第9話 誰がヒーロだ
シーンA
○アルティマ・街道の宿
部屋にヨロヨロと入ってくるフィオ。
なにやら話していたらしい、グレイとピノは、ぐったりとしたフィオに心配そうに声をかける。
ピノ 「ちょっと、大丈夫? フィオ」
フィオ 「うん。ルーンってば手加減なしだもんな。疲れたぁ〜!」
そのままベッドに倒れこむフィオ。
フィオ(M) 「ルーンがオレの修行に付き合ってくれるようになった。それは嬉しいんだけど、なんだか実力の差を見せ付けられてる気がして、悔しい。世界には強い奴がたくさんいる、アレス王、ルーン、それにガイアス。世界一の剣士になるなんて、実は大それた夢だったんじゃないかって今更思う。
オレは、レインであるアレス王に修行を受けていい気になってたんだろうな…。
ガイアス…」

フラッシュバック・第8話
ガイアスとの闘い。
ガイアス 「お前はこの世界の平和と人々の幸せをどう考える?」

フィオは仰向けになって天井を見上げる。
フィオ(M) 「オレはルーンに会うために剣を取った。あいつは何のために剣を持って強くなったんだろう?」
なにやら考え込んでいるフィオを見つめるグレイとピノ、シャイン。
小声で耳打ちする。
ピノ 「なんだか声かけづらいわね」
グレイ 「うん」
グレイは手にあるチラシを見つめる。
グレイ 「でも、きっとこの話をしたら…フィオの事だから…」
ピノ 「行くって言って聞かないわよねぇ〜」
シャイン 「ルーンさんはどんな反応しますでしょうか?」
ピノ 「決まってるじゃない。『めんどくせぇ』の一点張りよ」
グレイ 「だよね」
3人は顔を見合わせる。
チラシにあるのは武術大会『グラディアトゥラ』の文字。

○【サブタイトル】




○アルティマ・フェルラーラの街
闘技場の前。
フィオはチラシを掲げ、読み上げる。
フィオ 「第6回、武術大会『グラディアトゥラ』開催のお知らせ。3月1日、バルナギーゼ=ウォレット卿の尽力により、フェルラーラ恒例の武術大会が参加されます。参加資格は問わず、トーナメント方式にて行なわれます」
ピノ 「優勝者にはウォレット家の宝物殿から好きなものを1個、お持ち帰りですって!」
グレイ 「ウォレット家っていえば、アルティマ最有力の貴族だよ。なんでも…」
グレイは両手をめいいっぱい広げる。
グレイ 「こ〜んなに大きな、世界最大のエレメンタルジェムがあるって話しだし」
ピノ 「あら、あたしは1000個のダイヤがぎっしり埋め込まれた、ミスリルのティアラがあるって聞いた事あるわよ」
シャイン 「お怪我をされたら、私が癒しますのでご安心下さい」
ニッコリ笑う3人は、フィオとルーンを見る。
フィオ 「すっごいな、オレ。ワクワクしてきたよ!」
呆れるルーンは、溜め息をつく。
ルーン 「めんどくせぇ」
グレイ&ピノ 「やっぱり…」
口を揃えて言う、グレイとピノ。
シャイン 「あの…皆さんは旅資金工面に悩んでいらっしゃるのですよね。でしたら、これは千載一遇のチャンスかと思われるのですが…」
ルーン 「あんたは、誤解してるようだが旅をしたいのはこいつら3人だ。俺は見世物になってまで、金を調達する気はねえ」
フィオ 「ずりぃ、ルーン。約束したじゃんか、オレのレインの話にもたまには付き合ってやるって」
ルーン 「レインの話と金と一体何の関係があるんだ」
フィオ 「だから、ルーンとレインの話をするにはオレ達が旅を続けなくちゃいけないし、その為には旅をするお金がいるんだよ!」
ルーン 「んな回りくでえ話、やってられるか!」
ピノ 「フィオが出たら?」
その言葉に静まり返る一行。
フィオ 「えぇ、オ、オレ?」
グレイ 「そうだよ、フィオもルーンと修行してもっと強くなってると思うし、ここは力試しに参加してみたらどうかな?」
シャイン 「それが宜しいのではないでしょうか? それでは早速、フィオさん。参加登録なさいましょう!」
フィオ 「力試しか、…よしやってみようッ!」
シャインと共に、闘技場へと走って行くフィオ。
ルーン 「お前ら…都合よくあのバカを炊きつけやがったな」
ピノ 「あら〜、ひどい言われようね。でも、いいじゃない。上位に残れば、それでも何か賞金ぐらいは出るでしょ。そうしたら、美味しい物位は食べれるかもよ。アルティマ名物って何かしら…」
グレイ 「バルナギーゼ=ウォレット卿か…アルティマの大貴族。一体どんな方なんだろう?」
ルーン 「お前ら…あいつの心配一つもしねえのか…」
呆れ顔。
その言葉にピノはニヤリと笑う。
ピノ 「ふふ〜ん、あたし達が心配しなくても心配する人間がすぐそこにいるからいいのよね〜」
グレイ 「そうだね」
グレイとピノは顔を見合わせて企み笑い。

○同街・闘技場
受付に出来る長い列。
そこに並ぶフィオとシャイン。
残り2、3人といった所で…フィオの前に割り込んでくる筋肉隆々な大男。
大男 「おっと、坊主。どきな!」
フィオ 「うわ!」
列から押し出されるフィオ。
シャイン 「フィオさん!」
大男 「ここは、坊主見てえなガキがくる所じゃねえぜ。とっとと帰んな!」
列から押し出されたフィオは、顔を真っ赤にして拳を握る。
フィオ 「ちっくしょ〜、久しぶりに言われたらむかついてきた。どいつもこいつも!」
大男 「お、やるか!」
殴りかかるフィオに、自分の剣を抜く大男。
シャイン 「あぁ!」
もうだめだと、目を覆うシャイン。
大男がフィオに剣を振り下ろす、その間。
2人の間に、1人。
探検家風の男が立つ。
探検家の男 「やりあうなら、そこの中ってのがルールだろぉ」
右の剣で大男の剣を受け、左手はフィオの手首を握る。
フィオ 「!」
大男 「!」
探検家の男 「何年か前、圧倒的な強さで優勝したリュート=なんとかっていうヤツも、小っせえガキだったていう話しだ。人は見かけによらんもんだぜぇ、ダンナ」
大男 「クッ、覚えてろ!」
大男は剣を納め、列の最後尾へと去って行く。
フィオの手首を離す男。
帽子の中から覗く、とぼけた顔。



探検家の男 「やれやれ、恩人に失礼な台詞だな」
フィオ 「恩人?」
探検家の男 「大怪我をしていたのはあの大木だ」
フィオ 「…フ、アハハハ」
笑う、フィオ。
シャインは話の内容が分からず、きょとんとしている。
シャイン 「あの…助けて頂いてありがとうございました。お名前は…?」
男(ジャキィス) 「トレジャーハンターのジャキィス。流浪している人間なんでなぁ、ファミリーネームはない!」
『ない』と断言するジャキィス。
フィオ 「ジャキィスも武術大会に参加するのか?」
眉をひそめるジャキィス。
ジャキィス 「おいおい、じょーちゃん。俺は名乗った。次はあんたらが名乗るのが礼儀ってもんだろう」
フィオ 「う…」
シャイン 「私はシャインといいます。私はファミリーネームがあるのかどうか…。過去の記憶がありませんので」
ジャキィス 「ふむ、ワケありか。で、じょーちゃんは?」
興味深そうに、フィオの顔をしげしげと見るジャキィス。
フィオ 「オレはフィオ…」
楽しそうに目を細めるジャキィス。
フィオの顔を覗き込む。
ジャキィス 「本名は?」
フィオ 「う…ファルシーオ=ルルカ」
シャイン 「?」
シャインにも聞こえないような小声。
フィオは、ヤバっといった表情をする。
フィオ(M) 「オレ、今ばらした!」
ジャキィス 「ルルカ家の…」
小さく呟くジャキィス。
一瞬だけ垣間見せる、真摯な表情。
ジャキィス 「ハッハッハ、話はこのくらいにしようか。見てみろ、周りがとっとと列に戻れって顔してるぞぉ」
フィオ 「お、おう」
シャイン 「……」
列に戻る3人。
フィオの前で、ジャキィスは楽しそうに鼻歌。
ジャキィス 「フフフ〜ン♪」
フィオ(M) 「オレ、何でばらしちゃったんだ。あいつ…」
フィオは前に立つ、ジャキィスの背中を見上げる。
フィオ(M) 「どっかで会った事あるかな…ない…よな。そんな気がするの、なんでだろ?」
シャイン 「あの…フィオさん」
フィオ 「!」
ハッと我に返るフィオ。
フィオ 「ん、どうしたんだ、シャイン?」
シャイン 「言いにくい話なんですが…ジャキィスさん。いつの間にか…私達の前に並んでますよね…」
フィオ 「あ、本当だ」
ちゃっかり列に割り込んでいるジャキィス。