第17話 「空の上でデート」
シーンB
○ラピッドクラウド艦内・通信室
ビジョンで映し出されるオルトロスの幻影に対峙するジニアス。
オルトロス 「そうか、フィオがそんな手紙を…」
ジニアス 「はい…」
オルトロス 「フィオはジャキィスに会ったのだな」
ジニアス 「はい。しかし楔の秘密については、一言も話しておりません。ただ、気になることを言い残していきました…」
オルトロス 「気になる事?」
ジニアス 「『兄に手を下したレインに等しき力を欲する者は動き出す』と…」
オルトロス 「ガードナーに手を下した…」
ジニアス 「姫様はフィア様の楔の紋章を、アルティマで手に入れています。それは、ジャキィスが探っていたバルナギーゼ=ウォレット卿の宝物庫にあったものだと…」
オルトロス 「バルナギーゼ=ウォレットか…」
ジニアス 「オルトロス様、未だ姫様とルーンは楔の秘密を知りません。レインも存じ上げてないでしょう。お話になりませんか…もう、これ以上は…」
オルトロス 「言うな、ジニアス!」
強い言葉で遮るオルトロス。
オルトロス 「シーナは死ぬまで、フィオに告げなかった。お前も母の気持ちを察するなら、この秘密は墓まで持って行け。
フィアは死んだのだ。ゆえに楔の双家に女はフィオ一人。
これは誰にも、たとえレインであろうと知られてはならん!」
ジニアス 「オルトロス様」
オルトロス 「ガードナーのようにわしを責めるか、ジニアス。わしは妹ではなく、娘を選んだのだ」
ジニアス 「……」

○同艦内・展望台
ゆったりとした速度で飛ぶラピッドクラウド。
展望台に出たルーンは、風を受けながら眼下の雲海を見渡す。

ルーンの回想・第16話
ルーンに対し苦しい表情で請うジニアス。
ジニアス 「守って下さいますか? 兄であるあなたは、妹であるフィオを…」

ルーン(M) 「兄妹か…」

ルーン 「プラチナにしても、あいつにしても、俺は結局…ッ!」
自分の呟いた言葉に愕然とするルーン。
ルーン(M) 「今、俺は何て言った?」

フラッシュバック・第7話
ルーンに告白するフィオ。




ルーン(M) 「フィオが俺になついているのはずっと知っていた。フィオと別れるのは簡単だ。俺がこの旅から抜ければいい、ましてあの、レインの真実を知るくだらない旅だ。
なのに、俺はここに居る」
ルーン 「あいつとピノとグレイが俺を無理矢理にだな…」
ルーン(M) 「違う、あいつが傍にいたからだ。あいつは半魔族である俺を、何のためらいもなく受け入れた。
俺だけじゃない、ピノだってグレイだって、レインにも、旅で出会った他人にも、ウミガメにだってあいつは総てを懸ける。馬鹿みたいに身を尽くす。だから危なっかしいんだ、あいつは…」
ルーン 「ハハハ、そうか…」
苦笑して天を見上げるルーン。
ルーン 「俺はあいつを手離したくないから、知りたくもねえ真実を知りにいくのか…」
フィオ 「な〜に、ぼやいてるんだよ、ルーン」
ルーン 「んなッ!」
吃驚して振り返るルーン。
あまりの驚き様に、フィオは逆に慌てる。
ルーン 「なんで、お前。こんなタイミングの悪い時に…」
フィオ 「なんだよ、来ちゃ悪かったのか」
拗ねるフィオに、やや顔の赤いルーン。
ルーン 「……」

○同艦内・メインブリッジ
メインブリッジに入るミッフィー。
そこにはシーアイスとアイシャの二人だけが佇む。
ミッフィー 「なんや、邪魔だったかいな」
気まずそうに頭をかくミッフィーにアイシャは優しく微笑む。
アイシャ 「お気になさらないでください。私達は兄妹ですよ」
ミッフィー 「せやった。ついついな…レオハルトの二人を思い出してもうた」
窓の外にフィオの姿を認めたシーアイスは呆れて溜息をつく。
シーアイス 「まったく、あのじゃじゃ馬は夜も更けたというのに空を展望ですか…」
アイシャ 「お兄様、やきもちですか?」
シーアイス 「何を言う、アイシャ。私はだな…」
ミッフィー 「綺麗な満月やないの…」
懐かしそうに空を見上げるミッフィー。
シーアイス 「そうでしょう、ミッフィー様! このラピッドクラウドが誇る絶景は…」
ミッフィー 「もう8年前や…」
シーアイス 「……」
ミッフィー 「うちらもこうやって、レオハルトから満月を見上げた。銀色の月…マーハやな」
シーアイス 「マーハ…?」
ミッフィー 「マーハの銀色の髪は月の髪とも言うたんよ。せやから、うちらは月を見上げるとルラマーハを思い出すねん」
シーアイス 「……」

○同艦内・展望台
フィオはルーンの隣へ並ぶ。
フィオ 「父さんへ手紙書いてきた」
ルーン 「そうか…」
フィオ 「オレが兄さんと会ったって知ったら、びっくりするだろな」
ルーン 「今更俺を『兄貴』やら『兄さん』やらで呼ぶのはよせよ、冗談じゃねえ」
フィオ 「あはは、まさか。ルーンはルーンだよ。これからも変わらない。オレにとってルーンは…」
ルーン 「……」
フィオ 「憧れだよ、アレス王みたいに」
ルーン 「ハハハ、またそれか」
フィオ 「ルーン、笑うんだね。オレがアレス王のこと話したのにさ」
ルーン 「もう怒る気にもならねえよ。まあ、こんな代物を国で用意して、俺達みたいな冒険者をティーレに移送するっていうんなら他にやる事があるだろって話だけどな」
フィオ 「ルーンは飛空艇に乗るなんて、初めてだろ?」
ルーン 「あのなあ、一国の軍艦にただの冒険者が易々乗れるわけねえだろうが」
フィオ 「だよね…」





フィオ 「オレ達さ、すっげえ高いところから世界を見てるんだな」
ルーン 「じゃあ、もっと高いところへ連れてってやるよ」
フィオ 「え?」
フィオを抱きかかえるルーン。
フィオ 「うわッ!」
翼を広げ空へ飛び立つ。

○同艦内・廊下
窓から飛び立つフィオとルーンの姿を見上げるジニアス。
ジニアス 「姫様…」

○同艦内・メインブリッジ
メインブリッジから夜空を見るシーアイス、アイシャ。
兄の様子の変化に気づきアイシャは声をかける。
アイシャ 「お兄様?」
シーアイス 「陛下は…あの二人に夢を見たのですね……」

○ラピッドクラウド上空
フィオを抱えて空を飛ぶルーン。
フィオ 「なあ、ルーン。
本当の事を知るのは、楽しいことばかりじゃない。この旅で知った事のように、現実を目の当たりにして悔しくなる。苦しくなる。悲しくなる。ライム城で暮らしていた頃は、夢にも思わない現実だったから。だから…オレは」
ルーン 「……」
フィオ 「レインの…アレス王の『本当の事』を知ってしまったら…どうするんだろう」
ルーン 「どうしようが変わらねえよ。お前があいつらの何を知って泣こうが笑おうが、ついててやるさ」
フィオ 「え?」
ルーン 「二度は言わねえからな」
フィオ 「オレ、そばに居ていいの?」
ルーン 「あのな、今まで散々俺をひっぱりまわして、今更何言ってやがるんだ?」
フィオ 「一緒に居ていいんだ…」
涙声のフィオ。
俯く。
ルーン 「泣くな、馬鹿」
フィオ 「だって…さ…」
ルーン 「この旅が終わったら、御袋を探しに行くか…」

○同艦内・メインブリッジ
二人の様子を見上げる、ミッフィー、シーアイス、アイシャ。
ミッフィー 「二人に夢を…か」
そこへ入ってくるガルシアンとヘパイストス。
ガルシアン 「ミッフィー、先に来ていたか」
ミッフィー 「例の話やな。この二人が居てもええの?」
ヘパイストス 「なんじゃ、なんじゃ? ミッフィーもガルシアンも怖い顔をしおって」
シーアイス 「一体何のお話ですか、ミッフィー様」
ガルシアン 「シーアイスと言ったな。お前もこの飛空艇・ラピッドクラウドの艦長ならば、彼と関わりがないか?」
ミッフィー 「レオハルトの船長、シーザー=スカイノーイ。今そいつがどないしてるか、誰か知らへん?」
ヘパイストス 「シーザー…が?」

○アルティマ・ルッカの村廃墟
燃え崩れた漁村の廃墟を一人歩くエイセル。
エイセル 「こうやって滅んだ村を歩くと、アレスの故郷を思い出すな」
エイセル(M) 「ガイアスの姿が最初に確認されたのは、ダマスクス強襲事件。
それ以前に関する情報は全くない。従って、バルナギーゼから奴の配下であるガイアスを探る必要がある。
7年前、この漁村は魔将に襲われた。当時ある夫婦がこの村に住んでいたが、その妻が魔将に襲われ、夫が魔将に攫われたと聞く。
しかし、興味深いのは村の生き残りが魔将に命を下す人影を見たという事だ。
その人影はガイアスではない」
エイセルが手にしているのはバルナギーゼの肖像。
エイセル 「バルナギーゼ=ウォレットか。しかし、こんな片田舎で奴は誰を攫ったって言うんだ…」
岬に辿り着いたエイセルは、唯一つ設けられた小さな墓に目を見張る。
墓の前に立ったエイセルは言葉を失う。
エイセル 「マジかよ…」
墓碑には「サンドラ=スカイノーイ」の文字。

To be continued…
LEGEND =Questers=