第9話 子供達の情景
シーンB
○ダイスの部屋
ダイスのベッドで寝ているカタリム。
カタリム(M) 「パパ…ママ…」
うっすらと目を開けるカタリム。
スティック 「お、気付いたか?」
カタリム 「あ…」
目の前に居るのはダイスとスティック。
それに気付き、カタリムは顔を赤くする。
カタリム 「わ、私…何か寝言言いませんでしたか!?」
ダイス 「うん、え〜とね『パパ、ママ』…んぐ…」
ステッィクに口を塞がれるダイス。
スティック 「(小声で)バッキャヤロ〜、余計な事言うんじゃねえ」
ダイス 「ムガムガ…」
スティック 「(カタリムに)おう、そっちは何も言ってねえぜ!」
ダイス 「ぷっは〜」
ようやく開放されるダイス。
カタリム 「そうですか…」
安心したようで、部屋を見回す。
スティック 「どうやらよう、倒れたらしいな。ジェナードが慌ててここに運んできたんだぜ。
フレディンがつかまらなかったって言うから…」
カタリム 「ここは、どこですか?」
ダイス 「俺の部屋だよ」
カタリム 「あれは…」
カタリムは部屋の壁に飾られている、親世代グリーンウッドの肖像画に気付く。



ダイス 「ああ、あれね」
ダイスは壁の絵を外しカタリムの元に持って来る。
ダイス 「俺の父ちゃんと、グリークとダイとフォレスタ」
カタリム 「グリークって…このレオハルトの創始者の?」
ダイス 「うん。俺の母ちゃん…ってトコかなあ。本当の母ちゃんじゃないけどね」
カタリム 「え?」
ダイス 「本当の母ちゃんは、知らねえもん。ずっと昔に死んじゃったし」
スティック 「俺も物心ついたときには、父ちゃんも母ちゃんもおっちんでたな」
カタリム 「……」
カタリムは俯く。
ダイス 「でも俺は、グリークが居たし」
カタリム 「そう?」
ダイス 「今はみんなが居るし寂しくないよ」
スティック 「いい事言うな〜、ダイス」
ダイス 「まあね、そういうわけで。おばさんも、僕らを頼りなよ」
カタリム 「おばさんじゃないもん」
カタリムは再びダイスの手にある肖像画に視線を移す。
カタリム 「グリークってどんな人?」
スティック 「威勢のいいおばちゃんだったな〜。それと俺達を結ぶ人」
カタリム 「結ぶ人?」
ダイス 「俺達の、…みんなの母ちゃん」
カタリム 「…レオハルトの生みの親…」
カタリムは体を起こす。
スティック 「おい、もう大丈夫なのか?」
カタリム 「私、贅沢者でした。すみません」
ベッドから降りて2人に向けペコリと頭を下げるカタリム。
カタリム 「もう落ち込むの、絶対やめにします。
だから、もっとグリークさんのお話を聞かせて下さい」

○イーグルデッキ
カタリムの回想・屋外
空を見上げるフレディン。
その表情は陰になり見えない。
付き添うカタリム。
ティキ(N) 「その後の報告では、バルバロスは現れたものの、危機を脱したレインはパウルを発ったそうだ。
ラシューヌ神の力に目覚めたマーハと共に…。しかし、尊い犠牲を払う事となった」
心配そうに言葉をかけるカタリム。
カタリム 「フレディンさん…」
フレディン 「フィーナ…」
呟いた後、カタリムへと振り返るフレディンは笑顔を見せる。
フレディン 「私は大丈夫です。あの子は自分の信じる道を生きたんですから」

デッキから空を見るカタリムは、スケッチブックにペンを走らせる。
カタリム 「フレディンさんは強い…」
?(シーザー) 「上手いな」
カタリム 「ひゃあ!」
背後からいきなり声を掛けられて、驚くカタリム。
振り返るとそこにはシーザーとジェナードが居る。
カタリム 「おじさん、それに…シーザーさん!」
ジェナード 「俺は相変わらず『おじさん』か…」
苦笑するジェナード。
一方シーザーはカタリムのスケッチに興味を持つ。
シーザー 「カタリム…今の絵をよく見せてくれ」
カタリム 「は、はい…」
カタリムはスケッチブックをシーザーに渡す。
それはレオハルトを腕に優しく抱く、グリークの絵。



シーザー 「お前は…グリークにあった事はないはずだ」
カタリム 「特徴を聞けば、描けるんです。似顔絵師をしながら、生活してきましたから」
シーザー 「……」
シーザーはその絵に魅入る。
シーザー 「そういう事か…」
ニヤリと笑うシーザー。
カタリム 「へ?」
シーザー 「なあ、カタリム。この絵を貰ってもいいか?」
カタリム 「まだ描きかけなんですけど」
シーザー 「構わん」
ジェナード 「どうしたんだ、シーザー。お前が子供の落書きを欲しがるなんて」
カタリム 「何それ、失礼ですね!」
シーザー 「いいや、たいしたもんだぞこれは。いいヒントになった。
ジェナード、ジュウジュに伝えろ。これからテーベに向かう」
ジェナード 「何だって?」
シーザー 「よって今日のテストは中止だ」
ジェナード 「おい、いくらなんでも…」
その場を去ろうとするシーザー。
シーザー 「おっと、言い忘れた。カタリム、お前は最高の絵描きだ!」
背を向けたまま手をヒラヒラと振るシーザー。
ティキ(N) 「そう、シーザーは気付いたのじゃ。このレオハルトに欠けたものを。
そしてシステムHの真髄を…」

○テーベの街・墓地
グリークの墓前に唯独り立つシーザー。
シーザー(M) 「あんたが死んだ時、レオハルトは『命を懸けた願い』でなければ動かないものだと俺は思った。
だがな、それではバルバロスと変わらない。命を犠牲にせねばならん船なんぞあってはならない」
膝を突くシーザー。
シーザー(M) 「『システムH』とは人々の望みだ。何かを想い、そして強く願う心…」

インサート・クルー達の情景。
指揮を執るサンドラ。レオハルトのメインエンジンを点検するティキとベドゥイン。ティキの肩に乗るフォウリー。
マニュアルを片手に、OSをチェックするクルエとサルサ。
射撃訓練場で、お互いのスコアを見合うジェナード、スティックとセイクレッド。
食事の用意をするフレディンとカタリム。
イーグルを誘導する、ダジリン、アッサムとセイロン。
イーグルで空を舞うペンソとシルクレスト。

シーザーは、カタリムのスケッチに目を移す。
シーザー(M) 「俺達の願いは皆同じ『レオハルトを飛ばす事』。しかし想うものは違う。愛する相手、焦がれる物、手にしたい夢、希望…クルーの数だけ想うものがある。
もし、それが唯一つのものとなれば…クルーの心は一つになる」
墓石に手を掛けるシーザー。

○グリーンウッド旧アジト
シーザーの帰りを待つジュウジュ、リップとダイス。
日はすっかり落ち、闇と静けさが覆う。
リップ 「遅いわね…シーザー」
ジュウジュ 「……」
闇の中現れる、シーザー。
頭と隻眼を覆っていたターバンを外し、何か小さな箱のようなものを包んでいる。
シーザー 「待たせたな…、後片付けはすんだか?」
ダイス 「シーザー…それ何?」
シーザー 「帰ってから見せる」
青い顔をしているジュウジュに気付くシーザー。
シーザー 「どうした、ジュウジュ…浮かない顔だな?」
ジュウジュ 「……」
リップ 「つい2時間くらい前に…グリンに会ったの…」
シーザー 「そうか…他のレインは…タケルとマーハは元気だったか?」
リップ 「それが…グリン独りだったの」
ジュウジュ 「様子がおかしい」
シーザー 「何?」
かすかに不安を見せるジュウジュ。
ジュウジュ 「全員別れたとぬかしやがった」
シーザー 「別れた…だと?」
リップ 「それからここを出て行ってしまって。後からグリンを探したの…でも見つからないの!」
ダイス 「こんな夜遅くに町を出るなんて普通しないしね。だからテーベ中捜し回ったんだ。
でも、港で姿を見たって話を最後に」
シーザー 「消えた?」
ダイス 「うん。港からは船は出ていないしね」
シーザー 「本当にグリンだったのか?」
リップ 「それは間違いないわ…でも、いつものグリンじゃなかった。
何だか焦ってるみたいで…」
呟くジュウジュ。
ジュウジュ 「嫌な予感がするんだ…」
シーザー 「……」
闇夜を見上げるシーザー。
三日月。
シーザー 「暗い内に発とう。目立たない方がいい」
ジュウジュ 「待てよ、グリンが…!」
シーザー 「この町にはもういない可能性が高い。だったら、本拠で報告を待った方がいいだろう」
ジュウジュ 「……」
唇をかみ締めるジュウジュ。

○テーベの街・郊外砂丘の上
町から飛び立つイーグルを魔晶石を通して見つめるウルグ。
ウルグ 「何か、飛んでったね」
?(ソファーラ) 「ああ、イヴンの報告にあった小型の飛行機でしょう?」
背後から聞こえるソファーラの声。
ウルグ 「後付けさせよっと」
ソファーラ 「早々に片付けなさい。でないと先に、イリスの元へ行かせてもらうわ」
ウルグ 「ずるいよソファーラ。僕が作ったオモチャなのにさ」
ウルグは小さい手に魔晶石を握り締める。
手を開くと、それは光の筋となり、イーグルを追うようにして消える。
ウルグ 「どうせ人間がくだらない事してるんだろ。あれ、コンピニアのメカだよね。
それならデデムに押し付けちゃうよ。
だってさ、こっちの方が絶対楽しいもんね!」
はしゃぐ様に笑うウルグは、初めてソファーラの方を向く。
ソファーラ 「そうね…」
残忍な笑みを浮かべるソファーラ。
彼女の後ろには、黒いマントに身を包み囚獄陣を施された、グリン、ミッフィー、オーフェ、ヨシュアとガルシアンの姿。