第10話 学校の怪談
シーンA
○ベルナの街・古書店
古書店『メリューンの店』。
店に入ってくる、短髪ブロンドの魔術師の女性・アリスタ。
屈強な体躯を持つ、禿頭の中年男・リーブの姿を認め、近付いてくる。
アリスタ 「古書店店主兼自警団長、今は冒険者ギルドのマスターか。そのなりも板についたな、リーブ」
リーブ 「よせよ。アリスタの方こそ、今では『先生』だからな。俺も年をとったもんだ」
アリスタ 「あれからもうすぐ8年か…。随分経つ」
リーブ 「そういえば、エイセルから連絡はないのか?」
アリスタ 「あいつの事だ、まだシャヌーンの辺りをうろついているのではないか? ギルドにも目を付けられてるんだろう」
リーブ 「まさか、ここベルナの人間が奴を売ったりはしないさ」
アリスタ 「『英雄』だからな…」
リーブ 「そう言うと機嫌を悪くするが…」
苦笑するリーブ。
アリスタ 「実はな、つい最近手紙があったよ。レニーがあまりにうるさいものだから、一度アルティマのクエストギルドに顔を出すとさ」
リーブ 「それは、本当か?」
アリスタ 「あとは…興味深い冒険者に会ったとか…。他愛のない話だ。それもどこまで、信憑性がある話なのかは分からないが」
リーブ 「興味深い冒険者か…」
リーブは机の下に張ってある紙に目を移す。
そこにはフィオとルーン、グレイ、ピノの画。
リーブ 「で、アリスタ。今日は一体何の用件なんだ?」
アリスタ 「クエストの依頼だよ。神官がいるパーティがいいな。幽霊、呪い…そういった現象の類かもしれない」
リーブ 「おいおい、怪談でも始めるつもりか?」
アリスタ 「そうだな。『学校の怪談』だ…」

○【サブタイトル】




○同・エルシュリク魔法学校前
アリスタに案内され正門から、敷地内へと入るフィオ達一行。
フィオ(M) 「この人はアリスタ=コートさん。アルティマのエルシュリク魔法学校の、古代魔法六元魔術科の先生らしい。ベルナに入ったオレ達は、冒険者の店に入るや否やクエストを依頼された」

○同・古書店
フィオの回想。
リーブは一行に紙を差し出す。
リーブ 「そこの姉さんはシスターなんだろ。だったらこれが好都合じゃないか」
ピノはその紙の内容を読んで、顔が青くなる。
ピノ 「ちょっとお、何よ何よこれ、何なのよ〜!」
グレイ 「えっとどれどれ…最初は一枚の絵画から始まった。
美しい女性を描いた肖像画が、学校の時計塔に飾られた翌日。学長であるマギウス=クロラフィルが失踪」
フィオ 「え…」
グレイ 「その日から、絵を観た生徒が次々と昏睡状態に陥る。原因は不明。
また、同時期より誰も居ないはずの学長室から複数の女性の話し声が聞こえるようになった。
しかし、その女性の姿を確認したものはいない」
フィオ 「嫌な予感…」
グレイ 「そして、先日『マギウス=クロラフィル』は20年前に死んでいると豪語する不審な男が現れ、現在校内で取調べ中。今に至る。
生徒犠牲者25名。いずれも昏睡状態、呼びかけに反応せず」
ルーン 「おいおい、何の怪談だよ」
シャイン 「そういえば、この学校では10年前に聖獣の幽霊が現れたという噂もありますね〜」
リーブ 「おう、お姉さん。詳しいじゃねえか」
ピノ 「ちょっと待ってよ、本当に幽霊なの〜」
泣きそうな顔のピノ。
ルーン 「だとしても、アルティマ最大の魔術師養成学校だ。神聖魔法の使い手が1人や2人いたっておかしくねえだろ?」
リーブ 「いや…あそこのエヴァンス先生はな。除霊に自信がないって言うか…」
グレイはルーンの顔を見上げて、小声で尋ねる。
グレイ 「精霊に調べてもらう? 精霊だったら、幽霊にとり憑かれるなんてことはないからさ」
ルーン 「そいつはいいかもしれないな」
フィオ 「なあ、リーブ」
リーブ 「ん?」
フィオ 「その不審な男って、どんな奴なんだ?」
リーブ 「ああ〜、確か…『ジェナード』って言ったけな。何でもあの飛空艇レオハルトのクルーだったそうだが、どこまで本当なんだか」
フィオ 「!」
顔を見合わせる4人は、シャインへと視線を移す。
フィオ 「ジェナードは…前に会った事があるんだ。自由海軍の船長だ」
リーブ 「何だって?」
フィオ 「それに、レオハルトのクルーだって言うなら…シャインを見たら『フレディン』って間違えるに決まってる!」

○同・エルシュリク魔法学校内
アリスタが先導し、図書館を歩く一行。



フィオ(M) 「そうして、オレ達がその怪談の真相を探る羽目になったわけ…」
小さく笑うアリスタ。
アリスタ 「しかし、まさか…リーブがよこした冒険者が、君達だったとはな…」
フィオ 「え?」
アリスタ 「友人から噂を聞いていてね。パーティーには妖精が居るから、目立つだろう」
ピノ 「ほらほら、マスコットのあたし。有名になったもんねぇ〜」
アリスタ 「勿論、それだけではないさ。珍しい武器の使い手に、神聖古語を解読する獣人、それに…」
フィオへと振り返るアリスタ。
アリスタ 「アレスに良く似た空の瞳の剣士」
フィオ 「アレス…ってアレス王?」
グレイ 「レインに『様』もないんですか?」
少し怪訝な顔をするグレイ。
アリスタ 「君達がレインをどう思っているかは知らないが、私…そして私の友人エイセル、そして彼の妹レニーは聖戦の結末を実際にこの目で見た」
フィオ 「エ、エイセルだって!」

フラッシュバック・LEGEND =Dream= 最終話




アリスタ 「実際に、彼らとはあった事はないのだけどね」
ルーン 「やれやれ、あのエイセルとかいうヤツもこいつも、とんだタヌキじゃねえか」
フィオ 「ルーン!」
アリスタ 「ハハハ…タヌキか…」
グレイ 「あの…聖戦の結末って…」
立ち止まるグレイ。
つられて止まる他一行。
アリスタ 「私達はそれを知っているから、軽々しく口にする事はしないんだ」
ルーン 「もったいぶりやがって」
ピノ 「ちょっと、じゃあ…それを言っちゃったりでもしたら、殺されちゃうとか…」
フィオ 「流石にそれはないだろ、アレス王が…そんな強迫まがいな事をするもんか!」
シャイン 「人には…誰にも知られたくはない秘密があります」
静かに呟くシャイン。
シャイン 「心の内に秘めた、想いがあります。タケル様も…いえ、アレス様、グリン様もミッフィー様も…私達にクエストを授けて下さいました」
タケルという言葉に、眉尻が動くアリスタ。
シャイン 「でしたら、いずれ…きちんとレインの皆様にお会いできる時が来るのではないでしょうか?」
グレイ 「その時に、お話できるのかな?」
フィオ(M) 「オレの知らないアレス王…」

フラッシュバック・LEGEND =Questers= 第1話
肖像画。
微笑むレインとルラ。




フィオ(M) 「城の地下室にあった肖像画。そこに描かれていたレインはみな、笑っていた。オレが見たことのない、笑うアレス王が居た。アレス王は…幸せそうだった…」

フラッシュバック・第8話
シャイン 「今…本当に人々は幸せなのでしょうか?」

フィオ(M) 「あの時、アレス王は幸せだったんだ。でも、どうして?」
アリスタ 「さて、ついたぞ。ここだ」
応接室の扉を開けるアリスタ。
ソファーに座るジェナード。
ジェナード 「!」
アリスタ 「ジェナード、この者達に覚えはあるか?」
フィオ 「ジェナード!」
驚くジェナードは立ち上がる。
ジェナード 「お前は…幽霊船騒ぎの時の…確かフィオといったな…それに!」
後ろのシャインをみて、更に驚き声を上げる。
ジェナード 「フレディン、お前。どうしてこんな所に…今までどこに雲隠れしてやがったんだ!」
ジェナードの様子に、グレイとピノはニッコリ笑ってアリスタを見上げる。
小さく息をもらすアリスタ。
アリスタ 「さてと…、疑いは晴れたな」