第6話 犯人を捕まえろ
シーンB
○プルシャプラ・宿の一室
一行とシルフ。
ルーン 「放火犯の捜索だぁ?」
フィオ 「そうだよ、それが今回のクエストなんだ」
ルーン 「冗談だろ、めんどくせえ」
フィオ 「その放火犯が、サラマンダーなんだよ」
グレイ 「サラマンダーって、精霊が?」
シルフ 「はい、彼はここより東の山奥に住んでいた精霊でした。それがある日、正気をなくしてこの街を襲うようになったのです。私達精霊は人との争いを好みません。彼の力は日に日に強くなっています、早く何とかしなければ…」
グレイ 「攻撃を仕掛けてもいいの?」
リリファン 「弱らせた所で、説得するつうことやな」
シルフ 「はい、急激に増大した力が彼の意識を支配しています。私が彼を説得します」
ピノ 「でも、どうしてシルフさんはグレイを探していたわけ?」
シルフ 「この方に気配を感じたからです」
グレイ 「僕に気配?」
リリファン 「……」
何かを悟ったように、グレイとシルフを見つめるリリファン。
シルフ 「私と同じ…人ならざる者の気配を…」
グレイ 「人ならざる者…ッ」
頭痛に顔をしかめる。

フラッシュバック・グレイの夢
グレイの眼前に現れる人魚の女性。

グレイ(M) 「あの人だ…。いや、人じゃない…」
人魚の女性を思い出すグレイ。
魚の下半身。
そんなグレイに気付かない、ルーンは話を切り出す。
ルーン 「相手は炎の精霊だろ。火に風じゃ煽るだけじゃねえか」
フィオ 「弱点はやっぱり水だよな…、ルクレチアが居たらなあ…」
ピノ 「雨乞いでもする?」
ルーン 「アホか」
リリファン 「接近戦は不利です。遠距離攻撃しかありまへん」
そう言ってから、リリファンは自分の旅荷物からクロスボウを取り出す。
ルーン 「そんな貧弱な武器でどうなるってんだ?」
フィオ 「普通の武器で大丈夫なのか?」
リリファン 「もちろんこれだけじゃあらしまへん。ここの魔術師ギルドに頼んで付与を施してもらいます」
フィオ 「付与?」
グレイ 「ああ、武器に属性を持たせるんだよ。魔法で矢に水の力を施すんだ」
リリファン 「とはいいますけど、このファンジームでどのくらいの魔力が期待できるか分かりまへん。魔術師ギルドの総本部のあるアルティマやったら、まだしもですが…。でも、ウチはグレイはんを信じてます」
キラキラと目を輝かせるリリファン。
グレイはキョトンとする。
グレイ 「僕を?」
リリファン 「はい、ラッキーカラーのブルーです」
グレイ 「僕は青い服なんて着てないけど…」
怪訝そうに首をかしげるグレイに、リリファンはただ微笑む。
フィオ 「早速、魔術師ギルドへ向かおう」
ピノ 「そうね、商売敵もきっとおんなじコトを考えるに違いないわ。先手必勝よ!」
ルーン 「精霊なんてクソ面倒な相手、誰も倒そうなんざ思わねえよ…ったく…」
ブツブツ言いながら歩き出すルーン。

○同・裏通り
誰も居ない路地の奥。
壁に寄りかかる、リスの獣人の女性。
オレンジストーンのレイン・ミッフィー。
嘆息する。
ミッフィー 「あかん、逃げ足の速いトカゲやなぁ。なしてトカゲがこうも暴れおるんよ」
壁に映る巨大な海蛇の影。
男の声 「ですから、水の上位精霊である私を呼んで下さればいい。早急に件を片付けましょう」



ミッフィー 「あんなあ、フェンリル。目立つやん。ウチは目立ちとうないねん。行方不明でミステリアスなレインっていうのが、ええやろ〜?」
自己陶酔するミッフィー。
フェンリル 「行方を眩ましている理由は他にあるでしょうに…グリン様と…」
影を睨むミッフィー。
ミッフィー 「それ以上ゆうたら、ウチのエフリートにしばかせるで」
フェンリル 「申し訳ありません…」
脅えたように首を垂れる影。
ミッフィー 「前にベヒモスが混乱しよった時は魔将にとり憑かれとったけど…」
フェンリル 「魔将の気は?」
ミッフィー 「感じんのや、ただな…」
フェンリル 「ただ?」
ミッフィー 「精霊のにおいがプンプンしよる。それはフェンリルも気付いとるやろ?」
フェンリル 「はい、サラマンダーの他に二種の気配が…」
ミッフィー 「精霊の暴走か…これもあぶれた悪夢のせいやもしいへんな…」
呟き、俯くミッフィー。
とその時、街のどこからか響く爆発音。
ミッフィー 「なんや!」

○同・表通り
魔術師ギルドへと向かう一行。
混乱し、逃げ惑う街の人々。
その爆発音に振り返ると。
遠方に立つ煙と、赤く照りだされる空。
フィオ 「またか!」
ルーン 「おい、こんなしょっちゅう火をつけまわるのか、アイツは!」
ピノ 「聞いた話と違うわよ、2、3日に1回。それが続いてたってくらいだって!」
ルーン 「これで今日二度目だぞ!」
グレイ 「時間がないよ、もう…」
姿を消しているシルフ。
空を見上げるリリファン。
リリファン 「ウチとグレイはん、シルフはギルドに向かいます。皆はんは先にサラマンダーの所へ向かってはくれまへんか?」
グレイ 「向かうって言ったって…」
ルーンを見るフィオ。
ルーン 「言っとくが、アイツに手を出しても俺達じゃどうにもならねえぞ!」
フィオ 「リリファンの言うとおりにしよう。火を消したり、避難の誘導くらいは手助けできるかもしれない!」
ルーン 「チッ、めんどくせえ!」
ピノ 「一々文句言ってる場合じゃないでしょ、行きましょ!」
火事の起きた方向へと駆けて行く、フィオとルーン、ピノ。
その時、空の向こうから近付いてくる巨大な炎玉。
グレイ 「うあ!」
一行のすぐ横を通り過ぎると、民家へと突進する。
燃え上がり、崩れ落ちる民家。
リリファン 「あれは!」
その炎玉が巨人の人影をかたどるのに気付く。
姿を現す鳥・シルフ。



シルフ 「あれは…もう、サラマンダーではありません…ッ!」

○同・塔の上
屋根の上に立つミッフィーは、その光景を見つめる。
驚愕。
ミッフィー 「エフリートや…エフリートに成長しよった!」

○同・魔術師ギルド前
ギルドの前に辿り着いた、グレイとリリファン、シルフは炎に包まれたギルドに声を失う。
グレイ 「そんな…」
必死の救命活動に当たるギルドの魔術師達。
リリファン 「これじゃあ、付与魔法どころの話じゃあらしまへん」
グレイ 「もう、無理だ…」
ガックリと膝を落とすグレイ。
リリファン 「何をいうとりますか、グレイはん!」
シルフ 「グレイ様、あなたのお仲間はどうするおつもりです!」
グレイ 「ッ!」

フラッシュバック
消火作業に当たるフィオ。
怪我人を背負うルーン。

グレイ 「でも、僕はフィオ達と違う。歌うだけしか力がない。今、呪歌を歌ったってあのエフリートの耳に届くはずがないじゃんか!」
目に涙をためてうずくまるグレイ。
リリファン 「グレイはん、しっかりしてください。グレイはんには精霊のご加護がついとるやありませんか?」
グレイ 「え?」
リリファンの顔を見上げるグレイ。
リリファン 「ウチはメィアットの巫女です。見えるんです。グレイはんに憑いとる…グレイはんを守うとるラッキーカラー・ブルーです」
グレイ 「訳が分からないよ、リリファン」
グレイは首を横に振る。
リリファン 「水の精霊・ウンディーネや…」
グレイ 「ッ…」
頭痛がグレイを襲う。

フラッシュバック・グレイの夢
人魚の女性。

シルフ 「グレイ様、どうかお力を。私の言霊に続けてください…」
グレイ 「…言霊?」
シルフ 「『聖獣アール・グレイの名に於いて命ずる…』」
グレイ 「せ、聖獣アール・グレイの名に於いて…命ずる…」
ぼんやりとしたグレイの表情。
立ち上がる。
グレイ 「出でよ…ウンディーネ…」
リリファン 「……」
しばし静寂。
そして激しい頭痛がグレイを襲う。
グレイ 「うあぁぁぁぁぁ〜〜〜〜ッッッッ!」
リリファン 「グレイはんッ!」
グレイの額を巻く帯が落ちる。
額に開く第三の瞳。
瞳から放たれる青い光。
リリファン 「ひゃあ!」
シルフ 「ああ…やはり!」
青い光は人魚の女性をかたどる。
ウンディーネ 「お久しぶりです、グレイ様」
シルフ 「ウンディーネ!」
グレイ 「ウンディーネ、僕は…」
ウンディーネ 「行きましょう、グレイ様、シルフ!」
何も言うなというようグレイの言葉をさえぎるウンディーネ。
優しい微笑み。
グレイ 「うん!」
グレイはシルフの背に乗る。
空へと羽ばたくシルフ。
そしてその後を飛ぶウンディーネ。
呆然とその光景を見送るリリファン。
リリファン 「空飛ぶ動物・シルフ。ラッキーカラー・ブルー、ウンディーネ。やっぱり、グレイはんは聖獣やったんわ…」

○同・上空
シルフの背に乗るグレイは申し訳なさそうに呟く。
グレイ 「ごめん、ウンディーネ。僕は思い出したよ。君があの時、魔王の人間狩りから僕を守ってくれたんだよね。僕の力と…ウンディーネ、君自身を封じて」
ウンディーネ 「ええ、あなたが獣人でも魔力を持つ種族・聖獣と魔王に知れれば…」
グレイ 「実験動物にされちゃてたかな」
ウンディーネ 「そうですね」
シルフは空で止まり、前方を見据える。
遠方、眼下でシルフを見上げているエフリート。
ウンディーネはシルフに尋ねる。
ウンディーネ 「なぜ、エフリートが暴走を? 魔将化されてしまったの?」
シルフ 「いえ、精霊の力…六元の乱れです」
グレイ 「六元の乱れ?」
耳慣れない言葉にグレイは呟く。
シルフ 「ええ、紅・橙・黄・翠・碧・紫…それぞれが司る神の恵み…炎・地・光・緑・水・風…この地域で急激に炎の力が増大しました」
グレイ 「どうしてそんな事が?」
シルフ 「世界に魔将が現れる理由を、どうお考えですか?」
グレイ 「え?」
シルフ 「此度に起きた聖戦は1000年前のレジェンドとは違う。太古の昔、我々精霊は聖獣と共に生き、人と共に暮らしておりました。しかし、1000年前を境に我々精霊に変化が生じた。
魔将に憑かれ人を襲う精霊、あのように力の暴走を起こす精霊、そして上位精霊も今や僅かしか居ない。下位の私達は、姿を象る事すら危うくなっています」
ウンディーネ 「1000年前には一度、世界から全ての魔将が姿を消した。しかし聖戦を終えた今、魔将が消える事は無い」
グレイ 「ヴァティスは倒されたんだ。それは間違いないよ、レジェンドと変わらない」
ウンディーネ 「起源は悪夢によるものですよ、グレイ様…」
グレイ 「悪夢?」
と、その時。
エフリートから放たれる炎のブレス。
グレイ 「うあぁ!」
バランスを崩し、落ちるグレイ。
シルフ 「グレイ様!」

○同・広場
怪我人を背負うルーンと、逃げ出す街の人の荷物を背負うフィオ。
フィオ 「早く、こっちの方へ。こっちが風上だ!」
ルーン 「クソ、これでこの辺りの人間はみんな避難できたか?」
ピノ 「んもう、あたし達も早く行かないと逃げ遅れるわよ!」
フィオ 「でも、グレイとリリファンが…ッ!」
上空から聞こえてくる羽音。
フィオ達眼前に落ちてくるのは、グレイとシルフである。
落下直前、グレイを背中で受け止めたシルフ。
フィオ 「グ、グレイ!」
グレイ 「助かったよ、シルフ…」
追うように、降りてくるウンディーネ。
その姿に、ルーンは驚く。
ルーン 「お、おい。グレイ、何なんだそいつは…!」
グレイ 「フィオ、街の人たちは?」
フィオ 「あ、ああ。大体住人の避難は終わったよ。後はオレ達が逃げるだけだ」
ピノ 「空気が乾いてるから、何でもかんでもよ〜く燃えるのよ! 鎮火なんてできっこないもの!!」
グレイ 「分かった、僕が何とかするから。フィオ達はここから逃げて。これ以上近付いちゃダメだよ!」
ルーン 「何とかするって…おい!」
ルーンの制止を聞かず、再び飛び立つグレイとシルフ、ウンディーネ。
ルーン 「おい、何がどうなってるんだ」
フィオ 「なあ、ピノ。今…グレイのおでこに…なにかついてなかった?」
ピノ 「う、うん。目玉…なワケないか…」
そこへ走ってくるリリファン。
リリファン 「フィオは〜〜〜〜ん!」
振り返るフィオ。
息を切らしようやく追いついたリリファン。
リリファン 「ハアハア…グレイはんは?」
フィオ 「リリファン!」
ピノ 「グレイならシルフと一緒に飛んでっちゃたわよ。なんか人魚みたいのまで連れてたわ」
リリファン 「水の精霊・ウンディーネです」
フィオ 「なんだって!」
息を落ち着けるリリファン。
リリファン 「グレイはんがどうにかしてくれます。皆はんは逃げてください。ウチは…グレイはんを追いかけますから」
フィオ 「そんな、リリファン。危険だ!」
リリファン 「このままじゃ、危険なのはグレイはんです。グレイはんは精霊を召喚するいうことが、どんなに術者の命を削るか分かっとりません。みなはんは邪魔ですから、はよ逃げて下さい!」
ルーン 「じゃ、邪魔って…おい!」
ルーンの制止を聞かず、グレイの飛んで行った方角へ走っていくリリファン。

○同・塔の上
離れた先に暴れるエフリートと、それに向かうシルフとウンディーネに目を見張るミッフィー。
フェンリル 「上位精霊・エフリート相手にいくら水とはいえウンディーネでは厳しいでしょう。加勢しますか?」
ミッフィー 「あの精霊のにおい、シルフとウンディーネやったんか。なしてこないな所に」
フェンリル 「たとえ相手が精霊であろうと、人を守るために戦うとは考えられぬ話です」
ミッフィー 「誰かが使役しとるんか?」
フェンリル 「答えは一つでしょう、あなたの捜し求めていた…」
ミッフィー 「!」
ミッフィーは塔の上から飛び降りる。

○同・教会前
シルフの背から降りるグレイ。
空を見上げる。
縦横無尽に空を飛ぶエフリート。
グレイ 「シルフはあいつの気を引けないかな。ウンディーネはこの一体の家屋の火を消して」
ウンディーネ 「はい」
シルフ 「やってみます」
グレイ 「まずは火事の炎を消していくんだ。それから乾いた街に水を降らせよう。サラマンダーの力の源は炎。火の力が弱くなれば、彼の力も弱くなる。そこを狙うんだ!」
リリファン 「あきまへん、グレイはん!」
その声に振り返るグレイ。
やや離れた所から叫ぶリリファン。
グレイ 「リリファン、どうしてここに!」
リリファン 「精霊の召喚時間は、聖獣の魔力に比例しよる。あのミッフィー様かて2匹で限界やったんですよ!
グレイはんの精神が壊れてまいます」
グレイ 「どこまで持つか分からないけど、やるしかないよ」
リリファン 「逃げましょ…、グレイはん」
グレイ 「ダメだよ、リリファン。僕は…」

フラッシュバック・グレイの夢
脅えるグレイ。
グレイ 「イヤだ…死にたくない…助けて…助けて!」

グレイ 「僕は戦おうとはしなかった、逃げ出したんだ。聖戦のあの時…カデシュ村の人が魔将に襲われてる中で、僕はこんな力を持ってたのに、村の人を助けようともしなかった。僕だけが逃げる事を考えてたんだよ」
俯くグレイ。
目が潤む。
グレイ 「こんな弱虫な僕に、レインに会う資格なんてない」
リリファン 「それはちゃいます、グレイはん。グレイはんが悪ろうわけありまへん!」
グレイ 「だから、僕は強くなる!」
拳を握り締めるグレイ。
決意の表情。
グレイ 「僕だって強くなる、フィオやルーンみたいに!」
周囲の炎が消えていく中、頭上のエフリートはグレイに気付いた様子。
一点に止まり、グレイを見下ろす。
グレイ 「行くよ! シルフ、ウンディーネ〜〜〜ッ!!」
グレイはシルフの背に乗る。
空へと羽ばたくシルフ。
そしてその後を飛ぶウンディーネ。
呆然とその光景を見送るリリファン。
リリファン 「グレイはん…」

○同・上空
エフリートへ向かうグレイ・シルフとウンディーネ。
エフリート 「ッ!」
エフリートは大きく両腕を広げ、息を吸う。
ブレスを吐こうとするが、エフリートの背後に現れる影。
巨大な影は、エフリート、グレイとシルフ、ウンディーネに落ちる。
グレイ 「え!」
エフリート 「!」
見上げるグレイと振り返るエフリート。
巨大な海蛇が、その頭を垂れる。
フェンリル 「そこまでだ、若いエフリートよ…」
フェンリルの口から放たれる氷のブレス。

○同・高台
街から少し外れた丘から一連の様子を眺める、フィオ達。
空中に浮く、フェンリル、エフリート、シルフ、ウンディーネの影。
ピノ 「なんだかもう1匹増えたみたいだけど…」
フィオ 「エフリートが消えた…」
ルーン 「じゃあ、あの蛇の化けもんは仲間ってわけだな。もう、片が付いたんじゃねえのか?」
顔を見合わせる3人。
その場から、街に向かい戻り走り出す。

○同・教会前
シルフから降りるグレイ。
頭上のフェンリルを見上げた後に、ウンディーネの横に立つサラマンダーを見つめる。
サラマンダー 「私は一体…?」
シルフ 「正気に戻ったのですね、サラマンダー」
ウンディーネ 「けれど、力も失われてしまったようですね」
サラマンダー 「このお方が、私を救ってくれたのか?」
火トカゲの姿に戻ったサラマンダーは、グレイを見下ろす。
ウンディーネ 「はい、私の主。アール・グレイ様です」
サラマンダー 「聖獣…おお、新たにお生まれになったのか!」
グレイ、目を見開く。





グレイ 「我が名は聖獣『アール・グレイ』…汝の名は…?」
ウンディーネ 「『ウンディーネ』」
シルフ 「『シルフ』」
サラマンダー 「『サラマンダー』」
グレイに吸い込まれていく精霊達。
気を失うグレイ。
リリファン 「グ、グレイはん!」
駆け寄るリリファン。
壁影で一部始終を見ていたミッフィー。
ミッフィー 「や〜と見つけた、聖獣や…」
その声に振り返るリリファン。
ミッフィー 「まさかタケルのじょーちゃん所のパーティに、聖獣がおったんなんてな」
リリファン 「ミッフィー様!」
飄々と現れるミッフィーは口元に人差し指を立てる。
ミッフィー 「しぃ〜、タケルとの約束やねん。ウチの事は秘密やで」
リリファン 「どうしてグレイはんに逢って下さらんのです。ずっと…グレイはんはずっとレイン様に憧れておって…」
ミッフィー 「フェンリル、もう目立つさかい。戻りいな!」
コクリと頷き、フェンリルは姿を消す。
話を聞かないミッフィーにリリファンハ苛立つ。
リリファン 「ミッフィー様!」
ミッフィー 「メィアット族の巫女はん。確か精霊の声が聞けるんやってな」
リリファン 「!」
ミッフィー 「ウチを探しとったんやろ? けど、ウチは行けへん。フィオを助けたらルール違反やから」
リリファン 「ルール?」
ミッフィー 「せや。だからお宅の部族問題は、グレイに解決してもらうとええで。坊やも立派な聖獣やし」
ミッフィーは腰を屈め、グレイの頭を撫でる。
ミッフィー 「まだ成長途中やけどな。リリファン、グレイを助けてやるとええ。他に精霊を見つけて、契約すればグレイはどんどん強うなる」
リリファン 「グレイはんと話してやってくれんのですね」
残念そうに呟くリリファン。
ミッフィー 「必ずまた、グレイに逢いに来る。この世でたった一人の…ようやっと見つけた同族や…」
グレイ 「うぅ…」
ミッフィー 「……」
遠方から聞こえるフィオの声。
フィオ 「グレ〜イ、リリファ〜ン!」
近付いてくるフィオ達の小さな影。
ミッフィーは慌てて立ち上がる。
ミッフィー 「あかんあかん、ほなさいなら。リリファン、グレイ!」
ミッフィーは瞳を閉じ小さく呟く。
ミッフィー 「出でよ、グノーシス」
地面から現れる、土色の大男。
ミッフィーを抱え込み、大地に沈む。
リリファン 「ミッフィー様!」
グレイ 「うぅ…」
目を覚ますグレイ。
リリファン 「グ、グレイはん?」
頭を振るグレイ。
瞳の第三の瞳は閉じ、傷跡だけが残っている。
ちょうどその時、グレイとリリファンを見つけ駆け寄ってくるフィオ達。
フィオ 「グレイ、リリファン。無事か!」
ピノ 「ちょっと、あの蛇の化け物とか人魚とかシルフとかどうしちゃったのよ!」
グレイ 「え…、何?」
キョトンとして、自分を取り囲む他の一行を見回す。
グレイ 「どうしたんだよ、みんな。そんな怖い顔してさ。何かあったの?」
リリファン 「覚えてらんのですか?」
ルーン 「はあ、聞きたいのはこっちだ。一体どうなってやがる!」
フィオはグレイの額を撫でる。
フィオ 「やっぱり…気のせいだよな?」
傷口を見たフィオ。
ピノと顔を合わせる。
ピノ 「だとしたら、あの精霊達ってリリファンの占いどおり、ミッフィー様が解決してくれたんじゃないかしら!」
ルーン 「で、ま〜た俺達の前からまんまと消えうせたわけだな」
フィオ 「そうと決まったわけじゃないだろ!」
グレイ 「ミッフィー様…」

フラッシュバック
グレイの頭を撫でるミッフィー。

グレイ(M) 「あれ…夢だったのかな」
リリファン 「これで、うちのお告げが当たることが証明されたわけですな!」
自信満々のリリファン。
ポンと胸を叩く。
ピノ 「お告げっていうよりは…占いのノリよね…」
フィオ 「う、うん」
リリファン 「見えます、ウチには見えます…」
また、どこからか藍色の水晶球を取り出すリリファン。
左手に球を持ち、右手をかざしその中を覗き込む。
リリファン 「ラッキーな方角は東ですねん。うちが案内しますわ。
そこでみなはんは聖獣に逢えます!」
グレイ 「聖獣ッ!」
ピノ 「じゃあ、東に向かえばミッフィー様に会えるって事で確定ね」
フィオ 「よし、早速。一旦宿に戻って出発の準備をしなきゃ!」
ピノ 「報酬も忘れないでね!」
リリファン 「よろしゅう、グレイはん。みなはん!」
リリファンはグレイの肩に抱きつく。
赤くなるグレイ。
グレイ 「う、うん」
ルーン 「ちょっと待て、おい。そんな適当に…いい加減に旅先決めていいのか、お前ら〜!」
無視。
もう歩き出している他4人。
フィオはやれやれといった感じにルーンへと振り返る。
フィオ 「置いてくぞ、ルーン」
ルーン 「お、お前ら…」
ブツブツと文句を言いながらも、歩き出すルーン。
一方リリファンは、小さく舌を出す。
リリファン(M) 「あかん、嘘をついてもうた…いや」
リリファンは笑うグレイを見る。
リリファン(M) 「嘘ではありまへんな。あんさんこそウチが探していたお告げの人だんねん」

To be continued…
LEGEND =Questers=