきなさい、イヴン」
イヴン 「……」
観念したように建物の陰から出てくるのはイヴン。
イヴン 「父さん、魔法使えたのね…知らなかったよ」
ベドゥイン 「わしが話したいのは、そんな事ではない。本当に…本当にお前は…『魔王』なのか…?」
イヴン 「…フフフ」
微笑むイヴン。
そして高らかに笑い出す。
イヴン 「アハハハ、父さん。これがあんたの出した結果だ!
結局、あんたについてくる魔族なんてこれっぽっち。自分達だけじゃあどうする事も出来なかったじゃない?」
ベドゥイン 「魔族は古の時代ラシューヌ神により、授かった魔界を監視する使命を持つ。ルシアンは魔界に抗った。ダルスもまた種族の誇りを忘れては居なかった。最期にレインを導くルラを護り、命を落とした。レインである弟を彼女に託して」
イヴン 「綺麗事ばかり並べ立てて。父さんは悔しいだけさ、羨ましいだけなのさ、正当な魔族として生きたルシアンとダルス達が!」
ベドゥイン 「!」
ベドゥインはイヴンの頬を叩く。
一瞬呆然とするイヴンだがすぐに、ベドゥインを睨む。
イヴン 「何の為にあたしがこれだけ苦労して媚びへつらっていると思ってるか、のうのうと暮らしてきた父さんには分からないだろうね!」
イヴンはベドゥインに背を向ける。
ベドゥイン 「確かにな、自分の娘が魔王だった事すら気付かなかった愚かな父親だ」
イヴン 「あたしはあたしのやり方で、魔族が生き残る方法を考える」
イヴンは右手から魔晶石を取り出すと、それは弾け光を帯びてイヴンを包む。
ベドゥイン 「イヴン!」
イヴン 「さよなら、父さん」
姿を消すイヴン。
そのやり取りを見るスティックは小さく漏らす。
スティック 「ベドゥインもイヴンも親子でお互い心配してるのに…どうしてこうなっちまうんだよ」
シーザー 「親子だからさ…互いに最善だと思う方法で互いを護ろうとする」
スティックの横に立つのはシーザー。
シーザー 「親と子は違う人間だ。理解に苦しむ時もある」
スティック 「『越えようのない壁』か…イヴンみたいな事言うんだな…」

フラッシュバック。
病床のグリークと対峙するシーザー。
グリーク 「逢いたい以上に、グリンを困らせたくはないんだよ。子はいずれ親の元を離れていく。なのに親が子にしがみついてどうする?
…彼等にはまっすぐ前を向いて旅をして欲しいんだ」

フラッシュバック。
幼いシーザーに微笑みかけるやつれた母。

シーザー 「だが…子を想わない親は居ない」
スティック 「…そっか…」
沈むスティックの肩を、ジュウジュは優しく叩く。
ジュウジュ 「んな壁なんか、いつかぶっ壊れるさ。だってよ、これから空に行くんだぜ、スティック!
自由に飛びまくれるオレ達の空にな!!」
ヘパイストス 「そうじゃの、早くその『レオハルト』とやらを拝みたいもんじゃ!」
スティック 「……」
スティックは空を見上げる。
冬空に雲が流れる。
スティック 「そうだな、空には壁なんかないんだ!」

○魔界城・ヴァティスの間
ヴァティスの前、頭を垂れるイヴン。
ヴァティスの横にはベナレスとデデム。
ベナレス 「レインを取り逃がし、反乱分子の粛清にすら失敗するとはな…」
デデム 「バグズを5体も与えたというのに。一体どういうわけかの?」
イヴン 「伏兵が入った、例の墓守と…『義勇軍』が…」
ヴァティス 「よい、イヴン…」
イヴン 「!」
ヴァティスはイヴンへ向けて左手を掲げる。
ヴァティス 「『呪血陣』…」
イヴン 「ひ…」
左手から光る黒い竜が、イヴンの胸に放たれる。
イヴン 「あぁぁぁぁッッッッ〜〜〜〜!」
城中に響くイヴンの悲鳴。

○GW本拠地・廊下
歩くのはティキとサンドラ。
ティキの手には報告書があり、それに目を通している。
ティキ 「でかしたぞ、シーザー。これで目標のクルーが揃った」
サンドラ 「じゃあ…」
ティキ 「ああ、理論値では『レオハルト』は飛行可能になる!」
サンドラ 「そう、ついに…いよいよね」
ティキ 「そうじゃ。急がねば…急がねばならん」
ティキの視線が泳ぐ。
その横顔を見つめるサンドラ、その表情。

○同・グリークの部屋
咳き込みながら、机に向かい何かをしたためているグリーク。
グリーク 「バカ息子か…」
ふと、羽ペンが止まり…卓上にある小さな肖像に目をやる。
グリーク 「最期まで…あがいて…あがいて…本当に馬鹿なのは…あたしだねぇ…」
肖像には、親世代GW。
グリーク、フォレスタ、ダイとコナンがある。

To be continued…
LEGEND =Leohault=