第16話 タチの悪い呪い
シーンB
○リヤードの街・中央広場の教会
瓦礫の山と化した礼拝堂で、崩れそうなラシューヌ神像を見上げるルシファー。
その横に修道女のヴェールを深く被った女が立つ。
その表情は分からない。
ルシファー 「こんなものはただの偶像に過ぎぬ。くだらんな、人も魔族も。あの娘はもう、この世界には居ないというのに」
ヴェールの女 「…魔族を集め次第、システムBの起動テストを行う。お前の役目はただ、魔族を狩ればいい」
無感情に呟く女。
ルシファー 「木偶人形がほざくな」
ヴェールの女 「……」
ルシファー 「禁呪『囚獄陣』か。たかが人間の女ごときに、バルナギーゼはなぜに拘る? 魔道科学文明を知る人間、ただそれだけか?」
ヴェールの女 「…忘れるな。閣下の命があれば、施されたアンデッド化は解かれる。すれば、お前は黄泉に戻る」
ルシファー 「なるほど。その術をお前が握っているということか?」
ヴェールの女 「……」
ルシファー 「面白い」
天井を見上げるルシファー。
次第に教会の外から聞こえてくる、魔族達の歓声。
月明かりが天井に大きく開いた穴から差し込む。
不敵に笑うルシファー。
ルシファー 「クックック、時間だ!」
黒き翼を広げるルシファー。

○同街・中央広場
教会の屋根に立つルシファー。
同時に歓声が一段と大きくなる。
教会を取り巻く、広場を埋め尽くすほどの魔族達。
魔族 「オオオオォォォォ〜〜〜〜ッ!」
魔族 「魔王万歳〜〜〜〜ッ!」
魔族 「エデンノア万歳〜〜〜〜ッ!」
興奮する魔族を見下ろし侮蔑するルシファーは呟く。
ルシファー 「結局、魔族もまた魔王という名の偶像にすがるか…」
そこへ飛び込むシルフに乗ったフィオ。
屋根に飛び降りながら斬りかかる。
フィオ 「ハァァァ!」
ルシファー 「何!」
ルシファーは咄嗟に避ける。
ルシファー 「貴様!」
フィオ 「この世界をお前の好きにはさせない。アレス王が、レインがやっと手にした平和なんだ!」
ルシファー 「アレス…レインだと!」
再び剣を構えるフィオ。
フィオ(M) 「アレス王、オレは!」

フラッシュバック・第9話
フィオの回想。
アレス 「フィオ、剣の強きは技でなく己が心にある」

フィオ(M) 「剣の腕は、まだアレス王にかなわない。でも、オレの心は負けない、諦めたりしない」
フィオ 「だから、オレはお前を倒す!」
ルシファーを睨むフィオ。
ルシファー 「その瞳、その黒髪…お前は?」
フィオの姿が聖戦時のアレスの姿に重なる。
ルシファー 「ブルーストーンのレインか。貴様か、タケル!」
フィオ 「?」
ルシファー 「お前に受けたこの瞳の傷。忘れはしないぞ、あの時だ。ヴァティスが再臨する前に、私があの娘を手にしようとしたあの時、お前さえ現れなければ〜〜〜〜ッ!」
ルシファーの右手に実体化する光の剣。
目を見開き、狂った形相でフィオに向け駆けてくる。
フィオ 「な!」
ルシファーの剣を受けるフィオ。
ルシファー 「お前さえ居なければ、マーハはッッッ!」
フィオ 「ッ!」
強い力に、押し返されるフィオはバランスを崩す。
高らかに笑うルシファー。
ルシファー 「クハハハハハハ〜、死ねい!」
ルーン 「フィオッ!」
ルシファー 「!」



神具を構え、ルシファーに斬りかかるルーン。
ルシファーはルーンの神具を受ける。
ルシファー 「おのれ〜、邪魔をッッッ!」
ルーン 「フィオ、一度離れろ!」
フィオ 「ルーン!」
ルーン 「どう見ても、正気じゃねえ。こいつは…ソファーラと同じだ」

フラッシュバック・第10話
ソファーラ 「ブルーストーンのレインッ!」
アレスのピクトを恐ろしい形相で睨むソファーラ。

ルーン 「とにかく、一度下がれ!」
フィオ 「ッ!」
狂ったように問いかけるルシファー。
ルシファー 「神具か。お前はレインか?」
ルーン 「おあいにくさまだ」
コートを脱ぎ棄て、魔族の翼を広げるルーン。
ルーン 「レインなんかじゃねえ。俺は魔族だ。だがよ、魔王なんざくそくらえだ」
ルシファー 「……」

インサート・教会での戦闘前
ルーンとジニアスの二人きりで小屋の外に立つ。
ジニアスは、苦しい表情でルーンに請う。
ジニアス 「昔、師匠が教えて下さいました。『守る者があれば、人は強くなれる』と…」
ルーン 「……」
ジニアス 「守って下さいますか? 兄であるあなたは、妹であるフィオを…」

ルーン(M) 「兄妹だろうが関係ねえ。あいつはただ…」

フラッシュバック・第2話
夜の砂漠で、ルーンの翼を見つめるフィオ。




ルーン(M) 「あいつは半魔族である俺を、何のためらもなく受け入れた。それが守る理由だろ」
ルーン 「死人なら死人らしく墓場で大人しくしてろッ!」
神具を持ち、ルシファーへ斬りかかるルーン。

一方広場でその様子を見上げる魔族達。
戦うルシファーとフィオ、ルーンの姿に動揺が走る。
魔族 「なんだあれは!」
魔族 「片方は人間だよな?」
魔族 「我らが魔王に何をする!」
石を持ち、二人に向け投げ始める魔族達。
しかしそれは、小さな火球によって弾かれる。
魔族の群衆に紛れるリュートとシャーク。
シャーク 「とんだ馬鹿どもの集まりだ、相手はアンデッドなんだぞ!」
魔族 「人間だ! 人間がここに居るぞ!」
リュート 「あちゃあ、まだ騒ぐの早いってば、シャーク!」
火球を放ったリュートは、シャークの元へ合流する。
シャーク 「この状況で魔族を宥めるなんて出来るか! お前お得意の魔法でこいつらを眠らせてしまえばいいだろう」
リュート 「そう出来たらやってるよ。ガイアスが、魔族を集めるためにこんな大がかりな事をするはずない。きっと何か裏があるに違いないんだ!」
シャーク 「この大勢の魔族を、どうやってひきつけるんだ?」
リュート 「もう、十分目立ってるよ俺達!」
殴りかかってくる魔族を軽やかに避けるリュート。
シャークもまた、襲ってくる魔族から逃れる。
リュート 「とにかくガイアスをあぶり出すしかない。あのお嬢さんに賭けるしかないんだよ!」

○同街・ガルシアンの隠れ家
協会戦闘前の回想。
作戦会議。
街の地図を広げるリュート。
その周りを囲むフィオ、ルーン、グレイ、ピノ、ジニアス、シャーク。
リュート 「魔族が集まり始めているのは、ここ中央広場だね」
フィオ 「すると、この広場にルシファーが現れる。ここで戦うことになるんだな」
リュート 「そういうこと」
ジニアス 「相手はアンデッドです。そこを突きましょう」
ルーン 「どういうことだ?」
ジニアス 「朝まで時間を稼ぐんです。朝日を浴びれば、アンデッドは灰になる」
ルーン 「なるほどな。でも、そううまくいくもんなのか? 第一体力がもつか?」
ジニアス 「それは…」
ルーン 「黒幕が居るだろ」
フィオ 「ガイアスだな…」
ルーン 「ああ、黒幕を叩けばいい。それに奴の口から直接聞きたいこともある」
シャーク 「近辺の魔族が一気にこの街に集まる可能性だってある。その魔族すべてが敵になるんだぞ。その中で、ガイアスを探す事など出来るのか?」
フィオ 「オレとルーン、ジニアスとグレイでルシファーと戦おう。リュートとシャークは魔族達をひきつけてくれないかな?」
ピノ 「ちょっと待って、じゃあもしかして…」
フィオ 「ピノは体が小さいから、魔族に見つかりにくい。だからピノにしかできないんだ」
フィオは広場の中心にある教会を指さす。
フィオ 「この教会の中に、ガイアスが居ると思う。見つけたら聞いて欲しい。オレは知りたいんだ。なんでガイアスはジャキィスを調べていたのかって」

○同街・教会の窓枠
ブルリと震えるピノ。
ピノ 「まったく、簡単に言ってくれちゃうわね」
教会の中を覗き込むピノ。
割れた窓の隙間から、中へと侵入する。

○同街・教会の地下
赤黒い巨大な機械の前に立つ女。
小さく呟く。
ヴェールの女 「システムB・ブレイン。プロトタイプ、起動開始」
顔を上げる女。
眼鏡が反射し光る。
ヴェールの女 「引き擦り込め」
そこへ機械へと放たれる矛。
バチバチと火花が上がる。
ヴェールの女 「ッ! これは」
「システムBといったか。デデムも同じようなものを作っていたな」
地下室の奥、暗闇から現れるのはガルシアン。
ヴェールの女 「メインユニットがやられた。これでは正確な実験データが得られない」
ガルシアン 「お前達の実験がどうなろうと構わん。このデストニアで好き勝手は許さん。
aito imi rabeto niraka yu sotzne Purple Wind!」
ヴェールの女 「!」
強風により捲れ上がるヴェール。
女の額に填められた魔晶石。
ガルシアン 「魔晶石。まさか、『囚獄陣』か!」
ガイアス 「チッ!」
ガルシアン 「何!」
突然魔法により現れたガイアス。
女を庇うように立つ。



ガルシアン 「貴様が話に聞く『ガイアス』か…」
ちょうどその場に飛んでくるピノ。
ピノ 「きゃ、ガルシアン様。それにガイアスじゃない!」
ガイアス 「お前は、空の瞳の剣士の…この街に居るのか!」
ピノ 「あんたよくも、ベドゥインの記憶を封じてくれたわよね。ジャキィスを調べてどうしようっていうのよ!」
ガイアス 「もう、あの男、ジャキィスに用はない。我々が知りたい情報は得たからな。フィオに伝えておけ、すぐに広場から離れろと。ここで死なれては困る」
ガルシアン 「お前、その声は…」
ガイアス 「ッ! 『テレポート』!」
消えるガイアスと女。
ピノ 「ちょっとぉ、待ちなさいったら!」
ガルシアン 「陰でエデンノアを煽る者がいるとは思ったが、『囚獄陣』を受けていようとは…」
ピノ 「ガ、ガルシアン様。フィオ達が…」
ガルシアン 「分かっている、ルシファーは聖戦の遺物。レインである俺が片をつけねばなるまい」
突然、地下室に響く警告音と、地響き。
ピノ 「え!」
ガルシアン 「まずい、ここを離れるぞ!」

○同街・教会の屋根
屋根の上、剣を交えるルーンとルシファー。
ルーン 「!」
突如地響きとともに、教会は揺れる。
やや離れた所から、ルーンを呼ぶフィオ。
フィオ 「ルーン!」
ルシファー 「これは、…何ッ!」
ルーン 「ッ!」
屋根を突き破り触手がルシファーを縛り上げる。
フィオ 「うあ!」
同じように触手が次々に屋根を突き破りフィオに襲いかかる。
ルーン 「フィオ!」
ジニアス 「姫様、捕まって下さい!」
鳥の精霊・シルフに乗ったグレイとジニアス。
差し出されたジニアスの手に捕まるフィオ。
グレイ 「ルーン、飛んで!」
ルーン 「!」
ルーンは翼を広げ天へ舞い上がる。
上空から教会を見下ろす、フィオ、ルーン、グレイ、ジニアス。
教会から生え出た無数の触手。
教会周囲の地盤が緩み、地割れが生じ、魔族が驚き動揺している様子が見える。
一方、触手に捉えられたルシファー。
苦しそうに顔を歪める。
ルシファー 「ぐは、こ、これは…そうか…そういうことか、私の肉体にブレインのコアを埋め込んだな。私諸共、システムBに取り込むつもりか…図ったな、仮面ッッッ!」
さらに無数の触手がルシファーを襲う。
ルシファー 「ならば黄泉から見届けてやるわ。我が夢の成就。聖戦の再来…」
力なく右手を月に向けるルシファー。
ルシファー 「マーハ…私はお前を…」
言葉を言い終えることなく、触手に包まれ姿を消すルシファー。
同時に今度は、広場の地面所々から、一斉に同様の触手が伸び魔族達を襲い始める。

○同街・中央広場
魔族達の悲鳴があちらこちらから上がる。
触手の一つを斬りおとすシャーク。
シャーク 「おい、リュート。これはいったい何なんだ!」
魔族 「うああああっっっっ!」
魔族 「いやあああっっっ!」
緩んだ地盤から現れた触手により、地割れから地中に引きずり込まれる魔族達。
リュート 「これはまさか…。シャーク、だめだ。一度退こう、俺に捕まって!」
シャーク 「チッ」
リュートのマントを攫むシャーク。
リュート 「『テレポート』!」
一瞬にして消える二人の姿。

○同街・郊外
シルフから降り立つ、ジニアス、フィオ、グレイ。
そしてルーンもまた、一行の傍へ降りてくる。
ジニアス 「あれはまさか…」
ガルシアン 「システムBだ。ヨシュアから話は聞いているだろう?」
ピノ 「みんな、無事?」
その言葉に振りかえる一行。
フィオ 「ピノ!」
ルーン 「あんたが、ガルシアンか?」
ガルシアン 「ああ。だが、あいさつは後だ。動き出すぞ、ブレインが」
ルーン 「ブレインだと…」
グレイ 「みんな…魔族が…」
茫然としたグレイの視線の先には、閑散としてしまった広場。
ピノ 「あのたくさんの魔族がみんな居なくなっちゃった」
フィオ 「連れ攫われたのか?」
ジニアス 「違います、姫様。これは聖戦で魔王が行なった人間狩りの再現」
グレイ 「え…」
青ざめるグレイ。
同時に街が地響きに揺れる。
地を割り姿を現す巨大な脳髄。

一方リュートとシャークも、街の郊外から、浮上するブレインの姿を認める。
シャーク 「一体何が起こってるんだ!」
リュート 「ねえさんから聞いたことがある。臓腑を模したヴァティスの旗艦・バルバロス。あれによく似てるね」
シャーク 「バルバロスだと? しかし、聖戦でレオハルトと相撃ちになったと聞いたが」
リュート 「バルバロスそのものとは違う。ただ、あれの主機関は魔道科学文明のBシステムだ…」
シャーク 「Bシステム?」
顔をしかめるリュート。
リュート 「システムBは『魔力』すなわち、生物の精神力を源とする。すなわち精神を司る臓器、魔力を持つ者の『脳』」
シャーク 「まさか…。じゃあ、奴等が魔族をこの広場に呼んだのは、あれの動力源調達だというのか!」
リュート 「そう。Bシステムは人の命を命と思わない最悪の邪法さ…」

グレイ 「あれは…」

フラッシュバック・グレイの記憶
グレイの頭上に現れるバルバロス。

一行は眼前、街上空に現れた巨大な臓腑を見つめる。





ジニアス 「さらった魔族をシステムBの動力に」
ルーン 「バルバロスの再来か?」
ピノ 「バルバロス?」
ガルシアン 「魔界軍の巨大戦艦だ」
グレイ 「記憶の化け物…」
ブレインの揺れる触手。
グレイ 「来るな…」
恐れ叫ぶグレイ。
グレイ 「来るなあーーーー!」
グレイの第三の瞳から現れる精霊、ベヒモス。
強大な閃光と突風に一行が煽られる。
フィオ グ、グレイ!」
ベヒモスは浮上したブレインにめがけて駆け出していく。
ブレインに襲いかかるベヒモス。

○同街・郊外
倒れるグレイを支えるフィオ。
青ざめた顔、ぐったりとして動かない。
ガルシアン 「まさか、精霊の暴走か…」
フィオ 「グレイ、しっかりしろ。グレイ!」
ルーン 「まずいぞ、フィオ。こいつは尋常じゃねえ」
ピノ 「精霊の召喚は…術者の精神力を消耗するわ。あの時、グレイには上位精霊の召喚はまだ無理だってベヒモスが言ってたじゃない。それが…どうしてこんな事になるのよ!」
ジニアス 「おそらく過去の記憶を思い起こしたことによる精神的なショックです。精霊を制御できずに暴走を来たしてしまったのでしょう」
ジニアスの言葉にフィオは振り返る。
フィオ 「じゃあ、このまま暴走を続ければ…」
ガルシアン 「ブレインを倒せるが、その獣人の精神が崩壊する」
一行 「!」
ベヒモスの一方的な攻撃を受けるブレイン。
肉塊を捕食する猛獣のようなベヒモスの獰猛な姿に、一行は息をのむ。

○同街・郊外
暴走するベヒモスの姿を認めるリュートとシャーク。
リュート 「精霊の暴走か…大地の上位精霊・ベヒモス」
シャーク 「一体誰の仕業何だ?」
リュート 「上位精霊の召喚なんて、本来ならあの人くらいしか考えられないけどね。オレンジストーンのレイン、聖獣ミッフィー。でも、彼女が精霊の暴走を起こす様な事は考えられない。するとあの、猫の聖獣くんか」
すでに捕食を終えたベヒモスは、空へ向かい雄叫びを上げる。
シャーク 「圧倒的じゃないか…」
リュート 「けどこのままじゃまずいよ。あの子の身が持たない。後始末はどうつけるんだか」
シャーク 「相手は精霊だぞ、一体どうすりゃいいんだ?」
リュート 「『大地』の…精霊さ。だったら、対称の六元で封じればいい」
シャーク 「『風』か!」

○同街・郊外
ガルシアンはハルバードを地に刺し、詠唱を始める。
ガルシアン aito imi rabeto niraka yu sotzne Purple Seal
立ち上る紫色の閃光。

○同街近辺・断崖
街を覆い尽くす紫色の閃光を見つめるガイアスとヴェールの女。
女の額には魔晶石が光る。
ガイアス 「プロトタイプを失ったか。まさか、フィオもこの街を訪れていようとは…」
ヴェールの女 「フィオ…」
「フィオとルーンは聖戦の真実を知るんや。ガルスに会わせたんも、これからうちがも一度会うんもタケルの望みやさかい」
ガイアス 「!」
驚き振り替えるガイアス。
その視線の先には、ミッフィーが居る
ミッフィー 「あかんあかん。ベヒモスが暴走しよった時はどないしようかと思うたけど、ガルスが上手いことやってくれたようやな。
はて、あんたはフィオに何用や?」
ガイアス 「……」
ガイアスは黙り、ミッフィーと対峙する。
ガイアス 「なるほど、今はレインに守られているか…。彼らが聖戦の答えを見出すのなら、動くのはその後でも構わんな」
ミッフィー 「何やて?」
ガイアス 「その前に、当のレインには会いたくはなかったが…」
小さく呟くガイアス。
その声に、気づいたミッフィーは呆然とする。
ミッフィー 「まさか…あんた!」
ガイアス 「『テレポート』!」
ミッフィー 「!」
姿を消す、ガイアスとヴェールの女。
断崖にはただ、ミッフィーだけが取り残される。
ミッフィー 「う、嘘やろ…」

○同街・郊外
消滅したベヒモス。
術を解いたガルシアンは、悲愴な面持ちで瓦礫と化した街並みを見つめる。
ガルシアン 「これで『エデンノア』はその名を消す。
…だが結局俺は、あれだけの数の魔族を誰一人として救う事ができなかった…」
他一行 「……」
懺悔の言葉に、一行の表情は暗い。
フィオ(M) 「オレが平和だと信じていたこの世界。魔将が徘徊する…ただそれだけじゃない。いまだに魔王を敬う魔族が居る。そして、この世界を脅かそうとする人間が居る」
フィオは眠るグレイを抱えたまま、ガルシアンの顔を見上げる。
フィオ(M) 「アレス王も…同じ辛そうな顔をしてた…」
ルーン 「らしくねえぞ、フィオ」
苦笑してフィオの頭をなでるルーン。
優しい言葉に、フィオは弱く笑顔を零す。
フィオ 「うん」
フィオ(M) 「ルーンとみんなと旅をして、色々な事を知ったつもりでいた。でも、それはほんの一部でしかないんだ。
本当の事を知るのは、楽しいことばかりじゃない。この国で知った事のように、現実を目の当たりにして悔しくなる。苦しくなる。悲しくなる。ライム城で暮らしていた頃は、夢にも思わない現実だったから。だから…オレは」

フラッシュバック・フィオの過去
フィオに対し優しく微笑みかけるアレス王。

フィオ(M) 「レインの…アレス王の『本当の事』を知ってしまったら…どうするんだろう」

一方、ガルシアンは教会で会ったガイアスとヴェールの女を思い出す。
ヴェールの女の額に輝く魔晶石。
ガルシアン(M) 「あの禁呪が解放されたか。そして、おそらく彼もその術を受けた…」

○同街近辺・断崖
ミッフィーもまた、ガイアスとヴェールの女を思い出す。
ヴェールの女の額に輝く魔晶石。
そして、女の隣に立つガイアス。
ミッフィー 「なしてあいつが…信じとうない」
ミッフィーは嘆息し、断崖からリヤードの街を見つめる。
ミッフィー 「『囚獄陣』。ほんま、タチの悪い呪いやな…」

To be continued…
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