第8話 お茶の間騒動
シーンA
○ファンジームの街道
道を歩く一行。
グレイの横にぴったりと並ぶリリファン。
楽しそうに話しながら、時折グレイの腕に抱きつく。リリファンは前方に見える村を指差す。
リリファン 「あそこですわ、皆はん!」
グレイ 「あの村が、リリファンのふるさとかあ」
リリファン 「はい!」
背中から藍色の水晶球を取り出すリリファン。
その中を覗き込む。
ルーン 「また、それか…」
リリファン 「いよいよ皆はんは…聖獣に逢えますで!」
グレイ 「聖獣かあ、ミッフィー様。…ドキドキしてきた」
ルーン 「まあ、こいつの占いは半分くらい当たるぞ。女難は当たった…」
ピノ 「何よそれ、半分じゃ信憑性ないじゃない」
リリファン 「ちなみにラッキーカラーは、ローズピンクです」
フィオ 「ろ、ローズピンク?」
リリファン 「それにスカイブルーにエメラルドグリーン、蛍光色ですわ」
フィオ 「ず、随分派手な色だな」
リリファン 「ラッキーアイテムは…紅茶!」
立ち止まるグレイ。
グレイ 「こ…紅茶…」
青ざめるグレイ。
フィオ 「グレイ、どうかしたのか?」
グレイ 「なんか…寒気がしてきた」
ブルっと震えるグレイ。
ピノ 「またカゼでもぶりかえしたの〜?」
グレイ 「う、ううん。そうじゃなくて…、ハハハ…」
フィオ 「?」
ルーン 「おい、あれ見ろ」
ルーンは村の方角を指す。
ルーン 「様子が変じゃねえか?」
広場に群集が集う。
なにやらいがみ合っている様子。
リリファン 「あ、あかん!」

○【サブタイトル】




○メィアットの村・広場
ウサギの獣人たちの前に迫るヒツジの獣人達。
二部族はいがみ合う。
羊の獣人 「秘宝が奪われて間もないのに、今度はシャイン様だ。全部お前たちが仕組んだ事じゃないのか!」
兎の獣人 「言いがかりや、第一何の証拠があるん!」
羊の獣人 「秘宝を手にして、このニルギリ高地を支配しようとしているんだろうが!」
羊の獣人 「だから魔法を使えるシャイン様を攫ったんだ!」
兎の獣人 「シャイン様のことはウチらかて、今知ったんや!」
羊の獣人 「とぼけやがって!」
今にも殴りあいになりそうな勢い。
その間に立つ、一人の獣人。



兎の獣人(ササカ) 「シャイン様捜索についてはグリーン・ウッドに任せとる。せやから、もう少し待っとくれ!」
兎の獣人 「ササカ様…」
羊の獣人 「グリーン・ウッドが…冒険者ギルドの人間がこんな田舎に来るのにいつまで待てばいいんだ!」
羊の獣人 「こうしている間にもシャイン様が…!」
リリファン 「兄様〜!」
走ってくるリリファン。
二部族の間に立ち、周囲の獣人に対して呼びかける。
リリファン 「リリファン=メィアット、ただいま戻りました。そして、連れて来はりました。この方々がギルドのクエスターです!」
皆の視線が一斉にフィオ達に向けられる。
フィオ 「な、何なんだ」
ピノ 「ちょっと、どういうことよ」
ルーン 「はめられたんじゃねえのか?」
グレイ 「は、はめられたって…」
ルーンの顔を見上げるグレイ。
そして、自分を一心に見つめるリリファンとその兄・ササカに目を移す。
グレイ(M) 「リリファン?」

○リリファンの家
接待を受ける一行。
お茶を入れるリリファン。
ルーン 「そろそろ、正直に話したらどうだ」
ピノ 「あたし達は今、ギルドからクエスト受けてないわよ。リリファンの村でクエスターになにをさせるつもりなのよ」
ササカ 「わいとてリリファンに頼んだのは、ミッフィー様に来ていただく事だったんや」
リリファン 「せやから、聖獣は連れて来はりました!」
リリファンはグレイを見つめる。
その視線の先を辿る、他全員。
グレイ 「ぼ、僕〜?」
ピノ 「そういえば…」
ピノはグレイの眼前に飛ぶ。
額の傷を撫でるピノ。
ピノ 「パータリプトラの精霊騒ぎの時。おでこに何かついてたわよね」
フィオに同意を求めるピノ。
フィオ 「気のせいじゃなかったんだ」
グレイ 「フィオまでそんなとんでもない事信じるの? 僕が聖獣だなんて…」
フィオ 「グレイ。オレ達がリリファンの力になれるんだったら、やってみようよ」
グレイ 「う…うん」
ルーン 「簡単に言うなよ。大掛かりな問題だぞ、どうもこれは…」
リリファン 「ファンジームのレイン・ミッフィー様はずっと行方不明です。いや、本当のこと言いますとこの間…ちょっと会うたのですが、大陸の統治をするようなお方ではありまへん」
ルーン 「チッ、責任放棄じゃねえか」
グレイ 「ファンジームは元々レインによる統治はずっとされてないんだ。伝説の時代から…ずっとね」
ササカ 「ファンジームはライム、シャヌーン、サンタマリアと違って、地方により文化・種族体系、そして気候・地理が大きく異なる。統一はえろう困難極めるんや。今回のような部族同士の小さな諍いが耐えん」
リリファン 「アルティマは、魔術師ギルドいう大きな組織がありますから、地方連携は取れてますやろ。ファンジームはようやっとグリン様がグリーン・ウッドの支部を出してくれたさかい…まだまだ発展途上なんや」
フィオ 「どうしてミッフィー様は何もしないんだ?」
グレイ 「ずっと生きなきゃいけないからだよ。ずっとレインじゃなきゃいけないからだ」
フィオ 「え?」
グレイ 「聖獣は死ねない。永遠の命を持つ種族だからね。レジェンドよりも前の時代、ファンジームも王制が取られていた事もあったそうだけど…最後はレインが国を滅ぼしたって言い伝えがあるんだ」
フィオ 「レインが国を…?」
グレイ 「うん。聖獣である当時のレインが、自らその命を経った。聖獣が永遠の時を断つ事の出来る唯一の方法は、それしかないから…」
フィオ 「そんな…」
ルーン 「……」
グレイ 「永遠の命を生きる事は決して楽な事じゃない。その悲劇を繰り返さないためにも、ファンジームの獣人はレインに王を求めなくなったんだ」
リリファン 「せやけど、勿論。ミッフィー様はこの村の事を気にかけてくださりました。そうして、グレイはんに任せるってゆうはったんです」
グレイ 「僕に任せるって…」
ササカ 「この地で祭られていた封印石を取り戻して欲しい」
フィオ 「封印石?」
ササカ 「わい等が住むここニルギリ高地は、500年以上も前から、メィアット族とモースィア族が共存して暮らしとっした。当時のレインがその友好の証として下さったのが、その封印石や。以来、メィアットとモースィアは互いにこの秘宝を祭り、守り続けてきたんや。
ところが、2ヶ月ほど前に賊に奪われてもうて。さらに先日…モースィア族が聖女と崇めとったシャイン様が失踪されおった」
リリファン 「シャイン様が…」
ササカ 「せや。おそらくその賊に違いないやろうと、モースィアは騒いどる。メィアットとモースィアの二つの部族で祭っていた封印石や。それに加えてシャイン様の失踪。賊はメィアットの仕業やろうとな」
グレイ 「そんな…」
ピノ 「ちょっと待ってよ。封印石っていうからには、なにか封じてた筈よね。それと聖獣と、何か関係があるの?」
リリファン 「はい、封じとったのは大地の上位精霊…ベヒモスです」

○ニルギリ高地・山道
山道を登る一行5人。
グレイ 「それでシャインさんはこの山に入って、戻って来なかったんだ」
リリファン 「はい。賊が石を持って行った先がこの山奥やて、情報を得たそうです」
フィオ 「なんでまた、一人で行ったりしたんだろう」
ピノ 「単に遭難しただけだったりして」
ルーン 「んなわけあるか」
リリファン 「シャイン様はシスターです。しかも高度神聖魔法の使い手ですから、そう簡単に捕まる事はないと思いますねんけど」
フィオ 「油断はできないって事だよな」
ピノ 「ねえ、あれ…こんな所に小屋があるわ」
前方、粗末な小屋がある。
中に人がいるよう。
ルーン 「誰かいるぞ」
各々武器を構える一行。
フィオ 「シャインを捕まえてる賊か!」
グレイ 「ピノ、様子を見に行ける?」
ピノ 「オッケイ、任しておいて!」
小屋に向かって飛んでいくピノ。
リリファンは首をかしげる。
リリファン 「なんやか、即興で立てたようなアジトですなぁ」
グレイ 「うん、それに新しいような気がする」
戻ってくるピノ。
ウインクする。
ピノ 「大丈夫、中には1人しか居ないっぽい。賊は留守にしてるんじゃないかしら、チャンスよ〜!」
ルーン Liberate
ロッドから光る斧の刀身。
ルーン 「とっとと突入するぞ!」
ピノ 「行くわよ〜!」
フィオ 「よし!」
グレイ 「ああ、待ってよみんな!」

○ダジリンのアジト
扉を開けるとそこにはお茶を飲んでいる女性。
一口付けた後、血相を変えて飛び込んできたフィオ達に向かいのんびりと尋ねる。





シャイン 「あら〜、どちらさまですか?」
リリファン 「シャイン様〜!」
リリファンはシャインの姿を認めて喜ぶ。
唖然とするフィオとピノ、そしてルーンとグレイ。
ピノ 「捕まってるって割には、いい待遇じゃない?」
フィオ 「なんか想像してたのと違うな…ハハ…」
立ち上がるシャイン、にっこりと笑って。
シャイン 「初めまして。わたくし、シャインと申します」
とそこへ、素っ頓狂な男の声が響く。
男(ダジリン) 「フレディンちゃん〜、帰ったよ〜!」
シャイン 「ですから、わたくしはシャインですよ」
その男の声に振り返る一行。
扉から入ってくるのは大男とオカマ、痩男。
ルーン 「何だ、こいつら?」
剣を構えるフィオ。
フィオ 「あんた達が賊か!」
グレイは大声を上げてその3人に指さす。
グレイ 「ああああぁぁぁぁ〜〜〜、あの時のペテン師!」
リリファン 「ペテン師?」
ピノ 「何よ、グレイ。知り合い?」
グレイ 「知り合いなんかにしないでよ、僕はこいつらに騙されて、危うくオカマバーに入れられるところだったんだから!」
フィオ 「お…オカマバー…?」
ピノ 「グレイ、そんな事があったの?」
グレイ 「ダジリン、セイロン、アッサム。偽レイントリオって言えばメンフィスで有名さ!」
ダジリン 「何だあ、この猫…。しっかし俺達の名声も世界各地に知れ渡ったようだな〜」
ルーン 「悪名の間違いだろ」
オカマ(セイロン) 「ちょっとちょっとダジリン。この子、ずっと前にお兄様に紹介した…あの…」
痩男(アッサム) 「あかん、忘れとるわ」



フィオ 「どっちにしろ、悪い奴なんだな」
剣の切っ先をダジリンに向ける。
ダジリン 「ひ、ヒイィ〜!」
シャイン 「お待ち下さい」
リリファン 「シャイン様?」
ダジリン 「フレディンちゃん」
シャイン 「ですからシャインです」
微笑むシャイン。
フィオとダジリンの間に立つ。
シャイン 「この方達はわたくしに力を貸してくださったんです。共にベヒモスを封じる為に」
ダジリン 「フレディンちゃん…」
涙目のダジリン。
一行はキョトンとする。
一行 「ええッッ〜!」
リリファン 「こないなヤツが、なしてシャイン様をお助けするのです?」
シャイン 「実は私。この山に入ったのは良いものの、迷ってしまいまして…。危うく遭難しかけていたのです」
ルーン 「マジで遭難してやがったのか!」
シャイン 「どうもわたくし。方向音痴と呼ばれるもののようです」
フィオ 「は、はあ…」
ダジリン 「フレディンちゃんの方向音痴は筋金入りだモンなぁ〜」
シャイン 「わたくしはシャインですよ」
微笑むシャイン。

○ニルギリ高地・断崖絶壁
縄の端を持つピノは絶壁の上へと飛んでいく。
グレイ 「こういうときに翼があるって便利だなあ」
木の幹に縄をかけるピノ。
ボソリ呟くダジリン。
ダジリン 「フレディンちゃんだってあるのに…」
セイロン 「シィ、余計な事言わないのよ!」
シャイン 「わたくしはシャインですよ」
フィオ 「さっきからフレディン、フレディンって…一体誰の事なんだ?」
ダジリン 「俺様と一緒にレオハルトに乗ったクルーだ。バックアップで皆に癒しを恵んだ天使…」
うっとりとシャインを見つめるダジリン。
シャインはニッコリと微笑み返す。
シャイン 「わたくしはシャインです」
セイロン 「他人の空似でしょ。第一、天人のフレディンがいつまでも下界にいるわけないじゃない?」
ダジリン 「じゃあ、この方向音痴はどう説明するんだよ!」
セイロン 「それは〜ええと…」
ダジリン 「だろ?」
ルーン 「お前ら、レオハルトのクルーだったのか…」
呆れるルーン。
アッサム 「そうやで。あのレインと共に戦こうた、レオハルトのメカニックやで〜」
ルーン 「どうでもいい奴まで乗ってるんだな…その飛空艇にゃ」
ウンディーネ 「グレイ様、魔将の気配が!」
グレイ 「ッ…」
グレイは額を押さえる。
その様子に気付いたリリファン。
リリファン 「大丈夫ですか、グレイはん?」
グレイ 「今…誰かが僕の事呼んだ」
リリファン 「え…」
グレイ 「魔将…」
ルーン 「!」
崖を見上げるルーン。
縄を巻きつけているピノの背後に、小型の魔将・バット。
ルーン 「ピノ!」
ピノ 「へ?」
リリファン 「あかん!」
素早くクロスボウを構えるリリファン。
魔将を打ち落とす。
ピノ 「きゃあ!」
魔将の亡骸がフィオの足元に落ちてくる。
フィオ 「魔将がこんな所にも…」
ピノ 「いや〜、もう!」
フィオに泣きついてくるピノ。
ルーン 「グレイ…お前…」
ウンディーネ 「グレイ様、ベヒモスの身に危険が」
リリファン 「グレイはん、聞こえるのですか?」
グレイ 「うん、ベヒモスに何かあったみたい。急ごう!」