第2話 胡蝶の夢
シーンA
○ティーレ島・森の中
(N) 「目の前に居た青い鎧の騎士は…例えるならそう、アーバレン王子。
気品、格調、優雅の三拍子。私の理想の男性!」
の眼前に立つのは青い鎧・マントの青年。
憂いを帯びたその表情に、は顔を赤くする。
(M) 「二次元じゃないよ、三次元だよ…、モノホンだよ…」
「つ…」
体を起こす
すぐ傍らに立つ青い騎士に気付く。
「あんたは…」
青い騎士 「わしの名は『アクスタイン=フォン=ライム』…」
「王子様…」
は瞳を輝かせて彼を見る。
その様子に気付いたは、面白くなさそうにアクスタインを睨む。
アクスタイン 「わしの名を聞いて、何も知らぬとは…御主達何者だ?」
「はい、はい〜!
私『 』。こう見えても18歳、高校三年生です!
』でいいですよ〜、趣味は…」
「バカか…
どう見たってただのコスプレ野郎じゃんか。こんな格好で、公共の場に居るなんて…」
「失礼だよ、君。私達を助けてくれたんだから。
って何よ、『』って!」
「自分で呼べって言ったじゃないか?」
君には言ってないもん!」
「今はそんなの関係ないだろ。大体ここはどこなんだよ!
代々木公園か、日比谷公園か、皇居か?」
の顔は引きつる。
(M) 「彼…人が変わった!」
アクスタイン 「まさか、異世界の者か?」
「俺の名前は『 』。身近な人間には『』って呼ばれてる。
ついさっきまで東京タワーに居たんだ」
アクスタイン 「…なんという事じゃ」
とその時。
上空より響く、獣の雄叫び(SE)。
アクスタインは空を見上げる。
「何、今の鳴き声?」
アクスタイン 「竜の咆哮。ヨシュア…封印を解いたか」
森の上を横切るのは巨大な飛空艇と赤いドラゴン。
飛空艇のエンジン音(SE)。
「空飛ぶ戦艦…あんなの日本にあったっけ…」
「あるわけないだろ」
の顔は心なしか明るい。
「ドラゴンに飛行艇。ここは、代々木公園でも日比谷公園でも皇居でもないんだ」
「何を言って…」
アクスタイン 「夢齎す界…『ライムランド』」
「ライム…ランド…」
アクスタイン 「いかん!」
上空のドラゴンから放たれる炎のブレス。
「うわぁ!」
「きゃあ!」
アクスタイン 「『プロテクティブ・サークル』!」
3人を守る魔法の障壁。
は再び、アクスタインの姿に目を見張る。
「すごい…」
「魔法だ…」
周囲の木々は一瞬にして焼かれる。
アクスタイン 「いかんな。二人とも、わしに掴まれ!」
「はい!」
「!」
アクスタインは手に持つ大剣を構える。
アクスタイン 「『テレポート』!」
アクスタインの魔法。
3人は森から姿を消す。

○海・船の上
無人の船の上へと瞬間移動する3人。
は軽く尻餅をつく。
「イタタタ…」
「テレポーテーションか」
アクスタイン 「……」
アクスタインは遠方、孤島の上空を見つめる。
上空には飛空艇と赤いドラゴン。
「ドラゴンと戦艦が戦ってる…」
アクスタイン 「魔界軍は去ったか…」
「マカイグン?」
と同時。
ドラゴンが閃光に包まれ、姿を消す。
「ドラゴンが…消えた?」
アクスタイン 「どうやら、封じる事が出来たようだ…クッ…」
アクスタインは膝を突く。
苦しそうに息を切らす。
アクスタイン 「…い、いかんな。力を使いすぎた」
「王子様!」
「おい、待てよ。俺達をこんなトコに置いて…!」
アクスタインの体が青く光る。
そして…
小さな老人の姿に。
「あ…アクスタインさん?」
老人 「フォッフォッフォ、どうやら時間切れじゃ」
「…じ、じいさん…」
「…あははは…」
苦笑する
(N) 「こうして、私の王子様は忽然と消えてしまったのであります」

○【サブタイトル】



○マラカンドの街・大通り
市場を冷やかしながら、興味深そうに眺める
その様子を訝しげに見る
(N) 「私達はマラカンドと呼ばれる街に居ます。
この格好は目立つって、アクスタインさん…じゃなかったマホメトさんが言うんでマントを買いに来ました。
ちなみに『マホメト』さんっていうのはアクスタインさんのおじいちゃんバージョンの名前。
そう呼べって言うの」
「見ろよ、
あの鎧。いかにもファンタジーって感じだよな」
(M) 「ううぅ〜、彼に違和感」
「今、考え事してるんだから。話しかけないで」
「考え事?」
「まず第一に…君」
「『』でいいよ。めんどくさいだろ?」
「じゃあ、君。その変わりようは何?」
「あ、俺?
くだらない質問だな。だってもう優等生を演じる必要はないだろ?」
「じゃあずっと学校では猫かぶってたの!?」
「ああ、まあね。親父がうるさいから」
「呆れた…我が高校のアイドルである生徒会長。実態がこれだとは…」
にっこりと笑う
「こっちの方がお好みかな、さん?」
「やめて、知ったからには気味が悪い」
眉をひそめる
「それで、第二は?」
「あ…ええと」
腕組みをする
「ううぅ〜、私達はどうしてここ『ライムランド』に来たのか?」
「……」
その言葉に、は真顔になる。
「この世界は危ない」
「…え」
も見ただろ、普通にモンスターが徘徊するライムランド。
あのドラゴン、マホメトが言ってた『魔界』の軍隊。そいつらとあの戦艦に乗ってた連中が戦ってた。
でもな、本当は違うんだ。
多分、俺達がやらなきゃいけないんだろう」
「…え…ええ〜?」
「人間界から異世界に主人公が降り立った。そうして、世界を救う勇者になるため旅をする。
よくある話じゃんか。俺とは選ばれたんだ」
「危ないのは世界じゃなくて、あんただ〜!」
「何だとぉ〜」
「ゲームと違うんだから、冷静に考えてよくん!」
「じゃあ、何だ。魔王にでもなるのか」
「それも違う〜!」
「じゃあ、どう解釈するんだ。は?」
「ううぅ〜」

フラッシュバック・第1話
2人の前、瓦礫の上に立つ銀髪の少女。
銀髪の少女 「『Rainbow Gate』!」

「そうだ、最後に見たあの女の子」
「女の子?」
「ほら、東京で見たでしょ。銀髪の女の子。呪文みたいの唱えてた。
それにくん、彼女を知ってるみたいだった」
「あ…ああ。去年のクリスマスの頃の噂だよ」
「噂?」
「『天国への扉』っていう怪談」
「怪談?」
「事実らしいけどね。イブの夜、都内の町の『ヘブンズビル』で中学生の女の子が神隠しにあったんだって」
「神隠し?」
「そう。それから4ヶ月経った今でも、行方不明だった筈だよ。見つかったって話は聞いてないし」
「その彼女?」
「ああ。確か名前は『夢部まあは』。日本人なのに銀髪」
「その子だ…」
「だろうな」
「そのまあはって子に、巻き込まれたんだよ私達」
「それは違うよ、俺達は彼女に選ばれたんだ」
「いいかげんにしろ〜、!」
一際大きな声で怒鳴る
「小説とか漫画とかゲームとか。所詮空想世界なんだから。
楽しんで主人公気分に浸るのは大いに結構。
でもね、ここじゃあ一般人。剣や魔法を持たない私達に何が出来るって言うの?」
「じゃあ言うが…ここはお前が、そして俺が好きだったファンタジーの世界なんだぞ。
こんな事、ありえない。でも現実に目の前にある世界だ。あのアクスタインとかいう男だってそうだ。
それを否定するっていうのか?」
「否定って、何もそんな。私はただ…」
「……」
「私は帰りたい」
俯く
「だって、私。やりたい事があるもん」
「金を稼ぎながら生活する事か?」
「!」
はハッとなる。
「帰れば逃げれない現実が待ってるのに?」
「でも…でもね、君。ここは私達の居るべき場所じゃないと思う」
「何を根拠に!」
「だって、私達はここで何をすればいいの?
そんなの逃げてるだけだよ!」
「!」
マホメトの声 のいう通りじゃな」
杖に乗りフワフワと空中に浮くマホメト。
「マホメトさん」
マホメト 、それに。御主達がここでやるべき事は人界、すなわち元の世界へ帰る手立てを探す事。
魔界軍、そしてその神・ヴァティスと戦う者は他に居る」
「俺達は本当にただの人間なんだな…」
マホメト 「『ただの』とは違うな。人は皆、各々意思を持ち生を持つ。それは世界を根源を司る尊い礎」
「うすうす気付いてるんだ。あんたは特別なんだろ?」
マホメト 「……」
「帰ろ…君」
…」


「私達、この世界に居ちゃ…いけない」
「…クソ!」
は座り込み、地面を叩く。
マホメト 「マーハと、合流するのじゃ。人界へのゲートは彼女にしか開けん」
「まあはと?」
マホメト 「ああ。彼女とその仲間達はいずれ、飛空艇で主国『ライム』を訪れる。彼女達より先にその地へ向かおう」
「うん」
(N) 「この時、どうして君がそこまでこの世界に残りたいのか。私は知らなかった。
でも、一つだけ分かった事がある」
項垂れたは腰を上げる。
「俺、先に宿に戻ってるよ」
去ってゆく
その背を見送る
(N) 「私達は勇者じゃない。それに選ばれた人間でもない。
ただ…帰らなきゃいけないんだ」

○【アイキャッチ】