第3話 南柯の夢
シーンA
○シャヌーン・テーベの街
掌に収まる大きさの肖像画を宿の主人に見せるマントの少年。
それはマホメトの肖像画。
少年の顔は見えない。
マントの少年 「この老人だ。見覚えはねえか?」
主人 「ないねぇ。見てりゃあ忘れやしないよ。只でさえこの時勢、こっちは商売上がったりなんだ」
マントの少年 「そうか…邪魔したな」
主人 「悪いね」
少年は肖像画を懐にしまうと、宿から出る。
するとそこで待つ、同じ様なマントの少女が2人。
レニー 「どうだったお兄ちゃん?」
マントの少年 「いや」
肩をすくめる少年。
レニー 「そう、前のマラカンドの街には立ち寄ったんだし、北に向かってるのは確かなのに」
アリスタ 「レニー、彼はこの町を必ず訪れる。ここは北の終着点だからな。下手すると彼を追い抜いたんじゃないのか?」
レニー 「でも、アリスタさん。老師は一体ここで何をする気なんですか?」
アリスタ 「さあな。今分かっているのは何時の間にか、2人の供を連れている事だ。おかげで移動が緩やかになった分追いつけた。焦る事はない、この町で張っていればきっと掴まる。そうだろう、エイセル」
アリスタの言葉に、マントの少年・エイセルは穏やかに笑う。
エイセル 「ああ、いよいよだな」

○【サブタイトル】



○シャヌーン・テーベの街
人気の少ない街中。
前話で訪れた街のような活気はない。
その大通りを、は歩く。
「寂しい街だね」
「北に行くほど、世界が荒れてるってマホメトが言ってたな。『デストニア』に近いから」
「『デストニア』?」
「ああ、ヴァティスの本拠地・魔界への入り口があるらしい」
「そうかぁ。だったらなお更、こんな所で船なんて見つかるのかな」
「最悪、船だけ借りて自分達で漕ぎ出すしかないだろ」
「え〜」
「仕方ないだろ、みんな命が惜しいんだ」
「私、湖のあひるボートしか漕いだ事ない」
「ペダルは多分ついてないぞ」
「ううぅ〜」
「それにあれは多分『白鳥』だ」
「ううぅ〜」
2人の会話を断つ様に、人の悲鳴が聞こえる。
ガヤ 「魔将だ〜!」
「!」
通りの向こうから逃げてくる人々。
「やばい、逃げるぞ。!」
「うん!」
走り出す2人。
しかし、逃げる人に押されたが転ぶ。
「きゃ!」
!」
転んだに駆け寄る
「ひっど〜い」
「早く、立てるか?」
「痛ッ!」
足を捻ったは立とうとした所で、バランスを崩す。
そこへ落ちる巨大な影。
「!」
2人が見上げると、そこには醜い巨人の魔将。
「ちッ!」
(M) 「絶体絶命、ぴ〜んち!」
を庇うように抱きかかえる。
硬く目を瞑る

その時。
剣が空を斬る音。


魔将 「グオオオオォォォォ〜〜〜〜!」
魔将の断末魔の叫び。
背後から駆けてくる2人分の足音。
アリスタ 「オーク1体だからよかったものの…」
レニー 「お兄ちゃん、ムチャしすぎだよ」
その声にはうっすらと目を開き、は魔将の居た方向に振り返る。
の前に立つ、巨大な剣を持った少年。
振り返り、穏やかに微笑む。
「あ、あの…」
エイセル 「大丈夫か?」
「……」
面白くなさそうなは、の目を覆う。
「へ、な…何するの〜君!」
「なんとなく、また一目惚れなんてされちゃあな…」
レニー 「足、くじいたんだね?」
2人に近寄る少女・レニー。
心配そうなその表情に、の目を覆う手を離す。
「え…うん」
レニー 「主ラシューヌ神。正しき者に命の恵みを…『キュア』!」
の足に翳されたレニーの手から放たれる温かな白い光。
「あ…痛くない」
「これも魔法か…」
レニー 「そうだよ、神聖魔法」
エイセル 「レニーも、やっと安心して他人にも使えるようになったな」
レニー 「ひどい、お兄ちゃん!」
「あ、あの…」
慌てて、その場に起立する
ペコリとお辞儀をする。
「助けて下さって有難うございました」
がお世話になりました〜」
「あ〜、君。失礼すぎ!」
2人の様子に気付くアリスタ。
アリスタ 「エイセル…」
エイセル 「ああ、分かってる。アリスタ、この2人に間違いない」
と、その時。
通りの向こうから聞こえる声。
マホメト 「無事か、2人とも!」
杖に乗り飛んでくるマホメト。
レニー 「あ!」
レニーはマホメトを指差す。
顔を見合わせるエイセルとアリスタ。
マホメト 「……」
「え…」
互いを見合うマホメトとエイセル。
そして、2人を心配する
エイセル 「やっと見つけた、マホメト師。あんたに話がある」

同刻。
建物の屋根の上からその様子を窺う、魔族の美女。
魔族(ソファーラ) 「見つけましたわ…」

マホメト 「…!」
ソファーラの強烈な視線に気付いたかのように眉を顰めるマホメト。
マホメト 「場所を変えよう…話はそれからじゃ」

○【アイキャッチ】