第3話 認めて欲しい
シーンA
○ハサラ砂漠
砂漠の中を走る汽車。




○汽車の中
窓から外を見るフィオ。
一面の荒地の風景が流れていく。
ルクレチア 「こうして利用してみると、コンピニアシステムっていうのも便利よね」
ピノ 「レインはハサラ砂漠を徒歩で移動したんでしょ〜? 楽チン〜」
グレイ 「ギゼ。レイン達はこの遺跡で蜃気楼を見たって話だよ」
楽しそうにルクレチア、グレイ、ピノは話している。
フィオ(M) 「ガイアスの情報が欲しいルクレチアは、グリン様に会うため仲間になった。けど、ルーンは…」
ルーンをちらりと見るフィオ。
ぼんやりと窓を眺めているルーン。
ルーン 「ハラヘッタ」
フィオ(M) 「パーティーに興味がない。ルーンはきっと面白くないんだと思う。オレ達がレインについて話をすると、すごく機嫌が悪くなるし、この間ルーンの武器について聞いてみたら怒ってた」

インサート・第2話
ルーン 「触りでもしようもんなら、女でも容赦しねえ」

フィオ(M) 「オレの事覚えてるかどうかなんて、聞けない。本気で怒ってた」
フィオはルーンの腰にあるロッドに目を移す。

フィオ 「パーティーか…」
フィオ(M) 「一緒に旅をしていれば、いつか笑って話が出来る時が来るのかな」
ルーン 「……」
ルーンはちらりとフィオを見る。

○【サブタイトル】




○ギゼ・駅
ギゼの街の駅に降り立つ5人。
人がまだらな大通り。
ピノ 「なんていうか…その…何もないところね」
グレイ 「ハハハ…」
フィオは街の中央にある枯れ木に目をやる。
フィオ 「水はあるのに木は枯れてるんだな」
ルーン 「チッ、こんな所じゃ名所も食いもんも何もねえぞ」
ルクレチア 「宿くらいはあるでしょ。もう夕方だし早く見つけて入りましょうよ」
街のエルフ 「おや、驚いた。フェアリーじゃないか!」
ピノ 「へ?」
ピノの姿を認めたエルフが声をかける。
ピノ 「ふふ〜ん、珍しいでしょ」
得意げに鼻を鳴らすピノ。
ルーン 「まぁた始まった」
フィオ 「ピノが居ると目立つよなぁ」
笑うフィオ。
ピノ 「ありがたみがあるじゃないの。あたしはいわゆるマスコットよ。たとえ戦闘では役立たずでも、『超可愛い妖精がマネージャーのパーティー』って名前が知れ渡るじゃない」
グレイ 「自分で言ってるし」
苦笑いのグレイ。
街のエルフ 「他所から来たのかい。じゃあここの近くのフェアリーじゃないんだね」
ピノ 「何よそれ?」
ルクレチア 「この近くに妖精がいるって事?」
街のエルフ 「ああ、最近見かけたエルフが居てね。何でもここから出てすぐ近く…西の方角らしいけど」
ピノ 「嘘よ、シャヌーンの妖精は全滅したって前にオババが言ってたもん」
フィオ 「でも、本当だったら凄いよな。仲間に会えるんだ!」
グレイ 「会ってくれるかな?」
言い出し辛そうな、グレイ。
グレイ 「妖精が絶滅の危機にある理由、フィオも知ってるでしょ?」

フラッシュバック・第1話
冒険者C 「なあ、確か妖精の涙って宝石になるって話あったよな。昔はそれで、たんまり儲かったらしいぞ。本当か?」

フィオ 「……」
黙る一行。
ピノ 「バッカねぇ。会いたいなんて気はさらさらないわよ」
ルーン 「そういうこった。種族の仲違いに首を突っ込んだって仕方ねえだろ」
ピノ 「……」
ルーン 「とっとと飯にするぞ、チビ」
ピノ 「あ、ちょっと待ちなさい〜」
先に歩いていくルーンと、後についていくピノ。
フィオ 「オレ、余計な事言ったのかな…」
寂しそうな顔をするフィオ。
ルクレチアは優しくフィオの頭を撫でる。
ルクレチア 「あなたが気にする事じゃないわよ。責任を感じなきゃいけないのは、あたし達エルフの方だから」
フィオ 「な、なんで?」
グレイ 「……」
グレイは顔を伏せる。
ルクレチア 「今は平和な世の中だわ。こうやってエルフと獣人がパーティーを組んでいるんだものね」
グレイ 「もう500年以上も前の話だよ」
フィオ 「?」
キョトンとしているフィオに、ルクレチアは優しく話す。
ルクレチア 「ピノはどうあれ、妖精族は元々とても臆病な種族なの。人前に姿を現す事はめったになかった。街に下りなくてはならなくなった理由があるのよ」
グレイ 「500年前のコンピニア大戦さ。フィオもそれは聞いたことがあるでしょ?」
フィオ 「うん。エルフの聖獣狩りだよね。それでエルフと獣人の仲が悪くなったって話は知ってるけど、そんなの昔話じゃないか。それがどうしてフェアリーと関係あるんだよ?」
ルクレチア 「コンピニアの魔道科学文明は6元の2つ、緑と地のオウルを乱用してしまった。これが…」
ルクレチアは枯れた大樹へ視線を移す。
そしてその奥に広がる広大な砂漠。
ルクレチア 「その結果なの」
フィオ 「砂漠化…」
ルクレチア 「そう。昔ここには大森林があったというけれど、今はその跡形もないわ」
グレイ 「妖精は森に住む種族だからね。森を失った妖精は街に下りた。そして、その涙が宝石に変わることに気付かれてしまった…」
ルクレチア 「乱獲が始まったわ。多くの妖精が心無い者の手に捕らえられ、傷つけられ最後の血1滴すらも涙に変えさせられた。
だからあたし達エルフの中には、ああやって罪滅ぼしをする者が居るの」
3人の前を通り過ぎる街のエルフ。
汽車から降ろされた多くの苗木が、荷車に載せられそれを引いていく。

○夜
無心に剣を振るうフィオ。
一しきり稽古が終わり、空を見上げる。
フィオ(M) 「オレに出来る事…何かないのかな?」

フラッシュバック
ピノ 「バッカねぇ。会いたいなんて気はさらさらないわよ」
ルーン 「そういうこった。種族の仲違いに首を突っ込んだって仕方ねえだろ」

フィオ 「そりゃ、オレがどうにかできるとは思っちゃいないけど。あんな言い方、ないじゃんか」
と見上げた満月の前を過ぎ去る、小さな影・ピノ。
フィオ 「ピ、ピノ?」

○ハサラ砂漠
砂漠をスイスイと飛ぶピノ。
周囲を見渡す。
何かに気付いたよう。
ピノ 「ちょっとぉ、なに尾行してるのよ!」
砂山の奥から顔を出すフィオ。
フィオ 「ごめん、気付いた?」
ピノ 「あったり前でしょ。あんた達人間よりも、ず〜っと敏感に出来てるんだから」
フィオ 「妖精、探しに来たのか?」
ピノ 「そ、そんなわけないじゃない。夜の散歩よ、散歩! まったく、失礼しちゃうわ!!」
フィオ 「オレも一緒に探すよ」
ピノ 「あのねぇ、妖精は人を恐れてるのよ。フィオが居たら居るもんも出てくるわけないじゃない」
フィオ 「そっか…」
ピノ 「あいつだって言ってたわ。種族の仲違いはどうにもならないのよ」
フィオ 「で、でも…」
ピノ 「何にも知らなすぎ。あたしもルーンもね、みんなを信用してない。そういう所はあたし達、似てるのよ」
フィオ 「え…」
苦しそうに笑うピノ。
ピノ 「もう2年になるわ、ルーンに逢ったのは。それまではね、ずぅ〜っと、サンタマリアの森の中に住んでた」
フィオ 「サンタマリア?」
ピノ 「そう、あたし達のご先祖様が100年以上も前に海を渡ったの。陸に辿り着いたのはほんの一握りだったって。
それから森の奥深く、ずっと。ずぅ〜っと逃げて隠れて生きてきた」

インサート・ピノの回想
鎖の梢から、遠くヤンシャオの都を眺めるピノ。



ピノ(M) 「物心ついた時から、鎖の梢から外には出るなって言われてたけどそんなの関係なかった。ずっと森の外がどうなっているか知りたかったんだもの。
でもね、あたし達妖精はちっちゃくって力もないし、人間に捕まったら体が干からびるまで泣かされて殺されるって聞いてたから怖くて森の外までは出れなかった。
でも、そこでルーンに逢ったの」
回想終了。

フィオ 「ルーンがピノを守ってくれたんだ…」
ピノ 「守るってモンじゃないわよ。どちらかっていうとあたしがアイツの面倒見てやってるってカンジ?」
フィオ 「そうなのかなぁ?」
ピノ 「ふ〜ん」
フィオに近づき、その顔をマジマジと見上げるピノ。
ピノ 「妬けた?」
フィオ 「え?」
目をパチクリとするフィオ。
その表情に、ピノは吹き出す。
ピノ 「プッ、『ぼうや』だったもんね〜」
フィオ 「言うなよ。オレは別に動きやすいからこの格好してるだけなのに…」
ピノ 「フィオを見てると、なんだか難しい事考えてるのがバカらしくなるわね。あたしもルーンも…」
フィオ 「なあピノ?」
ピノ 「ん?」
フィオ 「さっき、ピノとルーンは似てるって言ったよな? それってどういう事なんだ?」
ピノ 「うん、それね…」
間を置くピノは、やや顔を伏せる。
ピノ 「仲間はずれってところかな」
フィオ 「え?」
ピノ 「でもね、あたしは変えたいと思ってるの。だから、正直会って話がしたいわ。このまま妖精が逃げて隠れて暮らしてても、他の種族から仲間外はずれにされたままだって。
時代に乗り遅れて、忘れ去られるなんてまっぴら!」
フィオ 「ピノ…」
ピノ 「大昔にはね、妖精と他の種族は仲良く出来たっていうのよ。
今でこそ臆病だなんていわれてるけど、昔に出来た事が今出来ないわけないでしょ?」
笑うピノ、その表情。
フィオ 「ああ…」
微笑み返すフィオ。
と、その時。
フィオの立つ砂が沈む。
フィオ 「う、うわ!」
沈んでいくフィオの体。
ピノ 「ちょっと、フィオ!」
フィオ 「う、うわぁ!」
フィオの体を引っ張るピノだが、無論どうなるわけでなく。
砂に呑まれる2人。

○サンドスプライトの巣
天井から落ちてくるフィオ。
フィオ 「うわ!」
ピノ 「きゃ!」
体を起こすフィオ。
腰をさする。
フィオ 「いたたた…」
ピノ 「ッ、フィオ…」
何かに気付いたピノ。
フィオの髪を引っ張る。
フィオ 「え?」



ピノの視線の先には、透き通った羽を持つ蜻蛉のような巨大な昆虫の姿。
そして守るようにその脇に並ぶ人間の子供くらいの大きさの蛹。
フィオ 「!」
フィオは剣を抜こうとするが。
ピノ 「大丈夫、死んでるわ」
フィオ 「なんだ、驚いた」
安堵の息をつくフィオ。
2人はゆっくりと屍骸と蛹に近付く。
ピノ 「魔将じゃなさそうね」
フィオ 「なんて生き物なんだろう?」
老人の声 「サンドスプライトじゃ。触るな、人間!」
2人 「!」
振り返るフィオとピノ。
そこには30人ほどの妖精。
敵意をむき出しに2人を睨む
妖精の老人 「裏切り者め、人間を導きここへ連れてくるとは!」
妖精A 「よそ者だって容赦はしないぞ。我々だって多少の魔法は使えるんだからな!」
その敵意はフィオよりもむしろピノに向けられる。
ピノ 「!」
妖精A 「裏切り者!」
妖精B 「俺達を人間に売るつもりか!」
妖精C 「裏切り者!」
ピノ 「!」
顔を伏せるピノ。
フィオ 「ちょっと待てよ。ピノはたまたま…」
妖精B 「帰れ人間! 俺達はおろか、殺して何も益のないサンドスプライトにまで危害を加えることは許さない!」
妖精C 「出て行け!」
フィオ 「オレはともかく、ピノはあんた達に…同族に会いたかったんだぞ。そんな態度はないだろ!」
妖精の老人 「妖精を供に連れていた事で、巣穴に掛けていた結界が解れたか…」
ピノ 「もういいわよ、フィオ。帰りましょ」
俯くピノ。
その表情は分からない。
ピノ 「せっかく会えた仲間が、こんな奴らだったなんて。幻滅…」
フィオ 「ピノ…」
顔を上げるピノ。
涙。
ピノ 「いまどきッ、そんな石頭じゃ古いのよ!」
言い放つピノ。落ちてきた天井に開く穴から外へ飛び出していく。
それを見送るフィオ。
フィオ 「ひどい…」
フィオは顔を戻し、妖精達を睨む。
フィオ 「ピノに謝れ、あんまりじゃんか!」
妖精の老人 「謝罪を受けるのはこちらの方じゃ。この砂漠と、そしてわしらをこう変えたのは、お前達だろう。人間風情が!」
フィオ 「!」
妖精A 「悔しかったらこの砂漠を元に戻せ、人間!」
妖精B 「できるもんならな!」
嘲笑。
フィオ 「この砂漠が…この砂漠に緑が戻ったら、ピノに謝るんだな!」
決意の表情。