第6話 願望
シーンC
○レオハルト・廊下
壁を伝いながら、ヨロヨロと歩くグリーク。
耳にはインカムがある。

インサート・第4話
グリークとシーザーの会話。
シーザー 「…後悔するぞ?」
グリーク 「するのはあたしだ。お前さんには関係ないだろう」

グリーク(M) 「後悔をしないのかと言われれば、それは嘘だ」
咳き込むグリーク。
艦内放送が流れる。
リップの声 「只今より、レオハルト・テストフライトを行います。総員、インカムコネクト」
レオハルト艦内に重圧が走る。
グリーク 「グッ…」
目を見開くグリーク。
口を覆う指の間から血滴が床へ落ちる。
グリーク(M) 「まだ死ねない。死にたくはない!」

フラッシュバック
メンフィスを旅立つグリンとタケル、マーハ。
笑うグリン。

再び歩き出すグリーク。

○同・廊下
艦内に流れる必死なリップの声。
リップの声 「そ、総員…インカムフルチャージ!」
走っていたジュウジュは、重圧に堪り兼ね壁に寄りかかる。
ジュウジュ 「始まったか…チクショウ。グリーク…ドコ行っちまったんだよ!」

インサート・ヘルツ
グリークとシーザー。
グリーク 「シーザー、あんたをこのレオハルトの船長に任命する」

ジュウジュ 「なんでだ…、なんでだよ…グリーク…!」

○同・ブリッジ
所々で悲鳴が上がる。
シーザー 「クソッ…」
シーザーは苦痛に顔を歪めながら周囲を確認する。
クルー(ガヤ) 「きゃああああ〜!」
クルー(ガヤ) 「うわああああ〜!」
インカムを通して聞こえてくる、多くの悲鳴。
ブリッジのメインクルーもまた、必死の表情。
シーザー(M) 「すまん…マダム」
シーザーは手元の嵌めてあるマスターキーに手を掛ける。
シーザー 「ティキ、インカムコネクト…シャットダウンだ」
ティキ 「…分かった」
ティキの操作により、重圧が解除される。
エンジン音のみ終息する。
静寂。
クルー達、各々の表情
シーザー 「…どうだったティキ?」
ティキは操舵を叩く。
ティキ 「やっぱりだめじゃ、システムH・エネルギーが目標値まで上がらん」
悲壮感が漂う。
サンドラ 「インカムフルチャージでも無理か…」
シーザー 「今日はここまでだ。みんな疲れてるしな」
慌てた顔のジュウジュがブリッジに入ってくる。
ジュウジュ 「グリークを知らねえか?」
サンドラ 「マダムが?何があったの?」
ジュウジュ 「どこにも居ねえんだ。今日はゆっくり休んでるって言ってたのによ」





インサート
ヘルツに覚束ない足取りで入る、人影。
頬がこけ、顔色も青いグリーク。
グリーク 「あたしにはもう時間がない…。ゴホッ、ゴホッ!」
咳き込むと、覆う掌の指の隙間から血がにじむ。
中央、十字架の前で倒れるグリーク。
左手にインカムを握り締め、泣く。
グリーク 「後生だ、飛んでおくれよ」
顔を何とか上げ、十字架を見上げるグリーク。
グリーク 「『願い』がこの船を飛ばすというのなら、この命を捧げて願う。飛ぶんだ、大空を翔けろ、レオハルト!」
十字架が、白く光る。

レオハルト・ブリッジに響く起動音。
シーザー 「何!」
クルエ 「システムH・エネルギー値…10000、20000…まだ上昇してる!」
各種機器にグリーンのランプが点灯する。
クルー達にテスト時のような、苦痛の表情はない。
サンドラ 「一体何が起きているの!?」
ティキ 「これは、動くぞ…レオハルトが!」

フラッシュバック・ヘルツルーム。
グリークの笑顔。

シーザー 「サンドラ、この場を頼む!」
シーザーは思い付いた様に席を後にし、走り出す。
ティキ 「シーザー!」
ティキもシーザーの後を追い走る。
サンドラ 「ちょっと、2人とも!」
ベドゥイン 「サンドラ、どうする?」
サンドラ 「…ハッチオープン、セーフティーアームオフ!
シュミレーションの通りよ、本拠作業員は直ちに撤収。
フレディン、進路6時へ空路ナビゲート。クルエ、各種ポイントソナーを始めて!」
リップ 「メインエンジン、サブエンジン共にシグナル・オールグリーン。作業員の避難を確認しました」
フレディン 「はい、進路6時は…」
クルエ 「周囲10キロメートル以内にポイント反応なし。進路6時クリア」
フレディン 「モニタ入ります」
レオハルトのモニタが開く。

インサート・レオハルト廊下
ヘルツルームに向かい走るシーザー。
ヘルツルームの扉が開く。

ハッチが徐々に開き、天井から日の光が差し込んでゆく。
クルエ 「ハッチフルオープン!」
リップ 「いつでも発進出来ます!」
ブリッジのクルーは皆、サンドラを見る。

インサート。
ガンサイトルームの情景。
ガンナーポジションに座る、ジェナード、セイクレッド、スティック、ダイス、他クルー。
ジェナード 「飛ぶのか、ついに!」

インサート。
デッキの情景。
イーグルを整備する、ヘパイストス、ダジリン、セイロン、アッサム、他クルー。
そして、ペンソとシルクレスト。

呆然としたペンソは手に合った包みを落とす。
ペンソ 「あ!」
シルクレスト 「何だよ、ペンソ」
ペンソ 「リップのクッキー落としちゃった」
シルクレスト 「あのなあ…こんな時に何かと思えば…」
ペンソ 「割れちゃったかな…」

サンドラはモニタを見据える。
決意の表情。
サンドラ 「レオハルト…発進!」

○GW本拠地・製造フロント
レオハルトの艇底がフロアからゆっくりと浮く。

○レオハルト・ヘルツルーム
ジュウジュはヘルツルームに駆け込んでくる。
ジュウジュ 「ハアハアハア…」
そして、呆然となるジュウジュ。
シーザー 「……」
ティキ 「……」
グリークの亡骸を抱えているシーザー。
ティキは彼に向かい立つ。
ジュウジュ 「…冗談だろ…」
ティキはガクリと膝を落とし、俯く。
ティキ 「……」
静かに泣くティキ。
涙が床に落ちる。
ジュウジュ 「悪い冗談だ…こんなの…」
ゆっくりとシーザーの抱えるグリークへと近付く。
シーザー 「もう、ゆっくり…休ませてやろう…」
ジュウジュ 「!」
その言葉に、ジュウジュはシーザーへと顔を上げる。
その表情。
ジュウジュ 「いつもみてえに、冗談だって…」
シーザー 「……」
ジュウジュ 「……」
ジュウジュもまたティキと同じ様に膝を落とし、俯く。
床に落ちる涙。

○同・ブリッジ
突如、ブリッジに鳴り響く警告音。
赤く点滅する艦内とモニタ。
クルーに驚愕が走る。
サンドラ 「一体どうしたの!?」
リップ 「エネルギー値が、下がっていきます!」
サンドラ 「何ですって!!」
ベドゥイン 「いかん、このままでは不時着するぞ!!」
サンドラは慌てて、シーザーのマイク筒を握る。
サンドラ 「総員、対衝撃に備え…!」
放送は間に合わず、大きな音と共にレオハルトが揺れる。
上がる悲鳴。
バランスを崩し、倒れるクルー達。

インサート・製造フロント
轟音と煙。
数メートル浮いていたレオハルトが、重力に従い落ちる。

○同・ヘルツルーム
膝を落としたまま動けないジュウジュ。
異変に気付いたシーザーはグリークの亡骸を庇い、ティキはヘルツの十字架を見上げる。
シーザー 「……」
衝撃の後、シーザーとティキは顔を見合わせる。
ティキ(N) 「それは奇跡だったのやも知れん。レオハルトはその一瞬だけ、地の束縛から放たれた」

インサート・ブリッジのクルー。
何が起こったのか分からず、一様にモニタを見るもテスト前と同じように、開かれる事はなく。
レオハルトの動き、全てが静止している。

インサート・イーグルデッキのクルー。
ペンソの掌にある、2つに割れたクッキー。

インサート・ガンサイトルームのクルー。
ダイスを庇うジェナード。
ダイスが握り締めている、グリークの手紙。

ティキ(N) 「しかし、それから大空を翔る事はなかった」

To be continued…
LEGEND =Leohault=