第18話 「探し求めたモノ」
シーンA
○ラピッドクラウド艦内・通信室
ビジョンに映し出されるアレスと彼に対峙するガルシアン。
アレス 「お前まで彼らに同行することになるとは思わなかったよ、ガルス。心強いな」
ガルシアン 「予定外だ。ヨシュアのクロスナイツにまんまとはめられた」
アレス 「ハハハ、リュート=クライシスか。話には聞いているよ。サンタマリア王家の数少ない血縁らしいな。ところで、どうだ、8年ぶりの空の旅は?」
ガルシアン 「メインブリッジの設計はレオハルトのままじゃないか。外形のデザインは大きく違うが…」
アレス 「艦首に主砲『ラグラロク』を装備していたレオハルトとは違う。このラピッドクラウドは戦うための艦じゃない」
ガルシアン 「なるほどな…確かにもう、戦う必要はないはずだ」
アレス 「ガルス?」
ガルシアン 「いや、ふとあの頃を思い出してな」
アレス 「懐かしいだろう?」
ガルシアン 「ああ、タケル。そのレオハルトについてだが、お前は聖戦後、シーザーと会ったか?」
アレス 「シーザーにか? 最後に会ったのは6年前だったと思うな、彼がどうかしたのか?」
ガルシアン 「シーザーだが…」
ミッフィー 「なあ、ガルス。その話は後にせえへん?」
二人の間に入ってくるミッフィー。
ミッフィー 「もう、ティーレに着くで。ついさっき、シーアイスが言うとったわ」
アレス 「そうか、じゃあ詳しい話は後で。フィオによろしく伝えておいてくれ」
ガルシアン 「あ、ああ」
通信が切れる。
ミッフィーへと振り返るガルシアン。
ガルシアン 「なぜ止めた、ミッフィー?」
ミッフィー 「まだそうと決まった訳やないし」
ガルシアン 「お前の気持ちも分からないでもないが、あの声、それに俺やお前に対する態度も…」
ミッフィー 「なあ、ガルス。シーザーはウチらよりも前に、タケルとマーハに会うてんよ」
ガルシアン 「?」
ミッフィー 「タケルと旅した時間はウチらの方が長いかもしれん。でもな、昔のタケルを知っとるのは、シーザーなんや」
ガルシアン 「……」
ミッフィー 「前にな、グリンが言うとった。『あのオヤジはウチらとおんなじように、タケルとマーハを気にかけてる』って。あいつがな、ちいと悔しそうに笑うんねん」
ガルシアン 「そうか…」
顔を伏せるミッフィーの肩を優しく叩くガルシアン。
ガルシアン 「分かった。憎むべきは呪いだな。彼の囚獄陣を解放する手立てを考えよう」
ミッフィー 「おおきに、ガルス」
涙ぐむミッフィー。

○【サブタイトル】




○ティーレ島・星の神殿廃墟
欝蒼と茂る森の中。
星の神殿廃墟。
一行とガルシアン、ミッフィーは面影が僅かに残る神殿の広間中央に立つ。
周囲を見回すグレイとピノ。
グレイ 「ここが最終決戦の地。8年前、レインがヴァティスを倒したのは、まさにここなんだ…」
ピノ 「アレス王が旅だった村から、この島まで。あたし達ったら本当にレインの旅を辿ってきちゃったのね」
ニヤリと笑うピノ。
ピノ 「結局誰かさんは、あたし達に最後まで付いてきちゃったんだ〜」
睨むルーン。
ルーン 「うるせえぞ、チビ」
ピノ 「ふ〜ん、その悪態も久しぶりだわ〜」
グレイ 「僕達の長かった旅も、これで最後になるのかな」
フィオ 「最後じゃないよ、グレイ」
ニッコリと笑うフィオはルーンを見上げる。
フィオ 「ルーンと約束したからさ。オレ達はここで本当のアレス王を知る。そして、答えを出してまた前へ進む」
ジニアス 「まさか、姫様。まだ旅を続けるおつもりで…」
ルーン 「お袋を探すんだろ?」
頷くように笑うルーン。
ジニアス 「ルーン、あなたまでッ!」
愕然とするジニアス。
その様子を見つめるミッフィーは面白そうに笑う。
ミッフィー 「あはは、楽しそうやな。ウチらが知りたいのは、その『答え』や」
そうして広間中央に立ち、空を見上げるミッフィー。
寂しそうに呟く。
ミッフィー 「本当のうちらを知って裁くとええ…」
ガルシアン 「それもこれも、無事帰れたらの話だがな…」
ガルシアンもまた、ミッフィーの横に立つ。
一行を見回し、夢の小箱を手に持つ。



ガルシアン 「前に話した通りだ。夢の小箱とは夢を映し出す映写機。ここでこの箱を開ければ、当時に起こった史実が現実の如く映される。しかし、それは同時に悪夢を映し出す事も可能だ。絶望と恐怖は悪夢を呼ぶ。悪夢はお前達を襲うだろう。
この箱を開けるという事は、すなわちお前達の命の危険を伴う。その覚悟があるなら、この小箱と鍵を手に取るがいい」
ガルシアンは、箱と鍵をフィオに差し出す。
グレイ 「フィオ…」
フィオを促すグレイ。
ピノ 「あたしはあんた達のマネージャーなんだからね。もちろん付き合うわよ」
ジニアス 「姫様の行く所、どこまでもお供します」
フィオはルーンの顔を伺う。
ルーン 「今更迷うなよ。言っただろ、二度も言わねえってな」
ルーンの言葉に満面の笑みで応えるフィオ。
フィオ 「うん」
ガルシアンから小箱と鍵を受取るフィオ。
ガルシアンとミッフィーは一行から離れる。

○ラピッドクラウド艦内・メインブリッジ
ティーレ上空に控えるラピッドクラウド。
モニタから一行の様子を見守る、シーアイス、アイシャ、ヘパイストス。
アイシャ 「少し妬けますわね、お兄様」
シーアイス 「陛下が彼らを選んだ理由。お前は気づいたか?」
アイシャ 「私も前に一度だけ、聖泉殿地下の絵画を見た事があります」

フラッシュバック・第1話
壁に掛けられたレインとルラの肖像画。




アイシャ 「私達には陛下の欠けた心を埋める事は出来なかったのですね」
ヘパイストス 「それは違うな、アイシャ。タケルがお前達に望んだものと、ルーン達に望んだものは異なる」
アイシャ 「ヘパイストス様?」
ヘパイストス 「タケルはお前達に聖戦で失った家族を求めた。だが、彼らには…そうじゃな…己を重ねた。わしもフィオに会ってようやっと、分かったわい」
アイシャ 「陛下御自身を?」
ヘパイストス 「うむ…」
そこへブリッジに聞こえる通信の声。
ガルシアン 「開けるぞ、ヘパイストス」
我に返るヘパイストスはインカムを耳にかける。
ヘパイストス 「スタンバイオッケーじゃよ。何が出るか分からんからな、最悪の状況を想定しよう」
シーアイス 「ティーレ周囲への警戒と各種モニタリングに問題はありません。が、『最悪な状況』とは一体どういう事です?」
怪訝そうに尋ねるシーアイスに対し、ヘパイストスは重い言葉で答える。
ヘパイストス 「緊急事態…つまり、対魔将戦じゃよ」
シーアイス&アイシャ 「ええっ!」

○ティーレ島・星の神殿廃墟
フィオは小箱を床に置き、鍵を差し込む。
カチリと小さな音が聞こえる。
フィオ 「開けるよ、みんな!」
ルーン 「ああ」
グレイ 「うん!」
ピノ 「いいわよ!」
ジニアス 「は、はい!」
フィオは箱を開く。
箱から立ち上る光輝く霧。
霧が一行を包む。
神殿外でその様子を見守るガルシアンとミッフィー。
ミッフィー 「なんや、あれ!」
ガルシアン 「あの光の粒子、一つ一つがスクリーンそのものだ。使用者の願いに応じて、8年前の聖戦を映し出す。おそらく彼らが見るのは、ここで実際に起こった最終決戦だろう」
ミッフィー 「聖戦の結末…」
ガルシアン 「そうだ、彼らの願いに応じる。あたかも現実のように映し出されるそれは、使用者に心の迷いが生じれば悪夢となる」
ミッフィー 「負の感情。絶望と恐怖…やな…」
ミッフィーは心配そうに光の霧を見つめる。

○小箱の夢
天上に輝く六星の魔方陣。
見渡す限り何もない異空間に、光が雪の様に舞っており、周囲には白い光の霧が立ち込める。

茫然と立ち尽くす一行。
フィオ 「ここは…」
グレイ 「僕達が居たのはティーレだったよね。だったら、ヴァティスと戦うレインの姿が映るはずじゃないかなぁ」
ピノ 「とても、悪い雰囲気はしないわよ。それどころか、綺麗よね…」
ジニアス 「姫様、空を見て下さいッ!」
一行は天を見上げる。
天上に輝く六星の中に見えるのは、見たこともない都市。
ルーン 「なんだ…ありゃ」
グレイ 「異世界…」
フィオ 「異世界?」
グレイ 「ほら、マホメト師の日記にもあったでしょ。ライムランド…夢界とは異なる人界。あれがそうなんじゃ…」
フィオ 「マーハ様が生まれてすぐに追放された、人界?」
グレイ 「そうだよ、あそこからマーハ様はライムランドに降り立ったんだ」
ピノ 「ちょっと、みんな。人の気配がするわ!」
一行 「!」
ピノの声に、一行は顔を戻し再び周囲を見回す。
遠方、光輝く柱の中に見える二人の人影。
ルーン 「あれは…」
フィオ 「アレス王!」
光の柱に向かい駆けだすフィオ。
フィオ 「ッ!」
グレイ 「フィオ、待って!」
フィオを追いかけて走りだす一行。

光の柱の手前で立ち止まるフィオは小さく呟く。
アレス王に向かい立つのはマーハ。
フィオ 「マーハ様…」
追いついたジニアスはフィオに呼びかける。
ジニアス 「ハアハア。落ち着いて下さい、姫様。これは幻なんですよ」
フィオ 「分かってるよ」
ピノ 「アルティマで見たマーハ様のピクトとは違うわよね、いかにも女神様って感じ」
グレイ 「やっぱりもう、ヴァティスを倒した後の幻なんだね」
フィオはじっとアレスの顔を見つめる。
その様子に気づくルーン。
フィオ 「アレス王…」
ルーン 「俺達が何言おうが、何しようが、所詮幻影なんだからな…」
フィオ 「ルーン」
ルーン 「どうした、フィオ?」
フィオ 「なんか様子がおかしいよ。ヴァティスを倒した後なんだよな。でも、変なんだよ…」
フィオはルーンを見上げる。
ルーン 「変ってお前、何を言って…」
徐に口を開くマーハ。
マーハ 「全界の交わりを絶つ。これで魔界は消滅し、ヴァティスは二度と生まれることはない」
アレス 「夢界と人界の、人の夢を信じよう…」
マーハ 「世界の平和と人々の幸せ、ずっと信じてるから」
アレス 「ああ」
マーハ 「きっとまた会えるよね、タケル」
アレス 「そうだな、夢見る心があれば…」





マーハ 「ありがとう、タケル。愛してるわ」
アレス 「俺もだ、お前を忘れない」
光の柱に包まれて消えるマーハ。
光は天の魔方陣へと登る。
独り取り残されるアレス。

ルーンとグレイはその光景を呆然と見つめる。
グレイ 「報われない恋…」
一方ルーンは自分の過去とアレスを重ねる。
ルーン 「同じ…なのか…」
フィオ&ピノ&ジニアス 「!」
突如暗くなる周囲。
これまでの空間が一瞬にして変わり、廃墟と化す。
フィオ 「あれは…」
天上を見上げるフィオ。
巨大な獣の雄叫びが居空間に響く。
フィオ 「ヴァティス!」
上空を覆う、巨大な黒いドラゴン。