最終話 クエスターズ
Bパート
○ラピッドクラウド・脱出口
ブルッと震えるリリファン。
その彼女にグレイは優しく肩に手をかける。
グレイ 「大丈夫、リリファン?」
リリファン 「あかん、ちと緊張してきましたわ」
グレイ 「無理ないよ。僕らがやろうとしている事は、それだけ大変な事なんだから」
グレイは笑う。
グレイ 「『クエスト』だなんて簡単な事言っちゃったな」
ピノ 「あら、後悔してるの?」
グレイ 「ち、違うよ。後悔なんてしてないって!」
ピノ 「グレイはコンピニアのマシン兵器を見てビクビクしてたじゃない。あの頃に比べれば随分強くなったものね」
グレイ 「う〜ん、そうだね」
ピノ 「何か心変わりすることでもあったの?」
グレイ 「覚悟…かな」
ピノ 「覚悟?」
グレイ 「うん。僕らが背負っているものの大きさが、僕に自信をくれる。僕達にはレインとラピッドクラウドがついていてくれるから」
ルクレチア 「心強い味方よね」
ジニアス 「しかし、その世界とレイン、そしてラピッドクラウドを敵に回したバルナギーゼ卿に勝機はあるのでしょうか?」
ルクレチア 「ジニアス。バルナギーゼ卿に同情でもするつもり?」
ジニアス 「馬鹿な事を言わないで下さい。姫様を攫った輩に同情をするなどと! 私はただ…」
フレディン 「500年前、時のレインはアダムにかなわなかった。しかし当時のレインは3人、六元神等魔法発動の必須条件であるオウルをその身に宿してはいない。無論レオハルトやラピッドクラウドといった巨大戦艦も持たない。今の私達にはヴァティスを倒した6人のレインとラピッドクラウドがついている」
ジニアス 「敵がエデン…あの巨大戦艦を生み出したとしても、果たして…」
ルーン 「勝算があるのか? だな」
ジニアス 「ええ…」
ルーン 「バルナギーゼ卿はともかく、シーザーの目的はこの戦いに勝つ事じゃない」
グレイ 「シーザーの目的って?」
ルーン 「あれを叩き起こして聖戦と同じ状況を作り出す事だ…」
モニタに映るアダムのシルエット。
ルーン 「500年、奴は成長し続けたんだとしたら、バルナギーゼもシーザーもそこに賭けたのかもしれねえ」
グレイ 「500年も眠ってたんだ…」
ピノ 「叩き起こさないように、そっと殺れないかしら」
ルーン 「また都合のいい事言うな、お前は…」
ピノ 「だってぇ、脅したのはあんたじゃないのよ!」
ルーン 「だ〜から、心臓部に入ってとっととフィオを助けりゃいい。完全に目を覚ます前にな」
ピノ 「それって、まさにあたしが言った『都合のいい』作戦じゃないの」
グレイ 「ルーン、僕達はフィオを助けてアダムも止めなきゃいけないんだよ!」
ルーン 「寝てる本体をぶっ倒しちまえばいいだけの話だろ。あとかたも残らないくらいにな」
ピノ 「言ってる事、あたしと同じじゃない」
リリファン 「なんやそれだけ聞くと、卑怯な感じがしますわ」
ジニアス 「しかし、アダムとはアルティマ大陸そのものなんですよ。大陸をぶっ倒すって、全土を破壊するつもりですか〜!」
ルーン 「んなら、心臓部をぶっ潰して、死んだ本体はそのままにしておきゃいいんじゃねえのか?」
フレディン 「あ〜、それでは。戦後アルティマの民はその亡骸の上に住まえばよいということですね」
ルクレチア 「フレディンまで納得してるんじゃないの!」
グレイ 「作戦らしい作戦も立ってないよ〜」
ピノ 「今までもそんなだったじゃない?」
ルーン 「うじうじ考えるのも俺達らしくねえんだよ」
他一行 「!」
ルーン 「俺達は一介のクエスターだ。悪いが俺の目的は世界を救うなんて事じゃねえし」
ピノ 「フフフ、アハハ。『フィオを助ける』のがあんたの第一目的だものね」
ルーン 「…あ〜、分かったら世界だのレインだのラピッドクラウドだの考えるんじゃねえよ」
リリファンは思いついたように手を叩く。
リリファン 「ルーンはん、皆はんの緊張を解そうとされたんですなあ!」
グレイ 「凄いや…」
ルクレチア 「ちょっと会わない間に大人になったわよね」
ジニアス 「けれど作戦がないのには変わりないんですが」
フレディン 「悪態をつかれただけなのかもしれません」
ピノ 「散々な言われようね」
ルーン 「おい…」
苦笑するピノに不貞腐れるルーン。
その時ラピッドクラウドが轟音と共に大きく揺れる。
艦内に響く警告音。
一行 「!」
ルーン 「な、何だ!」

○同・メインブリッジ
アイシャを除くクルー。
緊張が走る。
シーアイス 「何事ですかッ!」
リップ 「第七艦橋被弾。敵襲です!」
シーアース 「馬鹿な、距離にしておよそ150万。エデンの射程圏内だと!」
クルエ 「エデン主砲より熱源確認。第二波来ます!」
シーアイス 「シールド展開、左舷に回避!」
舵を勢いよく切るベドゥイン。
ベドゥイン 「ダメだ、間に合わん!」
イヴン 「エネルギー充填率45%、防ぎきれない!」
サルサ 「総員耐衝撃に備え…きゃあ!」
爆音と共に大きく揺れるラピッドクラウド。
クルーは悲鳴を上げる。

○同・艦内廊下
背丈ほどの大きさもある白い布に覆われた包みを持つアイシャとヘパイストス。
揺れる足場にアイシャはよろける。
アイシャ 「ッ!」
ヘパイストス 「大丈夫か、アイシャ」
アイシャ 「ヘパイストス様、これは?」
ヘパイストス 「先手を打たれたか。エデンの主砲・メインフェイザー砲じゃな。おまけにサブフェイザー砲に、光子魚雷・量子魚雷に副砲まで乗っけておる。やれやれ、こちらの予想よりも敵の機体は高性能だという事じゃ…」
アイシャ 「急ぎましょう」
ヘパイストス 「うむ」
駆けだすアイシャとヘパイストス。

○同・メインブリッジ
シーアイス 「ッ、被害報告せよ!」
リップ 「第六、第七艦橋小破、主力機関に損傷ありません」
サルサ 「動力システム、シグナルオールグリーン」
ベドゥイン 「不幸中の幸いだな」
クルエ 「エデン主砲熱源沈黙。…こ、これは。小型飛行体多数射出されました!」
シーアイス 「な…」
サルサ 「モニタ入ります!」
メインモニターに映し出される小型飛行兵器バグズ・ヒコウ。



クルエ 「解析終わりました。システムコード・I。バグズ改良型『ヒコウ』。数…およそ3000!」
イヴン 「なんて数なの」
シーアイス 「敵もこちらを認めてくれたという訳ですか…、不意打ちとは卑怯ですがね」
苦笑するシーアイスは眼鏡を正す。
シーアイス 「イーグル1、聞こえますか?」
モニタに映し出されるジュウジュ達イーグルチームの表情。
ジュウジュ 「おう、俺達の出番だな?」
シーアイス 「はい。あなた方イーグルチームはエデンへ先行して下さい。作戦目的はあくまで陽動攪乱。エデンおよびヒコウの撃墜ではありません」
ジュウジュ 「おいおい、攻撃を仕掛けるなって言うんじゃねえだろうな?」
シーアイス 「ヒコウに関しては構いません。エデンについてはこちらの十分な解析が終わるまで、防御以外の追撃は極力避けて下さい」
シルクレスト 「なるほどな、ラピッドクラウドの主砲で木端微塵ってわけか」
シーアイス 「いいえ、白兵戦へ持ち込みます」
クルー一同 「はあ?」
驚き声を上げるイーグルチームとメインブリッジのクルー全員。
ペンソ 「な、何言ってるのさ。空が戦場だっていうのに、あのエデンに着艦して白兵戦だなんて馬鹿げてる!」
シーアイス 「クエスターズのエバ突入を確認後、イーグル1は速やかに本艦へ帰還して下さい。その後、私と共にエデンへ潜入。あれを動かしている人間が必ずや居るはずです。それを取り押さえます」
ベドゥイン 「無茶苦茶だ、お前自らあれに赴くのか。ラピッドクラウドの指揮はどうする!」
シーアイス 「アイシャにこの場を一任します。サポートはヘパイストス殿にお任せします」
ベドゥイン 「確かに、ヒコウには操縦する人間は居ない。しかしエデンクラスになれば、乗る人間が居るだろうが、それをたった二人で制圧するなんぞ…」
ジュウジュ 「タケルは言ったな。この戦いで犠牲を出すなと」
シーアイス 「……」
ジュウジュ 「俺と艦長。少人数に越したことはないか」
苦笑するジュウジュ。
リップ 「そんなの許さないわ、兄さん! 犠牲が少なければいいってものではないでしょ!」
サルサ 「違いますよ、リップさん」
いきり立つリップを安心させるようにサルサは言う。
サルサ 「隠密行動を得意とするジュウジュ様と個人戦術に優れたシーアイス様。お二人であるからこそ、この作戦は確実であるのです。そして…」
シーアイス 「犠牲はたとえ敵方であったとしても、出してはならない。これは陛下の御意志です」
同じく安心させるように微笑むクルエ。
クルエ 「だから、この艦の指揮はアイシャがとるの。妹が兄を見殺しにしないわ。それはリップ、あなたが一番分かってるでしょ!」
リップ 「クルエ…、サルサ…」
ペンソ 「リップ、俺達もジュウジュの援護は全力する」
シルクレスト 「ヒコウなんかに邪魔はさせねえ」
イヴン 「もちろんあたし達もね。艦長代理にはレオハルトの、いやラピッドクラウドのクルーがついてる」
コクリと頷くリップ、決意の表情。
リップ 「うん」
シーアイス 「ジュウジュ殿。申し訳ありませんが、お付き合いお願いします」
ニヤリと笑うシーアイス。
ジュウジュ 「敵の艦長も生かして捕えるか。甘いな…」
シーアイス 「……」
ジュウジュ 「でも悪くねえ」
同じく笑うジュウジュ。
モニタからイーグルチームが消える。
サルサ 「カタパルト、シグナルオールグリーン」
クルエ 「ハッチオープン」
リップ 「イーグルチーム、スタンバイOK」
シーアイス 「イーグルチーム発進!」

○同・艦内廊下
インカムを通じてメインブリッジのやり取りを聞いていたアイシャは、横に立つヘパイストスを見つめる。
大きな荷物を抱えた二人。
励ますようにアイシャを見上げるヘパイストス。
ヘパイストス 「構わんな?」
アイシャ 「はい。元より覚悟は出来ています。それがアレス様の意。陛下の意に従うのではなく、意を尊ぶ。兄はそういう人間です」
ヘパイストス 「うむ」
脱出口へのドアが開くと、そこにはクエスターズの姿がある。
ルーン 「お、お前ら…」
アイシャ 「敵の機体はこちらの想像を上回る高性能だったようです。被弾はしましたが大きな問題はありません。ご安心ください」
表情を変えずに告げるアイシャにピノは戸惑う。
ピノ 「ご安心…って」
アイシャ 「これより全速でアルティマ上空へ向かいます。既にエバ上空の空域は戦場と化しています。ですので、ハッチを開いた後のエバ突入は細心の注意を払って下さいませ」
アイシャは手にある包みをルーンに手渡す。
同じようにヘパイストスもまた包みをジニアスへ手渡す。
ルーン 「これは…」
アイシャ 「アレス様からの預かり物です。お渡しするようにと」
包みを開くルーンとジニアス。
ルーン 「!」
二つの包みから現れた6本の神具。
ジニアス 「これは神具!」
ルーン 「な、なんで神具を俺達が…」
ヘパイストス 「神具は操者を選ぶ。今のお前達にこの『伝説の神具』はふさわしいと、タケルもわしも思うがの」
グレイ 「僕達が使う事が出来るの?」
ヘパイストス 「フォッフォッフォ、それはお前達次第じゃないかのう」
ピノ 「んもう、いじわる!」
ルクレチア 「全部で6本。足りないんじゃない?」
リリファン 「ああ、ウチはいいです、ウチはいいです」
慌てて遠慮したリリファンは首をブンブンと振る。
フレディン 「御心配に及びませんよ、リリファンさん。神具とは武器でもあり防具、そして元素。数形は操者に見合い変化すると言います。そうですよね、ルーンさん?」
思いつめた表情で眼前にある神具を見つめるルーン。
ルーン 「ああ…」
ジニアス 「しかしそれも、我々が神具に認められればの話ですが…」
ルーン 「迷ってる暇なんかねえよ」
グレイ 「そうだね…」
一行 「……」
神具へと手を伸ばす一行。
すると神具は鋭く光ルーンは腰に下げた神具へ、ルクレチアは剣へ、リリファンは弓へと光が吸い込まれていく。
神具へと変化するルクレチアとリリファンの武器。
他一行は各々腕輪へと形を変える。
ルクレチア 「レイピアが…神具になった」
リリファン 「なんか軽くなっとりません?」
グレイ 「僕らは腕輪だね」
ジニアス 「はい、魔力を増幅する作用があるようです」
フレディン 「ふさわしい形への変化。こういう事なのですね」
ピノ 「神具の民があたし達を認めてくれたんだわ、ルーン」
ルーン 「プラチナ…みんな…」
神具の民へと思いをはせるルーン。
そこへアナウンスが響く。
リップ 「総員に告ぎます。これより、本艦はアルティマ上空・エデン戦闘空域へ突入します。作戦パターンは08。各員戦闘配置について下さい。繰り返します、これより、本艦はアルティマ上空・エデン戦闘空域へ…」
真剣な面持ちでアナウンスを聞き入るクエスターズ一行。
ヘパイストス 「うむ、いよいよじゃな」
アイシャ 「はい…」
クエスターズへ対峙するアイシャとヘパイストス。
アイシャ 「それでは皆様。ご武運を」
一行 「……」
頷くクエスターズ一行。




WMV版

○アルティマ・北部陣営
大陸から避難する群衆の列の先、大地に描かれた六星。
大陸住民の脱出用巨大魔法陣を敷くエイセルとリュート達。
印を組み、魔力を高める。
リュート 「だいたい、何で一般人の俺がこんな事!」
シャーク 「文句を言うな、リュート!」
エイセル 「クロスナイツのあんたが何言ってるんだか」
アリスタ 「私達もな、エイセル。ずいぶん遠くまで来たもんだ」
レニー 「本当ね、兄さん」
エイセル 「ああ、だがこれで最後だ!」
エイセルは二人に頷く。
エイセル 「見届けてやるよ、レイン。そして、クエスターズ!」

○アルティマ・東部陣営
やはり大陸住民脱出用の魔法陣を敷くヨシュリアとガルシアン。
印を組み、魔力を高める二人。
ヨシュリア 「大陸北部の転送魔法陣が完成したようです」
ガルシアン 「エイセルとリュート達がやったか…」

○アルティマ・西部陣営
魔法陣を敷くグリンとミッフィー。
ミッフィー 「こっちももうすぐで完成や!」
グリン 「住民の避難が終わったら、タケルと合流するぞ」
エバの活火山を見つめるグリン。
グリン 「フィオ達は無事なんだろうな…」

○アルティマ・南部陣営
エバの活火山を見つめるアレスとオウフェン。
印を組み、魔力を高める二人。
控えるライム・サンタマリア王国連合軍。
オウフェン 「彼らを信じましょう」
アレス 「ああ。今は俺達の出来る事をやるしかない」
兵士 「巨大魔将出現、第三部隊突破されましたッ!」
アレス 「俺が出る! 第八部隊以降はここで待機、他は俺に続け!」
兵士 「ハッ!」
再び活火山を見つめるアレス。
アレス 「…フィオ、…ルーン!」
その見つめる先にラピッドクラウドの影が映る。
アレス 「来たか!」

○エバ活火山上空・エデン戦闘空域
ヒコウを打ち落とすイーグル三機。
イーグル1コクピット。
ジュウジュ 「来やがった!」
そこへイーグル2とイーグル3の通信が入る。
ペンソ 「ジュウジュはラピッドクラウドへ戻る準備をして。後は俺達が…うわ!」
ジュウジュ 「ペンソ!」
イーグル2を狙うヒコウを至近距離で撃墜するイーグル3。
シルクレスト 「戦闘中だ! 気を抜くんじゃねえ、ペンソ」
ペンソ 「た、助かった…」
シルクレスト 「お前が居ると気が散るんだよ、ジュウジュ。後は俺とペンソの二人舞台だ。邪魔すんな!」
笑うシルクレストに頷くジュウジュ。
ジュウジュ 「ああ、後は任せた!」




○ラピッドクラウド・メインブリッジ
リップ 「エデン戦闘空域です!」
クルエ 「解析終わりました。敵艦内の生体反応1名。…一人です!」
イヴン 「たった一人であのエデンを動かしてるっていうの!」
サルサ 「モニタ入ります」
モニタに映し出されるエデン解析図。
メインブリッジ相当部が赤く点滅する。
ベドゥイン 「一人か…これは好都合だな」
シーアイス 「ええ。本艦はこのままシールドを維持!」
リップ 「クエスターズ突入まで30秒後」
シーアイス 「弾幕張れ!」

○同・ガンサイトルーム
ジェナード 「ラジャー。目標0時方向、ヒコウ、エデン機関部。敵さんのメインブリッジに当てるなよ!」
セイクレッド 「ラジャー」
ダイス 「待ってました!」
スティック 「蹴散らせ〜!」
ジェナード 「撃てーーーーーーーーーー!」
カタリム 「ッ!」
ラピッドクラウド副砲一斉射撃。

○エデン・メインブリッジ
不敵に笑うイデアはモニタを見上げる。
イデア 「フフフ、なめられたものよ。レインでもない只人風情がちょこまかと蠅のように!」

○ラピッドクラウド・メインエンジン
モニタを見上げるヘパイストスと偽レイントリオ。
エデンのシールドに弾かれるラピッドクラウド一斉射撃。
ダジリン 「敵もシールド持ちかよ!」
ヘパイストス 「構わん。今の目的はルーン達を無事エバへと送り届ける事じゃ!」
響くリップのアナウンス。
リップ 「突入まで10秒」

○同・脱出口
響くリップのアナウンス。
リップ 「7、6、5、4…」
シルフの背に乗るクエスターズ一行、その表情。
リップ 「3、2、1、ハッチ開きます!」
翼を広げるシルフ。
グレイ 「いっけええええええええええ〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜!」
飛び立つクエスターズを乗せたシルフ。

○エデン・メインブリッジ
イデア 「させぬわ!」

○ラピッドクラウド・メインブリッジ
クルエ 「エデン主砲に熱源反応ッ!」
シーアイス 「シールドフルチャージ! 何としてもここは耐えろッ!」

○同・メインエンジン
ヘパイストス 「やっとる!」
機関部の計測器を慌ただしく調整するヘパイストスは悲鳴のような叫びを上げる。
セイロン 「ちょっとちょっと嫌な感じじゃないの、エデンの先っちょ!」
アッサム 「この距離であれをやられたらたまらんがな!」
セイロン 「んもう、初めてなんだから、優しくしてよ〜!」
アッサム 「ちゃうちゃう、これで三発目や」
ダジリン 「ボケてる場合じゃねえし、突っ込みどころはソコじゃねえ〜!」
セイロン 「じゃ、どこに突っ込むのよ」
ダジリン 「話題を戻すな〜〜〜〜!」
アッサム 「って、来るがなッ!」
ヘパイストス 「いかんッ!」
焦るヘパイストスに少女の幻聴が聞こえる。
フォウリー(M) 「48・92・73。座標照準を合わせて! そこをめがけてくる!」
ヘパイストス 「うむ!」

○同・ガンサイトルーム
カタリム 「だめです、全部シールドに弾かれちゃいます!」
ジェナード 「ちい!」

○エバ活火山上空・エデン戦闘空域
不安そうにラピッドクラウドの方へと振り返るピノ。
ルーン 「後ろを向くなピノ」
ピノ 「!」
ルーン 「振り返ってる場合じゃねえ」
ルーンは火口付近に見える遺跡の入り口を指さす。
ルーン 「あれだ、グレイ!」
グレイ 「分かった。みんなしっかりつかまってて!」
遺跡へと消えていくシルフ。
同時にエデンから主砲が放たれる。

○ラピッドクラウド・メインブリッジ
シーアイス 「ッ、被害報告せよ!」
リップ 「第五艦橋大破、全エリア隔壁降ろします」
シーアイス 「…近距離戦闘は不利だな。しかしよくもった…」
クルエ 「敵シールドは平面構成です。一点突破は不可能と思われます」
シーアイス 「やはり、エデンを落とすには内から攻める必要があるか」
サルサ 「艦長、イーグル1帰還を確認しました」
シーアイス 「第二波が来る気配は?」
クルエ 「今のところありません。敵主砲はエネルギー充填に相当の時間がかかるようです」
シーアイス 「いや、弾数に限りがあるからと考えるのが妥当だな」
シーアイスは艦長席から立ち上がる。
アイシャ 「行かれますか、お兄様」
シーアイス 「ラピッドクラウドのエネルギーは全て防御に回せ。ガンナーチームはイーグルのバックアップに回り、ヒコウの掃討を。とにかく時間を稼ぐように」
アイシャ 「分かりました」
シーアイス 「任せたぞ!」
駆けだすシーアイス。

○アダム心臓部
機関部に捕らわれたフィアとフィオ。
フィア 「コネクトオールクリア」
フィオ 「……」
うつろな表情のフィアに対し、耐えるようなフィオはうっすらと瞳を開けて自分たちを見上げるバルナギーゼとシーザーを見下ろす。
二人を見上げるバルナギーゼとシーザー。
バルナギーゼ 「最後まで呪いに抗うとは感心だな。ルルカの娘。ここまで時間がかかるとは…。お前の忍耐力は評価に値するぞ」
フィオ 「…こ、こんな事をして…この世界がどうなるか…」
バルナギーゼ 「心配には及ばんよ。わしがアダムを従わせてみせる」
アダム 「私ヲ起コスノハ、オ前カ?」
フィオ 「!」
声に驚きフィオが見上げるその天井に映る二つの瞳。
アダム 「眠イ…500年モノ間、眠リ続ケタ。何故私ヲ起コソウトスル? 戦イハ終ワッタノデハナイカ?」
両手を掲げるバルナギーゼ。
バルナギーゼ 「目覚めろ、アダム。その力を我に! 世界を支配しレインを服従させ、神をも凌駕するその力を我にッ!」
狂喜するバルナギーゼ。
フィオ 「…な…なんて事を…」
アダム 「人ハ今ダ戦イヲ望ムノカ、悪ハマダ滅ンデハイナイノカ」
バルナギーゼ 「わしの名を呼べ! わしを認めろ、アダム!」
アダム 「滅ボス」
機関部から触手のようにコードが伸び、バルナギーゼへと襲いかかる。
バルナギーゼ 「な!」
アダム 「人ハ即チ悪!」
機関部へと引きずり込まれていくバルナギーゼ。
バルナギーゼ 「ど、どういう事だ。ガイアス、これは!」
バルナギーゼは苦しげに訴える。
そんな彼を嘲笑するシーザー。
シーザー 「大戦の中、戦うために、滅ぼすためだけに生まれたアダム。アダムが認めるのは人、即ち悪。アダムは戦い、滅ぼす。人をな。それだけのことだ」
バルナギーゼ 「わしは只人ではない。わしの名はバルナギーゼ=ウォレットォォォォ!」
シーザー 「お前の名など、アダムにとってもこの俺にとっても意味はない。お前の名を呼ぶ人間は他に居ただろうに…」
バルナギーゼ 「ぐあああああぁぁぁぁぁぁっっっっっっ〜〜〜〜〜〜!」
機関部へと吸収されるバルナギーゼの体。
シーザーは唯一人残され、一連の様子を見下ろしていたフィオは怒りに震える。
フィオ 「シーザー、お前はバルナギーゼをだましていたのか!」
シーザー 「空の瞳の剣士・フィオよ。その瞳でとくと見よ! アダムは目覚めた。聖戦の再来だ!
世界は…破壊されるッ!」
雄叫びを上げるシーザー。

○アルティマ・南部陣営
火口のアダムはゆっくりと両手を掲げる。
地に響き渡る低い声がアルティマ大陸に木霊する。
アダム 「目覚メヨ、我ガ子ラヨ…。憎ミ奪イ妬ミ殺ス、人コソガ悪。滅セヨ、我ガ子ラヨ。我等ハソノタメニ生マレテキタ!」
アルティマの大地に地鳴りが走る。
その声に焦るアレスは控える連合軍兵士に問う。
アレス 「住民の避難はどうなっている!」
連合軍兵士 「南部は残り約3万、北部は2000、東西各部5万人がまだ…」
アレス 「くッ、間に合わない!」
グリン 「タケル、聞こえるか!」
アレスの指輪が光り、グリンの通信が聞こえる。
アレス 「グリン!」
グリン 「もうどうしようもねえよ、脱出船も足りねえ。俺達はまだしも、エイセルとリュートが持たねえだろ!」
アレス 「…いずれにせよ、もう長くは待てない」
剣を構えるアレス。
アレスと軍隊の前に小山ほどの大きな影が大地から巨体を起こす。
不気味に首を擡げる幼児アダム。



アレス 「お前達は撤退し、オーフェの援護に入れ! この場は俺が引き受ける」
連合軍兵士 「しかし、陛下…」
アレス 「これは命令だ。なんとしてでも住民を守り抜け。負傷者を出す事は許さない!」
グリン 「おい、一体何があったんだ、タケル!」
アレスは威嚇する幼児アダムを見上げる。
アレス 「グリン、お前の所にも出てくるぞ!」
アダムへと駆けだすアレス。

○同・西部陣営
通信の途絶えた事へ不満を示すグリン。
グリン 「おい、タケル! …俺様のトコに一体何が出てくるってんだ?」
ミッフィー 「よそ見すんなや、グリン!」
転送魔法陣を敷くミッフィーはつらそうに訴える。
グリン 「ミッフィー、独りで耐えられるか?」
真摯な顔でミッフィーを見つめるグリン。
ミッフィーは苦笑する。
ミッフィー 「…しゃーないわ、、やったるで」
グリンは長蛇の列を作る住民を眺めて呟く。
グリン 「なあ、この戦いが終わったら…」
と言いかけた言葉を悲鳴と轟音が打ち消す。
グリン 「つ〜、このいい時に!」
ヨシュリア 「終わってからにして下さい」
突然グリンの指輪へヨシュリアの通信が入る。
グリン 「よ、ヨシュア!」
グリンは我に返り、騒ぎの先に見える幼児アダムの巨体に気づく。
グリン 「何だありゃ」
ヨシュリア 「先ほどのアダムの声を聞いたでしょう」
グリン 「ああ、人が悪だとか、子供がどうとか…」
ヨシュリア 「そのアダムの子等ですよ。目覚めだしたのです、アルティマ大陸が」
グリン 「おい、ちょっと待てよ。じゃああんなのがそんじょそこらにわらわら出てくるっていうんじゃ」
ヨシュリア 「幸い北部は地形の利もあり、逃げ遅れた住民も残りわずかです。東西南部は私とミッフィー、オーフェに任せ、あなた方3人で時間を稼いで下さい」
グリン 「時間を稼げって…3人でどうしろってんだ!」
アレス 「500年前のレインはその3人だったんだ」

○同・南部陣営
倒れるアダムの巨体。
アレスはアダムの脳天から剣を抜く。
アレス 「聞こえるか、みんな。狙うのはアダムの額だ。魔晶石と同様、核がそこにある。俺とグリン、ガルスの3人で住民の安全が確保できるまでの時間を稼ぐ。エイセル、リュート!」

○同・北部陣営
転送用魔法陣を敷くエイセル達。
リュートの左中指にはめられた指輪から聞こえるアレスの声。
リュート 「うわ! 凄い人からメッセージが来た!」
エイセル 「!」
エイセルは自分の手にある指輪を翳す。
エイセル 「アレス王か。こうして直に話すのは初めてだな」
アレス 「挨拶をしたいところだが、時間がない。あとどのくらいかかる?」
エイセル 「残り一度の転送で、こちらの住民の避難は終わる」
魔法陣の中で不安な住民。
避難民 「一体どこに逃げりゃいいんだよ」
避難民 「うあああああ〜〜〜〜ん」
避難民 「ああ、世界の終わりだ!」
避難民 「パパ〜、ママ〜ッ」
避難民 「神様、どうかご慈悲を…」
避難民 「何が起こってるのっ!」
避難民 「助かるのかのう、わしらは…?」
避難民 「おそろしや、おそろしや…」
アリスタ、レニー、シャークが詠唱を始めている。
エイセル 「幸いこちらは海峡を隔てた向こうにサンタマリアの対岸が見える。全員サンタマリアへ移送するつもりだ」
アレス 「終わりしだいお前達もこの大陸から脱出しろ。アルティマ全土が戦場になる。その前に…俺達でアダムを封じる」
リュート 「ッ、フィオ達を見殺しにするのか!」
悲鳴のような声をリュートは上げる
アレス 「違う。無論その前に彼女たちを助け出す。その後に、この大陸を封じるつもりだ」
嘆息するエイセル。
エイセル 「アルティマを沈めるつもりだな。28年前に一度滅亡したライムのように」
アレス 「ぎりぎりまで待つつもりだった。しかし…」
アリスタ 「エイセル!」
エイセルを呼ぶアリスタの叫び。
驚きエイセルの振り返る先に、こちらへと向かってくる小山ほどの巨大な影に気づく。
エイセル 「な…なんだ? ありゃ…」
リュート 「アダムの子か…くっそ〜。シャーク、アリスタさん、レニーさん。後は任せたよ!」
リュートは詠唱を中断し、エイセルの横へと並ぶ。
リュート 「残り1回の転送なんだ。エイセルと俺、二人でなんとか持たせよう」
アレス 「エイセル、リュート。二人で戦えるか?」
シャーク 「無理だ、お前達が抜けた俺達三人でこの魔法陣を完成するなんぞ…」
アリスタ 「避難民の中にも魔術師が居るはずだ。協力を仰ごう。我々ごと、全員をサンタマリアへ転送する」
レニー 「そうね、それならどうにかなるかもしれない!」
シャーク 「となると、時間がかかるぞ。持たせられるか、リュート?」
決意の表情でリュートはエイセルを見上げる。
リュート 「やるしかないね、エイセル…」
エイセル 「アレス」
アレス 「……」
エイセル 「人命を優先するお前の意志は認める。しかし故郷を失う俺達もまた、この戦いの犠牲になると考えているか?」
アレス 「エイセル…」
エイセル 「お前は聖戦で多くのものを失った。そんなお前なら、アルティマで暮らしてきた俺達の気持ちも分かるはずだ。戦いで失われるものは『命』だけではないということを」
アレス 「ああ。…封印は最終手段だ。約束する」
通信が途絶え、エイセルは背にある大剣を抜く。
エイセル 「見届けると誓ったんだ、こんな所でくたばりやしねえ。行くぞ、リュート!」
リュート 「ああ!」
駆けだす二人。

○エバ活火山・アダム胎内
遺跡の廊下を走るクエスターズ一行。
ピノ 「敵の気配はしないわ。みんな外に出払っちゃってるみたいね」
グレイ 「運が良かったって言うべきかな」
ルーン 「……」
そこへ神具から聞える女性の声がルーンを呼ぶ。
プラチナ 「ルーン!」
ルーン 「!」
驚き立ち止まるルーン。
腰に掛けた神具を手に取る。
ルーン 「プ、プラチナ?」
その様子に足を止める他一行。
ジニアス 「ルーン、どうしたのですか?」
プラチナ 「アダムが目覚めだしたわ。時間がない」
ルーン 「アダムが目覚めただって!」
一行 「!」
ルーンの言葉に驚く一行。
プラチナ 「レインがアダムの子達と戦っている。アルティマ大陸から住民すべてを避難させるなんてもう不可能よ。とすれば、もう取るべき手段はただ一つ」
ルーン 「ここを封じるって事か。俺達ごと」
一行 「!」
ルクレチア 「そんな、じゃああたし達は…」
フレディン 「いいえ、そんな事は…。オーフェ様が、レインの皆様がするはずはありません!」
プラチナ 「急ぎなさい、ルーン!」
ルーン 「!」
駆けだすルーン。
その彼に他の一行は続く。
リリファン 「住民を守りながら、アダムの子を相手にして、おまけにSealの神等魔法を完成させるやなんて…無茶苦茶やないですか!」
ルーン 「俺達が迂闊だった。500年前とは違う、俺達にはヴァティスを倒した6人のレインが居る、ラピッドクラウドが居る。圧倒的に有利だと高をくくっていた。対する奴らが賭けていたのはアダムの500年の成長。そうじゃなかった! 奴らが賭けていたのはこの…アダム、アルティマの500年という歳月。500年分の人々の歴史だ!」

○エデン艦内・メインデッキ
勝利を確信したイデアは高らかに笑う。
イデア 「アハハハハハ! 民など死してもまた生まれよう。甘い、レイン! 情を捨てきれぬ者に、世界を統べる資格などないわ!」
モニタに映るラピッドクラウド。
左翼を被弾し徐々に高度を落としている。
その周囲を無数のヒコウが飛び交い、イーグルが応戦している。
イデア 「これで終わりだ…」
主砲のスイッチを押そうとするイデア。
その首をシーアイスの剣が捕える。
シーアイス 「私もあなたもその民なのですよ」
イデア 「ッ、貴様どうしてここに!」
シーアイス 「我々は神に選ばれていない力を持たぬ人。世界とは人により成り立つ。人を、民の生を…お前達が否定するというのなら、それこそお前達に世界を統べる資格などない」
シーアイスの背後から現れるジュウジュ。
ジュウジュ 「背中足元がお留守だったな。大型戦艦の死角だろ。お約束〜ッ」
ニヤリと笑い、ジュウジュはメインデッキのドアキーをロックする。
イデア 「…今更お前達がこのエデンを制圧したところで、戦況は変わらぬ。閣下はようやく認められるのだ。世界に、神に…ッ」
泣きそうな声で呟くイデア。
イデア 「バルナギーゼ様はお父上を亡くされてから…、ただ、…誰かに認めてもらいたかった…それだけだった…」
ガクリと膝を落とすイデア。
俯きその表情は見えない。
イデア 「戦況は変わらぬよ。アダムが目覚め、その子らが生まれる今。もはや、為す術はただ一つ。レインはアルティマの民を捨て、アルティマの大地を捨て、封じる事だ。そうすれば、世界は救われよう」
シーアイス 「いいえ!」
シーアイスは確信し強く言い放つ。
シーアイス 「まだ、彼らが居ます!」

○アルティマ・南部陣営
息切れをするオウフェン。
眼前に長い列を作る住民と、不安そうに固まる避難民に視線を移す。
民を誘導する連合国軍の顔色にも疲弊の色が見える。
オウフェン 「…つ。もう、これ以上は…」

○同・東部陣営
幼児アダムの巨体が崩れ落ちる。
大地に飛び降りるガルシアンは息切れしつつ言い放つ。
ガルシアン 「もう何体倒したか分からん。きりがないぞ!」

ヨシュリア 「!」
よろける彼女の体をサンユンが支える。
サンユン 「ヨシュリア様、一度お休みください」
ヨシュリア 「休んでいる間など…」
苦しげに返すヨシュリアは、サンユンに支えられながら再び立つ。
ヨシュリア 「まだ救わなければならない民が居る」

○同・西部陣営
肩を上げて息を切らすミッフィーは、眼前の群衆を見つめる。
ミッフィー 「もう、限界や…」

幼児アダムの巨体が崩れ落ちる。
大地に飛び降りるグリンは息切れしつつ言い放つ。
グリン 「…北部の避難は終わった、エイセルとリュートは無事逃げだせたみたいだな。…けどよ、南部は残り15000、東3万、西3万。どうする、タケル!」

○同・南部陣営
アレス(M) 「いくら俺達とはいえ、限界がある。このままでは最終手段のSealで封じるその時に、その力すら残されていないかもしれない。決断しなくてはならないのか…」
アレスは顔を上げエバの火山とアダム本体を見つめる。
アレス(M) 「シーザー…」

○アダム心臓部
地鳴りのする心臓部。
気を失っているフィア。
フィオはなんと戒めを解こうともがく。
シーザー 「見ているか、マーハ。このライムランドは危機にさらされている。お前の愛するタケルは、世界と人を守ろうと必死だ。このままではタケルをはじめレインが倒れるぞ。なのになぜだ! 何故お前は現れない!」
どことも分からぬ宙に向かって叫ぶシーザー。
アダム 「滅ビヨ、悪ハ滅ビヨ」
フィオ 「違う、人は悪なんかじゃないんだ。アダム!」
シーザー 「悪だ、悪そのものだ!」
フィオ 「シーザー、まだ分からないのか! こんな事をしてもアレス王は喜びやしない。マーハはライムランドに戻ってきたりするわけがない!」
シーザー 「なぜそれが言える!」
フィオ 「アダムは人が生み出した。ヴァティスとは違う。だから彼の過ちは、人が正さなくてはならない。マーハではなくてオレ達なんだ!」
ルーン 「フィオーーーーッ!」
フィオ 「!」
心臓部へと駆け入るクエスターズ。
フィオ 「ルーン!」
シーザー 「お前達…」
ルーン 「フィオ達を離せ!」
シーザー 「馬鹿め、そう易々と…」
ジャキィス 「迂闊だったな」
シーザー 「何!」
機関部に立ちフィオとフィアの戒めを斬り払うのはジャキィス。
ルーン 「ジャキィス!」
驚くルーン。
機関部から飛び降りるフィオと、フィアを抱えたジャキィス。
シーザー 「まさか貴様まで…」
ジャキィス 「俺の妻は返してもらうぞ」
ニヤリと笑い、ジャキィスはルーンへと合図を送る。
ジャキィス 「後はお前達に任せる」
ルーン 「ああ」
シーザー 「クックック…」
一行 「?」
突如笑い出すシーザー。
天上へ両手を掲げる。
シーザー 「俺にはもはや失うものなど何もない。アダムよ、この俺を捧げる。俺の元に来い! 俺がヴァティスになる。この世界を滅ぼす破壊の神にッッッ!」
フィオ 「な!」
触手のような配管が伸び、シーザーの体が浮き上がる。
これまでフィオの居た機関部へと掲げ上げられていくシーザー。
シーザー 「世界の平和と人々の幸せ。これをどう思うと、俺はお前に随分昔尋ねたな、フィオ」
フィオ 「シーザー!」
シーザー 「これらはレインの犠牲の上に成り立つ虚像だ。愛する者を失い唯一人残された俺はようやく、タケルの心に気がついた。タケルは、タケルとマーハは想いを犠牲にしてこの世界の幸せを願った。だが、結果はどうだ? 人が変わる事はない。いまだ世界に魔将が生まれるように、バルナギーゼのような愚かな人が生まれるようにッ! 人こそが悪、まさにその通りだ、アダム…」
フィオ 「だからってお前が犠牲になるつもりか!」
シーザー 「俺がどうなろうと構わん! 俺が望むのは世界の破壊と二人の幸せだッ!」
一行 「!」
叫ぶシーザーと同時、機関部に強烈な光が走りホールは大きく揺れ始める。

○アルティマ・南部陣営
避難民の行列の中、独りの女性がエバの火山へと振り返る。
熱風に揺れる濃紫の巻き毛。
髪を一つに留めた紐が解け、零れた巻き毛が女性の頬を撫でる。
避難民 「どうしたんだい、お姉さん?」
女性 「シー…ザー?」
小さく彼の名を呟く。

○エバ活火山山麓
立ちはだかる幼児アダム3体。
アレスは剣を地に刺し、肩で息をする。
アレス 「ッ…違う…、違うんだ…シーザー」
疲弊した彼にゆっくりと近づいてくるアダムは、目標を定め襲いかかる。
アレス 「邪魔をするなぁーーーーーーッ!」
これまでにない叫びを上げるアレスは、剣を地から抜きアダムへと走り出す。

○アダム心臓部
光り輝く神具とともに、一行の装備が変わる。



フィオ 「これは?」
ルーン 「神具に…守られたんだ」
一行の周囲に半球状に張られた神具の防護障壁。大きく揺らぐ心臓部ホール。
天井が崩れ始める。
グレイ 「まずい、このままじゃ…聖獣アール・グレイの名において命ずる、出でよ『ベヒモス』ッ!」
グレイの第三の瞳から出現する巨大な牛の精霊は天井を背で支える。
ピノ 「グレイ!」
グレイ 「大丈夫、神具の加護があるから! ここは僕に任せて!」
四方から一行に襲い掛かる触手。
フィオ 「!」
フィオは手に持つ剣でなぎ払う。
同様、守るように触手を切り払うルーン。
フィオ 「グレイ、任せたよ。オレ達はアダムを止めなきゃ!」
ルーン 「でも、どうする?」
フィオ 「シーザーとアダムのコネクトを断ち切る。機関部の主桿。あそこをねらえば…」
フィオは楔の根元を見据える。
ピノ 「みんな、何かくる!」
ジャキィス 「あ、あれは…」
ルクレチア 「闇の精霊? シャドウなの?」
リリファン 「ちゃいます、そないなええもんやありまへん!」
壁の至る所から浮き出す無数の球体。
その中心部に瞳が浮き出る。
ジニアス 「いけない…ジャキィス! 下がってください!」
ジャキィス 「ッ!」
ジャキィスを守るように立つジニアス。
ジニアス 「六元の紅…熱く燃ゆる炎よ、我が意思により灼熱の業火となれ。『アストラルフレア』!」
球体を焼き払うジニアス。
その脇に立つルクレチアは迫る触手を断つ。
ルクレチア 「敵もいよいよ本気になったわね!」
ルーン 「ジャキィス。お前にフィアを任せる。グレイのそばに付いてろ」
ジャキィス 「分かった」
天井を支え動けないグレイへと襲いかかる触手。
リリファン 「グレイはん!」
グレイ 「!」
その触手を撃ち落とすリリファン。
グレイ 「リリファン、助かったよ」
リリファン 「グレイはんにはうちがついています! うちが守りますから」
フレディン 「私は『ゴッド・ブレス』でフィオさんとルーンさんを援護します」
ピノ 「だからあんた達が!」
一行の向ける表情にその意味を悟るフィオとルーン。
フィオ 「分かった…」
ルーン 「ああ」
再び天井から浮き出る無数の球体。
ルクレチア 「もうしつこいわね!」
開かれた瞳が光りだす。
ピノ 「力が集中してるような感じ…ライトニングと同じだわ、ジニアス!」
ジニアス 「分りました! 我が言霊に依りて、六元の障壁を構築せよ。『ウォール』!」
ピノ 「ルクレチア、上!」
ルクレチア 「ッ!」
次々と迫る攻撃を的確に言い当てるピノにジャキィスは感嘆する。
ジャキィス 「なるほど。フェアリーの危険察知能力か…侮れんな」
フィアを横たえるジャキィス。
触手を的確に撃つリリファン。
リリファン 「きりがありまへん!」
ジャキィス 「加勢しよう!」
グレイ 「フィオ、ルーン。早く!」

インサート・エバ活火山山麓
アダムを倒したアレス。
連戦に疲弊した表情を見せる中、オウフェンの通信が入る。
オウフェン 「タケル、今どこに居るのですか? 一人で無茶しないで下さい!」
アレスはかすかに笑う。
アレス 「…伝説と再臨。共に一人のレインがその身と引き換えにヴァティスを封じるSealを完成した。これからフィオ達を救いに行く。その後、俺が…」
フィオ(M) 「だめだ!」
アレス 「ッ!」
幻聴のようにアレスへと直接聞こえるフィオの訴え。
アレスは我に返り、火山を見上げる。
アレス 「フィオ…」

フィオ 「…オレ達はこの世界で旅をしてたくさんの事を知った」
ルーン 「フィオ?」
フィオ 「世界の平和と人々の幸せ。これはアレス王とマーハだけじゃない。みんなの願いだ!」
ルーン 「…ああ!」
機関部へと向く二人。
フィオ&ルーン 「!」
神具を構え立ち、シーザーを見上げるフィオとルーン。



WMV版

アダム 「ホロビヨ、アクハホロビヨ…」
感情のないアダムの呟きが聞こえる。
アダムに吸収されつつあるシーザーは、喜び声を上げる。
シーザー 「そうだ、世界を破壊する。そうすれば、マーハは再びこの世界へ降り立つ。今度こそ、彼らは幸せにッ!」
そのシーザーの前に立つクエスターズ一行。
一行の手にした神具が光る。
フィオ 「違う、そんな事をすればこの世界が不幸になる!」
ルーン 「お前も不幸になる!」
グレイ 「犠牲が必要な幸せなんて、あっちゃいけないんだ!」
ピノ 「そうよ、それはアレス王だって、あんただってそう!」
ジニアス 「愛する者が離れ離れになるなんて」
ルクレチア 「そんな事はあたし達だって認めない」
リリファン 「人は独りで生きられまへん」
フレディン 「共に歩む者達が居るからこそ、この世界があるのです」
シーザー 「ならば、お前達はどう答えを導き出す!」
ルーン 「お前は世界を壊してレインを救おうとした」
フィオ 「けどオレ達は、世界を救う。レインも救う!」
フィオとルーンは互いの顔を見て頷く。
神具を構える二人。
フィオ 「はあああああぁぁぁぁぁぁッッッッ!」
ルーン 「はあああああぁぁぁぁぁぁッッッッ!」
アダムの楔へと斬りつける2人。
ホワイトアウト。

強烈な光の中、独り漂うシーザー。
どこからか聞こえる優しい声。
マーハ 「シーザー…」
シーザー 「マーハ…なのか? …すまん、俺は…」
そしてその優しい声は、強くシーザーを呼ぶ女性の声へと変わる。
サンドラ 「シーザーッ!」

○エバ活火山山麓
火山を見上げるアレス。
火口に立つアダムの瞳の光が消え、地鳴りが収まる。
アレス 「これは…ッ!」
アダムの全身から放たれる強烈な光。
ホワイトアウト。

光の中で聞こえる微かな声。
アダム 「『滅ボス』我ハタダ、ソノ為ニダケ生マレタ兵器」
マーハ 「あなたが生まれてきた意味はそんな事じゃない。500年、肌で感じてきたでしょう。あなたと共に生きたこの、アルティマの民の歴史。人々の幸せを…」
アダム 「……」
マーハ 「人はけっして悪ではないと、あなたは知ったはず。生まれた理由はね、生まれる前から決められるものではない。それは生きてようやくわかるものなの。」
アダム 「人トハ不完全ナ存在。我ト同ジ」
マーハ 「うん、そうだね」
アダム 「我ハ再ビ眠ル。アルティマノ大地ト成リテ生キル。ソレガ我ガ生キル証」
光が消える。

アレスの見上げる先に、石像か岩山のように変化したアダムの巨体がある。
一言小さく呟くアレス。
アレス 「マーハ…」

○アルティマ・東部陣営
地鳴りが静まり、沈静する火山を眺める避難民とヨシュリア、ガルシアン。
ヨシュリア 「地震が…止んだ」
ガルシアン 「やったんだな、彼らが…」

○同・西部陣営
地鳴りが静まり、沈静する火山を眺める避難民とグリン、ミッフィー。
グリン 「アダムはどうなったんだ?」
ミッフィー 「また眠りについたんや…」

○同・南部陣営
地鳴りが静まり、沈静する火山を眺める避難民とオウフェン。
オウフェン 「しかし…彼らは…」
そこへオウフェンの横へ一人の女性が近づいてくる。
サンドラ 「帰ってくるわ、彼らも。シーザーも…」
オウフェン 「!」
オウフェンはその声の主、サンドラを見て驚く。
オウフェン 「サ、サンドラ!」

○ラピッドクラウド・メインブリッジ
かすれがすれにノイズが入るモニタ。
リップ 「エバ火山河口に生体反応確認」
クルエ 「解析終わりました。12名、彼らだわ!」
サルサ 「モニタ入ります!」
喜び上気するオペレータの3人。
モニタに移るシルフに乗ったクエスターズ一行、ジャキィス、フィア、そしてバルナギーゼとシーザー。
イデア 「バルナギーゼ様!」
シーアイスの横で項垂れていたイデアは涙を浮かべてモニタを見上げる。
安堵するシーアイスは笑みを漏らす。
シーアイス 「あれではシルフも重量オーバーだな。カタパルトを開け。直ちに彼らを回収するように!」
アイシャ 「はい!」

○エバ活火山山麓
ラピッドクラウドに着艦するシルフを見上げるアレス。
アレス 「……」
微笑んだ後、剣を鞘におさめる。