第4話 なければ運任せ
シーンB
○メンフィス・地下水路
両腕を拘束されているルーン。
3人ほどの屈強な男に連れられてる。
ルーン 「バイトなだけなんだが、な〜んで腕をつながれなきゃならねえんだ」
男達 「……」
俯きかげんに歩く男達。
ルーン 「チッ、無視かよ」
ルーン(M) 「まぁ、素人相手だ。これさえありゃ、どうにかなるだろ」
ルーンは腰の神具に目を移す。
地下水路突き当りの部屋。
男が重い鉄の扉を開く。
ルーン 「何だ、これは…」
ホールのような広い部屋。
巨大な機械と轟音。
何かを作っているようで、ベルトの上に乗せられているのは七色に輝く宝石である。
ルーン 「ありゃ、エレメンタルジェム…まさかこいつは!」
?(マスクの男) 「よく気付いたな、これは原央石の精製機だ」
振り返るルーン。
そこに立つのは中顔面と左の頬をマスクで覆う、黒いマントの男。



ルーン 「て、てめえ。エレメンタルジェムの精製は魔術師ギルド公認以外は禁じられてるはずだ」
ふと、男の顔をよく見ると、左頬のマスクの端から僅かに覗く傷跡がある。
ルーン 「まさか、ガイアス?」
ガイアス 「ほう、俺の名を知っているか? クエストギルドの関係者か?」
ルーン 「冗談だろ、俺はレインの犬じゃねえっつの」
ガイアスはルーンの腰にぶら下がるロッドに気がつく。
ガイアス 「珍しい物を持っているな…」
ルーン 「てめ…触るな! ぐあ!!」
ルーンの鳩尾を剣の柄で打つガイアス。
鈍い音がしてルーンは膝を落とす。
ルーン 「こ、この野郎…ッ」
ガイアス 「威勢がいいことだ」
面白そうに笑うガイアス。
ルーンからロッドを取り上げるガイアス。
ガイアス 「神具に似ているな…複製にしてはよくできている」
ルーン 「返せ!」
ガイアス 「お前、さてはクテシフォンの孤児か?」
ルーン 「何、…どうしてそれを」
ガイアス 「まあ、そんな事はどうでも構わんか。お前はここで働いてもらう事になる、死ぬまでな」
ルーン 「だ〜れが、死ぬまで働くだ。銀貨10枚分、落とし前つけたら帰るぞ」
ガイアス 「そうはいかん、これを漏らされては困る」
不敵に笑うガイアス。
ルーンを抑える男達に視線を移す。
それにつられてルーンもまた自分を拘束する男達の顔を見る。
男達は顔を上げると、額には黒い石。
ルーン 「こいつら、…て、てめ。こいつらに一体何しやがった!」
ガイアス 「心配するな、お前もすぐに楽になる」
ガイアスの右手にある同じ様な黒い石。
ルーンの額にガイアスの右手が近付くその時。
フィオ 「そこまでだ!」
水路の大部屋に響くフィオの声。
振り返る、ガイアスとルーン。
ルーン 「フィオ!」
フィオ 「ギルドのクエスターだ。そこのお前、ルーンから離れろ!」
剣を抜くフィオ。
ガイアス 「邪魔が入ったか」
フィオに対峙するガイアス。
フィオはガイアスに斬りかかる。
フィオ 「はああぁぁ〜〜!」
ガイアス 「チッ!」
剣を抜くガイアスはフィオのファルシオンを受ける。
フィオ 「ルーンのロッドを返せ!」
ガイアス 「フン、この神具か!」
ガイアスは片手にあるルーンの神具を放る。
走ってきたグレイとピノ。
ルーンの神具を拾い、ルーンの拘束を解く為に彼に走りよる。
ルーン 「お前ら…助かったぜ」
ピノ 「あたし達に感謝してよね。フィオなんか血相変えて一人で突っ走っちゃったんだから」
グレイは精製機を見上げる。
グレイ 「これ、エレメンタルジェムの製造機?」
ルーン 「ああ、違法行為だ。おおかた金に目が眩んだってとこだろ、ガイアスさんよ」
遅れてきたルクレチア。
フィオと対峙している男を認め、声を上げる。
ルクレチア 「ガ、ガイアス!」
剣を握り直すフィオ。
フィオ 「あんたが、ルクレチアの恋人を殺したのか!」
斬りかかるフィオに剣を受けるガイアス。
殺陣。
ガイアス 「『金に目が眩んだ』だと…フ、この平和の意義を知らずに生きる愚かな人間どもが」
フィオに斬りかかるガイアス。
フィオはガイアスの剣を受ける。
フィオ 「クッ!」
ガイアス 「クエストごときで、潰えるわけにいかん」
ルクレチア 「フィオ、離れて!
…六元の碧…清らかなる水よ。我が意思により、極冷の吹雪となれ。『コールドブレイズ』!」
ガイアス 「!」
大きく間合いを取るフィオ。
ガイアスに向け放たれる氷の玉。
避けるガイアス。
ガイアス 「小僧。その剣、誰に師事を受けた」
フィオ 「小僧じゃない、オレは女だ。世界一の剣士になる『フィオ』! 覚えとけッ!!」
ガイアス 「ふん」
笑うガイアス。
右手にある宝石を投げる。
ガイアス 「『夢魔陣』!」
宝石が光り、巨大の姿を形どっていく。
フィオ 「な…!」
ホールの天井に届かんばかりの巨大ナメクジ。
魔将・デビルスラッグ。





ピノ 「巨大ナメクジ〜」
ガイアス 「せいぜいそいつの相手でもしているんだな」
逃げるガイアス。
ルクレチア 「ま、待ちなさい!」
茶髪のエルフ 「よしときな、お嬢さん」
ルクレチアの腕を握り止めるのは、茶髪のエルフ。
ルクレチア 「あなたは…」
一方、デビルスラッグと対峙するフィオとルーン。
拘束の解けたルーンは神具を握り締める。
フィオ 「どうする、ルーン?」
ルーン 「んなもん決まってる。アレはボーナスだ」
剣を構えなおすフィオ。
フィオ 「倒すまでかっ!」
同じくルーンもまた、ロッドを構える。
光り輝く戦斧の刃。
ピノ 「でも、あんな軟体動物。武器が効くの?」
グレイ 「魔晶石はしっかり確認できるけどね」
デビルスラッグの腹にある赤黒い宝石。
半透明な体の中にすけて見える。
デビルスラッグ 「ッ!」
触手から粘液を射出する。
フィオ 「うわ!」
二手に避けるフィオとルーン。
ルーンのコートに粘液の飛沫がつき、コートが一部溶け落ちている。
ルーン 「酸、あいつの体液も酸だとしたら、斬ればひとたまりもねえぞ」
フィオ 「じゃあどうすれば?」
茶髪のエルフ 「戦法を考えろ」
フィオ 「!」
振り返るフィオとルーン。
ルクレチアのすぐ傍に居るエルフの男。
茶髪のエルフ 「ヤツの弱点は塩と炎。あいにくここに塩はないが…」
ボトルに入った液体をルクレチアに手渡すエルフ。
ルクレチア 「これ、油…?」
茶髪のエルフ 「フィオとルーンはヤツの注意を引け。今回ヤツを倒すのは、そうだな…そこのおチビちゃん」
ピノ 「え、あたし〜?」
茶髪のエルフ 「猫! お前呪歌が使えるはずだったな」
グレイ 「あ、は…はい」
茶髪のエルフ 「魔将には呪歌は効かねえ。だが、おチビちゃんにはどうだ?」
一行 「!」
エルフの意図に気付く一行。
ピノはグレイの頭から飛び立つ。
ピノ 「『ファイアーボール』でいい?」
グレイ 「オッケ〜、いくよ〜」
背中のマンドリンを取り出すグレイ。
掻き鳴らす。
グレイ osohishikuhinoto hakurema ushitotashi nararuadakine
nanatahakuwasaso momokeki ramorerusotakichimiratawa
…」
歌いだすグレイ。
茶髪のエルフ 「これがグリーン・ウッドの戦い方だ。まあ、それももう古い話だな」
小さく笑うエルフ。
懐かしそうな笑みに、ルクレチアはハッとなる。
ルクレチア 「あなた…まさか…グリンさ…ッ」
茶髪のエルフ
(グリン)
「……」
ルクレチアの口元を覆うエルフ、グリン。
グリン 「ガイアスはギルドの人間が追ってるから、安心しな。
楽しかったぜ、お嬢さん。フィオ達に宜しくな。それと、渡したお守り。使ってやってくれよ」
ウインクをするグリン。
ルクレチア 「……」
コクコクと頷くルクレチア。
くるりと背を向けて、走り去っていくグリン。
ルクレチア 「と、とんでもないレインだわ…」
苦笑いのルクレチア、デビルスラッグへと向かう。
ルクレチア 「さて、そろそろ。行きましょうか!」
グレイ 「ushiwasatohananechi rinru asanuxhibi haminaniyanaku…」
ピノ 「六元の紅…熱く燃ゆる炎よ。我が意思により、灼熱の業火となれ…」
ルクレチア 「当たれ!」
デビルスラッグの攻撃から避け回るフィオとルーン。
ルクレチアの投げたビンがデビルスラッグに当たり割れる。
フィオ 「あ、あれは!」
ピノ 「『ファイアーボール』!」
ピノの小さな手の平から現れる火球。
人ほどの大きさに膨れ上がる。
ルーン 「なんだありゃ!」
ルクレチア 「魔力を増幅したのよ、グレイの呪歌でね」
フィオ 「なるほど」
ピノ 「いっけぇ〜〜〜〜!」
デビルスラッグにめがけて放たれる火の玉。
ホワイトアウト。

○同・クエスターギルドの店
ダイスから報酬を受ける一行。
ルーン 「結局…ガイアス逃がしちまったな」
ルクレチア 「グリーンウッドのメンバーが彼を追っているそうよ。あたしはしばらくここに留まろうと思うの」
ピノ 「えぇ〜」
ルクレチア 「いったんお別れね」
グレイ 「寂しくなるなあ」
ルクレチア 「また会えるわよ。旅をしていれば、きっとどこかでね」
フィオ 「うん…」
フィオの頭をルクレチアは撫でる。
フィオ 「ルクレチアは言ったよね…恋人の敵をとるって…それってガイアスを…ころ…」
す…と言いかけたところでルクレチアは遮る。
ルクレチア 「あたしには悲しい記憶は要らない。あいつを…あいつをただ憎むだけッ!
人には触れられたくはない過去があるって、言ったでしょ、フィオ?」」
寂しく笑うルクレチア。
ルーン 「……」
何かを思うルーンは、フィオとルクレチアを見る。
フィオ 「でも、でもさ…。ルクレチア。
憎しみが昇華される事はない。憎しみは憎しみを生むんだ」
顔を伏せるフィオ。
そして決意したように顔を上げる。
フィオ 「でも、悲しみは違う。必ず癒される時が来る! そうじゃないかな?」
ルーン 「フィオ…」
グレイ&ピノ 「フィオ…」
ルクレチア 「フッ…」
小さく笑うルクレチア。
ルクレチア 「フィオ…あなたは幸せな人間なんだわ。だから本当の悲しみを知らないのね」
フィオ 「ルクレチア!」
ルクレチア 「だからこそ、あなたのような人が癒せるのかもしれない」
ルクレチアはフィオを抱きしめる。
フィオ 「ルクレチア?」
ルクレチア 「またね、フィオ。あいつは鈍感だから。色々と苦労すると思うけど、頑張ってね」
フィオ 「え?」
フィオから離れるルクレチア。
溜め息をつく。
ルクレチア 「ふぅ、あなたもまだお子様だったんだわ」
思い出したようにクスクスと笑うルクレチア。
キョトンとするフィオ。
ルーン 「ところで、(ダイスに)あんたの兄貴。あれからどこに行っちまったんだ?」
ダイス 「え、気付いてなかったのか?」
ルーン 「気付く? 何の事だ?」
フィオ 「ハンサムさん、挨拶もなしに居なくなっちゃうんだもんな。一言お礼くらい言いたかったのに」
ダイス 「う…あ、あぁ〜ここで兄貴の正体ばらして幻滅させるのもどうかなあ。
くっそお、全部ばらすって言ってたのに〜逃げたな〜!」
ルクレチア 「宜しく伝えてくれって。楽しかった、なんて言ってたわよ」
フィオ 「楽しかったって…からかわれたのかな、オレ…」
ルクレチア 「グリン様がね」
フィオ 「…?」
一瞬言葉の意味が分からなかったフィオを含めた4人。
しばし後に…
4人 「えぇ〜!」

○同・クエスターギルドの店
店の前。
ボロボロで疲れ果てた魔術師の青年・ジニアス。
ゼエゼエと息を切らす。
テロップ 「翌日」
ジニアス 「ついに、追いつきましたよ…思えば長い道のりでした…ハサラ鉄道ではうっかりギゼを乗り過ごし、戻るつもりが寝過ごしてバクトリアに帰り…。それから、ギゼに止まらぬ特急へ乗リ間違え…時既に遅く発たれた後…でも…ついに…ついに…ッッッ!」
バタンと勢いよく扉を開けるジニアス。
ジニアス 「姫様ぁぁぁっっっ〜〜〜、んああ〜あ…!」
中にはグリンとダイスしか居らず、脱力。
そのままつんのめってコケる。
グリン 「お、珍しッ。客だな」
ジニアス 「ッ!」
バッと立ち上がってグリンにしがみつくジニアス。
目に涙をためている。
グリン 「おい、俺様は男に迫られる覚えねえぞ!」
ジニアス 「グリン様ぁ〜、お忘れですか! ジニアスですぅ。アレス陛下の元でお会いしたではありませんかぁ〜ッ!」
グリン 「あぁ〜、あのルルカ家の…。ヨシュアに拉致られて行ったんじゃないのか?」
ジニアス 「そんな、とっくに帰ってきましたよ! 姫様は…うちの姫様はご存知ありませんかぁ〜ッ!」
グリン&ダイス 「?」
グリンはカウンターに立つダイスと顔を見合わせる。
面白そうにニヤリと笑うグリン。
グリン 「ああ。昨日ファンジームへ船で向かったぜぃ。今、あの海域に魔将が出るらしいからなぁ…当分船は出ねえぞぉ〜〜〜カッカッカ〜」
ジニアス 「えぇえぇえぇえぇ〜〜〜〜!」
頭を抱えるジニアス。
ズームアウト。
ジニアス 「姫様ぁぁぁぁ〜〜〜〜ッッッッ!」
悲痛の叫びがメンフィスをこだまする。

To be continued…
LEGEND =Questers=