第13話 憧れだったのに
シーンB
○賢者の塔・最上階扉
ボロボロに疲れ果てた一行。
ピノ 「も、もう上に上がる階段はないわよね」
ルーン 「しかし、二日もかけて昇るはめになるとはな。マホメトとかいうじいさんもえらい塔を作ったもんだ」
ジニアス 「開けますよ。我が言霊に依りて六元の戒めを解放せよ、『ディスペル』」
ジニアスの言葉に応じて、扉は鈍く光り奥へと開く。
グレイ 「うあぁ!」
部屋中に並べられた本棚と詰め込まれた蔵書。
一目散に駆け出していくグレイ。
フィオ 「でも、人が住んでない割にはきれいにしてあるな」
ジニアス 「おそらく師匠もたびたび訪れているのでしょう」
フィオ 「えっ、ヨシュリア様が? サンタマリアからこの島まで移動用魔法陣があるにしても…この長い塔いちいち登って…あぁ!」
思いついたように、大声を上げるフィオ。
ルーン 「まさかな、この最上階に一瞬で行ける方法があったりするのか?」
ジニアス 「や、ハハハ。師匠は『テレポート』という時空魔法を使いますから、移動用魔法陣なしでもこの程度の距離なら単独で一瞬に…」
フィオ 「ずりい」
ジニアス 「ずるい…って姫様。相手はあの師匠なのですよ。今更修行もないでしょう。それに、師匠ならこの塔を破壊することすら造作もないんですから」
ルーン 「ったく。サンタマリアの聖女、巫女王ってのは名前だけでとんでもねえ性悪だ」
フィオ 「ルーンに言われたくないんじゃない?」
ルーン 「んだと!」
フィオ 「へへ〜んだ」
いつも通りの二人の様子。
ピノ 「フィオ、ちょっと来て!」
ピノはフィオ達を呼ぶ。
呼ばれて向かうフィオ、ルーン、ジニアス。
フィオ 「これは?」
ピノの前にあるのはオルゴール程度の小さな箱。
ピノ 「これ…じゃないかしら? なんか魔力を感じるのよね」
箱を手に取るジニアス。
鍵穴に手を触れる。
ジニアス 「ええ。単純に力学的な鍵ではなく、魔法による封印が施されていますね。間違いありません。これが『夢の小箱』でしょう」
フィオ 「思ったより、ちっちゃいんだな」
ピノ 「あら、小さい方が持ち運びに便利だわよ。どうせデストニアまで旅しなきゃいけないわけだし」
ルーン 「……」
ルーンは姿の見えないグレイを探す。
ルーン 「グレイ?」
グレイ 「……」



一冊の本を開いたまま茫然と立つグレイの姿を見つける。
近づいていくルーン。
ルーン 「どうした、グレイ?」
グレイ 「マホメト老はアクスタインだったんだ…」
ルーン 「何だと?」
うなだれたまま、顔を上げようとしない。
ルーンを追いかけグレイの傍による他一行。
フィオ 「何だよグレイ。ちっとも嬉しそうじゃないんだな」
グレイ 「この数えきれない本を隅々まで探す必要なんてなかった。この一冊だけ、真新しいんだ。ヨシュリア様も何度も見たんじゃないかな。真実は簡単。ほとんどが白紙で、書かれているのはほんの数ページだったよ」
フィオ 「グレイ?」
グレイ 「伝説の勇者アクスタインは当時のレインを率いて、ラシューヌ神イリスの加護を得たのちに魔界の神ヴァティスを倒した。それが僕達の知るレジェンドだ。憧れだった。…憧れだったのに」
ルーン 「貸してみろ」
グレイの手から取り上げるようにして、本を手にするルーン。
そのまま床にすわり、本を広げる。
本の周りを囲むようにして座る一行。
立ったままのグレイ。
グレイ 「1000年前のレジェンド。ヴァティスは倒されてなんかいなかった。倒すことができなかったんだ。アクスタインとイリスのせいで…」
フィオ 「え?」
グレイ 「神と人が恋をしたから。神がその力を失ってしまったから…。だから、ヴァティスは聖戦で復活したんだ」
本を読むピノは硬直して動かない。
ピノ 「アクスタインとイリスの禁断の恋ってヤツね…」



ジニアス 「罪を犯した二人は罰せられた。アクスタインは老人の姿へと変えられヴァティス復活の時まで生きることになった。イリスはその姿を白き石へと変えられ、二人の娘は異世界へと追放された。…とありますね」
フィオ 「その老人がマホメトで…イリスは石になった。じゃあ、二人の娘っていうのは?」
ルーン 「ラシューヌ=マーハ=ルライリス…か」

フラッシュバック・第10話




フィオ 「あの子か」
ピノ 「ちょ、ちょっと待ってよ。じゃあ、聖戦は…ヴァティスが復活したのはアクスタインとラシューヌ神イリスのせいだってこと?」
ルーン 「なるほど、グレイ。とんだ伝説の勇者だったな」
ルーンは小さく嘲笑する。
涙目のグレイ。
グレイ 「こんなの…ひどいじゃんか」
フィオ 「違うよ、グレイ」
グレイ 「!」
フィオは本を閉じて、まっすぐにグレイを見る。
フィオ 「人が誰かを好きになることが、いけないなんておかしいじゃんか。どうしてそれが、間違ってるって言えるんだ?」
ルーン 「!」

インサート・ルーンの回想
山小屋の中、メガネをかけた神具の民の青年・アウロはルーンに言い放つ。
アウロ 「お前はプラチナに特別な想いを抱いている。それはこの村では決して許されない」

ルーン 「お前…」
ジニアス 「姫様…」
フィオ 「グレイは、アクスタインのこと許せないのか?」
グレイは大きく目を見開いてフィオを見る。
グレイ 「アクスタインは…」
両手を握りしめるグレイ。
グレイ 「アクスタインは罪を償うために、インディゴストーンのレイン・マホメト老としてレインの旅に加わったんだね。嘘をついていた事には、こんな理由があったんだ。彼はヴァティスの再臨を予想してた」
ジニアス 「その二人の過ちが世界に破滅の危機を齎したのであらば、それは大罪ですよ?」
グレイ 「僕は…マーハ様に聞いてみたい」
ピノ 「マーハ様に?」
グレイ 「うん」
微笑むグレイ。
グレイ 「二人の子供、マーハ様がその答えを教えてくれると思うんだ。彼女が今、幸せなら…アクスタインもイリス様も正しかったんじゃないかなって」
フィオ 「そうかぁ…」
うなずくフィオ。
ルーン 「おい、まさかお前達。最後にゃ天界…パウルまでいってマーハに会おうなんて言うんじゃないだろな?」
ピノ 「あ、ナイスアイデア。天界に行けばさらに一儲けできるかも!」
フィオ 「今のオレ達だったら、どこへでも行けそうな気がするんだよな〜。向かうところ敵なし!」
ジニアス 「いけません〜〜〜〜ッッッ。ガルシアン様にお会いしたら、ライムに帰るというお話だったではありませんかぁ〜」
情けない声を上げるジニアス。
グレイ 「フフフ、アハハハ!」
笑うグレイは隣に立つルーンを見上げる。
グレイ 「やっぱりさ、フィオには敵わないや」
ルーン 「そうだな」
苦笑するルーン。
フィオ 「だったらお前一人で帰れば? オレはみんなとパウルに行くからな」
ジニアス 「そんなぁ〜。姫様の行く所、たとえ火の中水の中、お供致します!」
フィオ 「お前うざい」
ジニアス 「ひ、ひどい!」
ピノ 「まったく懲りないわよね〜、あんた達」

○ルーンの回想・第11話
フィラデルフィアの墓前。
ルーンとフィオ、ジニアスの前に現れたジャキィス。
フィオ 「行方不明になった兄貴は…オレの兄貴の名前は…」
ジニアス 「姫様!」
ジャキィス 「アクス=ルナル」
ルーン 「!」
目を見開くルーン。

○同・マホメトの部屋
ジャキィスの言葉を思い出したルーンは、我に返り小さく呟く。
ルーン 「偶然だ…俺とあいつは…ッ」
俯き拳を握り締める。

○テーベの街・グリーンウッド
牢に入れられているイデアは椅子に座る。
階段を下りてくる足音。
グリン 「口が堅いなぁ。お・ば・さ・ん?」
イデア 「!」
牢を覗き込むグリンを睨むイデア。
グリン 「お〜、こわ。あんま女に手荒いマネはしたくねえんだけどよ〜。いい加減口を割ってくれね?」
イデア 「誰が、貴様のような低俗な輩に」
グリン 「俺様、これでもレインだぜ?」
イデア 「貴様達、レインなぞあのお方に比べればカスも同然。貴様がレインに相応しいとも思わぬわ。神もまた、愚かな…」
グリン 「ふ〜ん。『あのお方』な。バルナギーゼ=ウォレット卿か?」
イデア 「ッ!」
動揺を見せるイデア。
グリン 「俺様もち〜っと調べ始めたんでな。ラッキーなことに強力な助っ人エイセル君も出頭してくれたわけで、アルティマとコンピニアついての情報提供もあった…」
それまでの、ふざけた表情が一変して真顔に変わる。
グリン 「バルナギーゼは何を企んでる?」
イデア 「知らぬ!」
グリン 「レインを甘く見るなよ」
ペンソ 「大変だ、グリン!」
外から聞こえる喧噪。
魔将の雄叫び。
階段を駆け下りてきたペンソは息も切れ切れに話す。
ペンソ 「魔将が7体。暗黒魔法を使う、デーモンタイプだ! 何でいきなりあんな上級魔将がこの街に!」
グリン 「チッ!」
グリンはイデアを睨む。
グリン 「こいつを見張ってろ。ちょっくら行って片づけてくる」
ペンソ 「無理するなよ」
グリン 「任しとけって!」
階段を上り外へと出ていくグリン。
ペンソ 「一体、どうなってるんだよ…グッ!」
背後から頸椎を殴られるペンソ。
そのまま前へ倒れて気を失う。
立っているのはガイアス。
ガイアス 「……」
イデア 「!」
ガイアスの姿に気づくイデアは目を見開き、口惜しいように顔をゆがめる。
イデア 「ガイアス…貴様」
ガイアス 「しくじったな、イデア」
牢を開けるガイアス。
イデア 「閣下は…」
ガイアス 「一度エバへ戻る。貴様から我等の計画をレインに知られてはならんからな」
イデア 「ッ…」
悔しそうに顔を伏せるイデア。
魔晶石を投げるガイアス。
二人の姿が一瞬にして消える。

To be continued…
LEGEND =Questers=