第1話 クエストしよう
シーンB
○海・小船の上
早朝。
小船に乗る、フィオ、ルーン、グレイ、ピノ。
船を漕ぐのはジュウジュ。
ルーンはぼやく。
ルーン 「大体何なんだ、このガキだらけのパーティー。俺は子守じゃねえっつの」
ピノ 「諦め悪いわね。まだ文句言ってるの?」
フィオ 「依頼主のマルスが『お前も連れてけ』って条件出したんだからしかたないだろ? ちぇ、オレがガキだってんならルーンは大人げないよな」
ルーン 「んだと?」
グレイ 「ああもう、よしなよ2人とも」
溜息をつくグレイ。
グレイ 「先が思いやられるなあ…」
一方ピノはそんな2人を気にせずに、ジュウジュに話しかける。
ピノ 「ねえ、今回のクエストって何なのよ?」
進行方向を向いていたジュウジュは振り返る。
ジュウジュ 「魔将退治だ。これから行く無人島のな」
ピノ 「無人島? そんな所に島があるなんて聞いた事ないけど…」
話に加わる他3人。
ルーン 「おいおい、まだ内容聞いてなかったのかよ?」
フィオ 「でも、なんだって無人島の魔将なんか退治する必要があるのさ?」
グレイ 「だよね。誰が困る訳じゃないのに…」
ジュウジュ 「その島に住み着いた魔将さえ全て倒せばいい。変に詮索したきゃ、そりゃお前達に任せるさ」
グレイの方を向き、ウインクするジュウジュ。
グレイ 「……」
ジュウジュ 「ほら、ついたぞ。あの島だ」
5人の眼前、朝霧の中浮かび上がる島。

○洞窟の中
洞窟を進む一行。
グレイ 「無人島ってジュウジュさんは言ってたけど・・・」
ランタンを持ち掲げるグレイ。
グレイ 「不自然な岩壁なんだよね。削り落としたって感じ」
ピノ 「人の手が入ってるって事?」
グレイ 「うん」
ルーン 「話がうますぎるからな。どうせ、詐欺の類いだろ?」
フィオ 「えっ、それじゃあこの島に取り残されたりしたら大変じゃんか!」
グレイ 「あのね、ルーン、フィオ。ジュウジュさんはクエスターギルド・ライム支部長なんだ。そんな仕事紹介するわけないよ」
大きく欠伸をするルーン。
ルーン 「あー、ハラヘッタ」
フィオ 「ったく。緊張感ないよな。これから魔将と戦うってのに」
ルーン 「てめえら、勝手にしろよ。俺は手ぇださねえからな」
フィオ 「ルーンなんかあてにしてないよ、指くわえて見てればいいさ」
ルーン 「ほざいてろ」
ピノ 「ルーン、あんたまだすねてるの?」
グレイ 「もうすぐ出口だよ。準備しておいた方がいい」
一人冷静なグレイは、手に持つ短剣を構える。
洞窟の出口から光が差し込み、ホワイトアウト。

○幻の村
洞窟から出た一行の前に広がるのは、小さな村の情景。
無人島と聞いていた一行は信じられない風景に呆然とする。
フィオ 「え?」
ルーン 「おい、無人島って話じゃなかったのかよ?」
一行に気付いた村人の老夫婦がフィオを見て声がける。
老婆 「おや、タケル。おかえりなさい。今日は随分と遅かったじゃないか」
老人 「また山の泉に出かけていたんだろう?」
フィオ 「え、オレの事?」
ピノ 「ちょっとちょっと、一体どうなってんのよ、何のなのよ、この人達!」
老婆 「まったく、一人で出歩くなとヒミコ様にきつく言われているじゃろうに!」
老婆に腕を引っ張られていくフィオ。
フィオ 「な、なあ。オレさ、『タケル』なんてヤツ、知らないんだけど…」
老人 「なに寝ぼけた事いっとるんじゃ、さあ。ヒミコ様にきつ〜く叱ってもらおうかの」
フィオ 「お、おい。みんな、なんとか言えよ!」
フィオは助けを求めるように、グレイとピノの顔を見る。
グレイ 「様子がおかしいよ、フィオ。この人達、僕達の事は見えていないんじゃ?」
フィオ 「ええ〜!」
グレイ 「とにかくさ。その『ヒミコ様』にお会いしよう。何か手がかりが分かるかもしれない」
フィオ 「そんな、話が違うじゃんか!」
グレイ 「ジュウジュさんが言ってた。ここには魔将退治のクエストだけじゃない、何かがあるんだ」
フィオ 「なあ、でもその『ヒミコ様』ってのが魔将じゃないよな?」
苦笑いをしながら、自分の腕を引っ張る老婆の顔を見るフィオ。
老婆は呆れたように溜め息をつく。
老婆 「さっきから何を言ってるんじゃ。さあ、館に行くぞ!」
ズルズルと引っ張られていくフィオについて行くグレイ。
ピノは興味深そうに、村の風景を見回す。
ピノ 「変わった文化体系だわ。サンタマリアとも違うのね。今までに見た事ない!」
ルーン 「おいおい、お前だったらこの気配くらい感じるだろうが?」
ピノ 「『気配がない』って事でしょ?」
ルーン 「……」
ルーンの視線の先には先程の老人が居る。
老人 「魔王に見つかる前に、タケルを無事旅立たせねば…」
ルーン 「……」
老人の独り言を耳にするルーン。
その表情。

○ヒミコの館
老婆により部屋の真ん中に正座させられるフィオ。
老婆 「ここで待っておるんじゃ。じきにヒミコ様が来る」
フィオ 「は〜い」
老婆 「なんじゃ、その間延びした返事は! 返事は…」
フィオ 「はいはい!」
老婆 「一回で宜しい!」
ピノ 「プ!」
吹き出すピノ。
フィオ 「何だよ、人ごとだと思って」
?(ヒミコ) 「その位にしておきなさい、ヤヨイ」
老婆 「ヒミコ様」
深く礼をする老婆。
部屋に入ってきたのは優しげな女性。



ルーン 「……」
ルーンは己のロッドに手を掛ける。
グレイ 「あなたが、ヒミコ様?」
静かに微笑むヒミコ。
ヒミコ 「ヤヨイ、下がりなさい」
老婆(ヤヨイ) 「ヒミコ様。きつ〜く、タケルを叱って下さいましねぇ。晩の用意はしておきますから」
ヒミコ 「はい、お願いしますよ」
言葉に従い、部屋から去って行く老婆。
ヒミコはゆっくりと、フィオの前に座る。
ヒミコ 「どこから参られました、旅の方?」
フィオ 「え?」
そして、フィオの背後に立つルーンを見上げる。
ヒミコ 「そこのお連れの方も、どうぞ楽になさって下さい。少なくともこの館に危険はございません」
ルーン 「何だと?」
ピノ 「あたし達の事が分かるの?」
頷くヒミコ。
ヒミコ 「私だけは。他の者はみな、生前の自我のままスペクターの呪縛に捕らわれておりますから…」
苦しげに俯くヒミコ。
フィオ 「生前?」
ルーン 「あんた達、死人だな?」
フィオ 「え?」
グレイ 「どういう事だよ、ルーン?」
ピノ 「幽霊ってワケよ」
フィオ 「ゆ、幽霊〜?」
目を見開くフィオは、ヒミコの顔をまじまじと見る。
微笑み返すヒミコ。
ヒミコ 「仰る通りでございます。私達は今より14年前、この村で命を絶たれた者です」
フィオ 「魔将に…襲われたのか?」
ヒミコ 「はい。ここは…ブルーストーンのレイン、タケルの旅立った村なのです」
グレイ 「!」
驚くフィオとグレイ、ピノ。
ただルーンだけは動じない。
フィオ 「アレス王の…」
ヒミコ 「はい、ライム滅亡の日。時の王…アクアリジア陛下に命じられ、私と夫のスサノオは生まれたばかりのアレス王子を連れこの島へ辿り着きました。タケルと名付け、導きの星・ルラが現れるその時まで魔王の目から匿い、戦いに赴くあの日まで、育ててきたのです」
グレイ 「ルラが一番最初に会ったのが、ブルーストーンのレイン・アレス王だって話だけど…じゃあその時に」
ヒミコ 「はい、ルラがライムランドに降り立った次の日…この村に魔王の軍勢が押し寄せました…」
フィオ 「そうか…村の人は、オレをアレス王と間違えたんだ。死んじゃった今でも、アレス王の事を大切にしてるんだな」
ルーン 「んな事はどうだっていい」
場を断ち切るかのように、切り出すルーン。
ルーン 「俺達はあんた達を現世に縛り付けてる魔将の退治に来た。で、その魔将・スペクターはどこに居るんだ?」
フィオ 「!」
乱暴な物言いに、驚いてルーンを見るフィオ。
同じ様に、グレイもルーンを見上げている。
フィオ 「どうだっていい…って何だよ、ひどいじゃんか?」
ルーン 「だったらどうしろってんだ。ここで同情して涙の一つでも流せってのか?
こいつらを楽にしてやりてえんだったら、とっととその魔将を倒せばいいんだよ!」
ヒミコ 「ありがとうございます」
フィオ 「ヒミコ様…」
すまなそうにヒミコへ振り返るフィオ。
そして、ルーンを睨む。
フィオ 「見損なったぞ、ルーン!」
ルーン 「で、どこに居るんだ。その魔将は?」
ヒミコ 「ここから東の山です」
ルーン 「お〜、じゃあ先行くぞ〜」
やる気がなさそうに、ロッドで肩をトントンと叩きながら部屋を出て行くルーン。
フィオ 「ちょっと待てよ、ルーン。まだ話は終わってない!」
怒りながらルーンの後を追いかけるフィオ。
グレイは名残惜しそうに、ヒミコの方を振り返る。
グレイ 「本当はもう少しお話を伺いたかったんですけど…」
そこにヒミコの姿はない。
グレイ 「はぁ〜、アレス様の昔話。聞きたかったなぁ〜」
溜め息をつくグレイに、ピノはチッチッと人差し指を立てて振る。
ピノ 「禁句よ、禁句」
グレイ 「え?」
ピノ 「あいつの…、ルーンの前ではレインの話は禁句なの」
グレイ 「何で?」
ピノ 「さあね〜、途端に機嫌が悪くなるんだから。レインに対してあんまりいい印象もってないみたい」

○東の山
山を登る、一行。
フィオ 「ったく、どうしてこんな最低なヤツとパーティーなんて組まなきゃいけないんだよ!」
先頭をズカズカと歩くフィオ。
ルーン 「おうおう、やる気だな。おじょーちゃん」
フィオ 「誰がおじょーちゃんだ!」
ルーン 「そうだったな。お前はおじょーちゃんってよりは、ぼーやの方がお似合いだ」
フィオ 「ブッ倒す。このクエスト終わったら、必ずブッ倒す!」
グレイ 「2人とももう、いい加減にしなよ〜」
ピノ 「ちょっと、みんな黙って!」
その場に止まる4人。
フィオはファルシオンを抜き、グレイは短剣を構える。
ルーンは相変わらずロッドを振り回している。
辺りをうかがう一行。
魔将・ワーウルフ 「グォォォォ〜〜〜〜」
地面から湧き出してくる凶暴化した狼の魔将。
一行に襲い掛かってくる。
フィオ 「な、魔将?」
グレイ 「これは魔将・ワーウルフだよ。ただの狼じゃない!」
一瞬躊躇するフィオに対し、グレイは冷静に魔将を斬る。
確実に魔晶石を斬るグレイ。
ピノ 「ちょっと、グレイ。石は叩かないでよ〜。売れないでしょ!」
グレイ 「そんな器用な戦い方出来ないって!」
フィオ 「オレがやってみるよ!」
次々と沸く魔将に対して、フィオもまた次々に倒していく。
グレイ 「きりがない、フィオ。とにかく先に進もう!」
フィオ 「分かった…って。高みの見物かよ、ルーンは!」
ルーン 「だ〜から最初に言っただろうが。俺は手出しはしねえってな」
ピノ 「んも〜だったら、魔晶石拾うのぐらいは手伝いなさいよ!」
フィオ 「置いてくぞ、ピノ!」
ピノ 「あ〜もう、待ちなさい〜〜〜〜!」

○泉
山を駆け上りながら魔将を倒していくフィオとグレイ。
山道が開け、泉の傍に辿り着く。
息を切らす4人。
フィオ 「はあ…とりあえず、いったん落ち着いたかな」
グレイ 「もう、追っては来ないみたいだけど…」
ピノ 「あんなザコが、村を支配してる魔将なわけないでしょ!」
フィオ 「え?」
ルーン 「来るぞ」
フィオ 「!」
ルーンとピノは泉を見つめる。
同じ様にフィオとグレイも顔を向けた先に、泉から立ち上る黒い霧。
霧は黒いマントと羽織った、巨大な鎌を持つ魔族の老人の形を取る。
魔将・スペクター出現。
ピノ 「出てきた、親玉だわ!」
スペクター 「なにやら異臭がするかと思えば、生きた人間か…」
グレイ 「うわ、上級魔将!」
フィオ 「上級魔将?」
ピノ 「あんた本当に何にも知らないのね!
上級魔将よ、上級魔将。魔将の中でも頭がよくて強い奴!」
フィオ 「だから喋るのか」
ピノ 「何のん気に!」
スペクター 「まあよい。どちらにせよ、お前達もここで死んで魂を食われるのだ」
ピノ 「きゃあ!」
振り下ろされる鎌を避けるフィオとピノ。
スペクター 「悪夢の力を以て、我が敵を灰燼と帰せ…『ヴァティ』」
グレイ 「魔法!」
衝撃波を避けるグレイ。
グレイ 「まずいよ、あんなのに当たったら一溜まりもないって!」
自分の頭に乗るピノに、剣を構えなおしながら尋ねるフィオ。
フィオ 「上級魔将も、魔晶石が弱点なんだろ?」
ピノ 「うぅ〜、そうよ。あの大きい宝石…」
ピノが指差す先に、心臓部に当たる部分に赤黒い宝石が光る。
ピノ 「もったいないけど、命には代えられないわ。砕いちゃって!」
フィオ 「よし!」
ピノはフィオから離れる。
魔将に対して駆け出すフィオ。
魔晶石に対して斬りかかるが…
フィオ 「え…」
刃は空を切るように、魔将の体を通り抜ける。
フィオ 「そんな!」
スペクター 「愚かな!」
スペクターは鎌を振り上げながら、フィオの体を打ち払う。
フィオ 「うわッ!」
飛ばされるフィオ。
ピノ 「フィオ!」
グレイ 「やっばいよ、剣で斬れないじゃんか!」
木の幹に体を強く打ちつけたフィオ。
心配そうに飛び近付くピノ。
ピノ 「フィオ、大丈夫?」
フィオ 「っつ…」
体を起こすフィオ。
自分を覗き込むピノの背後に、迫るスペクター。
フィオ 「オレに構うな、ピノ。逃げろ!」
立ち上がるフィオは剣を構える。
グレイ 「無理だよフィオ! あいつは剣じゃ斬れない、出直して対策考えないと!」
フィオ 「オレが時間を稼ぐから、皆は…」
スペクター 「無駄な足掻きを…死ね!」
ルーン 「めんどくせえ」
緊張感のないルーン。
変わらず、ロッドを玩ぶ。
ルーン 「人間と魔将。要領が違うんだって事を、よ〜く肝に銘じとくんだな」
ピノ 「ちょっと、ルーン。なんとかしなさいよ!」
ルーン 「俺の取り分、上げてもらうぞ」
フィオと魔将の間に立つルーンは、魔将に対峙する。
スペクター 「なんのつもりだ、人間?」
ルーン 「ただの武器じゃ斬れねえが、コイツじゃどうかな。『Liberate』!」
フィオ 「!」
ロッドを構えるルーン。
ロッドの先から戦斧の光る刃が現れる。
スペクター 「何だと」
フィオ 「あ、あれは!」
魔将が驚く間も無く、ルーンは斬りかかる。
スペクター 「ギャアアア〜〜〜〜!」
一瞬にして砕かれる魔晶石。
グレイ 「す、すごいや…」
フィオ 「魔法の…斧…」

フラッシュバック。
幼いフィオの前に庇うように立つ、少年。
右手に持つ、光り輝く戦斧。

フィオ(M) 「アクス…」
感激したグレイが、ルーンに駆け寄ってくる。
グレイ 「すごいよ、ルーン。口だけじゃなくて、本当に強かったんだ!」
ピノ 「あ〜、もう。せっかくの魔晶石がぁ〜!」
ルーン 「お前ら、もっと他にいう言葉があるだろ〜が」
フィオ 「ルーン、あんたのフルネームってまさか…」
呆然と立ち尽くすフィオに振り返るルーン。
何だ? というように答える。
ルーン 「俺の名前か? 『ルーン=アクス』だ」
グレイ 「アハハ、斧戦士らしい名前だね」
フィオ 「!」

フラッシュバック。
フィオに振り返る少年。
泣いているフィオに対して、安心させるように笑う。
頬に傷のある、幼い頃のルーン。

フィオ(M) 「オレの命の恩人…」
そんなフィオの様子に気付かない他3人。
ヒミコ 「ありがとうございました」
その声に振り返ると、透けた姿の村人達。
グレイ 「ヒミコ様」
ヒミコ 「これでようやく、安らかに眠る事ができます。どうか、もしタケルに…アレスに会う事がありましたら、こう伝えて欲しいのです。『私達はあなたを守り、命を落とした。けれど恨んではいない。世界を救ったあなたを、誇りに思っている』と…」
微笑む村人達。
フィオ 「……」
ルーン 「……」
その言葉に、4人の思い。
グレイ 「うん…」
ピノ 「そうね、もしあたし達がアレス国王に会う事があったら!」
微笑みながら消える村人達の幻。
ルーン 「レイン…命をかけるだけの価値がある奴らなのか?」
小さく呟くルーン。
そして唇をかみ締める。
フィオ 「ヒミコ様…」
フィオは追いかけるようにかけてきた山道の頂に立つ。
眼下に見える村の廃墟。
フィオ 「村が…なくなってる!」
同じように追いかけてくるグレイとピノもまた、その光景を眺める。
廃墟の中に、何箇所も土が盛り上げられ花が添えられている様子。
ピノ 「あれ…お墓よね…」
グレイ 「一体誰が…まさかッ…!」
マルス 「よくやってくれた…」
突如聞こえる声。
どこからか現れる蒼鷹亭で会った依頼主・マルス。
グレイ 「マルスさん」
マルス 「約束の報酬だ…」
報酬袋を手渡すマルス。
素早くピノが奪い取るが…
ピノ 「お、重ッ…さすが銀貨333枚」
マルス 「蒼鷹亭のツケは俺が払っておいた。帰り道は…」
マルスが指差す先に、泉に落ちる小さな滝がある。
マルス 「あの滝の裏に、ライアスに通じるゲートがある」
グレイ 「ちょっと待ってください、あなたは…!」
グレイの声にも立ち止まらず、先に滝の裏へと消えて行くマルス。
グレイ 「待って!」
追いかけて駆け出すグレイ。
ピノ 「ちょっと、どうしたのよ。グレイ〜!」
グレイを追いかけて滝の裏へと入っていくピノ。
同じく滝の裏へと歩みだすフィオは、動かないルーンへと振り返る。
フィオ 「あのさ、ルーン。後で話が…」
ルーン 「とんだ茶番だな」
フィオ 「ルーン?」
ルーン 「……」
イラついているようなルーン。
歩き出す。

○滝の裏・祠。
岩壁に白く光る扉。
フィオ 「これがゲート?」
グレイ 「行かなきゃ!」
ピノ 「ちょっと、何があったのよグレイってば!」
グレイ 「あの人に…あの人に話が聞きたいんだ!」
意を決したグレイが先に、光の中へ。
続いて他の3人も光の中へ。

○ライム城・地下
光の扉から出てきた4人。
石畳の部屋。
目の前の壁にかけられている、大きな肖像画。
ピノ 「ちょっとここどこなのよ〜!」
ルーン 「どっかの地下室みてえだな」
グレイ 「この絵…」
見上げるグレイ。
つられて他の4人もその肖像画を見上げる。



グレイ 「レインだ…」
ランタンを付け持ち上げるグレイ。
アレス、ヨシュリア、グリン、ミッフィー、ガルシアン、オウフェン、そして少女の姿。
柔らかな表情で微笑んでいる。
フィオ 「アレス王…、隣に居るのは…?」
グレイ 「銀色の髪の女神…ルラ様…」
兵士 「曲者〜〜〜〜!」
4人 「!」
バタバタとこちらにかけてくる多数の足音。
ガタンという大きな音と共に、地下室への扉が開かれる。
兵士 「貴様等、何者だ!」
ピノ 「何者って失礼ね。あたし達はマルスに案内されてここにいんのよ!」
兵士 「マルスだと、何を言っている!」
グレイ 「ねえ、この人の格好って…王宮騎士の…」
兵士 「お前達、ここをライム城、恐れ多くも国王陛下の私殿と知っての狼藉か!」
4人 「なんだって〜〜〜〜!」
4人驚きの表情。
一息置いて。
ルーン 「逃げるぞ!」
と、同時に走り出すルーン。
入り口に立ちふさがる兵士を殴る。
倒れる兵士。
グレイ 「ちょっと待ってよ、ルーン!」
ルーン 「置いてくぞ、こんなとこで捕まりてえのか!」
ピノ 「兵隊さん殴った時点でもう犯罪者確定じゃないの〜!」
フィオ(M) 「アレス王の私殿…聖泉殿…」
フィオ 「オレが先に行く!」
ルーン 「お、おい!」
階段を駆け上る一行。

白亜の建造物から走り出してくる4人。
中庭。
騎士 「侵入者を見つけたぞ〜〜!」
中庭で控えていた王宮騎士2人、そしてその横に。
魔術師と思しき青年の姿が見える。
フィオ 「げッ!」
青年は4人の方を振り返り…
青年(ジニアス) 「ひ、姫さ…ぐは!」
言葉半ばにフィオは彼の鳩尾を打つ。
フィオ 「(小声)わるい、ジニアス!」
小さく舌を出してすまなそうな顔をするフィオ。
騎士 「ジ、ジニアス様!」
ルーン 「ちょいと、おねんねしてな」
残る2人の蹴り倒すルーン。
フィオ 「みんな、こっちだ!」
ピノ 「なんでそんなにお城に詳しいのよ?」
フィオ 「いつか説明するから、早く!」
フィオについていく4人。
地面に倒れている青年。
青年(ジニアス) 「ひ、姫…さ…ま…」
ピクピクしている。

○ライアス街中
街の中を走る4人。
裏通り、建物の影に隠れ息を切らす4人。
ピノ 「んも〜、一体どうなってんのよ。言われた通りに出た先が、お城の…しかも王様のお部屋だし。無許可で家宅侵入の挙句、兵隊さん殴って公務執行妨害で犯罪者にはなっちゃうし〜。
逃げなきゃ…早く国外脱出しなきゃ!」
フィオ 「それ賛成だなぁ、見つかったらヤバイし!」
苦笑いのフィオ。
何か考え込むグレイは、ふと言葉を漏らす。
グレイ 「僕達が捕まる事は多分…ないよ」
ルーン 「……」
グレイが言いたい事を分かったかのように、なぜか不機嫌な顔をするルーン。
ピノ 「どういう意味?」
グレイ 「マルスさんは…きっとアレス様だ!」
とたんに明るい表情になるグレイ。
ピノ 「ええ!?」
フィオ 「そうか…どっかで聞いた事ある声…いや、…だから聖泉殿にゲートが繋がってたのか!」
ピノ 「ちょっとそれ、凄いじゃない!」
グレイ 「僕達、レインとルラが旅立った村に行ってきたんだよ。そしてブルーストーンのレイン、アレス様にお会いしたんだ!」
ピノ 「うっそお、レインだって分かってればもっと報酬ごねたのに〜!」
グレイ 「そうじゃないでしょ!
あのレインだよ。聖戦でヴァティスを倒して、世界を救った6人の英雄だよ!
実際に戦った時のお話とか、どんな旅をしたのか…!」





ルーン 「バッカじゃねえか」
他3人 「え?」
ルーン 「レインがいたからあの村の人間が死んだんだ。レインがあの村の人間を殺したんだ。お前らは、なんも分かっちゃいねえ…」
その一言に、フィオは頬を膨らませる。
フィオ 「なっ…。
分かってないのはルーンだよ! アレス王は…、アレス王のこと、なんにも知らないくせに!」
ルーン 「じゃあ聞くが、お前があいつらの何を知ってるってんだ?」
フィオ 「そ、それは…アレス王は生まれた時に国が一度滅んでて…それから毎晩剣の修行をしてて…」
ルーン 「話にならねえな」
フィオ 「ちっくしょ〜…」
そんな2人の口論を、やれやれといった顔で眺めるグレイとピノ。
ピノ 「あ〜あ。また始まっちゃったよ〜、(グレイに)どうする?」
グレイ 「…あ、あの…」
決意の表情。
口論を続けるフィオとルーンに。
グレイ 「だったらさ。僕達で、本当のレインを探しに行こうよ!」
そのグレイの言葉に、フィオとルーンの口論が止まる。
ルーン 「『本当のレイン』だと?」
グレイ 「そうだよ。レインとルラと、聖戦の真実を探しに行くんだ」
ルーン 「あのな、お前らが勇者・英雄って称えるレインのせいで、犠牲になった奴らがいる。たった今見てきただろ。
これであいつらが何をしたのか、十分に分かっただろ」
フィオ 「それだけが全部じゃないって事は、ルーンだってあの絵を見て分かったんじゃないのか?」
ルーン 「…あの絵だと? バカバカしい」
ピノ 「でもね、実は銀貨333枚って4人じゃ分けれないのよね。幸い、魔将と戦わずしても路銀を稼げる猫さんは居るし、普通に腕の立つフィオは居るし…ルーンじゃ外見悪いし。
あたしがあんた達のマネージャーになってあげる!」
ルーン 「333、そういう事か。あんのマスター、謀りやがったな。おい、待てよ。だいいち上級魔将を倒したのは俺だろうが!」
フィオ 「そうだな、ルーン」
ルーン 「…?」
フィオ 「オレが変えてみせる、ルーンの世界をさ!」
ルーン 「はあ?」
フィオ 「オレが更正させてやるって事さ!」
ウインクした後、クルリと背を向けるフィオ。
グレイとピノに。
フィオ 「ようし、決まった。じゃあ今度はどこ行く?」
グレイ 「そうだね、レインと同じ旅路を辿って、シャヌーンに向かおうか!」
ピノ 「それいいかも〜、シャヌーンといえばクエストギルドの総本部があるのよね〜」
港の方角へ歩き出す3人。
ルーン 「おい、待て。俺は一言もうんと言ってねえだろうが!」
楽しそうに歩いている他3人。
ルーン 「聞いてるのか、お前ら〜!」
空に響くルーンの怒声。

To be continued…
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