第10話 学校の怪談
シーンB
○ベルナの街・エルシュリク魔法学校応接室
相談するフィオ、ルーン、シャインとジェナード。
フィオ 「ジェナード。学長のマギウス=クロラフィルって…」
ジェナード 「ああ、彼は聖戦中に間違いなく死んでいるんだ。その姪に当たるカタリム=クロラフィルは、レオハルトのバックアップメンバーだった」
フィオ 「カタリム=クロラフィル?」
ジェナード 「ああ。俺はその娘に会いに来た。とはいえ、ここに居る確証はない。ただ死んだはずのマギウス=クロラフィルを名乗る何者かが、この学校の学長を勤めている。考えられるのは、彼女しかいない」
ルーン 「おいおい。学長は60過ぎたおっさんだって話だろ。そのカタリムって女がどう化けたってんだ」
ジェナード 「彼女には特別な力があるからな…。アレを使えば簡単なことさ」
フィオ 「アレって?」
と尋ねた所で、部屋に入ってくるグレイ。
グレイ 「間違いない。あの絵は…魔将だ」
振り返る他3人。
ルーン 「グレイ、本当か?」
グレイ 「うん、シルフに時計塔へ様子を見に行ってもらったんだ。確かに女性の絵が飾ってあったって…それと」
ルーン 「それと?」
グレイ 「うん…昏睡してる生徒の顔が…浮き出てた…」
フィオ 「ひ…マジ?」
ルーン 「お前のサラマンダーで焼き払っちまえよ」
グレイ 「ちょ…」
シャイン 「いけません。闇雲に焼いてしまえば…呪縛に囚われた生徒達の意識が戻らない可能性もあります!」
フィオ 「すると…生徒が人質にとられてるようなもんか」
と、同時。
慌てた様子のピノが青い顔をして飛び込んでくる。
ピノ 「ひええええ〜〜〜〜!」
フィオ 「うわ、脅かすなよ。ピノ!」
ピノ 「聞いたのよ聞いたのよ、たった今聞いたのよ〜。女の話し声!」
フィオ 「え、ええ?」
ルーン 「ったく。フィオ」
フィオ 「うん?」
ルーン 「お前はジェナードとピノを連れて、その学長室へ行って来い!」
フィオ 「えぇ〜」
嫌そうな顔をするフィオ。
ルーン 「俺とグレイ、それにシャインはその絵を拝んでくる」
グレイ 「え、ちょっと!」
シャイン 「そんな何も作戦も立てずに戦うのですか?」
ルーン 「どうせ相手は、得体の知れねえ魔将なんだ。絵にしろ、幽霊にしろ魔法が主戦力になる」
フィオ 「そ、そりゃそうだけど」
ルーン 「学長室にいるその女の幽霊が、何か絡んでるってんなら…幽霊をぶった斬れ」
フィオ 「オレの剣で幽霊を斬れるわけないじゃん!」
アリスタ 「私がフィオと行こう」
応接室に入ってくるアリスタ。
フィオ 「アリスタさん…」
アリスタ 「剣で太刀打ちできぬ相手なら、私も戦力になる。
それにもう、あまり時間をかけたくはないんだ。眠っているだけだが、食事も出来ない。医学的な処置を施しているが、こうしている間にも生徒の体は衰弱している」
シャイン 「無茶…じゃないでしょうか?」
微笑むアリスタ。
アリスタ 「無茶は承知の上だ。あいつも、それに私もこうやってこの地を守ってきたからな。
教師と生徒の避難は済ませた。では、行こうか」
頷く一行。

○同・エルシュリク魔法学校時計塔
巨大なカーテンがかけられている壁一面にかけられた絵。
カーテンに覆われ、絵は見えない。
その前に立つ、ルーン、グレイ、シャイン。
ルーン 「なるほど、随分でかい絵だな」
シャイン 「本当に対策もなしで…ルーンさんって勢いだけで生きていません?」
ルーン 「おいおい…」
グレイ 「どうする、開ける?」
ルーン 「グレイ、お前はギリギリまで精霊を召喚するなよ。お前の精神力が事切れたら…まずい事になる」
グレイ 「う、うん。分かったよ」
ルーン 「シャインも、まずは防御に専念してくれ。いいな?」
シャイン 「はい…」
ルーン 「開けるぞ!」
カーテンを開くルーン。

○同・エルシュリク魔法学校学長室前
女性のささやき声が聞こえる。
「…すみません」
「『ビジョン』の魔法一つにここまで時間がかかるとは…」
ささやき声に気付く、フィオ、ピノ、アリスタとジェナード。
扉のそばで聞き耳を立てる。
「…申し訳ありませんッ」
「例の魔将ですが…あれからどうなりました?」
『魔将』の言葉に、一行の顔は真摯になる。
「うかつにもペンを奪われてしまって…もう私にはどうする事も…」
「ご安心なさい、例の冒険者達が向かっているはずです。グリンに連絡を入れてありますから、もうそろそろ着く頃です」
フィオ 「グ、グリンだって!」
その言葉を発する間も無く、扉を強引に開けるアリスタ。
少女 「きゃあ!」
少女は手にあった石を落とす。
床に落ちて砕け散る石。
少女 「あぁ〜〜〜ッ!! ビジョンのエレメンタルジェムが〜ッ!」
アリスタ 「貴様、何者だ!」
アリスタは持っているロッドを少女に向ける。
アリスタの背後から現れる、フィオ、ピノ、ジェナード。
ジェナード 「カタリム…お前、カタリムじゃないか!」
少女(カタリム) 「あ、おじさん! どうしてここに?」
ジェナード 「おじさんって…まったく、あいかわらずだな。こんな所で一体何をしてるんだ?」
ピノ 「今…グリン…とか言ったわよね」
カタリム 「ッ!」
カタリムはピノの姿を見て驚く。
カタリム 「あなた達が、ヨシュア様の言っていた…冒険者…んぐ!」
しまった、と言ったように自分で口を塞ぐ。
フィオ 「おい、どういう事だよ」
カタリム 「アハ…アハハハ〜」
カタリムは胸にあるブローチを裏返す。
紅の聖十字の刻印。
真摯な表情。
カタリム 「はじめまして、私はサンタマリア王家直属親衛隊『炬(カガリ)のクロスナイツ』、カタリム=クロラフィル。
そしてこの学校の学長マギウス=クロラフィルは私の作り出した幻影であり…」
ニッコリと笑うカタリム。



カタリム 「私が、この学校の学長なんです」

○同・エルシュリク魔法学校時計塔
露になった絵画。
武器を構えるルーン。
ルーン 「『Liberate』」
ロッドから刃が現れる。
ルーン 「……」
絵に描かれている女性、浮き出ている生徒達の顔、そしてペン。



ルーン 「何も起きねえじゃねえか?」
シャイン 「絵が魔将なんですよね?」
グレイ 「これ、ペン?」
ルーン 「ん?」
同意を求められたルーンは、絵の右下隅に描かれているペンを見る。
シャイン 「随分、この絵には似合わないモチーフだと思うのですが?」
ルーン 「じゃあ、何だ。この魔将は…ペンも吸い込みやがって事か?」
「ヴァティス様…」
ルーン 「ん、何か言ったか、シャイン?」
シャイン 「いいえ、私は何も?」
グレイ 「でた…」
耳を立て、尻尾が逆立ち震えるグレイは絵を指差す。
絵から飛び出てくる狂気の女性・ソファーラ。
ソファーラ 「今、お慕いする彼方様に…悪夢の宴を!」
ルーン 「シャイン!」
シャイン 「プロテクティブ・サークル!」
ソファーラ 「きゃあああっっっ!」
防御魔法により弾かれるソファーラ。
恨めしげに、ルーン達を睨む。
ソファーラ 「どうして? 共に眠るだけなのに!」
ルーン 「んな、狭い所で寝てられっか!」
神具を構えるルーン。
ソファーラ 「あら…そんなものを使えば? この子達は二度と目を覚まさないわよ」
シャイン 「主ラシューヌ神。死せる魂を、常世の光へ葬らん!
『イクソシズム』!」
シャインの手から放たれる強烈な光。
ソファーラ 「クッ!」
天井へと飛ぶソファーラ。
ソファーラ 「愚かな人間め、この世界の理も知らぬ、愚かな人間共め!」
高らかに叫ぶソファーラ。
ソファーラ 「ア〜ハハハハハハハハ〜〜〜〜ッッッッ!」
シャイン 「駄目です。相手を弱らせるか…もしくは動きを止めるかしないと…」
ルーン 「単に、絵に憑いている魔将じゃないのか?」
シャイン 「上位魔将にしても、力があまりにも違いすぎます…まるでこれは…」
そこへ駆けてくるフィオ達。
フィオ 「グレイ、水だ!」
グレイ 「え!」
フィオ 「相手が絵に取り憑いてる魔将だっていうなら…」
カタリム 「絵画保存の禁忌、水と…」
アリスタ 「六元の紫…大気揺れる風よ。我が意思により、天裂く嵐となれ。
『トルネード』!」
竜巻が天井へと伸び派手に壊れ、日の光が降り注ぐ。
カタリム 「直射日光!」
ソファーラ 「キャアアアアアアアアァァァァ〜〜〜〜ッッッッ!」
ピノ 「グレイ、ウンディーネよ!」
グレイ 「オッケ〜、ピノ。『聖獣アール=グレイの名において命ずる、出でよ…ウンディーネ』!」
ウンディーネ 「承知しました、グレイ様!」
グレイの第三の瞳から現れる、人魚。
それは水の塊となってソファーラに被さる。
ソファーラ 「嫌アアアアァァァァ〜〜〜〜ッッッッ!」
消滅するソファーラの体。
そして、額縁の中のソファーラが描かれたキャンバスが砂のように崩れ落ちる。
ジェナード 「やったか?」
カタリム 「はい!」
額縁に駆け寄るカタリムは、床にポトリと落ちたペンを拾う。
カタリム 「良かった…」
グレイ 「ふう…」
バタリと倒れこむグレイの体を、ルーンは支える。
ルーン 「よし、大したもんだ。これで、もうちょっと忍耐力があればな」
ピノ 「それを言うなら精神力でしょ」
フィオ 「でも…」
フィオは魔法で開いた天井の大穴を見上げる。
フィオ 「随分派手にやっちゃったね…アリスタさん…?」
アリスタの顔を見上げるフィオ。
アリスタは怪訝そうに、額縁だけ残る絵画を見つめる。
アリスタ 「あの女…どこかで…」
フィオ 「え?」
一方、手に戻ったペンを感慨深く見つめるカタリム。
ジェナード 「マギウスの形見か?」
カタリム 「はい。私は、このペンがないと本当に何も出来ませんね」
ジェナード 「…それはそうと、カタリム…実は…」
シャインを紹介しようとするジェナード。
シャイン 「カタリム…さん?」
カタリム 「!」
見上げたカタリムの視線の先には、目を閉じたまま不思議そうな表情のシャイン。
カタリム 「フレディンさん!」
ジェナード 「やはり、他人の空似ではないよな?」
シャイン 「あ、あの…」
カタリム 「レオハルトのバックアップメンバーは私達2人きりだったんです。間違えるわけないです!」
シャインに駆け寄るカタリム。
カタリムはシャインに抱きつく。
シャイン 「カタリムさん?」
顔を上げるカタリムは涙目。
カタリム 「どこで何をされていたんですか、オーフェ様が…一体どれだけ心配なされているか!」
シャイン 「オーフェ…様?」
ジェナード 「カタリム。フレディンには…聖戦の記憶がないんだ」
カタリム 「え…」
すまなそうに顔を伏せるシャイン。
シャイン 「申し訳ありません」
カタリム 「まさか…マーハ様の事で?」
シャイン 「え?」
カタリム 「身を引いただなんて…ないですよね?」
ジェナード 「!」
シャイン 「う!」
口を覆うシャイン。
と、場を断ち切るようにフィオの間延びした声が響く。
フィオ 「なあ〜、カタリム。この額縁。壁にめり込んで取れないぞ」
カタリム 「え?」
フィオに近付いていくカタリム。
額縁が壁に一体化しているように埋め込まれている事に気付く。
カタリム 「変ですね。この額縁は、あの絵を購入した際に一緒に壁に引っ掛けただけなんですけど…」
フィオ 「買ったのかよ…あの気持ち悪い絵…」
ふいに、大声を上げるピノ。
ピノ 「何か出てくる!」
シャイン 「いけない、二人とも!」
ピノとシャインの悲鳴に、反応したルーンとジェナード。
フィオとカタリムを抱え、額縁から離れる。
ソファーラ 「フフフフフフ…、ア〜ハハハハハハハハァァァァ〜〜〜〜ッッッッ!」
高らかに響くソファーラの悲鳴。
額縁が壁の中に消えていき、壁が鼓動を打つように揺れている。
ルーン 「チッ、終わったんじゃねえのかよ!」
ソファーラ 「魔族のくせに〜〜〜〜ッ、人間に組する愚か者! そしてぇ〜〜〜〜、あの忌まわしい獅子の翼に乗るレインの犬がぁぁぁぁ〜〜〜〜ッッッッ!」
ルーン 「しつこい女だ!」
フィオ 「額縁が本体?」
ルーン 「いや、校舎そのものを乗っ取りやがった」
眠るグレイを抱えるルーン。
ソファーラ 「あたしのはらわたの中で、死んでしまえ〜〜〜〜、アハハハハ〜〜〜〜ッッッッ!」
ルーン 「とにかく、一旦外に出るぞ!」
フィオ 「うん!」
一様に頷く他一行。
その場を駆け出す。
ソファーラ 「騙されている事も知らず、ライムランドの民よ…愚かな人間どもよ! アハハハ〜〜〜〜ッッッッ!」
廊下を走る全員。
ルーン 「ったく、狂ってやがる」
アリスタ(M) 「あの女…どこかで会った事がある。でも、一体どこで?」
ジェナード 「校舎を丸ごと取り込んでしまうなんて、なんて女だ」
シャイン 「とても強力な魔力です。普通の神官では太刀打ちできませんよ」
フィオ 「大体、なんであんな絵なんか買ったんだよ!」
カタリム 「絵を放って置くわけにはいかなかったんですよ〜!」
フィオ 「あの女、一体何者なんだ」
カタリム 「ソファーラ…としか…」
校庭へと出る一行。
アリスタはその足を止める。
フィオ 「アリスタさん?」
アリスタ 「魔王だ…」

フラッシュバック・LEGEND =Dream= 第3話




フィオ 「え…」
アリスタ 「八魔王の一人、ソファーラ…」
ピノ 「魔王ですって!」
フィオ 「魔王の…怨霊?」
一行は振り返る。
崩壊した校舎から、這い出てくる巨大な女性の姿。
恨めしそうに天を仰ぐ。



ソファーラ 「ヴァティス様…ヴァティス様…彼方はどこに逝かれてしまったのですか…?」
ルーン 「魔王だなんて…どうすりゃいいんだ?」
グレイを背負うルーンの顔に戸惑い。
アリスタ 「あの時私達は、マホメト師に救ってもらったが…」
ピノ 「それこそ…レインでも居なけりゃ魔王なんて倒せるわけないじゃない!」
ジェナード 「だな…」
ニヤリと笑うジェナード。
カタリムのペンに目を移す。
一方、ずるずると校舎から出てくるソファーラの巨体。
ソファーラ 「人間共を生贄に悪夢の降臨を…」
カタリム 「さてと…」
カタリムはフィオ達に対してニッコリと笑う。
カタリム 「世界で一番強いのは、一体誰でしょう?」
グレイ 「そりゃ、レインだよ!」
ルーン 「おい、お目覚めか?」
ルーンの背から降りるグレイ。
グレイ 「もう、大丈夫だよみんな。もう一回精霊を喚ぶから…」
ピノ 「だめよ、グレイ。相手は魔王の怨霊なのよ、時間稼ぎにしかならないわ!」
カタリム 「まあまあ、ここは私に任せて下さい!」
ペンを構えるカタリム。
カタリム 「さあ、オールスターの登場ですよ!」
スラスラと空中に絵を描き出すカタリム。





フィオ 「あれは…アレス王!」
ピノ 「グリン様にヨシュリア様でしょ…それに…!」
グレイ 「あはは、すっごいや〜!」
ルーン 「おい、じゃあ最後に出てきたあの女…まさか…」
シャイン 「マーハ様…」
ルーン 「マーハ…あの肖像画の…」
シャイン 「ラシューヌ=マーハ=ルライリス…」
フィオ 「ラシューヌ神…あの子が?」
アリスタ 「ルラマーハか…」
ソファーラ 「ブルーストーンのレインッ!」
アレスのピクトを恐ろしい形相で睨むソファーラ。
ソファーラ 「ルラマーハ…貴様達が居なければ…うっ、ウギャアアアアァァァァ〜〜〜〜ッッッッ!」
レインの集中攻撃。
ソファーラ 「ヴァティス様ぁぁぁぁ〜〜〜〜ッッッッ!」
消滅するソファーラ。
光に包まれる中に、レインのピクトも消える。
ルーン 「あっけないな…」
ピノ 「まあ、所詮幽霊ってことよね」
グレイ 「そりゃ、そうだけど…」
シャイン 「オーフェ様…」
顔を手で覆うシャインは、その場に屈みこむ。
フィオ 「シャ、シャイン!」
心配そうにシャインの目線に併せて屈むフィオ。
フィオ 「大丈夫か?」
震えるシャインの様子を見つめる、カタリムとジェナード。
カタリム 「ゆっくりと思い出してください、フレディンさん…」
ジェナード 「カタリム…」
カタリムは屈み、シャインを抱く。
カタリム 「どうかこれだけは覚えていて下さい。オーフェ様はあなたの帰りを待っています。マーハ様への想いはもう…」
シャイン 「……」
フィオ(M) 「イエローストーンのレインであるオーフェ様は天界の神様…」

フラッシュバック・LEGEND =Questers= 第7話
ダジリン 「俺様と一緒にレオハルトに乗ったクルーだ。バックアップで皆に癒しを恵んだ天使…」

フィオ(M) 「本当にシャインは天人なのか…」
心配そうにシャインとカタリムの様子を見つめる、他一行。
その表情。
アリスタ(M) 「大神オウフェンもまた…ラシューヌ神ルラマーハを想うか…」
ルーン 「さてと、ソファーラを倒したのはいいが…」
ルーンはボロボロに崩れ果てた校舎に目を向ける。
ルーン 「あれの始末は…どうするつもりだ?」
カタリム 「ッ!」
ガバッと顔を上げるカタリム。
その校舎の現実に気付き、頭を抱える。
カタリム 「ああああぁぁぁぁ〜〜〜〜ッッッッ!」

○同・エルシュリク魔法学校前
修繕工事をしている校舎。
その様子を眺める、アリスタ、カタリムとジェナード。
アリスタ 「随分と早い長期休暇になってしまったな、学長」
カタリム 「そうですね〜」
アリスタ 「しかし、なぜマギウスを…あなたの叔父を学長に立てる必要があった? クロスナイツであるあなたなら、教師も保護者も納得するだろう」
カタリム 「実はですね、私はピクトマンサーなのですが…古代語魔法はほとんど使えないんですよ」
アリスタ 「は?」
カタリム 「本当の話です。まあ、魔術師のピクトを出して魔法を使えば良いだけの話なんですけど。
ですからペンがないと何も出来ないんですよね」
アリスタ 「はあ…」
カタリム 「それにあなたの事も…調べるようにとヨシュア様から言い付かっていました」
アリスタ 「!」
驚くアリスタ。
カタリム 「もう、全てを話しても構わないでしょう。聖戦の真実は今はまだ、人に伝えるべきではない。それがヨシュア様をはじめとするレインの皆様のお考えです」
アリスタ 「……」
カタリム 「しかし、一般人であるあなたと、エイセル。そして彼の妹レニーはその真実を知っている。公言されてしまっては困るんですよ」
アリスタ 「フッ…そんな無粋な事を…」
カタリム 「でしょう? あなた方はそんな人間ではない」
微笑むカタリム。
アリスタはその微笑に見入る。
アリスタ 「マホメト師は私達の命を救った。ゆえに礼の意を含め敬称をつけるが、私はレインを尊びはしない」
カタリム 「どうしてですか?」
小さく笑うアリスタ。
アリスタ 「それが…彼らの重荷になるからな…」
カタリム 「…あなたは」
アリスタ 「レニーはシスターだ。それは不可能だろうが、エイセルもまた同じ考えであると思う。
事情は分かった。しかし…何かが変わろうとしているな?」
カタリム 「はい…」
ジェナード 「お前がフィオに渡した、ヨシュアへの修復費用請願書。真の目的は、彼らとレインの謁見か?」
カタリム 「そうですね。サンタマリアに渡れば…ついに彼らはヨシュア様とお会いするんですよ」
アリスタ 「レインは彼らに何をさせようとしている?」
カタリム 「裁きです」
アリスタ 「裁き?」
「びめざま〜〜〜〜ッッッッ!」
3人 「!」
ボロボロにやつれたジニアス。
杖に寄りかかりながら、カタリムの目の前で倒れる。
カタリム 「あぁ、だ、大丈夫ですか?」
ジニアス 「ア、アルティマは…危険です」
カタリム 「は?」
それまでと違い、声に力の入るジニアス。
倒れこんだまま。
ジニアス 「レインの居ない新大陸アルティマは、コンピニア大戦時代より突如現れた大陸と言われています。それはなぜか、アルティマはコンピニア大戦により生まれた大陸であるからです。
この地は…大陸ではない。災いの眠る臥床」
ジェナード 「おい、お前…」
ガバッと顔を上げるジニアス。
血走っている目、片手にはフィオの肖像。
ジニアス 「姫様をご存知ありませんか〜!」
アリスタ 「これは…フィオではないのか?」
ジニアスはアリスタの手を握る。
ジニアス 「そうです〜、そうですとも〜。ファルシーオ=ルルカ姫。こちらのクエストを引き受けたとのお話を伺っているのですがぁ〜ッ!」
カタリム 「つい、昨日。旅立たれました」
ジニアス 「ッ!」
バタリと再び倒れるジニアス。
アリスタ 「おい、しっかりしろ?」
ジニアス 「また、行き違いですか…」
消え入りそうな声。
ジニアス 「け〜れ〜ど〜も〜ぉぉぉぉ〜〜〜〜!」
立ち上がるジニアス。
アリスタ 「うあ!」
カタリム 「ひ!」
拳をぎゅっと握る。
ジニアス 「1日ですよ、ついにここまで縮まりました〜、ひ〜め〜さ〜まぁ〜〜〜〜!
ジニアス、すぐにお傍に参りますぅ〜〜〜〜!」

○旅の街道
歩く一行。
フィオ 「はっくしょん!」
大きなクシャミをする。
グレイ 「どうしたの、フィオ。カゼ?」
ピノ 「う〜ん」
フィオのおでこをさわるピノ。
ピノ 「熱はなさそうね」
フィオ 「う…」
ブルリと体を震わす。
フィオ 「なんかすご〜く嫌な予感がするんだよな…アハハハ〜」
グレイ 「フィオと同じくらいだったよね…」
フィオ 「え?」
グレイ 「ルラマーハ様」

フラッシュバック
一行の前に現れるルラマーハのピクト。




フィオ 「うん、アレス王が旅立ったのは13歳の時だっていうから、ちょうど同い年かもしれないな」
ピノ 「あのシーザーっておじさんが言ってたじゃない。聖戦について知りたいなら、ルラマーハ様についても知っておけって」
フィオ 「うん…」
少し顔を伏せるフィオ。
フィオ(M) 「ルラマーハ様…オレと同い年くらいの女の子だった。とても神様とかには見えなくて…」
グレイ 「天界にいらっしゃるんだよね」
ピノ 「どんなお方なんだろ〜、いずれルラマーハ様にもお会いできたりしないかしら?」
フィオ(M) 「本当に普通の…人に見えた」
ぼんやりと思い起こすフィオ。
シャイン 「……」
黙っているシャイン。
それに気付いたルーンはポツリともらす。
ルーン 「おい、シャイン」
シャイン 「……」
ルーン 「前に旅した女にな、言われた事がある。思い出したくないものは、大概辛い記憶だとさ」
シャイン 「…はい」
ルーン 「無理に思い出す必要はねえんじゃねえか?」
シャイン 「ルーンさんは…」
ルーン 「ん?」
シャイン 「ルーンさんでしたら、どうしますか?」
ルーン 「俺か…」
軽く神具に手を掛けるルーン。
ルーン 「忘れなんてしねえ。それだけだ…」
先に歩いている、フィオ、グレイとピノを見つめるルーン。
ルーン(M) 「だから俺は、レインを許さねえ」

To be continued…
LEGEND =Questers=