第21話 冒険者の夢
シーンB
○ライム城・聖泉殿地下室
肖像画を独り見上げるアレス。



アレス 「ずっとあれから考えていたんだ、マーハ」
寂しげに笑うアレス。
アレス 「俺達の選択は本当に正しかったのか? 世界の平和と人々の幸せ。それを守るために、俺達は戦った。そして、魔界の消滅を願い、全界の交わりを絶ち、俺達は別れた。しかし…シーザーの願いは?」
拳を握るアレス。
アレス 「友を不幸にした。俺は彼の幸せを叶える事が出来なかったんだ」
シーアイス 「失礼します、陛下…」
アレス 「!」
地下室へ降りてくるシーアイスとアイシャ。
アイシャ 「ルーン=アクス様をお連れしました」
二人の背後、表情を見せず俯くルーン。
ルーン 「……」
アレス 「ああ、ありがとう。すまないが、二人は席を外してくれないか?」
アイシャ 「しかし、陛下。私達は…」
シーアイス 「行くぞ、アイシャ」
アイシャ 「ッ、お兄様!」
アイシャの手を取るシーアイス。
彼は彼女に小さく呟く。
シーアイス 「陛下はマーハ様に続き、シーザー殿、フィオ殿。大切な方を失くされたのだ」
アイシャ 「…!」
シーアイス 「……」
一礼し立ち去るシーアイスとアイシャ。
ゆっくりと歩いてくるルーン。
静かに肖像画を見上げる。
ルーン 「もうずいぶん前の事だな、あんたに騙されてクエストを受けたのも」
アレス 「ああ…」
同じく画を見上げるアレス。
ルーン 「俺は何とも思わなかったが、あいつはこの絵を見てあんたとレインの真実に気づいた。あの時にもう、気づいてた」
アレス 「……」
ルーン 「どうして、俺達を選んだ?」
アレスは瞳を閉じ、想いを馳せる。
アレス 「…フィオは俺を剣の師と仰いだ。そんな彼女と共に旅をするレインを憎む者…」
アレスはルーンに向かう。
アレス 「レインを敬う者、世界に憧れる者、国を憂う者、主を慕う者、聖戦で想いを失った者、レインと共に戦った者。彼らに問いたかった。俺達の選択は正しかったのかと」
ルーン 「…だが、今は答えを出せないぜ。あいつは居ない」
アレス 「ああ、全てが終わった時。俺はお前達の裁きを受ける。だから、彼女とシーザーを助けたい」
ルーン 「シーザーが世界を破壊しようとするのは、あいつの意志だ」
アレス 「分かってる、だからこそ止めなくてはならない」

フラッシュバック
シーザー 「マーハが再び、この世界へ降り立つ」

アレス 「俺達が望んでいたのは、こんな未来じゃない」
ルーン 「……」
踵を返すアレスは、階段へと向かう。
アレス 「お前に見せたい物があるんだ。ついて来てくれないか?」

○同城・最地下層
厳重な鋼鉄の扉。
重々しい音を立てて扉は開く。
アレス 「……」
ルーン 「これは…」
地下室の中央に安置された六種の武器。
大きさの違う二種の剣、二種の杖、爪、槍。



ルーン 「まさか…神具…」
アレス 「そう、神具だ。お前を育ててくれた神具の民。プラチナ達の真の姿」
ルーン 「…そんな、これが…」
アレス 「神具をお前に返す。クテシフォンに返そう、だから…」
ルーン 「!」
アレスの言葉に、驚き振り向くルーン。
アレス 「俺達をアダムへ行かせてくれないか?」
ルーン 「…ッ!」
ルーンはアレスへ食いかかる。
されるがまま、襟元を掴まれるアレス。
ルーン 「ふざけるなッ! フィオを助けに行くのはレインだっていうのかよッ! まんまとシーザーにフィオを奪われておいて、今更お前らがッ!」
アレス 「そのままどうしてくれても構わない。俺はお前に何と詫びていいのか、何の言葉を持ち合わせていない。だから、気が済むまで殴ればいい」
ルーン 「ッッッ!」
ルーンはアレスから手を放し、押し返す。
アレス 「ルーン…」
ルーン 「『Liberate』」
ルーンは自らの神具・戦斧を構える。
ルーン 「神具を手にとれ、アレス王! だったらここで勝負だ、俺とお前、どっちがアダムへ行くかッ! フィオを救うかッ!」
アレスへ斬りかかるルーン。
アレス 「!」
アレスはすぐ傍らにある剣の神具を手にとり、ルーンの神具を受ける。
ルーン 「ッ!」
アレス 「……」
間合いを取るルーン。
ルーン 「やろうと思えばできるじゃねえか、レイン様よお!」
アレス 「本当にそれで、許されるというのなら…」
アレスはルーンに対峙し神具を構える。
アレス 「本気で行くぞ!」
ルーン 「ッ!」
駆けだす二人。
ルーン 「はああああぁぁぁぁっっっっ!」
アレス 「はああああぁぁぁぁっっっっ!」
神具と神具が打ち合う衝撃音が夜の聖泉殿を木霊する。

インサート・聖泉殿
そのすぐ外で、シーアイスとアイシャはアレスを待つ。
静寂の夜空に響く異様な音に気づく二人。
アイシャ 「お兄様、これはッ!」
シーアイス 「陛下ッ!」

地下室へ駆けこんでくるシーアイスとアイシャ。
斬り合うルーンとアレスの二人を見つけて声を失う。
アイシャ 「陛下ッ!」
シーアイス 「お止め下さいッ」
ピノ 「だめよ、二人とも!」
止めようとする二人の眼前に突如飛来したピノは両腕を広げる。
ピノ 「止めてはだめよ」
アイシャ 「あなたはフィオ様のお仲間の…」
シーアイス 「馬鹿な事を。陛下にもしもの事があれば…」
ピノ 「これは、決別なんだわ」
シーアイス 「え…?」
ルーンとアレスを見守るピノ。
ピノ 「あなた達はアレス王が負けるとは思っていないでしょ?」
シーアイス 「も、勿論ですとも!」
ピノ 「天下のレインと一介のクエスター。勝負は見えてる。けど、あたしは…」
ルーンとアレスの殺陣。



ピノ 「ルーンを信じてる…」
神具を交える二人。
アレス 「お前も賢者の塔で知っただろう。千年前、レジェンドと呼ばれる戦いで神と人が犯した過ちを!」
ルーン 「時の神・イリスとブルーストーンのレイン・アクスタインが恋に落ちた。それが八年前、ヴァティス再臨を許した理由だ」
離れる二人。
アレス 「そうだ。そして八年前、俺もまた神であるマーハを愛した!」
ルーン 「だから別れたって言うのかよ。自分達は世界の為に犠牲になった、そう言いたいのか!」
アレス 「俺はレインだ、世界を救うために生まれた人間だ。そのためには自分の想いは殺さなくてはならない。それに俺達、人は神が創り出した創造物にすぎないんだ!」
ルーン 「お前はレインという使命に逃げているだけだッ!」
アレス 「クッ!」
再び斬りかかるルーン。
アレスはその神具を受ける。
ルーン 「レインとはなんだ、アレス王!」
アレス 「ヴァティスと戦う力を持つ者、国を統治する者。けれど、俺達は誰一人として望んでレインに生まれたわけじゃない!」
ルーン 「ッ!」
アレスはルーンの神具を弾き返す。

フラッシュバック
ルーン達一行が出会ったレイン達それぞれの表情。

ルーン 「……」
手元から失われ、床に転がるルーンの神具。
アレス 「レインが神であれば…伝説も聖戦も違う結末を迎えていただろうな。俺はそう思う」
苦笑するアレスは構えを解き、神具を再び祭壇に戻す。
アレス 「けれどレインは人なんだ、ただの人間にすぎない。力を持っているだけの…」
去り際のアレスに吐き捨てるように呟くルーン。
ルーン 「だからアダムを倒すのは力を持っているお前達だって、言うんだな?」
アレス 「……」
ルーン 「レインとは何だと、マーハには聞いたのか?」
アレス 「ッ!」
ハッとするアレス。
アレス 「……」
苦しそうに顔を伏せ、そして地下室を後にする。

○同城・ヒャダル空港
夜、急ピッチで整備作業が進められるラピッドクラウド。
そのラピッドクラウドを見上げるジュウジュとジェナード。
ジュウジュ 「ジェナード、お前がシーザーと最後に会ったのはいつだ?」
ジェナード 「一年前になるな。シャヌーンの海域で幽霊船騒ぎがあっただろう? あの時に、たまたまな…。囚獄陣の呪いか…そんな呪いを受けている風には到底思えなかった」
ジュウジュ 「なんでだ?」
ジェナード 「まるでサンドラが生きているかのように話していたからさ。子供が出来るというような話だった…そうか、あいつの時間はあの時に止まってしまったんだ」
ジュウジュ 「あの時?」
ジェナード 「6年前、グリークの三回忌をやっただろう? ああ、お前はあの席に居なかったな」
ジュウジュ 「タケルがテーベに行った年のあれか? そうそう、俺はタケルの身代わりをさせられて大変だったけ」
ジェナード 「その時には既にサンドラは身籠っていた」
ジュウジュ 「え?」
ジェナード 「その後の話は聞かないがな。あれからずっと連絡が途絶えていたんだ」
ジュウジュ 「そうか…」
ジュウジュはため息をもらす。
ジュウジュ 「俺は聖戦からもう、ずっとあの親父に会ってねえ」
ジェナード 「寂しいか?」
ジュウジュ 「バ、バカ野郎。誰があんなエロ親父を」
ジェナード 「ハッハッハ…」
笑うジェナードに、すねるジュウジュ。
ジュウジュ 「お前、本当に饒舌になったよな」
ジェナード 「時は人を変えるさ」
カタリム 「そうですね、時は人を変える」
二人の元へ歩いてくるカタリム、サルサ、ペンソ、リップ、シルクレスト、クルエ、ダイス、スティック、セイクレッド、ダジリン、セイロン、アッサム、ベドゥイン、イヴン。
ジュウジュ 「お前ら、来てくれたか!」
カタリム 「お久しぶりです、おじさん」
ジェナード 「相変わらずだな」
サルサ 「皆さん無事揃いました」
ジュウジュ 「ありがとよ、サルサ」
ジュウジュは元レオハルトのクルー全員の顔を見つめる。
ジュウジュ 「シーザーは敵の手に落ちた。囚獄陣の呪いによって。公ではそうなってるが…本当は違う」
クルー達 「!」
ジュウジュ 「あいつの意志なら、俺達がそれを正さなきゃならねえ。あいつは俺達の船長だろ?」
ペンソ 「ハハハ。『俺達の船長』か。ジュウジュがシーザーをそんな風に言うなんてさ」
リップ 「兄さんも変わったわよね」
ジュウジュ 「あのなあ、ここはビシッと決めるとこだっつうのに、そりゃ何なんだよ〜」
シルクレスト 「お前が決めようっつったってカッコつかねえんだよ」
クルエ 「人の事言えないでしょ、おバカ」
シルクレスト 「クルエ、少しは旦那を立てろよな。みんなの前でまだそれかよ」
リップ 「フフフ、幼馴染から夫婦になったんだものね、二人とも」
クルエ 「そうね、リップ!」
サルサ 「お二方が羨ましいですわ、ね、ジュウジュ様」
ジュウジュ 「お、お前、何言って…」
ダイス 「はいはい、そこまで〜。こんな時にいちゃついてるんじゃないよ〜」
カタリム 「あたしもガンナーチームに配属されました。よろしくお願いしますね、おじさん」
ニッコリと笑うカタリムにジェナードは驚いてジュウジュを見る。
ジェナード 「お、おい、ジュウジュ。俺はそんな話聞いてないぞ」
ジュウジュ 「だってよう。守りたいもんは傍に置く、鉄則だろ?」
悪戯っぽく笑うジュウジュに赤面するジェナードとカタリム。
ジェナード 「な…」
カタリム 「か、からかわないで下さい、ジュウジュさんッ!」
ダイスは同じガンナーチームであるスティックとセイクレッドを見上げる。
ダイス 「お〜い、すっかり俺達置いていかれてるんじゃん?」
セイクレッド 「一人身は辛い」
ダイス 「う…うあ〜。厳しい事言うね〜、セイクレッド」
セイクレッド 「……」
ダイス 「な、スティック。そんな時の俺達…」
と言いかけた所で、ダイスはスティックが遠慮するイヴンの手を引く姿を目撃する。
ダイス 「マジでッ!」
スティック 「紹介するぜ、みんな。ベドゥインの娘、イヴン。元魔王だ!」
イヴン 「ば、バカ。お前、他に言い方があるだろうが!」
スティック 「聖戦じゃ敵同士だったけどな、今は違うだろ?」
イヴン 「…ッ」
レオハルトクルーの視線から目を逸らすイヴンは、すまなそうに小声になる。
イヴン 「今更、あの時の事をどう説明しようと言い訳にしかならない事は分かっている。シーザーの事も、あたしは彼と面識がない。けれど、ようやく手に入れたこの平和な世界を守りたいという気持ちは、あんた達と変わらない」
ベドゥイン 「父親であるわしからも頼む」
頭を下げるベドゥインに対して、温かな言葉をかけるジュウジュ。
ジュウジュ 「ハハハ、ちょうどいいじゃねえか。ティキの抜けた穴をベドゥインが埋める。ベドゥインが抜けた穴をイヴンが埋めればいい」
イヴン 「恩に着る、ありがとう」
ダジリン 「カッカッカ〜、これであの時と同じだな」
セイロン 「またあたし達のヒロイックサーガに、新たな一ページが記されるのね!」
アッサム 「張り切っていきましょか!」
トリオのはしゃぎように呆れるジュウジュ。
ジュウジュ 「おい、こいつらも呼んだのか…」
ヘパイストス 「わしが呼んだのじゃよ」
遅れてその場へと現れるヘパイストス。
ジュウジュ 「遅いぞ、ヘパイストス」
ヘパイストス 「メカニックにサポートが必要じゃったから。イーグルの予備知識を持つ者が居るに越したことはない」
ジュウジュ 「イーグルもフライト出来るのか?」
ダジリン 「一号機から三号機まで。ヴァルキリー・ハレーションは搭載できなかったけどよ。奴らが飛行タイプのバグズを出してこようが、これで問題ないってこった」
ジュウジュ 「お、お前?」
ダジリン 「俺達だってよう、やる時はやるッ!」
ジュウジュ 「……」
ジェナード 「時は人を変えるんだ、ジュウジュ」
ジュウジュ 「ジェナード…」
ジェナード 「お前はシーザーにずっと会っていないのだったな。ならば、明日俺達全員で会いに行こうじゃないか?」
クルー達 「……」
その言葉に全員が頷く。
ジュウジュ 「ああ!」

○同城・玉座の間
日の光が差し込む中、アレスは玉座に座る。
アレス 「バルナギーゼ卿が動く気配は?」
広間へと入ってくるレイン達。
ヨシュリア 「まだありません。嵐の前の静けさ、といった所でしょうか」
グリン 「昨日のうちにアルティマ全土の街や村に、グリーンウッドから避難勧告を出しといた」
ガルシアン 「大陸の北・ソレント、東・カンパニア、西・ブリストル三方に向けて大陸住民が移動を始めている」
ミッフィー 「うちのファンジーム、それとヨシュアのサンタマリアから避難民脱出用の大型船をありったけ用意したで」
オウフェン 「後は…彼らですね」
アレス 「ああ…」

○同城・玉座の間に続く廊下
一人歩くルーンに背後から飛んでくるピノ。
ピノ 「まさかこのまま、レインに譲るつもりじゃないでしょうね?」
ルーン 「お前はどうなんだ、ピノ?」
ルーンの言葉の調子に、ぱっと顔が明るくなるピノ。
ピノ 「旅立った頃はあんたと二人っきり。それからフィオと会って、仲間が出来て、ずっと長い事冒険したわね」
ルーン 「ああ」
その廊下の先で待つグレイ。
ルーンの背後、グレイも続く。
グレイ 「僕達の冒険はこんな所で終わらない。そうでしょ、ルーン」
ルーン 「そうだな」
廊下の先で待つジニアス、彼もまたルーンに続く。
ジニアス 「私があなたと行動を共にするのは、ルルカとルナルに使える人間だからではない。仲間だからです」
ルーン 「仲間か…」
廊下の先で待つルクレチア、彼女もまたルーンに続く。
ルクレチア 「クエスターと呼ばれる冒険者は、何かを探し求める者。今あたし達が探し出そうとしているのは、あたし達が大切な者」
ルーン 「ああ、俺達はそのクエスターだ…」
廊下の先で待つリリファン、彼女もまたルーンに続く。
リリファン 「ウチらが大切な者は、ウチらの手で取り戻す。そうですやろ、みなはん」
ルーン 「そうだ、俺達の手で…」
玉座の間、入口の扉の前に立つのはフレディンである。
フレディン 「お待ちしていました、ルーンさん」
ルーン 「お前はいいのか? オウフェンと共に居なくても、レオハルトの人間と共に居なくても?」
フレディン 「私はシャインです。あなた方の仲間です。共に参りましょう」
微笑むフレディン。
応じて頷くクエスターズ達。
ルーン 「ああ、俺達の大切な仲間を探し求め、取り戻す!」

○同城・玉座の間
レイン達の前に立つオルトロス。
彼の脇に立つ、シーアイス、アイシャ。
そこへ扉を開けて入ってくるルーン達。
アレス 「来たか…」
ルーン 「……」
アレス 「まずは、オルトロスの話を聞こう。全てはそれからだ」
オルトロス 「……」
オルトロスは広間に入ってきたルーン達を見つめる。
ルーン 「……」
オルトロス 「アクス=ルナル。か…?」
決意し、大きく息を吐くオルトロス。
オルトロス 「全てはシャヌーンがコンピニアと呼ばれた時代。魔道科学文明の最盛期、三人の博士が生み出したシステムにあります。システムコードはA、『アダム』。その実態は人が生理的現象を経ずして生み出した自意識を有する生命体。人が科学を以て生み出した子。
人は神になろうとした」

○オルトロスの語り・コンピニア首都アマルナ
実験室、プラントに眠るアダム。
オルトロス(M) 「その外見は人とはかけ離れたものだと聞きます。鋼より硬い皮を持ち、地を裂く爪を持ち、岩を砕く牙を持つ。鋭い尻尾を持ち、四肢に刃と砲台持つ。それは、そう。生きた兵器だったのです」
博士はアダムへデータを送る。
オルトロス(M) 「コンピニア大戦。エルフと獣人の戦いは、やがてコンピニアと他五国のライムランドを賭けた戦いへと発展した。そんな中、博士はアダムこそが戦争終結の切り札になるであろうと、持ちうる全ての知識を与えた。
アダムは世界を学び一つの結論を導き出した。それが悲劇の始まりです」

研究室に鳴り響くサイレン。
逃げ惑う研究員のエルフ達。
三人の博士は、目の前にある巨大なシルエットに恐怖し慄く。
アダム 「ワレハ、カイシタ。アクヲホロボセ、ト」
眼前を覆い尽くす巨大な影。

オルトロス(M) 「驚くほどのスピードで成長したそれは、もう科学文明が生み出した産物とは呼べなかった。それは巨大魔将、いえ自我を持った巨大生体兵器。博士から『敵を滅ぼせ』と教えを受けたアダムは『世界を脅かす敵とは、この世界に生きる生命である』と結論付けたのです」




○ライム城・玉座の間
広間を静寂が包む。
アレス 「最終システムの暴走によりコンピニアは滅亡した。史実はそういう事だったのか…」
ルーン 「レインは何をしてたんだ?」
ヨシュリア 「時のレインは三名不在でした。行方不明とでも言いましょうか。
後の調査によれば、オレンジストーンのレイン・ベナレス、そしてグリーンストーンのレイン・フォレスタ。この二人は戦中に命を落としています。そしてブルーストーンのレイン…500年前のライム国王にはレインの力はない」
グレイ 「真実のブルーストーンのレインはマホメト師だったから?」
グリン 「そうだ。だから残されたレッドストーンのレイン・シュンジュウ、イエローストーンのレイン・オウシェン、パープルストーンのレイン・ネハベント。この三人がアダムと戦う事になった」
ミッフィー 「レインは死んでも生まれる。生まれたレインがうちや。けど生まれたばっかやからね、な〜にもできん。時代をまたいでグリンも生まれとる。マホメトのじっちゃんはヴァティス再臨に備えてる力を使えん」
ピノ 「だけど、レインでしょ。まさか…レイン三人で戦って?」
ガルシアン 「そのまさかだ。レイン三人と、五国の連合軍、それを以てしてもアダムに敵わなかった」
オウフェン 「アダムは強大です。時のレインは知らなかった。レインの力を得るには、オウルをその身に宿す必要がある。私達もマーハさんに知らされるまでは、力を持たなかった。そうして再臨、ヴァティスと戦い敗北したのですから」
ジニアス 「では、どのようにしてアダムを封じたのですか?」
オルトロス 「時のライム王族が、その身を犠牲にしたんだ。ジニアス」
アレス 「!」
オルトロスはアレスを見上げ、そして自分の話に聞き入る周囲の人間に語る。
オルトロス 「わしらルルカ家先祖とルーンのルナル家先祖。そしてアレス王の先祖であるルルカ=ラントライ、ルナル=ラントライ。この姉妹がその胎内にアダムの魂を封じた」

○オルトロスの語り・レイン及び連合軍陣営
戦火に焼かれるファンジーム大地に敷かれた陣営のテント。
三人のレインとライム国王の前で頭を垂れるルルカとルナルの姫。
ライム国王 「本気なのだな、お前達」
ルルカ 「古の禁呪、『封楔陣』。それは形なき存在を石へ封じる秘術。暗黒魔法を始めとした邪法、同様の禁呪、怨霊や精霊、それらを封じた楔石が世界には多く隠されていると聞きます」
シュンジュウ 「まさか、その禁呪を? あれを石になんかに封じられるわけないじゃない!」
ルナル 「故に我々なのです。女は子を宿す。意志持つ者をその胎内に宿す事が出来る。封印は私達の血に受け継がれましょう。未来永劫に」
シュンジュウ 「あなた達、それはどういう事か分かってるの? あなた達一族は、その封印を背負うのよ。女として生まれたなら、望む幸せだってあるでしょうに!」
悲痛な声を上げるシュンジュウはライム国王へと問う。
ライム国王 「妹達の決意は変わりませぬ。兄の私が何を言おうと…」
ネハベント 「しかし、それは形なき存在である事を絶対条件とする。アダムは既に…」
東の海、遠方を見つめる全員。
山のような巨大なシルエットを映すアダム。
オウシェン 「禁呪『心覗陣』を用いましょう。アダムを肉体と魂に分離するのです。肉体は世界に残し、魂をこの二人に封じる」
シュンジュウ 「ちょっと待ってよ、オウシェン様までッ!」
他全員 「……」
黙るネハベントとオウシェン、ライム国王。
ルルカ 「シュンジュウ様の御配慮、感謝致します」
ルナル 「私達がこの世界を救う糧となるのなら、この身が犠牲になろうと構いませぬ」
シュンジュウ 「……」
すまなそうに顔を伏せるシュンジュウ。

○ライム城・玉座の間
オルトロスは語る。
オルトロス 「そうして、アダムの魂はルルカとルナルに封じられました。二人は子をもうけた。男女一対の子を…それが起源です」
フレディン 「ルルカとルナルの双家に分かれ、その男女が結ばれることで女児が二人生まれる事はなかった。その血が交じりなく受け継がれることで、封印を守っていたのですね」



オルトロス 「しかし、わしらは楔の家訓を破り、封印を解きました。楔の家系に女が二人いる事はならない。女が二人居れば、500年前の状況が蘇る。アダムの魂が目覚める可能性が生まれてしまう。だから…」
ルクレチア 「対の女、つまり母親は女児を産むと同時に必ず死んだ」
オルトロス 「……」
ルーン 「…何だそりゃ。そりゃあ楔の封印なんかじゃねえ、呪いだッ!」
オルトロス 「その通りだ、アクス。お前の母、フィアは生きたかった!」
ルーン 「ッ!」
オルトロス 「フィアはわしと出会う前にジャキィスと会い、彼から楔の真実を聞かされた。聖戦の中、デストニアを出たジャキィスは魔王と戦う術を探し、アダムの存在を知ったのだ。己の手に負える反中ではない事が分かり賢明な彼は諦めたが、この双家に生まれる姫を救いたいと願った」
ルーン 「ジャキィスがそんな事を?」
オルトロス 「ああ。わしもその真実をシーナから聞かされた」
ジニアス 「母上から?」
オルトロス 「そうだ。シーナもまた友であったフィアを救いたいと願っていた。そしてシーナはわしも救ってくれた。わしにフィオを残してくれた…」
うなだれるオルトロス。
オルトロス 「わしは妹・フィアと娘・フィオを守りたかった。ゆえに世間を欺き、レインにすら偽った。この事態、全てはわしの不徳が致すところです。申し訳ありませぬ、陛下。わしはライム魔術師団長の名にふさわしくはありませぬ。ライムの王族を名乗る資格はありませぬ。どうか、この首切って…」
アレス 「冗談じゃない!」
オルトロスの言葉を止めるアレス。
アレス 「何度も言わせるな、オルトロス。もう俺は、人を失うのはたくさんだ!」
オルトロス 「…陛下」
アレス 「今は500年前と違う。俺達はオウルをこの身に宿している。そして六人全員がこの場に居る。ヴァティスを倒した俺達が…だ」
リリファン 「ウチの持っていた禁呪『心覗陣』が500年前に使われたなら、アダムは肉体と魂に分かれたということですね。そいなら、肉体はどないしたんでしょうか?」
ヨシュリア 「アルティマ大陸」
ルーン 「!」
ヨシュリア 「そのものでしょうね。それなら全てが結びつく。500年前存在しなかった大陸が、突如現れた。大戦の最終決戦はファンジーム東の大海。そこでアダムは眠りに着いた」
グリン 「魂は失われても肉体は成長するってことか。すると敵さんはバカでかいサイズだな。で、バルナギーゼの本拠地はどこだ?」
オルトロス 「アルティマ最南端の地エバ。そこが所謂アダムの心臓に当たります。バルナギーゼ卿もそこに居るものかと…」
アレス 「ならば、フィオとシーザーも一緒だな…」
ホウンテイン 「陛下ッッッ!」
広間へと駆けこんでくるホウンテイン。
ホウンテイン 「アルティマ上陸部隊より通達です。アルティマ上空に巨大魔将出現。また、全土で群発地震が発生し南方の活火山が噴火したとッ!」
アレス 「南方?」
ホウンテイン 「火山付近で先日ライム上空に飛来した空中戦艦が確認されていますッ!」
ガルシアン 「動きだしたか!」
オウフェン 「急ぎましょう」
ミッフィー 「せやな」
アレス 「ミッフィーのシルフで俺達が先行しよう。ルーン、お前達は…」
ルーン 「『ここで待ってろ』とか『サポートをしろ』とか言うんじゃねえだろうな」
アレス 「……」





次々に言葉を続けるクエスターズ一行。
グレイ 「僕達のクエストなんです。最後までやらして下さい!」
ピノ 「世界を救うのよ、有名になる事間違いないわッ!」
ジニアス 「姫様は、我々がお助けします!」
ルクレチア 「勿論、シーザーもね。陛下の元に連れてくるわ」
リリファン 「グレイはんの行く所。うちはどこまでもついてくで!」
一連の言葉にやや呆れぎみのガルシアン。
ガルシアン 「お前達は己の力を過信してはいないか?」
オウフェン 「危険です! 500年前、時のレインすらも封じるに終わった相手なのですよ…」
心配そうなオウフェンの言葉を遮るフレディン。
フレディン 「オーフェ様。私達はそれを承知の上で申し上げているのです」
笑うミッフィー。
ミッフィー 「なあ、タケル。もう何ゆうても、聞かんとちゃう?」
同じようにグリンも楽しそうに促す。
グリン 「だな。獲物の横取りはよかねえぜ、タケル!」
ヨシュリア 「民の避難と、地上からの援護を我々は行なうとしましょう」
ルーン 「フィオは俺達の仲間だ。だから…俺達が救う!」
強い言葉に瞳を閉じるアレス。
アレス 「お前達にはかなわないな……」
目を開くアレス。
アレス 「ならば、ラピッドクラウドをお前達に預けよう。行け、クエスターズ!」
玉座から立ちあがるアレス。

アレス(M) 「レインとは何なんだろう、マーハ…」

○アレスの回想・レオハルトオープンデッキ
八年前聖戦、レオハルトの展望台。
月明かりの下でマーハに尋ねるアレス。
タケル 「レインとは『統治者』なんだろ? 各大陸の…」



マーハ 「『絆』だよ。そう教えてくれたのはタケルじゃないか?」

アレス(M) 「そうだったな、マーハ。フィオと彼らの絆を俺達が断つ事はできない。ならば俺達の夢、彼ら次代へ託そう」

To be continued…
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