第1話 クエストしよう
シーンA
○ティーレ島
空を覆う暗雲と闇。
走る稲光。
ヴァティス 「グォォォォッッッッ〜〜〜〜」
空を多い尽くすほどの8枚の翼を持った巨大な黒竜の雄叫びが空に響き渡る。
アレス 「……」
それを見上げるブルーストーンのレイン、アレス。
身体が青い光に包まれている。
同様に他の5人のレイン、各々の色。
決意の表情。
ルラ shdida nuramagokuha mikoto homy tshbito kyuh
祈るラシューヌ神。
膝を立て左手を大地につけると、四方に白い光が流れる。
ルラ motokyuhha arusuyu unu
光は地に魔方陣を描き始める。
ルラ Rainbow Dragon!」
ルラとレイン達の最後の詠唱。
地から赤・橙・黄・緑・青・紫・白色の光が立ち上りヴァティスを包む。

ホワイトアウト 。

○ライム上空
美しいライムランドの俯瞰。
ナレーション 「聖戦と呼ばれる戦いから7年。
魔界の神ヴァティスは倒され、世界に平和は戻った。ヴァティスを倒した英雄、6人のレインは戦禍で疲弊した各々の大陸の復興に努める」
暗転。
壁画、魔将が描かれている。
ナレーション 「しかし、未だ魔将は世界を徘徊する。
ヴァティス無き今、なぜ魔将が生まれ悪夢を齎すのか?」
そして、ライム大陸、ライアスの街上空。
港が見え、白い渡り鳥が横切る。
ナレーション 「その謎を解かんとする冒険者達を、人々は『クエスター』と呼ぶ」

○【メインタイトル】




○ライム城下町ライアス・冒険者の店『蒼鷹亭』
グレイの場合。
マスターと思しきエルフ・ジュウジュにカウンター越しに話しかける猫の獣人の少年グレイ。
グレイ 「だからさ、ジュウジュさん。一週間でいいからここで雇って欲しいんだ。レインに関して色々聞きたい話もあるしさ」
ジュウジュ 「あのなあ、話を聞きたいならそっちが情報料を払うのが普通だろうが」
隣でグラスを拭きしまっている、メイド姿の猿の獣人・サルサはにっこりと笑う。
サルサ 「グレイさんと仰いましたね。私達と致しましても、あまり人を雇う余裕がないのですよ」
ジュウジュ 「う、サルサ。それを言うか…。とにかく、金に困るのなら他所で仕事しろ」
サルサ 「ではジュウジュ様。先程入ったばかりのクエストは如何でしょうか?」
グレイ 「クエスト?」
ジュウジュ 「冒険者…つまりクエスター向けの仕事の事だよ」
ジュウジュは、カウンターの脇に置いてある紙をグレイに手渡す。
ジュウジュ 「そのなりじゃ、魔将退治には向いてねえだろうし。これなんかどうだ?」
グレイはその紙を読み上げる。
グレイ 「ええと…『消えたルルカ家の姫。探し出した者には相応の謝礼』…」

○同街・商店街通り
フィオの場合。
歩いているフィオ。
フィオ 「はっくしょん!」
くしゃみをした後、鼻を擦る。
フィオ 「ん〜。また親父が愚痴でもこぼしてるかな…!」
何かに気付いたようで、露店の影に身を潜める。
フィオの視線の先にはライム兵。
街の人に質問している様子。
フィオはうんざりした表情をして溜め息をつく。
フィオ 「ちぇ、もう手が回ってるのか。
とにかく、早く『冒険者の店』っていうのを探さないと…」

商店街通り・ピノの場合。
鼻歌混じりに人ごみの中をスイスイと飛んで行く妖精・ピノ。
時折、信じられない物を見たような顔で振り返る街の人。
ピノ 「とっととこの街で一儲けしなくちゃね〜」
ライム兵を伺い壁に身を寄せているフィオ。
向かいの曲がり角から飛んできたピノと顔面でぶつかる。
フィオ 「うわ!」
ピノ 「きゃ!」
一瞬何があったのか分からず、辺りを見回すフィオ。
フィオ 「あれ、今なにかぶつかったような…」
ピノ 「ここよ、ここ!」
地面に落ちているピノはフィオを見上げる。
怒りの表情。
ピノ 「ったく。一体どこ見て歩いてるのよ!」
フィオ 「うわ、妖精!」
ピノ 「んなの、見れば分かるでしょ。だったら気をつけてよね、ライムランドではと〜っても貴重な妖精なんだから!」
フィオの眼前の高さまで飛ぶピノ。
フィオ 「…何だか想像してた妖精とは違うな」
ピノ 「失礼しちゃうわね。あたしは忙しいの。じゃあね」
フィオ 「あ、待てよ」
ピノ 「何よ、まだ何か用?」
フィオ 「あのさ、冒険者の店ってどこにあるのか知ってる?」

○【サブタイトル】




○冒険者の店『蒼の鷹』
店の中の風景。
柄の悪そうな冒険者の3人組がテーブルについて酒を飲んでいる。
他方では顔を隠しフードを深くかぶる男が壁にもたれて立っている。
未だカウンターで話しているグレイとジュウジュ。
サルサは店の奥に居るのか、カウンターには居ない。
ジュウジュ 「ライムの双璧・オルトロス魔術師団長、ホウンテイン騎士団長。その1人、オルトロスの一人娘だそうだ。噂じゃ傾国の美姫とも謳われてるお姫さんで、何でもあのアレス王のお気に入りらしいぞ」
グレイ 「へ〜」
ジュウジュ 「名はファルシーオ=ルルカ。おん年は13歳」
グレイ 「身代金目的の誘拐だったら大事件じゃないの?」
ジュウジュ 「だからな、信用できるクエスターにしか紹介しない。相手は大貴族だ。謝礼もたんまり貰えるぞ…」
といいかけた所で店に入ってくるのは、フィオとピノ。
ピノ 「『謝礼がたんまり』ですって〜〜〜〜!」
ピノは一目散にジュウジュの元へと跳んでいく。
ピノ 「ちょっと待ったあ〜!」
ピノはグレイとジュウジュの顔の間に割って立つ。
グレイ 「いっ、よ、妖精!」
ジュウジュ 「お、変わった客だな」
ピノ 「それ、貸しなさい!」
グレイの手から紙を奪うピノは、カウンターにそれを置き読み始める。
背後から覗き込むようにしてフィオもその文面に目を通し。
フィオ 「げ!」
その表情に気付いたのか、ジュウジュはニヤリと笑う。
ジュウジュ 「いいクエストだと思うんだけどな〜」
フィオ 「じっ、冗談だろ。ルルカ家って名前ばかりで大貧乏。お…オルトロスだって心労でハゲかかってるって噂だぞ!」
ピノ 「ん〜、確かに。具体的な金額を提示していない点は疑わしいわね」
一方グレイはクエストの話は忘れ、ピノの姿に目を見張り顔を赤くする。
グレイ 「妖精だあ…、初めて見た…。かわいいなぁ〜」
ピノ 「フン、人探しよりは魔将をズバッとやっちゃった方がずっと楽だわ」
グレイ 「…ハハ」
前言撤回、ひきつるグレイ。
冒険者A 「よう、そこのちっちゃいの」
先程までテーブルで酒を飲んでいた柄の悪い冒険者が、カウンターに割って入りピノを見下ろす。
冒険者B 「フェアリーちゃんじゃないの。珍しいね〜」
ピノ 「何か用、酒臭いおじさん」
冒険者C 「なあ、確か妖精の涙って宝石になるって話あったよな。昔はそれで、たんまり儲かったらしいぞ。本当か?」
その3人組に、嫌悪感と警戒心を露にするピノ。
同じくフィオとグレイ、ジュウジュ。
冒険者A 「俺達、もうちょっと呑みたいんだよねえ」
ピノ 「きゃ!」
ピノを掴む冒険者A。
冒険者B 「捕まえた〜」
冒険者C 「すこ〜しでいいから、泣いてくれないかなぁ?」
ジュウジュ 「おい、お前ら…」
ジュウジュが止めるより先に、ガツンという鈍い音が響く。
フィオが素早く腰のファルシオンを抜き、刃のない側で冒険者Aの手首を撃っている。
冒険者A 「痛って〜〜〜〜!」
逃れるピノ。
冒険者C 「やりやがったな!」
冒険者B 「ガキのくせに生意気な野郎だ!」
冒険者3人組は、それぞれ武器を手に取り構える。
素早くフィオの陰に隠れるピノ。
ピノ 「何よ、先にやってきたのはあんた達でしょうが!」
フィオ 「それに。オレはガキじゃない! オレの名前は『フィオ』だ。
これから世界一の剣士になる。覚えとけ!」
ジュウジュ 「……」
面白そうに微笑むジュウジュ。
ピノ 「きゃ、かっこいい〜!」
冒険者A 「だったらここでくたばれ!」
フィオに襲い掛かる冒険者達。
ピノは後方に回り、カウンターに戻ってくる。
ピノ 「やっておしまい、フィオ〜!」
グレイ 「あわわ…」
机のひっくり返る音、ガラスの割れる音、武器と武器がぶつかる音。
派手な喧嘩。
しかし、ジュウジュは楽しそうに笑っている。
物怖じするグレイ、苦笑。
グレイ 「ジュウジュさん、よく笑ってられるね」
ジュウジュ 「ま、よくある事さ」
グレイ 「他にもお客さんいるじゃん〜」
とほほ〜といった顔のグレイ。
その視線の先には、壁に寄りかかるフードの男。
フードの男 「……」
しかし、男は先程から微動だにしない。
ジュウジュ 「そうだ、グレイ。もしこの騒ぎを上手く解決できたら、とっておきのクエストを教えてやる」
グレイ 「とっておき?」
ジュウジュ 「ああ…クエストを解けばお前が知りたい事が分かるかもしれない…って言えばいいか?」
グレイ 「僕の知りたい事…まさか、レインの!」
驚いて目を見開くグレイ。
決意の表情。
カウンターで「やっちゃえ〜」と叫んでいるピノに近付く。
グレイ 「あんまり人前でやりたくなかったんだけど。じゃ、頭がぼんやりしてきたら、耳を塞いで。
妖精のきみは、この事をフィオさんに伝えてくれない?」
ピノ 「へ?」
応援していたピノはそれを止め、グレイを見上げる。
ピノ 「どういう事?」
グレイは背にある布を紐解き、マンドリンの楽器を手に取る。
グレイ 「後で説明するから。きちんとフィオに教えてあげて」
小さく掻き鳴らし、チューニングをするグレイ。
その様子に、頷くピノ。
ピノ 「わかったわ。猫さん、頼むわよ」
グレイ 「上手くいくといいけど…」
ちょうどその時、フィオがファルシオンで冒険者の1人の鳩尾を撃つ。
冒険者Cが白目を向いて倒れる。
静かにグレイの歌声が店に響き渡る。
グレイ tesketeske sedusianuri hahadisito mogetouni
しかし、フィオと冒険者は気に止めていない。
フィオ 「なかなかてこずらせるじゃん」
冒険者A 「て、テメエ〜!」
フィオ 「あと2人!」
楽しそうに剣を振るうフィオ。
が…
グレイ nsomudaka nurimaene tadawoseyu sasokitayo
冒険者B 「うぅ…」
足元がぐらつく冒険者B。
同じ様に、冒険者Aは自分の剣を落とす。
フィオ 「な…」
ぼんやりするのか頭を振るうフィオ。
目の前で冒険者Bが床に倒れる。
ピノ 「フィオ、耳を塞ぐの。歌を聴いちゃダメ!」
フィオの耳元まで飛んできたピノは、耳打ちする。
フィオ 「!」
素早く両耳を塞ぐフィオ。
同じ瞬間、冒険者Aも床に崩れ落ちる。
グレイ 「ふう」
歌い止めるグレイ。
ピノ 「一体何したの、猫さん」
グレイ 「古代神聖語の歌でね。魔法と同じ効果があるんだ。どうしても効果が出るまで時間がかかっちゃうけどね。僕みたいな魔力のない獣人でも、正確に歌えばこんな風に…」
ジュウジュ 「『スリープ』と同じもんか?」
グレイ 「そうです、僕は『呪歌』って呼んでます」
ジュウジュ 「あのなあ、グレイ。古代神聖語を正確に発音できる奴なんて、世界に何人も居ねえぞ」
笑うジュウジュ。
フィオは悔しそうに、ジュウジュとグレイの方を振り向く。
フィオ 「ちぇ。せっかくの腕試しだったのに…」
と、呟く。
フィオの背後の冒険者Aの指がピクリと動く。
ピノ 「猫さん。見所あるじゃない〜」
グレイ 「でもこの呪歌は、音痴には効きづらいし…魔将には効かないんだよね」
フィオ 「あ〜あ。ま、仕方ないか…」
ファルシオンを鞘に収めるフィオの背後、武器を構えた冒険者A。
フィオは気付いていない。
フードの男 「!」
先程から微動だにしなかったフードの男がそれに気付き、ピクリと動くが。
冒険者A 「グ…」
ゴツンという音とうめき声。
フィオが振り返ると、白目をむいた冒険者Aがうつ伏せに倒れる。
フィオ 「え…」
その冒険者を殴ったらしい、片腕ほどの長さのロッドを持つ青年・ルーン。
トントンと自分の肩を持て余す様に叩いている。
フードの男 「……」
ルーン 「やい、ピノ。置いてきやがって」
ピノをあからさまに睨んでいるルーン。
そのガラの悪そうな風体に、フィオは思わず。
フィオ 「こいつらの仲間じゃないよな」
ルーン 「んぁ、ボウズ。それが恩人に向かっていうセリフか?」
フィオ 「ぼ、ボウズ!?」
ピノ 「遅いわよ、ルーン。待ってなさい、そこらへんに転がってる奴らから有り金巻き上げるから」
グレイ 「ま、巻き上げるって…」
ルーン 「どーせまた、ろくでもねえクエスト受けるんだろ?」
ピノ 「あ〜ら、あたしがいないとそのクエストも引き受けられないチンピラが、よく言うわ〜」
と、ピノの横を過ぎ去るのはメイド姿のサルサ。
壊れた机やら、ガラスやらを丹念にチェックしている。
ピノ 「へ…?」
フィオ 「嫌な予感…」
その様子に顔が青くなるフィオ。
サルサ 「はい、お待たせいたしました。皆様4名で、お1人様銀貨200枚づつの弁償になります」
ピノ 「はあ?」
ルーン 「ちょっと待った、こりゃどういうこった、ピノ!」
グレイ 「い、いくらなんでも高すぎだよ!」
フィオ 「そうだ、元を正せばこの店のモラルが悪いせいじゃないか!」
ジュウジュ 「まあまあ、これから紹介するクエストをこなしてくれれば、それはチャラ」
ルーン 「は、バカ言え。俺は関係ねえ。タダ働きしてたまるかっての」
ジュウジュ 「おまけに銀貨333」
4人 「!」
指を3本立てるジュウジュのその言葉。
フィオ、ルーン、グレイ、ピノの表情が変化。
ピノ 「なんだか中途半端…でも高額!」
ルーン 「んなウマい話が…」
ジュウジュ 「こいつらでいいだろ、マルス?」
ジュウジュは壁際のフードの男に尋ねる。
マルス 「……」



静かに頷く男・マルス。
明らかにルーンを指差している。
それに気付くルーン。
その瞬間、2人の視線が合う。
ルーン 「!」
マルス 「但し、この4人でパーティーを組む事。それが条件だ」
ゆっくりと抑揚のない声でそれだけを話すマルス。
そして、そのまま店から出て行く。
ルーン 「んな…」
フィオ 「なあ、ピノだっけ。パーティーって何?」
ピノ 「あのねえフィオ、そんな事も知らないの。クエスターの常識よ!」
グレイ 「クエスターが編成するグループの事だよ。目的のあった冒険者達が一緒に組むんだ。旅をするのも魔将と戦うのも、その方が安全でしょ?」
フィオ 「なるほど〜」
その会話を聞いて、ルーンは頭を抱える。
ルーン 「チビに加えてボウヤにガキだと。俺は子守か?」
フィオ 「誰がボウヤだ! それにな、オレは女だ!」
グレイ&ピノ 「!」
ジュウジュとサルサ以外。
みんな驚き声も出ない。
フィオ(M) 「オレ達の出会いは本当に偶然でまったく感動的なもんじゃなかった。
でも、この時。オレはそんなのどうでもよかったんだ。
初めてのクエストだったから!」