第9話 子供達の情景
シーンA
○ 魔界城・ヴァティスの間
巨大な玉座に座るヴァティス。
その右側に立つベナレス。
反対側にルシファー。
そして、それぞれの柱の上にデデム、イヴン、ソファーラ、ウルグ、ブラフマン。
ルシファー 「ドレイクはやはり現れぬと見える」
ウルグ 「用件を早くしてよ、ボク飽きちゃった」
ベナレス 「レインがパウルに向かっている。恐らくは…ラシューヌ神イリスの転生」
八魔王の顔色が変わる。
ソファーラ 「(イヴンに)それらしき娘を確認したのでしょう?ならば何故その時に殺さなかったの!」
イヴン 「どうせ、あたしの力不足だよ」
ルシファー 「アレはどうなっている?」
ベナレス 「バルバロスか…」
デデム 「フォッフォッフォッ、既に完成しておる。つきましては、ヴァティス様。動力となる人間狩りを…」
ベナレス 「天主…」
ヴァティス 「許す…。ベナレス、デデム、イヴン、ウルグがそれに向かえ」
4人 「御意!」
姿を消す4人。

○海の傍・崖の上
眼下にあるのはシャヌーンののどかな港町・カデシュ。
それを眺めるウルグとベナレス。
ウルグ 「じゃあ、ここで別れようよ。ボクはとりあえずあそこをやっちゃうからさ」
ベナレス 「そうか…」
ウルグ 「人間もエルフもバルバロスの燃料になっちゃうんだろ?
だったら首を採りすぎたって、文句は言われないよね〜」
ベナレス 「それは『命を奪う』と言う事だ」
ウルグ 「はぁ、何言ってるの。当たり前じゃん?」
ベナレス 「……」
ウルグ 「気が散るからさ、早くどっかに行ってよね〜」
姿を消すウルグ。
暫くして、町から上がる爆炎。
ベナレス 「魔将にされた魔族とは言え、姿は子供。胸糞悪い…」
町から聞こえる悲鳴。
ベナレス(M) 「システムB、その強大なエネルギーは生物の脳から得られる。あの古き時代以来、禁断の技術とされた。
それが今、あの時のように無為な殺戮を生む。
今のワシをどう思うか、フォレスタ。…すまん」

○【サブタイトル】




○グリーンウッド本拠地・研究室
設計図を前に、茶をすするティキとヘパイストス。
ティキ(N) 「サルサがワシの元に持ってきた図案は、レオハルトの追加装備じゃった」
ヘパイストス 「しかしこれを出された時には驚きましたが、何とか間に合いましたのう。
いやはや、茶もウマい」
ティキ 「ハッハッハ、サルサが入れたものじゃから…」
一口飲んで笑うティキとヘパイストス。
そして真顔になる2人。
ヘパイストス 「しかしとんでもない代物ですの。これが発動すれば…」
ティキ 「うむ。レオハルトは唯の移動手段ではなく、真に巨大魔将を相手に戦う事が出来る」
ティキ(M) 「戦いの終末を意味する『ラグナロク』。
フライトテストでさえ一度も成功のした事のないレオハルトが、システムEの最終形態である『ラグナロク』を発動出来るのか?」
ヘパイストス 「艦首の構造は、まるで咆哮する獅子ですな…」
ティキ 「これでダヴァンの着想の全てが形となった。しかし、未だ大空を舞う事はない。ここに奴が居ない事が悔やまれるの」
ヘパイストス 「ティキ殿。言われたじゃあありませんか。『わしらに出来る事をしよう』と」
ティキ 「そうじゃった、そうじゃった」
苦笑するティキ。
その2人の元に現れるジュウジュ。
ジュウジュ 「ティキ、ちょっといいか?」

○レオハルト・ヘルツルーム前廊下
スケッチブックを携え、鼻歌でご機嫌のカタリム。
スケッチブックにはレオハルトの絵。
カタリム 「フンフンフン〜」
ふと、少しだけ開くヘルツルームの扉に開く。
カタリム 「あれ、開いてる。何の部屋だろ?」
部屋を覗き込むカタリム。
中心にある巨大な十字架。
カタリム 「…十字架。不思議な部屋…入っちゃまずかったかな」
すると、近付いてくる話し声に気付く。
カタリム 「ヤバ…」
焦って周囲をキョロキョロと見回し、身を隠すカタリム。
入ってくるのはジュウジュとティキ。
ティキ 「一体何の話じゃ、よりにもよってこんな所で」
ジュウジュ 「ココだったら、誰も来ないだろ…」
カタリム(M) 「居るんですけど…」
隠れて聞くカタリム。
ティキ 「…この部屋に入るのは、正直つらい」
ジュウジュ 「俺だってそうだ。でも、レオハルトの心臓部であえて聞きてえ」
ティキ 「何をじゃ?」
ジュウジュ 「『システムB』って何だ?」
ティキ 「!」
ティキはその言葉に顔色を変える。
ティキ 「一体どこでそれを聞いた?」
ジュウジュ 「レオハルトの動力源・『システムH』とは違うよな。だが、敵さんはレオハルトと同じ飛空艇を作って、しかも飛ばしやがった。『システムB』って代物でだ」
ティキ 「!」
カタリム 「!」

フラッシュバック・第8話
炎上するグロッセートの街上空に飛ぶ船。

カタリム(M) 「まさか…」
ジュウジュ 「何度も巨大魔将と間違えられてたが、今日報告があって、ようやくハッキリした。そいつの名は『バルバロス』」
ティキ 「『バルバロス』…」
ジュウジュ 「カデシュの街が襲われた。たった1人生き残った獣人からの情報だ。
『バルバロスはシステムBとかいうヤツで、空を飛んでる』と襲った魔王がぬかしやがったらしい。
どういう事だ、ティキ、何で黙ってた! そいつでレオハルトも飛ばせば…」
ティキ 「『システムB』は邪法じゃ!」
ジュウジュ 「!」
吐き捨てるように、声を荒げるティキ。
ジュウジュ 「邪法?」
ティキ 「なぜその獣人が生き残ったか分かるか、ジュウジュ。獣人は魔力に乏しい種族だからじゃ」
カタリム(M) 「『魔力』…」
陰に隠れるカタリムはその言葉に反応する。
ティキ 「システムBは『魔力』すなわち、人の精神力を源とする。すなわち精神を司る臓器、魔力を持つ者の『脳』じゃ」
ジュウジュ 「何だと…」
カタリム 「!」

フラッシュバック・第8話
首のない、リーブズと母の亡骸のシルエット。

カタリムは吐き気に口を覆う。
ジュウジュ 「じゃあ…まさか…今魔界軍がしきりにやってる人間狩りってのは…」
ティキ 「そのバルバロスとやらの動力源調達…じゃな…」
ジュウジュ 「…ふざけてやがる…人の命を…何だと思ってんだ…」
ティキ 「ジュウジュ。そのバルバロスの情報をシーザーには知らせたか?」
ジュウジュ 「いや」
ティキ レインは今、天界・パウルに向かっておる」
ジュウジュ 「天界…空か!」
ティキ 「レインがバルバロスに気付いているかは知らんが、直接対決する事もありえる」
ジュウジュ 「くっそ〜」
部屋を飛び出しシーザーの元へと向かうジュウジュ。
その後を追いかけるティキ。
廊下。
ジェナード 「お、ティキ。いい所に…」
ティキ 「すまん、ジェナード。話は後じゃ…」
ジェナード 「?」
走り去っていくジュウジュとティキ。
ジェナード 「一体何があったんだ…」
呆れて2人を見送るジェナードの目の前、ヘルツルームからヨロヨロと現れるカタリム。
ジェナード 「お前…一体どうしたんだ、こんな所で…!」
カタリム 「うっ…」
口を押さえてしゃがむカタリム。
ジェナード 「おい!」
カタリム 「おじさん…」
そのまま、ジェナードに寄りかかるように気を失う。

○グリーンウッド本拠地ブース・グリークの部屋
部屋でなにやら相談をしていたような、シーザーとサンドラ、ベドゥイン。
3人に向かうジュウジュとティキ。
シーザー 「駄目だ」
ジュウジュ 「どうしてだよ!」
ジュウジュの申し出を拒絶するシーザー。
ティキ 「しかし、シーザー。せめてイーグルだけでも…」
シーザー 「みすみす死なせに行かせるわけにいかん」
ジュウジュ 「何だと〜!」
サンドラ 「ジュウジュ。パウルに入るレインの目的はオウル入手だけではないの。ファンジームやシャヌーンの時とは状況が違うのよ」
ティキ 「どういう事じゃ、サンドラ?」
シーザー 「大神とラシューヌ神の覚醒だ」
ティキ 「な…」
ジュウジュ 「そんな、『レジェンド』みたいなおとぎ話があってたまるかよ!」
シーザー 「魔界神・ヴァティスは実在した。その対極にある2人の神が存在してもおかしくないだろう?」
動揺を隠し切れないティキとジュウジュ。
ベドゥイン 「かねてから、魔王はラシューヌ神の…イリスの生まれ変わりを探していた。その者はヴァティスの脅威となりうる故に…。実際に娘のイヴンは、レインと共に居た生まれ変わりと思われる聖女の命を狙った」
ジュウジュ 「だったらなおさら…」
シーザー 「魔王は本気でやってくる。今のイーグルで何が出来る?」
ジュウジュ 「!」
その言葉に黙るジュウジュとティキ。
ティキ 「イーグルでは…レインを連れて逃げる事が精一杯じゃろう」
シーザー 「逃げ切れる自信はあるか?」
ジュウジュ 「逃げるだけなら…」
?(フレディン) 「お待ちください」
部屋に響く声。
フレディンが入ってくる。
シーザー 「フレディン、遅いぞ」
フレディン 「申し訳ありません」
シーザー 「また迷ったか?」
フレディン 「はい、お見通しですね」
にっこりと微笑むフレディン。
そして、ジュウジュへと顔を向ける。
辛辣な表情。
フレディン 「レインは死しても生まれる。従って、殺されるような事はないでしょう。それは、不毛な事だと魔王は知っているはずです。
そしてラシューヌ神もまた、別の意味でその命を奪われる事はありません」
ジュウジュ 「どういう意味だ?」
フレディン 「『レジェンド』が再び現実となるならば、ヴァティスはイリス様を欲します」
シーザー 「…神の力か?」
フレディン 「…言うならば、総てを」
沈黙。
サンドラ 「最悪の状況が考えられるわね」
シーザー 「バルバロスに乗って、御大のお出ましか…」
部屋から走り出そうとする、ジュウジュ。
その腕をティキが握る。
ジュウジュ 「離せ、ティキ!」
ティキ 「ジュウジュ、ここはシーザーのいう通りじゃ。今のワシらではどうする事も出来ん!」
ジュウジュ 「グリンが危ないんだ、このままじゃ5年前みたいに…」
シーザー 「レインを信じろ、ジュウジュ!」
一際大きな声で諭すシーザー。
ジュウジュはその場で項垂れて膝を突く。
ジュウジュ 「クソッ!」
床を拳で叩くジュウジュ。
ティキ 「…今は…ワシらが出来る事をするしかない…」
その様子を見つめるシーザー、サンドラ、ティキ、ベドゥイン、フレディン。
その表情。
ティキ(M) 「この時、誰もが己の無力を呪った。レインではなく唯の人である非力な自分達を…」

○【アイキャッチ】