第6話 犯人を捕まえろ
シーンA
○メィアットの祠
小さな祭壇の前で祈るウサギの獣人の少女・リリファン。
祭壇に捧げられているのは藍色の水晶球。
リリファン 「!」
キラリと光る水晶球。
リリファンはハッとして瞳を開き、垂れていた白い耳はピンと跳ね上がる。
リリファン 「聖なる獣来たりて、地の怒りを静める。聖なる獣…聖獣や!」
立ち上がるリリファン。
満面の笑み。

○プルシャプラ・港
船から下りるフィオ、ルーン、グレイ、ピノ。
グレイ 「はっくしょん!」
突如クシャミをするグレイに驚くピノ。
それまでグレイの頭に乗って居たが、逃げるようにフィオの肩に乗る。
ピノ 「ちょっと猫さん。風邪でも引いたの?」
ルーン 「南に下って、冬なのに暑いぐらいだってんのになんで風邪になるんだ?」
呆れ顔のルーン。
グレイの顔色は良くない。
グレイ 「ち、違うってば…いつもの頭痛がひどいだけで…」
ルーン 「だからそれを風邪っていうんじゃねえか」
グレイ 「ルーンやフィオが羨ましい…」
ルーン 「あ?」
耳と尻尾を垂れる元気のないグレイ。
フィオ 「いきなり何言い出すんだよ、グレイ」
グレイ 「ルーンもフィオも凄いクエスターだよ。上級魔将や、コンピニアのマシン兵器、それにあの巨大な海亀とだって戦う事が出来るんだ。だから、アレス様も2人に関心を持たれたんじゃないかな…」
フィオ 「グレイ…」
ピノ 「何よう、グレイはこのパーティーの良心じゃない?」
ルーン 「リョウシンだあ?」
ピノ 「そう、『良い心』と書いて良心。チンピラとボーヤじゃ普通の人に相手にされないわよ」
ルーン 「大きなお世話だ」
グレイ 「…僕は、…僕がレインに会う資格がないんじゃないかな…」
フィオ 「グレイ…」
ルーン 「……」
グレイ 「だから、みんなもレインに会えないんだ…ッ」
苦しそうに顔をゆがめるグレイ。
心配そうに顔を覗き込むピノ。
ピノ 「ちょっと、猫さん大丈夫?」
フィオ 「グレイ、今日は早めに宿に入ろう…」
と、同時に一行を通り抜ける一陣の強風。
ピノ 「きゃあ!」
フィオ 「うわ!」
ピノはフィオの肩から吹き飛ばされそうになるが、彼女の長いリボンをルーンが慣れた手で掴む。
フィオ 「何だったんだ、今の風?」
一方ピノは、ルーンにリボンを掴まれた形で拳からぶら下がっている。
ピノ 「ちょっと、離しなさいってば!」
ルーン 「おい…!」
フィオ 「!」
倒れているグレイに気付くフィオとルーン。
フィオ 「グレイッ!」
駆け寄る2人。

○【サブタイトル】




○グレイの夢
遠方から聞こえる人々の悲鳴。
魔将の雄叫び。
グレイ 「!」
恐怖に脅えるグレイの表情。
見上げた空の上には、バルバロス。



グレイ 「うあぁぁぁぁっっっっ!」
炎に包まれる村の中、悲鳴を上げて逃げるグレイ。
瓦礫の影に隠れてうずくまる。
グレイ 「…怖い…怖いよ…」
グレイの脳裏に響く女性の声。
女性の声 「あなたの正体が知られてしまえば、殺されてしまう」
グレイ 「イヤだ…死にたくない…助けて…助けて!」
震えるグレイ。
顔面蒼白。
女性の声 「グレイ様、お許しを!」
グレイ 「ッ!」
目を見開くグレイ。
突如眼前に現れた人魚。
そして激痛。

暗転。

○プルシャプラ・宿
ベッドから飛び起きるグレイ。
グレイ 「ッ!」
驚くルーン。
ルーン 「お、おい?」
息の荒いグレイに、怪訝そうに尋ねる。
ルーン 「おい、大丈夫か?」
グレイ(M) 「なんで、今になってあの時の夢なんか…」
右手で額を押さえるグレイ。
ルーン 「まだ寝てたらどうだ?」
グレイ 「フィオとピノは?」
ルーン 「あいつらはクエストを当たってる。まあ、どうせレインがらみを探してるんだろうが」
グレイ 「僕も行かなきゃ!」
ルーン 「よしとけ、お前が行った所でレインに会える訳じゃねえだろうが。どうせ、またコソコソ隠れてやがるに決まってる」
グレイ 「……」
グレイは窓から宿の外を眺める。
その視線の先には崩れた城。
グレイ 「ここプルシャプラは、ミッフィー様の故郷なんだ」
ルーン 「ミッフィー、オレンジストーンのレインか?」
グレイ 「うん。獣人の大陸・ファンジームのレインだよ」
ルーン 「そうか。だったらこの街にそいつの関係者が居るかも知れねえな」
グレイ 「居ないんだ。親代わりのダヴァン様は聖戦で亡くなってしまったからね。それに彼女は特別なんだよ」
ルーン 「特別?」
グレイ 「そう。聖なる獣、聖獣だから。永遠の命を持つ獣人。だから、ずっと一人なんだ。家族は居ない。
でも、家族が居ないのは他のレインも同じなんだけどね」
寂しそうに笑うグレイ。
面白くなさそうに、溜め息をつくルーン。
ルーン 「チッ、親が居ない位が何だって言うんだ」
グレイ 「ルーンも居ないの?」
ルーン 「ああ。でもな、俺はそれで不幸自慢するつもりはねえ」
グレイ 「僕もだよ。ずっと一人だった。だと、思ってたんだ…」

フラッシュバック・グレイの夢
人魚の女性

グレイ(M) 「あの時、僕のそばに誰かがいた!」

○同・クエストギルド
クエストギルドで右往左往するフィオ。
獣の耳・尻尾を持つ獣人の客に興味津々。
フィオ 「すっごいな。さすが獣人の国・ファンジームだ…」
ピノ 「フィオ〜〜〜〜!」
紙を抱えて飛んでくるピノ。
フィオの眼前にそれを広げる。
ピノ 「派手なクエストは見つからなかったわ」
つまらなそうに首を振るピノ。
フィオ 「別に普通のクエストでいいじゃんか。まだグリン様に貰ったお金だってあるんだし」
ピノ 「何言ってるのフィオ! お金なんてものはあり過ぎて困るもんじゃないのよ!!
無くて泣いたのはいつの事か忘れたんじゃないでしょね!」
フィオ 「つい最近。うぅ、分かったよ」
フィオはピノの手からその紙を受け取り、改めて読む。
フィオ 「放火犯の捜索?」
フィオの肩に乗り、その紙を覗き込むピノ。
ピノ 「そ、犯人を捕まえろってコト。でもねぇ、あたし達にはちょっと不向きなクエストよねぇ〜」
フィオ 「なんで?」
ピノ 「だって頭を使うクエストでしょ。探偵なんて出来っこないじゃない?」
フィオは目をパチパチさせた後に、苦笑する。
フィオ 「オレ達が探偵か…想像できないな、アハハ…」
ピノ 「他のクエスターもあんまり興味がないみたいよ。こんな事件、自警団にでも任せておけって感じよね」
フィオ 「ただの事件じゃないから、クエストギルドに依頼されてるんじゃないの?」
ピノ 「でもねぇ、ミッフィー様がこんなクエストに関係してるなんて思えないわ〜」
ウサギの少女 「『ミッフィー様』ゆうはりました?」
フィオ&ピノ 「え?」
耳を立てるウサギの獣人の少女。
フィオとピノの前に突進してくる。



ウサギの少女 「ミッミッミッ…『ミッフィー様』ってゆうはりましたな! 知っとるんのですか、見かけたんですかぁ〜!」
訴えるようにフィオを見上げるウサギの少女。
フィオ 「え…ええと」
一瞬たじろぐ、フィオとピノ。
すると突然、甲高い声を上げるウサギの少女。
ウサギの少女 「ああぁぁっっ〜〜、ラッキーアイテム『空飛ぶ動物』、ラッキーカラー『ブルー』!」
と、ピノとフィオを交互に見入る。
ピノ 「そ、空飛ぶ『動物』〜〜〜〜? 失礼しちゃうわね、あたしは『妖精』よ、『よ・う・せ・い』!」
フィオ 「ブルーって…オレの事?」
怒るピノに、なんだか分からないようでキョトンとするフィオ。
ウサギの少女はポンと自分の手を合わせる。
ウサギの少女 「紹介が遅れました、ウチの名前は『リリファン』っていいます。よろしゅう」
ピノ 「なんだか変わった言葉使うのね」
リリファン 「精霊古語ですわ。ウチの部族では当たり前に、つこうてます。ところでミッフィー様ゆうて…」
と、その時。
店の外から聞こえる喧騒。
街の人 「火事だ〜〜〜〜!」
驚くギルドの客達。
次々に店の外へ飛び出していく。
ピノ 「いや〜ん、もう。言ってるそばからもう、放火されてるじゃないの〜!」
フィオ 「行くぞ、ピノ!」
店の外へ駆け出すフィオ。
ピノ 「あ、ちょっとフィオ。待ちなさい〜!」
リリファン 「あ、ウチも行きますぅ〜!」
その後ろを駆けて行くリリファン。

○プルシャプラ・街中
燃え上がる一軒の家屋。
街の獣人 「またか…これで何件目だ」
街の獣人 「日に日に頻度が増してきてないか?」
街の獣人 「お、おい。アレ見ろ!」
フィオ 「!」
街の獣人が指差す、家屋の上に見える炎。
フィオ 「あれは…トカゲ?」
炎はトカゲの形を取る。
消える炎。
リリファン 「あれは精霊ですねん」
フィオに追いついたリリファンは呟く。
同じく、フィオに追いついたピノは、フィオの肩に乗る。
ピノ 「ちょっと、犯人が精霊ってコト?」
リリファン 「はい、炎の精霊・サラマンダーですわ。けど、精霊がああやって人を襲うなんて話、聞いた事あらしまへん」
ピノ 「現に、家に火をつけて暴れまわってるじゃないの」
フィオ 「ちょっと待てよ…」
フィオはリリファンに向かう。
フィオ 「犯人を…あれを捕まえるって…どうすりゃいいんだよ?」
首を捻るリリファン。
リリファン 「はて、どないしましょ?」
ピノ 「そんなの、捕まえられないんなら倒せばイイだけの話じゃない?」
フィオ 「相手は炎の精霊だよ。オレとルーンじゃどうにもならないから、魔法が必要だと思うけど。ピノは水の魔法を使えるの?」
ピノ 「ギク!」
肩を竦めるピノ。
ピノ 「ごめん、ムリ」
フィオ 「困ったな…」
リリファン 「相手は精霊。と、きたら決まっとるやないですか?」
リリファンはどこからか取り出したのか藍色の水晶球を覗き込んでにんまりと笑う。
リリファン 「ラッキーカラーとアイテム。加えて、聖なる獣はここに現れるとお告げが出とります。間違いあらしまへん!」
フィオ 「聖なる獣?」
ピノ 「聖獣よ、聖獣。精霊を操る事の出来る獣人の突然変異種よ。この世界で聖獣っていったらたった一人しかいないわ、ミッフィー様!」
フィオ 「でも、ミッフィー様が解決してくれるまで待ってるわけにはいかないだろ? こうしてる間にも被害者は増えてるんだから」
リリファン 「その通りですなぁ」
ピノ 「えぇ? まさかあのサラマンダーと戦うつもりじゃ…」

○同・宿
宿の一室。
ルーンとグレイの前に立つ、フィオ、ピノ、そしてリリファン。
グレイ 「はじめまして、僕アール=グレイ!」
ルーン 「俺はルーン=アクスだ。で、このおじょうちゃんは一体何なんだ?」
リリファン 「リリファン=メィアットといいます。よろしゅう!」
ルーン 「…なんだってこのパーティーは女子供ばかりなんだ」
ピノ 「ちょっとお、それ男女差別!」
フィオ 「そうだよ、ルーン。リリファンに失礼じゃないか!」
リリファン 「グレイはん…、こないな所におったんなんて…」
ジイッとグレイに見入るリリファンは、グレイのすぐ目の前まで近付く。
グレイ 「えっ…、前に会ったことあるかな?」
リリファン 「いいえ、ちゃいます」
目の前にリリファンの顔。
グレイは思わず赤面する。
グレイ 「あの、…リ、リリファン。どうかしたの?」
リリファン 「感じますわ、グレイはん」
グレイ 「か、感じるって?」
リリファン 「風や!」
突然、窓が開く。
一陣の強風。
ピノ 「きゃあ!」
フィオ 「うわ!」
ルーン 「ッ!」
飛ばされそうになるピノは、フィオのターバンにしがみつく。
グレイ 「…と、鳥!」
一行の前に現れたのは、天井に頭が着きそうなほどの紫の鳥。
フィオ 「も、モンスター?」
リリファン 「まさにラッキーやわ、空飛ぶ動物。風の精霊・シルフや!」
グレイ 「せ、精霊?」
グレイに向かい頭を垂れるシルフ。
シルフ 「あぁ、やっと見つけました…。どうかサラマンダーを助けて下さい!」