第3話 認めて欲しい
シーンB
○ギゼ・宿の部屋。
明け方。
宿に戻ってくるフィオ。
ルーンとグレイの眠る部屋に駆け込んでくる。
フィオ 「起きろ、起きろッたらグレイ!」
グレイの体を揺するフィオ。
寝ぼけ眼のグレイは目を擦りながら体を起こす。
グレイ 「ん〜、何だよフィオ。まだ明け方じゃん。日も昇りきってないよ〜ぉ」
フィオ 「あのカプセル…システムDは…失った命を戻す事が出来るんだよな?」
グレイ 「ん〜、そうだけど。ゾンビになっちゃうからね…、ふあぁぁあぁぁ〜」
大きく欠伸をするグレイ。
グレイ 「だからシステムは失敗だって、あの遺跡の記録にあったけど〜ぉ」
フィオ 「いいんだ。動物に使うわけじゃないから!」
と、答えて飛び出していくフィオ。
何かを握り締めている。
グレイ 「ん〜、動物じゃなきゃね〜ぇ」
再びベッドの中に潜るグレイ。
ルーン 「っておい。ちょっと待て!」
飛び起きるルーン。
ルーン 「黙って聞いてりゃ、まずいぞあのバカ!」
グレイ 「ん〜…あ、ああああ〜〜〜〜!」
同じく飛び起きるグレイ。

○ギゼ・枯れ木の前
枯れ木が緑の繁る大樹となっている。
走って来たルーンとグレイ。
樹を見上げるフィオは嬉しそう。



ルーン 「遅かったか…」
振り返るフィオは喜んでいる。
フィオ 「カプセルの中身を少しだけ使ったんだ。まだ残りはたくさんある。これを使えば…砂漠も元に戻るだろ!」
ルーン 「……」
一息置くルーン。
ルーン 「バカか、お前は!」
フィオの手からカプセルを奪うルーン。
ルーン 「なんの相談もなしに、手前勝手に依頼品を使いやがって。それがお前のいうパーティーか?」
フィオ 「!」
信じられないというようにルーンの顔を見上げるフィオ。
ルーン 「お前にパーティーを組む資格はねえ」
フィオ 「……」
凍りつくフィオ。
グレイ 「フィオ…システムDじゃ、砂漠は元に戻らない」
フィオ 「え…」
グレイ 「砂漠にはもう、命の痕跡が残っていないんだ。時間が経ち過ぎてる。砂しかないんだよ。新たに命を生んでいくしかないんだ」
フィオ 「じゃ、じゃあ苗木にこれを…」
グレイ 「生まれた命に使っても変わらない」
フィオ 「そんな…」
ガクリと膝を落とすフィオ。
そこへ目を擦りながら現れるルクレチアと、暗い表情のピノ。
ルクレチア 「ちょっとぉ、朝っぱらから一体何の騒ぎなの」
ピノ 「フィオ…?」
フィオ 「ちくしょお!」
フィオは砂を両拳で叩く。
空しく響く砂の音。

○ギゼ・宿の食堂
晩の食卓。
フィオを除く4人が、席についている。
ルクレチア 「それで…もう日が暮れました。今日一日、フィオは帰ってこないわけだけど…。グレイから聞いたわ」
と、途端に凄い形相でルーンを睨みつける。
ルクレチア 「フィオに暴言吐いたそうねぇ〜、ルーン」
ルーン 「んあ、ったりめえだ。依頼品に手を出しやがって、クエスターだってんなら仕事…ぐあ!」
ルクレチアに蹴り飛ばされるルーン。
椅子ごとひっくり返る。
グレイ 「うわ、お姉さま強烈…」
ピノ 「……」
黙っているピノ。
頭をしこたま打ったルーンは、擦りながら起き上がる。
ルーン 「おい、なんで俺が蹴られなきゃならねえんだ!」
ルクレチア 「あたしのひじょ〜に個人的な腹いせよ」
ルーン 「このアマ…」
ルクレチア 「なんで理由ぐらい聞いてあげなかったのよ。それこそあたし達、パーティーでしょ、仲間でしょ!」
3人 「!」
ハッとなる他3人。
ルクレチア 「まったく、子供ばかりなんだから」
ピノ 「あたしのせいなの…」
ルクレチア 「?」
ピノ 「あたしのせいなんだよ…」
小さく呟くピノ。

○ハサラ砂漠・街の郊外
荷車をから苗木を下ろすフィオ。
スコップで荷車に載せてある土を蒔く。
泥だらけの姿。
フィオ 「……」
そこに1人現れるルーン。
ルーン 「こんな所に居やがったのか。とっとと帰るぞ」
フィオ 「……」
フィオは苗木を植える。
顔は上げず、表情は見えない。
フィオ 「オレさ、今すっごくかっこ悪いから。しばらく放っておいてくれないかな」
ルーン 「あのなあ、『しばらく』っていつまでだ。この苗木が育つまでか?」
フィオ 「……」
無言のフィオ。
黙々と作業を続ける。
ルーン 「ピノからあらかた聞いた。忠告しただろうが。種族間のいざこざはお前1人がどうこうできる話じゃねえ」
フィオ 「……」
立ち上がるフィオ。
ルーンと対峙する。
フィオ 「それでもオレは、ピノに何かしてあげたかったんだ。仲間だから」
ルーン 「…バカだな、お前は」
以前のような小ばかにした言い方でなく。
呟きながら、ルーンはコートを脱ぐ。
ルーン 「それはピノがフェアリーっていう種族だからだ。人畜無害のな」
フィオ 「ルーン?」
半身脱ぎ捨てるルーン、そして。
ルーン 「だが、こいつはどうだ?」



最後にバンダナを捨てる。
ルーンの背中から生える蝙蝠の翼。
尖った耳。
フィオは目を見開く。
フィオ 「魔族…」
ルーン 「聖戦でヴァティスに下ったデストニアの種族だ。ヴァティスや魔王の命で、国を滅ぼし人を殺した呪われた種族だ。それでもお前は、ピノと同じ事が言えるのか?」
フィオ 「……」
砂の上に落ちたバンダナを拾うフィオ。
それをルーンに差し出す。
フィオ 「こわくなんかないさ」
笑うフィオ。
フィオ 「ルーンはオレにないものを持ってる。それって凄い事じゃないかな?」
ルーンはフィオからバンダナを手に受ける。
再び作業に戻るフィオ。
ルーン 「お前…」
フィオ 「明日この街を出るまで、出来る所までやるんだ。旅が終わったら、またここに戻ってくる。そしていつか、あいつらにピノを認めてもらうんだ」
ピノ 「フィオ〜〜〜〜!」
見ていたらしいピノ。
飛んでフィオの頬に抱きついてくる。
フィオ 「ピノ!」
ピノ 「あたしも手伝うからね。明日からまた、楽しく旅をしましょ!」
フィオ 「ピノ…」
グレイ 「僕も手伝うよ」
ルクレチア 「あたしも」
同じ様に見ていたらしいグレイとルクレチア。
ルーンに呆れたように呟くルクレチア。
ルクレチア 「あんたも早く上着を羽織ったら? 砂漠の夜は冷え込むわよ、カゼ引いても知らないんだから」
グレイ 「すっごいね、ルーン。魔族の有翼種だったんだ、珍しいんだよね〜」
ルーン 「お前らなぁ」
苦笑のルーン。
ルクレチア 「あら、めずらし。笑ったわよ」
ピノ 「へ、見逃した〜!」
フィオ 「マジ?」
ルーン 「これは苦笑いっていうんだ。それとな、フィオ」
シャベルを握るルーン。
ルーン 「お前はかっこ悪くなんかねえぞ」
フィオ 「え…」
笑うグレイ、ピノ、ルクレチア。
そして、ピノが砂漠の奥に無数の光を見つける。
ピノ 「あ、あれ!」
砂漠から立ち上っていく光の玉。
よく見るとそれは、虫の形である事に気付く。





グレイ 「あれは…」
ルクレチア 「サンドスプライト…」
そしてその光景を眺めるフィオと、彼女の肩に乗ったピノ。
妖精族の長を認める。
ルーン 「あいつら…」
ピノ 「あたし信じてる。いつかきっと…ここが森になって、妖精と他の種族が昔みたいに仲良くなれるって!」
フィオ 「もう変わってきてるさ。だって、オレとピノはパーティーだろ?」

To be continued…
LEGEND =Questers=